一文字空は、滝家に引き取られた子供達の中でも、海斗とニコイチと言う事で目立っていた。
二人が一緒に暮らし始めたのは、それこそ二人ともオムツを引きずっていた頃からで、双子のように育って来た。
活発な空と、大人しい海斗は一見すると気が合わないのではと気を揉む大人達がいたが、空が苦手な事は海斗が得意で、海斗が手古摺る事は空がこなしてしまうと言うように、二人は何時も寄り添っていた。
そんな二人だが、高校は別々の学校に進んだ。
海斗は秀徳高校、空が進学先に選んだのは正邦高校だった。
空が海斗に依存気味だと思っていた周囲は、皆驚いたものだったがそんな大人達に向かって、空は真面目くさった顔でこう答えた。曰く、
「俺、海斗のお荷物になるつもりはねえんだよ。だから強くなる」
空は、子供の頃から漠然と感じている事があった。
手を離すと、海斗が何処かの誰か知らない奴に連れ浚われるのではないか、と。
それは、物心ついた時からずっと感じていたもので、だから中学卒業まで空は海斗と同じ部屋で寝起きしていた。
だが、赤心少林拳の義経管長から言われた一言で、空は考えを改めた。
「お前は海斗に守られたいのか?
あれは、お前が依存するなら否とは言うまい。だが、お前はそれでいいのか?
あれに付属品と思われたいか? あれと並び立つ男でありたいとは、思わないのか?」
その言葉に、空は考えた。
考えて考えて、一月間自分はどうありたいか、海斗にどう思われたいと思っているのかを自身に問うた。
そうやって出した答えは単純で、でも難しい事だった。
「俺は、滝海斗の相棒になる。いや相棒であり続ける」
庇護対象ではなく、一方的に力を借りるのでもなく貸し付けるのでもない、対等で信頼されてこそ成り立つ関係。
そうなりたいと打ち明けた空に、義父と会長は笑って「頑張れ」と告げた。
だから。
発掘現場から逃げ延び、収容された警察病院に怪人――後に、かつての【バダン戦役】にて暴れた改造人間と区別する為に『未確認生命体』と呼称される事になった――と相対した時、空は持ち込まれていた発掘隊の『遺品』の中から石の装飾品――『アークル』を迷う事無く掴んだ。
怪人の脅威より、未知への恐怖より、何より海斗を一人で戦わせる事が恐ろしかった。
海斗が、『一人』になる事が一番怖かったから。
「一人に何てさせねえ! お前一人じゃねえ、だから待ってろ相棒!!」
腹に焼き付く熱も痛みも、銃を持った警官達を一瞬で絶命させた怪人も、全て空には二の次だった。
怪人の鈎爪を受け止めた腕が、相手の胸に叩き込まれた脚が、赤い装甲に包まれる。
それは、どんな運命の悪戯か。
かつて、赤い拳を振るって戦った男の血を引く青年は、全身を紅の装甲に包んで戦いに飛び込んで行った。
その事に、涙した人間がいた事を、彼は未だ知らずにいる。
*Sora Ichimonji