Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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 その日、未確認生命体――グロンギの起こした殺人ゲームによって、とある高校の一クラスが壊滅した。
 アギトこと滝海斗、クウガこと一文字空、二人の奮闘にも拘らず、の結果だ。
 目に見えて落ち込んでいる空の方はともかく、気遣って来る弟達に笑顔を向ける海斗を見て、アラン・ホークアイは夕食の後、滝家の長男を呼び出した。
 海斗を自家用のスポーツカーに乗せて、連れて来たのは海浜公園。
 海に面した、遊歩道に海斗を連れて来た金髪の青年は、戸惑っている少年にこう言った。

「ここで泣きなさい。
 ここなら、空君も閃君も、ちびちゃん達もいない」

 言われて、海斗の目からボロッと涙が零れ落ちた。
 ガードレールに手を付き、嗚咽を漏らし始めた少年の背に、ホークアイは言葉を付け足す。

「私はジュースを買ってくる。
 その間に、声を出して泣きなさい」

 背を向け歩き出すと、背後からわーーー!と声が上がる。泣き叫び始めた少年を、改造人間の視力で見詰め、改めて歩き始める。
 本当に、父親そっくりだ。
 香港での、三ヶ月の研修。
 その時、アメリカ人で上流階級の同世代位の青年達の犯罪に傷付いた滝和也を、プロムナードで海に向かって泣くように言った。
 飽きるまで泣いたら、次の事件に備えて終わった事件を引きずるなと、言い含めて。
 泣き続ける声を聴きつつ、ゆっくり300メートル先の自販機に向かう。
 未成年に、煙草を勧める訳にはいかないのが、心から残念だと思った。

     Memories of Hong Kong




15. そして日常に還る。

15. そして日常に還る。

 

 光が収まると、周囲は一変していた。

 瓦礫が散乱していた、荒れ果てたショッカーを称えるオベリスクが建っていた臨海公園は、見覚えのあるストバスコートと遊歩道を抱えた公園に姿を変えた。

 周囲に居た仲間達も、《伝説》のライダー達も姿を消し、そこには火神大我と黒子テツヤ@レイヴ、そして香山閃とウルフイマジンの四人(?)だけになっていた。

 

「あ、あれ?」

「ここは……」

『この間、ストバスとやらの大会があった場所だな。何が起こった?』

「ウォルフィ、これって」

『ああ、時間が修正されたんだ』

 

 突然の事に周囲を見回していた弟分とその友人は、閃とウォルフィの言葉に振り返った。

 

「恐らく、俺達とは別の『時の列車』が、あの時のメダルでショッカ―グリードを生み出される事を阻止してくれたんだ」

『ふうん?』

「え? でも誰が、その別の電王に知らせたんだ?」

 

 話すうちに、独特の電子音警笛が鳴り響き、見慣れた白い車体が彼らの前を走り抜け、その後に赤、青、黄、紫の未確認生命体に庇われるように立つ青年がいた。

 居住まいを正す兄貴分に、大我も慌てて背筋を伸ばす。

 その様子に、穏やかそうに笑うこの青年が、一度に複数のイマジンを憑依させて戦う伝説の電王であると、大我が知るのは後の話である。

 

「滝和也さんに頼まれて、このメダルを回収してきました」

「滝って、え?」

 

 青年の言葉に驚いた閃に向かって、赤い鬼のようなイマジンが頭を掻きつつこう答える。

 

『この間、時の砂漠に迷い込んでたおっさんを助けたんだよ、そのおっさんが、おめーらの落としたメダルを回収してくれって言ったんだよ』

「え!?」

『時空破断装置だっけ? それで出来た(きず)を潜ったら、色々別の世界を渡り歩くようになっちゃったんだって。

 無茶な人だよねえ?』

 

 青い亀のようなイマジンの言葉に、閃と大我は思わず顔を見合わせた。

 仲間の二人を困ったように見詰めてから、青年は大我の手にあの時落としたメダルを手渡した。

 

「滝さん曰く、デンライナーを見た時に、急に今回の記憶が浮かんだそうです」

「あ、あの、滝、さんは今、デンライナーに乗ってねえ、ないですか?」

『あの人なら降りちゃったよー、自力で帰らないと、また何処かに吹っ飛んじゃうんだってさー』

 

 大我の問いに、紫色の龍らしいイマジンが踊りつつ答える。

 彼の言葉を、これは眉を下げつつ青年が補う。

 

「滝さんが手に入れた、ガジェットの性質らしいです。自力で次元のオーロラを越えて移動しないと、元の場所に強制移動させられるらしくて。

 あ、家族の皆さんに、「必ず帰るから待っててくれ」と、おっしゃっていました」

「そう、ですか」

 

 青年の言葉に、閃は改めて頭を下げる。

 

「ありがとうございます。

 皆さんは、これから何か用事でも?」

「ええ、僕達の路線で少し困った事が起き掛けているので、先行している仲間と合流しなくてはなりませんから」

 

 そう言って暇乞いすると、青年は仲間のイマジンと一緒に――立ったまま眠る黄色い大柄なイマジンを赤と青のイマジンが引き摺って――、再び『時の列車』に乗り込みこの時間から去って行った。

 警笛を響かせつつ、デンライナーが走り去っていくのを見送って、思わず大きく深呼吸をしたその時だった。

 突然、大我が制服のポケットに突っ込んでいたスマートフォンが着信メロディを奏でた。

 慌てて取り出すと、ディスプレイには『長兄』滝海斗の名前があった。

 

「はい、もしもし!」

『ああ、大我、もう買い物済ませてる?』

 

 言われて、はたっと考える。

 そう言えば何か頼まれたような、考える前に海斗の声が続く。

 

『今、空が牛乳買って来てくれたから、まだ買ってないなら帰って来てくれていいよ、祥吾達もそろそろ帰って来るから、皆でおやつを食べよう』

「え、あ、はい判った、です」

『じゃあ、待ってるから』

 

 電話を切って顔を上げると、今の今まで横にいた相棒+αの姿が無かった。

 恐らく、バニラシェイクを求めて、手近なマジバへと走って行ったのだろう。

 相棒達のシェイク中毒ぶりに呆れつつも、大我は背伸びをしている兄貴分に顔を向けた。

 

「閃兄ちゃん、海斗兄ちゃんがみんなでおやつを食べようって」

「そうか、じゃあ、帰ろうか、大我」

 

 ウォルフィ――ウルフイマジンを身に宿し、笑いかける閃に頷くと大我は滝家があるマンションへと歩き出した。

 だが、歩いているうちにふと大我は足を止めた。

 

(あれ?

 「今」の滝の小父さんがもう一人の電王に助けを求めたから今があるなら、「昔」の滝さんはどうやって助かったんだ?

 滝さんは、半年前にって言ってたけど、デンライナーって最終車両が吹っ飛んでからも結構走ってたよな?)

 

「大我、どうした?」

『お腹が空いたのか?』

「あ、何でもねえ、です」

 

 立ち止まり、振り返る『兄』に、大我は慌てて足を動かし彼の横に並ぶ。

 『兄』達と『姉妹』達と、『弟』達と、幼馴染みが暮らす『皆の家』に帰るのだ。

 傾き始めた太陽を横目に、二人の青年は公園を後にした。

 

 

 何処とも知れない、建設途中で放置されたかのようなコンクリート打ちっぱなしの部屋で、二人の青年が向かい合っている。

 二人は、兄弟と思える程度に似通った面差しをしている。

 火神大我や香山閃、現在《新生》仮面ライダーと呼ばれている面々が見ればその過半数が驚くほど、とある人物に彼らの面差しは似ている。

 生真面目そうに口を真一文字に引き結んでいる、全体にやや色素の薄い相手に向かって、彼よりがっしりした体格で濃い色合いをした髪の青年が食って掛かっていた。

 その頬には、羽を広げた鷲の刺青が入っている。

 

「何で、奴を助けてんだよ、あの男は敵だぞ!?」

 

 詰られている青年は、黙って手の中のやや古びたカメラを撫でている。

 時間と空間の狭間を、燃え上がる車体と共に落ちて行こうとした人間を助け、200X年の夏頃の時間に運んだ彼は、青年の手当てと世界情勢の説明をしたのだ。

 理由は、彼自身でも良く判らない。だが、この人物が死ぬかもしれないと思った途端、居ても立ってもいられなかったのだ。

 刺青の青年は、彼のやった事を組織への叛意だと責めているのだ。

 そこに、二人の間に置かれていたスマートフォンがビーッビーッと音を立てて振動する。

 色合いの薄い青年が取り上げ、スピーカーモードで繋ぐと、低い老人の声がこう告げた。

 

『ディケイド、大首領がお前にお言葉を下さるそうだ』

 

 その言葉に、責められていた青年は凍り付く。それを見て、もう一人の方はほくそ笑む。

 上手くすれば、自分に彼の役割が回ってくるかもしれないからだ。

 暫く時間をおいて、スマートフォンからさらに低く、掠れた男性の声が青年――ディケイドを呼んだ。

 

『……ディケイド』

「……はい、お父様」

 

 意を決して返事したディケイドに、だが思わぬ言葉が投げ掛けられた。

 

『待機を守れなかったのは褒められないが、良くやった。

 間もなく新たな任務を命ずる。良く休め』

 

 顔を跳ね上げたディケイドと、驚愕を隠せないもう一人とがスマートフォンを凝視するが、そのまま回線は切れてしまった。

 

「何だよ、何だよ可笑しいじゃん、だって、滝和也って、ショッカーの敵の一人なんだぞ!?

 あのまま見殺しにすれば良い筈じゃん、なのに何で!」

「お父様にはお父様のお考えと計画がある。

 俺達が口を挟むのは、それこそ烏滸(おこ)がましいと言う物だろう?」

 

 地団太を踏む連れに、微かに嘲笑しつつディケイドはスマートフォンを上着のポケットに収めた。

 

「行くぞ、名無し。

 何もない、この終わった世界に残っていたいなら止めないがな」

「この、点取り虫が!」

 

 そう吐き捨てつつ、刺青の青年はディケイドの開いた時空のオーロラを潜って次の世界へと移って行った。

 

 




 ちょうどお湯が沸いた頃に、推定行き倒れが目を覚ました。

「おお、生きてたな。コーヒー入ってるぜ?」

 携帯マグにコーヒーを入れて渡すと、自分の分を口に運ぶ。
 向こうの方は、こちらを警戒しているのが丸判りの状態で、ちびちびとマグの中身を啜っている。
 風と共に、雪が窓ガラスを叩く音がする。それを聞きつつ、眉を顰める。

「こりゃ、今夜は動けねえな」
「休みが終わっちまう」

 ぼそりと、若者が呟いたのを聞きつけ、取り敢えず話を振ってみる。

「見たとこスキー客には見えねえがよ、兄ちゃん何があったよ?」
「……落とし物を、探しに来たんだ」

 それ以上は聞くなと言わんばかりに、若者は眼を逸らす。
 昔、一文字隼人と一緒に戦い始めた頃、自分や立花の親父さんやお嬢さん達に距離を置こうとしていた頃に似た空気を感じて、何とも言えない気分になった。
 埒が明かないので、今は体力温存も兼ねて休む事にした。

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