Sons of Skull-Rider   作:怪傑忍者猫

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exepisode02-F 電王

 世界が、突然砂に変わった。

 何もかも。何もかもがだ。

 

 自分の記憶すら砂と消えて、気が付けば緋色の狼のような姿で、砂の海の中に座っていた。

 そんな自分に、『あの方』は仰った。

 

「世界を壊したものがいる。

 お前達は過去に飛び、世界を壊した『分岐点の鍵』を探し出し、其奴を抹殺せよ。

 これは勅命である!」

 

 訳は判らなかったが、その『勅命』と言う言葉に、逆らい切れない何かを感じて、自分は命じられるまま穴のようなものに飛び込んだ。

 同じように、穴に飛び込んだ者は千を越えたのではなかろうか。

 但し、自分を含めて一部を除くと、皆『勅命』を発した金色の人物に向かって熱狂的に歓声を上げ、我先に穴に飛び込んでいた。

 自分は、まるで濁流に押し流されるように、穴に飛び込んでいた。

 他の者のように熱狂する訳でも盲目的に従う訳でもない。

 ただ、彼を見捨ててはいけないと思ったのだ。

 それが、砂と零れ落ちた記憶に端を発している事だけは、何とか判っていた。

 

 

 目が覚めたら、全てが消えていた。

 パパも、ママも、妹も、お兄さんも、お姉さんも、皆皆、全て砂に変わって、中佐と二人、砂漠の中心にいた。

 そのうち現れた列車――時の列車に乗る事が出来た私達は、私達の電王を探す事になった。

 私達の歴史に連なる時間線の、過去の何処かにいる特異点を探し出し、その人に『電王』として戦って貰う。

 私も、中佐も、残念ながらある種の特異点ではあったけど、『電王』にはなれなかったから。

 だから、『時の列車』の二号車を預かり、中佐がオーナー代理、そして私、シャルロット・フィリス・キャゼルヌは列車の乗務員として乗り込み、私達の旅は始まった。

 家族を、世界を取り戻す為のその旅は長く続き、私達は銀河歴以前の時間帯でやっと、目的の人物を見出した。

 香山閃。

 彼が、私達の世界に連なる特異点であり、同時に世界を繋ぐ『鍵』であった事を知るのは、ずっと先の話になる。

 

TIME-STRANGER

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この先は、黒バスライダーズにおける電王の最終話になる予定の話です。

 興味の無い方はご覧にならない方が良いと思います。

 この話は、元々単独で考えており、この最終話はおそらく変更する事は無いと思われます。

 

 

……っか

…………かっか

「閣下!」

 

 声に飛び起きる。

 そこには、軍服を纏った良く知った顔があった。いや、何だろう、もっと若くて、もっと瞳の色は黒っぽい緑だった気がする。

 周囲を見回せば、そこは自身の良く知っている己の旗艦の私室で、目の前の見知った顔は、些か呆れたように腕組みしてこう言った。

 

「やはり、強行軍は宜しくなかったのではありませんか?

 務めとは言え、もう少しご自愛ください、閣下」

『ほら、連戦だからぼろぼろじゃないか。

 俺は無理して欲しいとは思ってないよ、ウォルフィ』

 

 重なって聞こえるのは、同じ声、だが何だろう、もっと親密だった気がするのに。

 

「……ジンツァー」

「はい、閣下」

「もう少し、崩して貰えないか、今は、その」

 

 こちらの言葉に一瞬目を瞬かせ、周囲を見回した後、国務尚書護衛艦隊指揮官を務めるホルスト・ジンツァー上級大将はがりがりと焦げ茶の頭を掻いてこう言った。

 

「全く、今だけだぞ、ミッタ―マイヤー。

 バイエルラインに抜けたら、またぞろ嫌味言われちまう。あいつ、俺より出世した癖に、艦隊司令部ぶん投げてお前の護衛艦隊率いたいって言って、またビッテンフェルト元帥とワーレン元帥に殴られてたぞ」

「あいつめ……」

 

 過剰な慕い方をしてくる元部下であり現在総司令部重鎮になっている男に、苦笑いが浮かぶ。

 そんな自分を見て、少しだけほっとした様子で彼は言葉を続ける。

 

「大体、バーラト星系との通商航路開設の式典出席の序に、向こうの視察とか何とかくっ付けて休暇を兼ねれば良かったのに、ミュラー元帥やメックリンガー元帥はそのつもりっだったらしいのに殆どとんぼ返りにしちまって。

 勤勉は程ほどにしてくれ、お前まで倒れたら本気で帝国潰れかねないぞ」

『真面目過ぎるんだよ、ウォルフィは。

 俺達は遊撃隊扱いだから、イマジン以外は鉢合わせたら叩くで良いんだから。

 肝心の相手の時に、疲れ果てて負けましたは洒落にならないって』

 

 士官学校時代の最期の同期生の声に、もう一つ声が被さって聞こえる。

 それは学生時代に聞いた目の前の人物の声のようで、そうではない気もする。

 こちらがそんな事を考えているうちに、従卒の少年がコーヒーを運んで来た。どうやら、ジンツァーが呼んだらしい。

 その、コーヒーを差し出す従卒の姿に、緋色の髪の少年が重なる。

 そして、その少年の頭を撫でていた、十代であろうジンツァーの姿。

 

『よろしくな、ウォルフィ。

 俺は香山閃、フルネームはホルスト・閃・香山・ジンツァーってなるんだけど、日本じゃ通りが悪いから日本人名だけで通してる。

 だから閃って、呼んでくれ』

 

 涙がすっと、片目から零れた。

 

「国務尚書閣下?」

「閣下!?」

「何でもない、何でもないんだ」

 

 慌てて傍に来て、膝を付いた相手に向き直る。

 親友は、自分の手で討ち取った金銀妖瞳の彼。

 でも、目の前にいるのは、士官学校時代に確かに友と呼んだ相手で、そして、

 

 

 千数百年前の世界で、一度は世界を壊す事に加担した自分を許し、そして世界を取り戻す手伝いをしてくれた人間の、多分彼は子孫だ。

 

「しかし、」

「本当に何でもない。ただ、そうだな。

 せ……ジンツァー、これからも、よろしく頼む」

 

 一瞬、閃と呼びかけそうになり、慌てて言い直した自分に向かって、一瞬目を細め、そして彼はこう言った。

 

「『うん、改めて宜しく、だな。

 ……ウォルフィ』」

 

 歴史が、どんな紡がれ方をしたのかは判らない。

 でも。自分がいるこの時間と彼がいた時間が一旦途切れ、でも結び直せた事実がここにある。

 俺は忘れまい。

 ウルフイマジンとして、世界を壊そうとした事、そして。

 『電王』ホルスト・閃・香山・ジンツァーの相棒として戦った、この記憶を。

 

 

No one knows mythology.

 

 

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