Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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exepisode02-E ビースト

 福井健介は、中学二年の二学期から秋田の中学校に転入した。

 祖父母の許に行くまでの約一年間、健介は発掘調査団基地での怪我もさることながら、契約を結んでしまった『ジャヴァウォック』による魔力搾取に苦しんでいた。

 最初、滝和也を始めとするSPIRITS隊はビーストドライバーを使用不能の状態にして、そのまま封印状態に持ち込もうとした。

 それに否を唱えたのは、スミドロンや魔女参謀、その他魔法や呪術にかかわりを持つ元幹部達だった。

 

「滝和也、気持ちは判るが此奴を封じれば、契約を結んでしまった小僧に悪影響が出るぞ」

「ファントムと言ったかのう、此奴は魔族とは違うが人の魂を食い尽くして生まれるが故に魔族より厄介な存在じゃ」

「此奴、これまでに少なくとも百を超える人間の魂を食い切りここまでの力を得た者じゃ。下手をすれば小僧の命も諸共に封じる事になるぞえ」

「そうだね、今この時間も健介君の魔力、生命力をあの『ジャヴァウォック』と名乗った存在は搾取している。

 せめて、それだけでも止めさせる事が出来れば良いんだがね」

 

 《ホークアイ・ホールディングス》会長、アラン・ホークアイがこめかみを抑えつつそう言うと、鼻から下をベールで覆った魔女参謀が物憂げに杯を揺らし、中の上物の赤ワインを眺めながら答える。

 

「魔力を、補ってやれれば良いのじゃがのう。

 残念ながら、術者として魂を鍛える余裕はあの子供には無かろうよ、あのペースで魔力を絞られておっては、さほど待たずに生命力まで絞られてしまう」

「魔力を、他所から補充する事は出来ない訳では無いぞ?

 しかし、『ジャヴァウォック』の搾り方からすれば、下手な方法では焼け石に水、何より魔力を取り込むとなれば、よほど力の籠ったものではなくては。

 手っ取り早いのは、魔力そのものを食べさせる事じゃが、あの小僧に我らの魔力は劇物と変わらぬ」

 

 かつて、ライダー達を苦しめた女性幹部の言葉に、滝はぐっと両手を握り締めた。

 彼女達は、先のBADAN戦役の際にアラン・ホークアイ、いやマミー・ゼネラルによって魂を戻され、暗闇大使の傀儡から解放された。

 その際、大首領ことJUDOの行動に不信を抱き、彼女らはそのままマミー・ゼネラルに与したのである。

 

「あんた達でも駄目なのか?」

 

 滝の問いに、呪術魔導の類を嗜む女傑二人は首を横に振った。

 

「済まぬが、魔力を持つ者の血肉を食べさせる事が最も手軽で早いが、そのような事はさせられまいよ」

「このご時世では、魔力の籠った宝石を集めるのも一苦労よ。しかも、その魔力を『ジャヴァウォック』めが気に入らねば意味がない」

「……そうだね。まずは、どのような魔力なら彼のお気に召すのか」

 

 頭が痛いと、会長が金髪に指を差し込んだその時だった。

 すうっと、影が蟠ったかと思うと、一人の老人が現れた。

 

「面白い事が判ったぞえ、マミー・ゼネラルよ」

「おや、幽霊博士ではありませんか、何か進展でも?」

 

 真っ白な総髪に、片手を鉄製の義手にしている老人――元ジンドグマの幹部であった幽霊博士は、義手に引っ掛けた手提げ袋の中から焼き菓子を取り出し、それをそこにいた四人に配ると、自身も一回り大きなマドレーヌに嚙り付いた。

 その焼き菓子を見て、滝が目を見開いた。

 

「これは、うちのチビ達が焼いたマドレーヌ?」

「そうじゃ。これを小僧に食わせたら顔色が戻ったし、グダグダ文句言いよったファントムめも大人しくなりおった。

 魔女参謀よ、以前其方が言っておったろう、海斗めの纏う「力」。どうやらそれが、魔力の代用品になりそうじゃ」

 

 昔からの馴染みの言葉に、魔女参謀の表情が少し明るくなる。

 スミドロンの方も興味深げに首を傾げ、頬に指を添えた。

 

「オルタフォースと言うたかの。あれほど光の気配の高い力は、妾も余り見た事が無い。

 しかし、何故この焼き菓子にあれの力が?」

「何、簡単な話じゃ。

 その菓子は海斗と徹子と天馬の三人が、粉を振るって混ぜて焼いたもんじゃ。その過程で、あの三人の力が菓子に移ったようじゃ」

「そう言えば、あの三人、かなり似通った力の『質』を持っておった。……ふむ、三人で手ずから作ったのが、良い結果になったのやもしれぬのお」

 

 滝海斗は滝和也の息子、滝天馬と重音徹子は鉄道事故の遺児で滝に養子として引き取られた。

 特にこれと言って似ているところがある訳でも血の繋がりがある訳でもないが、三人は周囲からも纏っている空気が似ていると良く言われていた。

 そして、三人の共通項が『オルタフォース』と呼ばれる力の存在である。

 所謂魔力、霊力に似ていてしかし少しずつ違うと、《ホークアイ・ホールディングス》に身を寄せる呪術、魔術スキル持ちの改造人間達が口を揃えて言った、『限りなく光に近い、純度の高過ぎる生命エネルギー』を、三人は若干の差はあるものの持っていた。

 そのオルタフォースが、三人が手作りした焼き菓子にかなり残留したらしく、その菓子を食べた健介の状態が良くなったと言うのだ。

 渡されたマドレーヌを一口齧り、アラン・ホークアイは少し首を捻りつつ同じく齧っていた滝に視線を向けた。

 

「私には良く判らないな。

 だが、改善が見られるなら、時間稼ぎが出来ると言う事だ。

 滝君、海斗君達に事態を話して、焼き菓子を量産して貰ってくれないかい?」

「そうですね、俺もピンときませんが。

 確か、まともに食事が出来ない健介に、天馬が海斗の作ったプリンを食べさせたら食べられたから、甘い物ならいけるんじゃないかって事になって菓子を作ってたらしいんで。

 でも、まさかそれがそのオルなんたらが関わってたなんてなあ」

「まあ、其方はそうよな」

 

 滝が出て行くのを見送って、年長者達は話を続けた。

 

 海斗と天馬、徹子が作成に手を出した食品なら、大体オルタフォースが籠っている事が判り、以来健介が普通に生活が出来るようになるまで、三人は毎日のようにキッチンで食事やお菓子を作り続けた。

 ドライバーの封印は結局健介自身まで巻き込みかねない事、更にぽつぽつ現れるようになった謎の怪人――ファントムへの対応の為、結局健介に協力を仰がざるを得なくなった事から見送られる事になった。

 但し、滝は『ジャヴァウォック』の干渉力を低くする方法の検証を、SPIRITS隊に依頼していたが。

 

 

 その後、祖父母の許に身を寄せた福井健介は、出羽三山の修験者を先祖に持つ岡村建一と親しくなり、長じてバスケットボール部に入る事になる。

 それに前後して、飼い主を守ろうとした猫又と仲間を増やすべく絶望をふりまこうとしたスプリガンファントムとの戦いに巻き込まれた事は、また別の機会に語る事にする。

 

 

 福井健介が臥せっていた時の事。

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