スーパーロボット大戦H/ハーメルン   作:一条 秋

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13 共闘 後編

『俺達が、地獄だッ!』

 

 多分な怒りを孕んだ叫びと共に跳躍すると、黒い特機は両手に持った拳銃を周囲に乱射する。

 ガンアクション映画よろしく両腕を肩から大きく振り回し、四方八方へとばら撒く様に放たれた巨人サイズの銃弾は、あるものはクロイツリッターの胴部に風穴を空け、あるものは砲鬼の装甲を凹ませ、そしてあるものは恭弥たち非特隊とヴァルキリーズ第三分隊に襲いかかる。

 

『『「!」』』

 

 自分たちの許にも飛んできた数発に恭弥、一夏、カノンは慌てて散開して回避し、

 

『そこの3機!早くこっちに!』

「?わかりました。とにかく行こう!」

『『了解』』

 

直後に通信から響いた第三分隊隊長・アリスの声に恭弥が代表して応じると、シルフィード、ユニコーン・白、アトランティア・ルージュは特機から距離をとった所で巨大な盾を展開した戦機人の後ろに降下する。

 襖を開いた様な形をした巨大盾の後ろにはすでに戦機人2機とテンペスト、ギガンテックが来ており、ルミエイラと鬼の相手に向かった全戦力が集まったことになる。

 恭弥たちが降り立ったのを確認すると、アリスが乗る指揮官機は盾を装備した戦機人を見やる。

 

『どう?持ちそう?』

『一応特殊合金製だから、簡単には抜けないと思います。でも元が避難支援用の瓦礫避けだからな……』

 

 盾持ちの戦機人のパイロットが不安そうに答える間にも、流れ弾が盾を叩く轟音が散発的に響く。

 その横では、カノンが盾の陰からアトランティアの頭を少しだけ出し、宙返りをしながら鬼やルミエイラに銃撃を続ける特機を観察している。

 

『あのデザイン、あの武器、あの動き……やっぱりあの機体は……』

『カノちん、あの特機について何か知ってるの?』

「そういえば、さっき何か言いかけてたよな?」

 

 嬉しい様な、しかし困った様な様子で呟くカノンに、フィルシアと恭弥が問う。

 

『……私の記憶が正しければ、アレはマジンカイザーSKL。堅牢な装甲と破格の馬力、多彩な武装、御覧の通りの柔軟な運動性を備えた……ザックリ言えば”ザ・スーパーロボット”だよ』

『またザックリね……』

 

 カノンの掻い摘んだ説明に、アリスが呆れた声を漏らす。

 その時、地上に降り立った特機――マジンカイザーSKLの背後から雑鬼が飛びかかり、後頭部目掛けて金棒を振り下ろす。

 が、直前に白いものが横から体当たりをかけて雑鬼を押し飛ばす。

 

『アレはさっきの!……!?』

 

 地面に降り立った白いメカニカルな犬に一夏が驚く間にも、カイザーを囲んでいる鬼たちに巨大な猿が尻尾のレールガンを連射し、上空を漂うクロイツリッターたちにさらに上空から巨大な雉がレーザーの雨を降らせる。

 一連の攻撃で鬼とルミエイラはカイザーから距離をとり、レーザーの雨に飲み込まれたクロイツリッター1機が爆散、レールガンの直撃を食らった砲鬼が左腕を失う。

 しかし、

 

『新手か!?』

 

叫ぶと同時にカイザーは手近なビルを踏み台にして雉目掛けて飛び上がり、拳銃の銃身下に備わっている刃を突き入れようとする。

 咄嗟に雉はレーザー攻撃を中断、刃が当たる寸前にさらに高度を上げて回避するが、カイザーはそれに拘らず落下しながら地上の犬と猿に銃撃を行う。

 

『ちょっとちょっと!完全に三つ巴じゃないの!』

 

 アリスの驚愕を表す様に、鬼とルミエイラはカイザーに加えて犬たちにも攻撃を始め、犬たちも三者からの銃撃を掻い潜りつつ各勢力――といっても、あくまでも鬼とルミエイラを優先――に応戦する。

 

『そういえば、残り2割の避難は完了した?』

『それは大丈夫です。みなさんが鬼やルミエイラを引き付けておいてくれたから』

 

 不安そうに問うアリスに、盾持ちのパイロットは少しだけ安心した様子で答える。

 

『……チッ』

 

 そうしている間に弾が切れたのか、カイザーは拳銃2丁を繋ぎ合わせて柄の長い戦斧を形作り、近間にいた猿に斬りかかる。

 

「…………確かに、凄まじい性能だな」

 

 猿が避けて斧刃が地面に突き刺さり、その隙を突いて金棒で殴りかかりに来た雑鬼を左肘打ちで押し飛ばすカイザーを盾の陰から見て、恭弥は圧倒される。

 

「カノンちゃんが言った通りの多彩な武装と高い運動性、それに怪力。加えて、砲鬼や雉のエネルギー弾こそギリギリでかわしてるけど、クロイツリッターや猿の実体弾は何度か直撃してるのに傷がつく気配すら見えない防御力……何より、パイロットがそれらの性能を高い次元で引き出している。端的に言って…………強い」(いや、でも……)

 

 言ったこと、状況整理の結論は、いずれも間違ってはいない。

 高い性能の機体を目の前のパイロットが高い次元で引き出しているのは紛れもない事実であるし、カイザーが攻撃を始めてから敵機の数が目に見えて減り、現時点で残っている敵機はクロイツリッター5、グランツハーケン3、雑鬼3、砲鬼3――計14機という状況だ。さらに残っているそれらの機体も無傷ではなく、ルミエイラ機はいずれも盾を失い、砲鬼の1機は左腕を破損、そして全機例外なく傷や凹みがついている。無論、途中から乱入した犬たちの影響もあるのだろうが、カイザーが積極的に攻撃を行っていたことを考えるとその凄まじさは無視できない。

 カイザーというものを端的に表すなら、「強い」という表現は間違っていない。

 しかし、

 

(何かが、違う……)

 

大きな戦果と比例する様に、流れ弾や着地の衝撃でビルがいくつも崩れ、地面に亀裂が走り、それはこうしている今も尚増え続けている。

 無論、それは市街地で戦う以上多かれ少なかれ出る被害であり、自分たちもさっきまでの戦闘で出しているのだろう。だが、カイザーにはそうした被害の拡大を抑えるという意思は感じられず、ただ目の前の敵を殲滅するという冷たい意思しか伝わってこない。その感じ方が、恭弥自身の出した結論に違和感を生む。

 と、

 

「……!」

 

カイザーの近くに生暖かい感じを覚えるや、瓦礫が散乱した地面に倒れ込んでいる老人が拡大映像に映し出される。

 

『人!?避難は完了したはずじゃ?』

『まだ残ってたの!?』

 

 同じ映像を捉えたのか、アリスとキャノン付き戦機人のパイロットが動揺した声を上げる。

 直後、

 

『!』

「!一夏君!」

 

恭弥が止める間もなく、白が盾の陰から飛び出した。

 

 

 

 

 気がついた時には体が――機体が動いていた。

 背部のスラスター4基を吹かして地面すれすれを這う様に飛んで、一夏は老人の許へ向かう。

 流れてきた銃弾やエネルギー弾、細かな瓦礫などが迫ってくるが、エネルギー弾についてはシールドで無効化し、銃弾や瓦礫などの物質に対しては白の装甲をあてにして受け流す。

 散発的な流れ弾の雨の中老人の許にたどりつくと、三つ巴に背を向ける形で白を停めてバリケード代わりにし、ハッチを開いて白式を纏った体で地面に降り立つ。

 

「大丈夫ですか?」

「ヴァルキリーズの人かえ?脚を挫いてしもうてな……」

「ヴァルキリーズではありませんが……とりあえず俺の機体に運びますね」

 

 返事を聞くと、一夏は老人を抱えてコクピットへ戻る。

 と、

 

「……!」

 

ケーブルを背中に差し込もうとした直前、白式のセンサーが接近するミサイルを捉えた。

 

 

 

 

「不味い!」

『だね!』

 

 座り込んだ白を隙と見たのか、ルミエイラ機のいずれかが放ったミサイルが白に迫るのを見て、シルフィードとアトランティアが上空に躍り出て受け流す。

 

「一夏君、無事か!?」

『はい!助かりました』

「カノンちゃんは?」

『左腕にちょっちヒビ入ったかな。でも問題ないよ』

 

 恭弥の問いに答える間にも、アトランティアの左腕が輝いてヒビが消える。

 

「了解」

 

 それを横目で確認しつつ、ミサイルから本体を庇った腕、そこから自分自身の腕に伝わってくる鈍い痛みを吹き飛ばすつもりで2人に対して大きな声で返すと、恭弥は2機を伴って盾の陰へ戻る。

 盾に隠れるや白は盾持ちの戦機人に近づき、ハッチを開けながら周りの轟音に負けない声で叫ぶ。

 

『この人を避難場所に!盾は俺が持ってます』

『は、はい!』

 

 ハッチから身を乗り出した一夏の気迫に押されてか、盾持ちのパイロットはすぐに応じ、自機のハッチを開けて一夏が抱えていた老人を収容し、白に盾を渡して避難場所へ駆けていく。

 直後、

 

『違う!』

『『「!?」』』

 

盾を持った一夏の叫びに、恭弥をはじめ盾の後ろにいる全員が仰天する。

 しかしそんな周囲は知らぬといった様子で、一夏は険しい表情を浮かべ、三つ巴を続けるカイザーを睨みつけながら続ける。

 

『あんなのは”強さ”じゃない!大きな”力”を誰彼構わず闇雲に振るって……あれは鬼やルミエイラと同じ、ただの暴力だ!』

「!」

 

 「暴力」という一言、そして先ほどの救出劇に恭弥の中で何かが噛み合い、違和感が消えると同時に出撃前の伊豆基地での会話を思い出す。

 

「……”力”の振るい方を考えることこそ”強さ”……か」

『え?何?』

「一夏君のお姉さんの言葉らしいよ」

 

 唐突な呟きに首を傾げるカノンに応じつつ、恭弥は犬たちに大斧を振り下ろし続けるカイザーを見据える。

 

「一夏君。確認するが、乱入してきた犬と猿と雉のロボット、あの3機はモモタロウって奴の仲間なんだな?」

『え?……はい。仲間っていうか、パーツっていうか……』

『パーツ?』

 

 一夏の説明にカノンが一瞬目を輝かせるが、今は無視して恭弥は話を続ける。

 

「確か、シュウさん言ってたよな?モモタロウについては、向こうから何もしない限り無視していいって」

『?……えぇ。言ってましたね』

「そして、僕たち非特隊はあらゆる脅威に対処する為の部隊だよな」

『……そうですね』

『桂木曹長。何が言いたいのです?』

 

 今更なことを一夏に確認し続ける恭弥に、サクラがややイラついた様子で問う。

 

「つまり、僕らがこの場で対処しなきゃいけないのは、人々の暮らしを脅かす鬼とルミエイラ、そして、然るべき立場にないのに機動兵器を運用し、意図してかどうかは知らないが破壊活動を行っているカイザーのパイロットってことだ」

『恭弥さん……!』

「僕もあの人のやり方、どうも納得いかなくてね」

 

 言いたいことを察した一夏に、恭弥は映像越しの微笑みを返す。

 

『あれだけの性能を持った機体に挑もうって?……面白そうじゃん!』

『私としてはカイザーとやり合うのはちょっと気が引けるけど……恭弥と一夏の言うことにも一理あるしね』

『ヴァルキリーズとしても、これ以上街を壊されるのを黙って見ておくわけにもいかないわね。そうでしょう?二人とも』

『『はい!』』

「みんな……」

 

 フィルシア、カノン、アリス、戻ってきた第三分隊隊員たちの通信を聞くと、恭弥はテンペストを見やる。

 

「ルルさんはどうする?」

『……確かに私たちの任務はあらゆる脅威への対処であり、桂木曹長の主張は妥当といえます。しかし、これまでのカイザーの性能を考えると、やや無謀な行動ともいえます。もちろん私たちの機体も高い性能を有していますが、さっきの戦闘でいくらか消耗した現状では……ましてや、鬼やルミエイラも残ってる状況で…………』

 

 問いかける恭弥に、サクラは問題点を指摘しながら表情を曇らせる。

 しかし、

 

『なぁに、ハイスペックな機体が5機もいるんだ。連携すればなんとかいけるだろう。どっちにしろ、どれだけ手強い相手だろうと、あんな奴に尻尾を巻いて逃げるのは性に合わねぇ』

『一夏の性分は知らないけど……確かにね。協力すれば言うほど分の悪い賭けでもないと思うよ』

『貴方たちの機体に比べれば性能は低いかもしれないけど、戦機人でも援護くらいはできるわ。それに、少しは大人に頼ってくれてもいいでしょ?』

『…………みなさん』

 

場を和ませる為か意識して気楽そうに言う一夏とカノン、年長者として頼もしい様子を見せるアリスに、サクラは知らぬ間に下がっていた顔を上げる。

 

『現場指揮官殿、意見はまとまったようですが?』

「……だね。じゃあ早速、作戦会議といこう!カノンちゃん、カイザーについて他に知ってることはある?特に弱点について」

『弱点か…………』

 

 茶化す様にかしこまった調子で言うフィルシアに応じると、恭弥はカノンに問い、弾が盾を叩く音を聞きながらどう攻めるか考える。

 

 

 

 

 同じ頃、ヴァルキリーズ極東支部執務室では。

 

「……鬼達の機体はすべて無人……でも4年前に現れた『ルシファー』、『ライトニング』、『エリアドミナンスド』は明らかに何者かの意思を感じる……何かしら?」

 

 4年前の鬼達の攻撃が始まった頃に現れた3機、それらの機体に明らかな意思を感じた時、リトスの端末にメールが1件入る。

 差出人はG・N。

 

「!」

 

 そのイニシャルにまさかと思いメールを開くと、膨大なデータと共に映像が添付されており、リトスは迷わずそれを開く。

 

『……久しぶりじゃのリトス君……今儂はある少年と共に鬼たちと戦っておる……しかし個人での戦いには限度が出てきた……今から提示する条件を飲んでくれるなら儂らが持つ情報を君に提示しょう……』

 

 映像の中の老人が示す条件、それを迷いなく飲むとのメールを送信し、数分後に返信が来る。

 さまざまなデータ――特に鬼に関する詳細なデータに驚きながら、リトスはは提示された条件を飲んだ。

 

 

 

 

(何でだ……)

『モモちゃんだよね!私、アカネだよ!幼馴染みのアカネ・カワシマだよモモちゃん!!』

(何でアカネが此所にいんだ……)

 

 モモタロウの内部、不思議な空間に浮かびながら、桃矢は必死に考える。

 

『ねえモモちゃん!モモちゃんったら!!』

 

 アカネの声は近くの戦車から聞こえてくる。モモタロウの目を向けると内部が透過され、久しぶりに見る癖っ毛混じりの栗色の髪に赤青黄色のラインが入ったカラフルな髪止めをつけたアカネと、やや無口そうな女の子がじっとこちらを見ている。

 

『……俺はモモちゃんじゃない……モモタロウだ!』

『いい加減にしなさいバカ桃矢、私達にばれないと思った?それにその癖は治ってないみたいね』

 

 片腕がない機体からノゾミの声が響き、「癖」と言われてあわてて手の握りしめを止める。同時に、自分の正体に気付いた理由がようやくわかった。

 焦ったり動揺したりすると手を握りしめする自分の癖を知ってんのは、ノゾミとアカネの2人だけだ。

 

(もうごまかしきれねぇ……)

『グギ……ガアアアアアア!!』

 

 鬼の唸り声を聞いて2人から目を離すと、視線の先で四つん這いになりながらヨロヨロと立ち上がる将鬼2体を確認する。

 

(不味い……)

 

 アイツ等――シロ、ゴクウ、キジットがここに来るまであと数分かかる。それまで自分がノゾミたちを鬼から守らなければいけない。コキコキと指をならして構えをとりながら、彼女たちがいる周囲に防御障壁『レガシィフィールド』を展開させる。

 『レガシィフィールド』はタロウの時にしか使えない広域防御技であり、あらゆる攻撃、例えば将鬼数体の物理攻撃なら楽に防げる反面、光学兵器にはあまり耐性がない。

 将鬼2機の内、1機は荷電粒子砲内蔵型。もう1機はやたらと装甲がついた重装甲型――もっとも装甲がドロドロに溶けているにも関わらず動いている。

 

『2対1か……けどな、男にはな、負けらんねえ時があんだよ!!』(少しきついな……)

 

 叫ぶや、まずは荷電粒子砲内蔵型の将鬼を叩くことを決め、地面を蹴って殴りかかる。

 

『オラオラオラオラオラオラオラ!!』

 

 素早く翻弄し、ハイ、ロー、ミドルの順に蹴りを叩き込んで怯ませ、軽い跳躍と同時に体を捻り、頭へと体重を乗せた蹴りを叩き込んで後退させる。

 

「す、すごい……あの将鬼を圧倒している……」

「なんなのよあのロボットは!常識はずれにも程があるわよ!!」

 

 機能停止した戦機人のコクピットから降りてタロウの戦いぶりを見て驚くアキラとサヨコとは裏腹に、グレンのコクピットから様子を見るミオは違和感を感じていた。

 

(……あの白いロボットはまるで……防御を、自分の身を守ることを考えていない……)

 

 ミオが感じていることをノゾミとアカネも感じていたその時、今まで動かなかった重装甲型がタロウの背後から羽交い締めにする。

 

『し、しまった!』

『ガアアアアアア!!』

 

 もがくタロウを他所に重装甲型は全身の装甲を開いて筒上の金属の棒を突出させ、バチバチと電気を放電させる音がなった次の瞬間、激しい光と共に何十億ボルトの電撃がタロウの体に流れた。

 

『グッ!グアアアアアアアアアアア!?』

 

 タロウはもちろん、内部で操神(そうしん)している桃矢にも激しい電撃が襲う。

 常人なら即死しているところだが、纏っているプロテクター『操神鎧衣(アームドギア)』のお陰で耐えていた。

 

「く、くそ、焼き殺す気かよ……グウウアアア!!」

 

 タロウの内部に浮かぶ桃矢にも電光が走り、瞳から光が消えようとした時、激しい光がタロウを掴む将鬼を襲う。

 

『がアアア!?』

『う、う、うおりゃあああ!!』

 

 わずかに掴む力が緩み、その隙を逃さず腕を掴んで一本背負いと同時に近くにいた将鬼目掛け投げつける。

 光が来た方を見ると、グレンを抱え、さまざまなケーブルで繋いで固定砲台と化した戦機人改の姿が。

 

『間一髪、間に合ったわ』

『今のでエネルギーバイパスが完全に途絶、予備回線を使えばが辛うじて1発だけ可能です……』

『バ、バカ野郎!なんで攻撃しやがった、こんな鬼なんか俺一人で――』

『……いい加減にしてよモモちゃん!!』

 

 グレンのコクピットからヘルメットを脱ぎ捨てて出てきたアカネが、普段なら想像もできないくらいに大声で叫ぶ姿に、タロウは思わずビクッと体を震わせる。

 

『私達の機体じゃ鬼には勝てない、でも2体が相手じゃモモタロウ……桃矢、貴方でも不利よね……』

『何が言いたい……』

『あの3体のロボがいない……つまり本来の力が出ない……モモタロウになれないって事。あの3体は今手が離せない事をしている。そうでしょ?』

『!…………ああ』

『つまりはあたしらがその3体が到着するまで援護してやるってんだ』

『まだアタシはアンタを信用した訳じゃないけど、鬼を倒せるなら協力してやるわ』

 

 いつの間にか再起動を終えた戦機人二番機、三番機がガトリングガンを構え、タロウの左右を守るように立っているのを見て、桃矢は口を開いた。

 

『…………3分だ、あと3分したらシロ、キジット、ゴクウが来る』

『わかったわ、ヴァルキリーズ第四分隊はこれよりタロウと共同戦線を取ります……桃矢、これが終わったらでいいんだけど私達の司令とあってくれるかしら?嫌なら……』

『…………いいぜと言いたいが、じいさんと話してから決めさせてもらう……いくぞノゾミ!』

 

 背後の戦機人二番機と三番機が放つガトリングガンの援護を追い風に、タロウは地面を蹴って滑る様に将鬼2体へ駆け出す。

 

 

 

 

「モモちゃん……後でたっぷりお話しょうね……ミオちゃんどうかな?」

「砲身のブレがヒドイ……隊長、上方右へ4度修正お願いします……」

 

 駆けていくタロウの背中を見つつ、アカネはミオが戦機人改に指示を出す横でグレンのビーム砲のチャージを始めた。

 

 

 

 

 うろ覚えながらもカノンが教えてくれたカイザーの情報に基づいて即興の作戦を立てると、それに従って恭弥はキャノン方式バックパックを背負った戦機人を抱え持ち、傍らの白もギガンテックを抱える。盾装備の戦機人を中心に、アトランティアが上、アリス機が左、テンペストが右につくと、配置が完了する。

 

『準備完了!いつでもいけるよ!』

「よし……作戦開始!」

『『『『了解!』』』』

 

 カノンに応じる様に響いた恭弥の号令に、アトランティアら4機は各々推進器を全開にしてカイザー目掛けて盾を押し出し、その後ろを戦機人を抱えたシルフィードとギガンテックを抱えた白が続く。

 それまで離れた所に退避していた勢力の乱入に、カイザーに注力していた鬼やルミエイラの一部が攻撃を加え、とりあえずといった具合に避けて道を空ける。

 クロイツリッターの銃弾が盾を叩き、砲鬼やグランツハーケンのビームが掠って所々を溶かすが、一行は速度を落とすことなく盾ごとカイザーに突進する。

 

『今度ぁなんだァ!?』

 

 新たに乱入者に怒声を放つや、カイザーは両手で持った大斧を盾に振り下ろす。

 その時、

 

『「!」』

 

戦機人とギガンテックを放したシルフィードと白が盾の陰から飛び出し、それぞれの剣で大斧の刃を受け止める。

 

『クッ!』

「なんのぉ……!」

 

 予想通りの腕力に機体が押されそうになるが、それぞれスラスターを吹かして無理やり滞空を続け、両腕に力を込めて大斧を押し返そうとする。

 戦場のど真ん中に突っ込んだ都合上、四方から鬼やルミエイラの攻撃が飛んでくるが、キャノン付き戦機人が凍結弾を撃って鬼の動きを止め、その隙にギガンテックがビームを撃ち込んで撃破、あるいはテンペストとアリス機が対空砲火を展開してクロイツリッターやグランツハーケンを牽制、あわよくば撃墜する。状況を察してか、犬たちもカイザーをシルフィードと白に任せてテンペストらに加勢してくれる。

 そんな光景を周囲に感じつつ、実際に重量物を押している様な感覚を自身の両腕、否、体全体に覚えながら、恭弥は苦痛を吹き飛ばす勢いで拡声器越しに叫ぶ。

 

「こちらは地球連邦軍非常事態特殊対策部隊です!無許可による私設武装を用いての戦闘行為は違法です!すぐに武装解除して安全圏に退避してください!後で事情を聴きます!」

 

 カイザーの腕力に負けないように一語一句を腹の底から述べつつ、モニター越しにその双眼を見据える。

 しかし、

 

『訳のわかんねぇこと言ってんじゃねェェェ!』

 

それ以上の怒声の返すや、カイザーはさらに力をかけて大斧を押しつけてくる。

 

『結局こうなりますか……』

「突然知らない所に放り込まれていろいろ言われれば、確かにね。予想もしてたが……でも、勧告はしたからね!」

 

 一夏と個人回線での会話を交わすと、恭弥は再び拡声器越しに叫ぶ。

 

「了解しました!実力を以て対処させていただく!一夏君!」

『はい!』

 

 応じるや、シルフィードと白はそれまで地面に向けていた推進方向を真後ろに向け、2機同時に背中に爆炎を灯す。

 

『「オォォォォォォ!!」』

『何だと!?』

 

 高速戦闘型2機の全力推進は大斧を押しやるだけに留まらず、その重厚な巨体を後ろへと押していく。

 カイザーは両足を地面に擦りつけてどうにか止まろうとするもののとても抵抗力が足りず、推進器の類を備えていない機体では噴射で勢いを相殺することもできず、ついにバランスを崩して倒れてしまう。

 直後、

 

『パイルダーもらったぁ!』

 

押しやりが始まってからずっと2機の後ろで待機していたアトランティアが上空に躍り出て、両手で刃が横になるように持った剣をカイザー頭部の髑髏のオフジェ、その接合部分へ向けて落ちる様に突き入れる。

 しかし、

 

『カノちん!そっち行った!』

 

フィルシアの声が響くと同時に、高い速度を出した為に急停止や方向転換が容易でないアトランティアの進路上に空と地上から光弾が放たれる。

 

『え?嘘!?』

『させるか!』

 

 直前に割り込んだ白のシールドによってアトランティアへの被弾は防がれるものの、カノンが動揺して狙いがずれた剣はカイザー頭部の左脇の地面に突き刺さる。

 

『……剣持ち共が……よくもッ!』

「退避!退避ぃ!」

『言われなくても!』

 

 先ほど以上の怒りを孕んだ叫びを上げるカイザーに、恭弥は悲鳴に近い声で指示を飛ばし、カノンはすぐに剣を引き抜いて慌てて後退する。

 

『ガアアアアアア!』

 

 直後に地上からアトランティアを攻撃した砲鬼が胸部荷電粒子砲を放ち、カイザーは大斧を手放した巨体を転がしてそれを避けると、跳ねる様に起き上がって左拳を突き出す。

 

『テメェもうっせぇんだよッ!』

 

 叫ぶや左肘の周りに設けられた噴射口に光が灯り、ドリルの様な鋭利な刃が付いた前腕部装甲を回転させながら膝から先が飛んでいく。

 巨大質量弾となった左拳は砲鬼の胸部収束レンズを粉砕し、推進器の出力にものをいわせて突き進みながら回転を続ける前腕部装甲刃で自らが開けた傷口をさらに削っていく。

 

『ガッ!!ガ、ベ…………』

 

 体の中を削り出された故だろうか、拳が背中を突き破って飛び出すや、砲鬼は弱々しい声を上げて爆散する。

 

『ロケットパンチ!?』

「流石はザ・スーパーロボットってことか?」

『知らないけど……『突撃!パイルダーぶん盗り作戦』失敗か……』

 

 一連の光景に一夏と恭弥が目を丸くする横で、カノンが自らが中心になって立案した作戦――カイザーのコクピットは頭部の髑髏にあるという曖昧な記憶を頼りに、接近してそこを取り外して無力化するというもの――が失敗したことに落胆する。

 その間にもカイザーの許に戻ってきた左拳は腕に再接続され、カイザーの双眼が滞空しているシルフィードたちを睨みつける。

 

『テメェらも喰らいやがれェ!!』

 

 怒鳴るやカイザーは右拳を空に飛ばし、砲弾と化した腕は3機の許へ突進してくる。

 

「散開!」

 

 恭弥が叫ぶと同時に3機は散り散りになってそれをかわし、外れた右拳は3機の後ろに迫っていたグランツハーケン――先ほど上空からアトランティアを攻撃した機体――の胴部を木端微塵にして本体へと帰っていく。

 しかしその途中、カイザー本体と右拳の間にクロイツリッターが割って入り、本体目掛けて真っ直ぐに向かってくる右拳、その唯一堅牢な装甲で覆われていない噴射口と接続部分へ向けてマシンガンを放つ。

 

『なッ!』

 

 事態に気づいたカイザーが声を上げるがすでに遅く、噴射口をいくつか潰された右拳は被弾箇所から煙を上げ、本体に届くことなく墜落する。

 

 

 

 

 推力を失って地面へと落ちていくカイザーの右腕を見て、ナガイは柄にもなく焦りを覚える。

 

(不味い!片腕が――武器が無くなっちまった!ブレストマホークは……あそこか……いや)

 

 先ほど放置した大斧――ブレストマホークの位置を確認して回収の為に左腕を飛ばそうとするが、直後に操縦桿に掛けた指を離す。

 

(飛ばしてる間に左まで墜とされたらいよいよ万事休すか……ここは歩いて取りにいくか)

 

 現時点でカイザーに残された武装は左腕のみ。それを失えば直接殴りかかることも、飛ばすことも、他の武装を使用することもできなくなる。

 慎重な判断を下すや、ナガイはブレストマホークの許へカイザーを駆けさせる。

 しかし5歩と進まない内に、腹にビーム砲を積んだ鬼が2機とビーム銃を持った鎧が1機ビームを放ち、3機のマシンガン持ちの鎧の銃撃が襲う。

 

「クソッ!」

 

 悪態をつきながら後ろに跳ねてそれらを避けるものの、6機の残存兵器たちは執拗にカイザーへの攻撃を続け、ナガイはブレストマホークを取りに行くどころか避けるだけで精一杯になる。

 

「チキショー!両手使えりゃこんなザコ共!」

 

 本格的に追い詰められた焦りと苛立ちに思わず叫ぶ。

 その時、

 

「!しまっ――!」

 

カイザーが瓦礫を踏んでバランスを崩し、転倒こそ免れたものの、足を止めた一瞬を狙ってビーム銃鎧のビームが頭部のコクピット――スカルパイルダーへ吸い込まれる様に向かってくる。

 

(ここまでか!)

 

 数瞬後には灼熱の光に飲み込まれて焼かれる自分を想像し、ナガイは両目を一杯に見開く。

 が、

 

「…………あ?」

 

直後に白い影が躍り出て、カイザーに背を向けて滞空する4枚羽の機体を見た。

 

 

 

 

 カイザーの前に割り込んだ白が雪羅のシールドでビームを防ぐや、恭弥はカイザーを撃ったグランツハーケンに接近し、右脇からルミナを突き刺して沈黙させる。

 

「間一髪か……カイザーの人、大丈夫ですか?」

 

 危うかった状況に安堵の息を漏らすと、拡声器越しにカイザーに呼びかける。

 

『……テメェらどういうつもりだ?何で俺を助けた?俺はテメェらを攻撃した、いわば敵だぞ?』

 

 若干の困惑を含んだカイザーの問いに、接近してきた白と背中を合わせた恭弥は周囲を警戒しつつ応じる。

 

「僕たちの目的は貴方を撃破することではなく、貴方の破壊行為を止めることです。機体を無力化する為の攻撃は加えますが、パイロットの命が危険にさらされれば助けます。できれば、このまま大人しく僕たちについてきて欲しいのですが……」

 

 半ば祈る様に言う間にも、テンペストの放ったホーミングビームがクロイツリッター3機を火球に変え、ギガンテックの脚部ビーム砲4門と頭部ビーム砲3門の集中砲火が最後に残った2機の砲鬼を爆散させる。

 敵機の全滅を見届けるや、犬、猿、雉の3機はすぐに移動を始め、カイザーの右腕を抱えて持ってきたアリス機が頭部カメラでそれを追う。

 

『あっちは確か……第四分隊の方向だわ』

『てことは、モモタロウもいるんですかね?』

『念の為私たちも行ってみますか?』

「……そうだな。ここが片づいたなら合流した方がいい」

 

 一夏とサクラに応じると、恭弥は再度カイザーを見やる。

 

「それで、カイザーさんはどうしますか?僕たちとしては一緒に来て欲しいんですが」

『着いていってどうしろってんだよ?さっきも言った通り、状況から言って俺はテメェらの敵だぞ?ハイわかりましたって行ってみすみすやられんのはゴメンだ』

『別に、そっちが大人しくしてればこっちも何もしないよ』

 

 警戒心剥き出しで応じるカイザーに、フィルシアが敢えて軽い調子で返す。

 

『それに、そっちも異世界から来たんでしょ?知らない世界に独りでいたらあっという間に路頭に迷うよ』

『!?何でそれを…………その言い草、まさかテメェも?』

 

 同じ境遇の人間がいることに驚いたのか、カイザーはアトランティアをまじまじと見つめる。

 

『そう。といっても、私もこの世界に迷い込んだのはついさっきなんだけどね。今はこの人たちに保護してもらってるんだよ。そっちも大人しくして頼めば、いろいろ親切にしてくれると思うよ。少なくともこの世界の情報は教えてくれる』

『だが、俺はコイツらと敵対したんだぞ?そんな奴に……』

「それについては行き違いがあったということでなんとか言い訳できます。幸い、今回は死者が出てませんし」

 

 さらに続けるカノンにナガイは尚も食い下がるが、恭弥はあくまでも擁護の態度を示す。

 

『どの道、機体もそれなりに傷んだし、一人でいたら遅かれ早かれ野垂れ死にますよ』

『…………わかった。テメェらに着いていく』

 

 一夏の言葉にアリス機が抱える右腕に視線を向け、しばし思案すると、カイザーは渋々といった様子で応じる。

 

『ただし、とりあえず着いていくだけだ。おかしなマネしたらその場で全員ブチノメスからな!』

 

 威嚇する様に言いながら、カイザーはアリス機に右腕をはめてもらい、戦機人2機が運んできた大斧を取って長く伸びた柄を収容し、胸に懸架する。

 

「了解です。それじゃあ、手始めに第四分隊と合流しましょう」

『『『了解』』』

 

 恭弥の指示にカイザー以外の全員が応じると、一行は犬たちを追って移動する。

 

「……そういえば、まだ名前聞いてませんでしたね」

『そういえば。俺は織斑一夏です』

『高槻カノンだよ』

『……サクラ・ルル』

『フィルシア・ナイトウォーカー、よろしくね』

「僕は桂木恭弥です。貴方は?」

『…………ナガイだ。ナガイ・ゴウト』

 

 移動しながらの非特隊隊員たちの自己紹介に、カイザーのパイロット――ナガイ・ゴウトは仕方ないといった具合に返す。

 そして、

 

『にしてもさー、一夏さっきはあんなに怒ってたのに、率先して自己紹介とかしちゃうわけ?』

『いや、それはそれ、これはこれっていうか……一応自分から名乗るのが礼儀かと思って』

『真面目だねぇ~。織斑曹長は』

『…………このお人好し共が』

 

カノン、一夏、フィルシアの雑談に、小さく悪態を漏らした。

 

 

 

 

『ウオオオオ!!』

『ガアアアアアア』

 

 大きく振りかぶった拳を将鬼の顔面にめり込ませ、反動を利用して空いた脚で蹴りを放ちながらタロウは降り立つ。

 将鬼2体は反撃しょうとするも、遠距離からのガトリングガンの弾幕で近づけない。堅牢な装甲を誇る将鬼も、対鬼用に開発された特殊弾頭の豪雨には迂闊に動けないようだ。

 その時、

 

『キキッ!』

『アオオオン!!』

 

弾幕の雨をかい潜った赤と白の影が将鬼2体に襲いかかるや否や、噛みつき、引っ掻き、ダメージを与える。

 

『な、なんなのよあれ!』

『犬とおサルさんだよな?』

 

 いきなり現れたメカニカルな犬と猿に、サヨコとアキラは驚いて手が止まってしまう。

 と同時に、空から光の雨が将鬼目掛けて襲いかかる。

 

『ピィィィ!』

『あれって鳥だよねミオちゃん?』

『鳥って言うか雉…………だからモモタロウなんだ…………』

 

 上空がら翼を広げてレーザーの雨を降らせる雉を見て問うアカネに、ミオはどこか納得した様子で応じる。

 直後、空が歪んで黒い穴が空き、そこから5機のグランツハーケンに率いられる様に20機のクロイツリッターが出てくる。

 

『ルミエイラの増援!?不味いわ!』

 

 ノゾミが言う間にも犬、猿、雉を銃撃が襲い、3機は将鬼への攻撃を中断して慌てて回避する。

 

『クソッ!これじゃ合体できねぇ!』

 

 五方向から放たれるビームを紙一重で回避しながら、桃矢はタロウの目を介して悔しそうグランツハーケンたちを睨みつける。

 と、

 

『!?』

 

ビーム銃を向けたグランツハーケンが横から巨大な弾丸に貫かれ、桃矢は弾が来た方を見ると、黒い特機が2丁拳銃を構えている。

 

 

 

 

 弾の補充が終わっているのを確認すると、ナガイはブレストリガー2丁を持ち、たまたま目についた白い奴を狙っているグランツハーケンを右の1発で撃ち落とす。

 

『へー。思ったより射撃能力も高いんだね。この距離でワンショットなんて』

「……」

 

 素直に感心しているフィルシアには応えず、ナガイはシルフィードを見やる。

 

「さっきの礼だ。この場は協力してやる。この場はな」

『ありがたいです……全機!第四分隊を援護。ルミエイラの増援を迎撃する!』

『『『了解!』』』

 

 指示と共にシルフィードが突貫し、テンペストとギガンテック、戦機人たちの援護射撃を受けながら白とアトランティアがそれに続く。

 その横でナガイは、

 

「!…………ありゃ……」

 

先ほど時空崩壊の穴から落ちてきた巨大な刀を見つけ、思わず驚きの声を上げる。

 

 

 

 

 僚機の銃撃を追い風にした3機が切り込みをかけ、ルミエイラ機をタロウたちから離していく。

 

『今よ桃矢!』

『オッシャアアアアアア!いくぞ皆!!』

 

 それを見たノゾミの呼びかけに桃矢はタロウを通して叫び、3機のレガシィマシン――シロ、キジット、ゴクウは頷いて空高く飛び上がる。

 

『いくぞ、レガシィフォーメーション!!』

 

 力強く叫ぶタロウの体から光が溢れ出すと同時に、無数の古代文字が辺りを舞い、それらがレガシィマシンへ吸い込まれて変化が起こる。

 シロは右腕へ、ゴクウは左腕へと形を変え、変形を終えたタロウの肩へ火花を散らしながら接続、同時に拳があらわれて強き握りしめられ、脚部も力強く頑丈さを増した装甲へ変わる。背後から陣羽織状の装甲に変形したキジットが上体に覆い被され、桃を模ったヘッドギア、マスクが装着される。アンテナが真ん中から大きく開き、目か赤く輝いた。

 

『手前ェ等鬼共の野望を打ち砕く、天下無敵のモモタロウ!ここに見・参!!』

 

 合体を終えたタロウ――否、モモタロウが腕を大きく交差すると同時に名乗り上げると、辺りに暖かな光が降り注ぐ。

 

『『『『………………カ、かっこいい』』』』

 

 その眩いばかりの光景に、ヴァルキリーズ第四分隊の全員が思わず呟いた。

 

 

 

 

 ルミエイラの軍団に突っ込んだカノンは、狙いをつけたクロイツリッターに斬りかかる。

 直前に相手はマシンガンから剣に持ち替え、アトランティアと鍔迫り合いになる。

 

「う~ん……さすがにちょっときついか……?」

 

 大部隊、そして短い間とはいえ特機との戦闘を経た後、心身共に多少の疲れを溜め込み、それが動作のキレに現れていることに、カノンは内心焦る。

 と、

 

「……?」

 

視界の端に眩い光を捉え、顔を向けると、飛び上がったタロウら4機がなにやら光る文字の様なもので繋がっている。

 

「!こ、これは!」

 

 目の前の光景、そして先ほど一夏が漏らした「パーツ」という単語が頭の中で噛み合い、クロイツリッターの腰に蹴りを入れて距離を離すや、カノンは顔一杯に興奮を浮かべてタロウたちの許に接近する。

 

「これは……これは!……これはぁ!!」

 

 見開いた目をらんらんと輝かせる間にも、4機はそれぞれ形を変え、1機の巨大な人型を形作る。

 

『手前ェ等鬼共の野望を打ち砕く、天下無敵のモモタロウ!ここに見・参!!』

「合体ロボットキタァァァァァァーーー!!!」

 

 名乗りを上げるモモタロウに、カノンは満面の笑みで声帯が潰れるのではないかというほど絶叫し、アトランティアの両腕を上げてガッツポーズをとらせる。

 当然その隙を突いて先ほど蹴られたクロイツリッターが剣を突き立てて突撃してくるのだが、

 

「オッシャァァァ!!」

 

後ろに目があるのかというほどの正確さで振り返りざまの回し蹴りを食らわされ、そのまま体勢を立て直す間もなくギガンテックのガトリングガンの豪雨に飲み込まれて蜂の巣になる。

 

「なんかやる気出てきたぁ!あと10年――は流石に無理だけど……10時間くらいなら戦えるぜっ!」

『カノちん……ほんとにあぁいうの好きなんだね…………』

 

 叫ぶ間にもクロイツリッターを頭から一刀両断するカノンに、フィルシアが珍しく狼狽えた。

 

 

 

 

『ノゾミ、離れてろ!ウオオオオ!ブロォォクウゥン・ファングウウウウ!!』

 

 合体を完了したモモタロウはゆっくりと地面へ降り立ち、犬型の装甲を拳に装着して構える。

 殴り抜くモーションと同時に白銀色のエネルギーを纏った竜巻が発生し、将鬼2体に襲いかかる。

 

『『ガアアアアアア!?』』

 

 凄まじいエネルギーを纏った竜巻にその装甲を切り裂かれながらダメージを受けるも、2体はすぐさま獣化して耐えきる。

 

『こいつら、獣化して耐えきりやがったか……ならこいつはどうだアアア!!モンキィィィ・ラアアアッシュ!!』

 

 推進翼を展開して最大出力で加速、同時に猿型装甲を左拳に装着し、踏み込みと同時に無数の拳を2体の将鬼へ撃ち込む。

 

『『ガ、ギグガアアアアアア!?』』

 

 目にも止まらない無数の拳打に装甲は砕け、オイルや破片が辺りに散らばり、やがて力なく膝をつく将鬼2体。

 それを見て、モモタロウは天に向け手をかざす。

 

「こ、これって!?」

「どうしたのアカネ?なんなのコレは!?」

 

 無言で転送されたデータと数値に声を上げて驚くミオ。

 今モモタロウが天に向け手をかざした周辺に未知のエネルギーが集まり始めている事を示すデータが表示され、モニターでは光が集まって現れた巨大な剣をモモタロウが握って構えている。

 それは前回の戦闘でも確認された武装なのだが、その時は機器が無かった為にエネルギーの集合や剣が出現する過程を観測できなかったのである。

 自身の体躯に匹敵する半透明で幅が広い刀身に古代文字が刻まれた剣『オニキリ』を構えると、刃が赤く輝き辺りを照らす。

 

『ウオオオオ!悪・鬼・滅・殺・オーガ・スラッシュ!!』

 

 金属音が響くと同時に、推進翼が大きく翼を広げる。最大出力で加速と同時に将鬼2体を横凪ぎ一閃してすり抜けた次の瞬間、鬼達の体が上下泣き別れなり大爆発を起こした。

 

『……鬼退治完……!なに!?』

『ガアアアアアア!』

 

 

 締めの口上を述べた直後、爆煙の中から二対の翼を生やした将鬼が現れる。

 それを見て桃矢は、2年前に戦った同じ型の将鬼を思いだした。

 

(あのタイプの将鬼は……不味い!)『ノゾミ、アカネ、他の連中も、早くにげろ!!』

『え?どういう意味よ!?』

『ガアアアアアア!』

 

 ノゾミが動揺する間にも、将鬼は大きく広げた翼の先から無数の羽を飛ばし、それらはノゾミ達がいる場所へと降り注ぐ。

 

『くそ!間に合えええええ』

 

 推進翼を展開して今まで以上の出力で駆けたモモタロウは、当たる直前でグレンと戦機人改の前に立ちはだかり、迫る羽全てをその身に受け止めた。

 

『グ、グウウウ!!』

 

 将鬼の攻撃に合わせる様にクロイツリッターの一部もマシンガンやミサイルを放ち、周囲一帯を黒煙が包む。

 凄まじい爆発の衝撃に耐えるモモタロウ。しかし内部にいる桃矢にダメージは容赦なく襲いかかり、やがて攻撃が止むと崩れるように片膝をつく。

 

『ハア、ハア、空を飛ぶやつとは相性悪いな…………』

『あ、アンタ、何でアタシ達を庇ったのよ…………』

『……理由なんかねえよ……ただ――!』

 

 続く言葉を遮る様に剣を抜いたクロイツリッター7機が迫り、先頭を行く1機が掲げた刃をモモタロウの頭頂目掛けて振り下ろす。

 が、

 

『!?』

 

その機体は投擲された巨大な刀に胴部を貫かれて地面に串刺しになる。

 唖然とする桃矢が後ろを振り返ると、髑髏を模った黒い特機が両手に持った拳銃をクロイツリッターたちに撃ちながら駆け寄ってくる。

 

『たく。ギャーギャー口上垂れてたくせにだらしねぇなぁ』

 

 言いながら、黒い特機はモモタロウの前に立ち、2丁拳銃を乱射しつつクロイツリッターたちを遠ざける。その間にも、巨大な弾丸に撃ち抜かれた1機が爆散する。

 

『何だと?テメェ何者だ!?』

『異世界からの迷い人、とでも言っておこうか。そんな立派なロボに乗って、いかにもな台詞叫びまくって、その結果がザコにやられるってか?チャンチャラ可笑しいぜ』

『言わせておけばぁ……!』

 

 腕を回して銃撃を続けながらも容赦なく罵声を浴びせてくる特機に、桃矢は先ほどの痛みも忘れるほどの怒りを覚える。

 

『だったら突然現れたテメェは何だ!何で俺を助けた?何で鬼や鎧共を攻撃する!?』

『…………鬼に会うては鬼を斬り』

『?』

 

 突然の口上に桃矢が呆気にとられる間に、特機は右の拳銃を胸に懸架して駆け出し、すれ違いざまにクロイツリッターを串刺しにしている特機の全長に迫ろうという大刀を抜いて跳ね、上空の将鬼に斬りかかる。

 

『ガッ!』

 

 将鬼はさらに高度を上げてそれをかわすが、間に合わず左脚の膝から下を斬り落とされる。

 落下に入った特機を狙ってクロイツリッターたちがマシンガンを向けるが、

 

『鎧に会うては鎧を撃つ』

 

特機は左手の拳銃を振り回し、周囲を滞空していたクロイツリッター6機を全て撃ち墜とす。

 着地した特機は刀を右肩に担ぐとモモタロウに視線を向け、

 

俺とカイザー(俺達)に大義名分など無いのさッ!…………と言いてぇところだが……今回に限っては上のお人好し共に借りを返す為だ。テメェも連中の仲間っぽかったからとりあえず庇っただけで、助けたわけじゃねぇ。生憎俺はヒーローとか正義の味方なんて柄じゃねぇからな。次は無ぇぞ』

 

断じるや、刀を背負って拳銃に持ち替え、駆け出しながら非特隊が混戦している空域に向かって銃撃を行う。

 

『……なんだよあの髑髏野郎!……いや、今はいい……あの鳥鬼をどうすっかだ……』(あん時と同じタイプだとしたらアレを使うはずだ……あんなもん撃たれたら街が……いや必ず守り抜いてやる!……それに)

 

 遠くなっていく特機の背中にありったけの鋭い視線を送りつつも、将鬼を優先すべきという理性的な判断に桃矢はなんとか怒りを鎮め、対策を思案する。

 以前あの飛行型将鬼と戦った際は『キジットブラスター』でなんとか倒せたが、必殺技『オーガ・スラッシュ』を使った今『キジットブラスター』は撃つ余力もない。

 しかし、ふらふらと立ち上がるモモタロウの瞳から闘志は消えていなかった。

 

(言われっぱなしじゃ悔しいだろうが!)

 

 特機への対抗心を糧に立ち上がりきると、モモタロウはシルフィードたちの攻撃をかわしつつ反撃を行う将鬼を見据える。

 と、

 

『…………アカネ、エネルギーチャージ完了してる?』

『え?あ……うん終わってるよ』

『……モモタロウ……さん?……グレンを使って』

『え?』

 

 いきなりの提案に驚くモモタロウに、発案者のミオは淡々と告げていく。

 

『……モモタロウさんぐらいの大きさならグレンを構えて撃つ事が出来る……アカネ……説明お願い』

『う、うん……今あの将鬼の内部にエネルギーが溜まっている……このままだと最大の砲撃が間違いなく来る……』

『……桃矢、貴方にグレンの引き金を任せるわ……』

『隊長が言うんなら仕方ないな~』

『……ま、まだあんたを信じた訳じゃないけど……あんたに任せる……しくじんじゃないわよ!!』

 

 自分に向けられる信頼が込められた言葉に、桃矢は意を決し、グレンを手に持ち構えた。

 

『……自慢じゃないけどさ……俺……』

『大丈夫、私が射撃予測補正を……』

『エネルギー調整や誤差修正は私がやるから……モモちゃんは引き金を引くだけでいいから』

 

 ミオとアカネの返答を聞くと、桃矢は将鬼を見据える目に一層力を込める。

 

『アキラとサヨコは上空の非特隊を援護!ルミエイラの邪魔を許さないで』

『『了解!』』

 

 続くノゾミの指示に、2機の戦機人は上に向けてガトリングガンを放ち、乱戦を続けるシルフィードたちを援護する。

 

 

 

 

 四方から銃弾やビームが飛んでくる中、恭弥はシルフィードを縦横に動かしつつ、照準に捉えた飛行型将鬼にルミナのビームを放つ。

 が、将鬼は寸前にそれをかわし、直後に放たれた大量の羽をルミナで迎撃しながら距離をとる。

 

「チクショウ!はやり将鬼ってか?手強いな……」

 

 シルフィードを介して感じる将鬼の中の怪しい気配。直感的に優先して潰さなければならないと断じ、ルミエイラ機の攻撃を掻い潜って仕掛けるものの、いっこうに損傷を与えられない現状に焦りが積もる。

 同じ感覚を得たのだろう、白とアトランティアもそれぞれ荷電粒子砲と剣で将鬼を攻めるものの、羽か太い手足の反撃を受け、付いては離れを繰り返している。

 

「えぇい!」

 

 加えてルミエイラ機の対処もしなければならず、苛立ち紛れに撃ったルミナのビームがアトランティアに取りついていたクロイツリッターを撃ち墜とす。

 地上からもテンペストとギガンテック、カイザー、各戦機人の支援射撃が加わるものの、敵・味方が高速で入り乱れての乱戦であること、さらには――主にカイザーを警戒しているのだろう――高高度での戦闘とあって決定打になるような攻撃が届きにくく、あまり効果は出ていない。

 

(……何でかは知らないが、さっきからカノンちゃんが元気なのがせめても救いか?)

 

 モモタロウが合体してから何故か疲れが吹き飛んだ様に軽快に動くアトランティア、その姿に気休め程度とはいえ安心を覚えるが、その間にも将鬼の中の気配は増大を続け、ついに胸部装甲を開いて煌々と輝く収束レンズを露出する。

 

「不味い!」

『ビーム攻撃!?なら俺が!』

 

 地上に――モモタロウたちに向けて発射体勢をとる将鬼に狙いを察するや、白が射線上に立ちはだかろうとする。

 しかし、

 

『非特隊全機!大至急将鬼から――その周囲一帯から離脱して!』

「?……全機離脱!なるべく距離をとれ!」

『『『了解!』』』

 

直前に通信機を駆けたノゾミの指示に、恭弥はグレンを抱えるモモタロウを見てその意図を察し、妨害するルミエイラ機を半ば無視して将鬼から高速で離れる。

 

 

 

 

 上空に胸部装甲を展開して発射体勢に入った将鬼を見据え、グレンを構える手に力がこもる。

 

『ガアアアアアア!』

 

 先制をとったのは将鬼。その凄まじい光がモモタロウがいる地上目掛けて撃ち放たれる。

 

『モモちゃん、今だよ!』

『ああ!』

 

 アカネの合図に、桃矢はグレンの引き金を引く。

 しかし、何も起きないどころかビームすら出ない。

 

『そんな!予備回路が断線してる』

『……アカネ、他の回路は?』

『ダメ、全部繋がらないよ!』

 

 ミオとアカネのやり取りに、外にいるサヨコ、アキラ、ノゾミにも諦めが漂う。

 

(くそ、また守れないのかよ!頼むモモタロウ……)

 

 凶暴な光が徐々に迫る中、桃矢は力一杯叫んだ。

 

『俺に力を貸せええええ!!』

 

 その時、桃矢の声に答えるかのようにモモタロウの各部装甲からさまざまな古代文字が浮かび上がり、グレンへと吸い込まれて光を放つ。

 その光の中でグレンの砲身部分が長く巨大化し、中心から二つに割れて基部部分に巨大なレンズ状の物体が着く。同時にグリップが現れてモモタロウの手に再び握られ、内部にいるアカネとミオは不思議な空間に浮かびながらその様を見ていた。

 

『な、なんなのこれ?』

『でも、なんか暖かい……まるでお日様みたい……』

 

 モモタロウの瞳が赤く輝き、砲身に凄まじい光が集まって放電現象が起こり始める。

 砲身から漏れる輝きが限界まで達した時、

 

『ウオオオオ!グレン・バスターキャノン!!』

 

引き金を絞り撃ち放った瞬間、モモタロウの巨体が反動で大きく後ずさりして地面が抉れる。

 砲身から放たれた桃色の閃光はモモタロウ達に迫っていた光を掻き消し、その先に滞空する将鬼を包み込んだ。

 

『ガ、ガアアアアアアアア―――――――――――!?』

 

 凄まじいまでの閃光に呑み込まれた将鬼は、堅牢だった装甲を灼熱の光に蝕まれ、炭化した体を1秒と保てずに消滅した。

 それでも勢いを失わない光は大気圏すら突破し、その様子はヴァルキリーズ極東支部をはじめ、周囲の連邦軍基地でも観測されるほどだった。

 

 

 

 

 グレン発射の少し前。

 ルミエイラ機の妨害に思ったより距離を稼げなかった恭弥たちは、尚も執拗に迫るクロイツリッターに応戦の火線を放ちつつ内心焦っていた。

 正にその時、

 

『俺に力を貸せええええ!!』

『!間に合わない!恭弥さん、カノン、俺の後ろに!』

 

モモタロウの絶叫、それに応える様に形を変えるグレンに、白の感知機能も手伝って一夏は一瞬後に起こることを直感し、左腕の雪羅を前に出しながら叫ぶ。

 

「カノンちゃん!」

 

 おそらくは同じ予感を抱いたのだろう。恭弥も直感的にそれに従い、アトランティアの手を引いて白の後ろにつく。

 その直後、グレンから明らかに本来の出力を大幅に上回る極太のビームが吐き出され、射線上に留まる将鬼を呑み込む。

 しかしそれだけに止まらず、飛散した大量の高熱粒子が周囲のルミエイラ機の装甲を炙り、天まで届くビームに引き裂かれた大気のうねりが衝撃波となってボロボロになったクロイツリッターやグランツハーケンたちに襲いかかる。大気の刃に引き裂かれ、露わになった内部を飛散粒子に侵された機械鎧たちは次々に火球に転じ、消えつつある光の柱に華を添えた。

 そして飛散粒子と衝撃波はシルフィードたちにも容赦無く迫り、白のシールドで大部分は無効化できたものの、その合間を縫って達した一部が3機の機体にわずかな傷をつけていく。

 

『フィルちたちは?』

「……あそこだ。ナガイさんに庇ってもらってる」

 

 カノンの問いに、恭弥は自分たちよりもモモタロウから離れた、しかしグレンの副次的被害を少々受けてしまう位置でネメシスタイプと第三分隊の戦機人たちの盾となっているカイザーを見つけ、シルフィードの指で示してあげる。

 その間にもグレンのビームは完全に消し去り、ややあって灼熱の嵐も収まる。

 

「鬼は今の将鬼で最後みたいだな。ルミエイラは……そっちも今ので片づいたか……」

 

 モニターとレーダーで残敵の有無を確認すると、恭弥はひとまず事態を乗り切ったことに安堵する。

 しかし、

 

『あ!ヤバい!』

『「!?」』

 

突然白が力が抜けた様に落下し、直後に恭弥はカノンと共に腕を抱えて受け止める。

 

「どうした?」

『……すみません。今のシールドでエネルギーの許容量超えちゃって……しばらく満足に動かないかも……』

 

 恭弥の問いに、一夏申し訳なさそうに答える。

 

「あぁ、そうか。白ってそういう仕様なんだよな……大丈夫。敵はもういないし、あとは最終確認して帰るだけだろうから。よくやってくれた!」

『ひとまず地上に下ろした方がよくない?うっかりしてるとまた落ちるよ』

「だね。とりあえずモモタロウの近くに」

 

 カノンの提案に応じると、恭弥はケガ人を運ぶ様に白の腕を肩に回し、隣のアトランティアも同じ様にするのを確認すると、3機並んでゆっくりとモモタロウの許へ降下していく。

 

 

 

 

『す、すごい』

『鬼退治、完了……ハア、ハア、ハア……』

 

 誰かの漏らした声に応じる余裕もなく、桃矢は手に構えたグレン――新たな姿になったグレン・バスターキャノンを息を切らしながら優しく下ろす。

 瞬間、ソレは元の姿――『試作型高出力ビーム砲搭載戦車グレン』に戻り、コクピットからアカネとミオが姿を現してモモタロウに近づく。

 その時、モモタロウに異変が起きた。

 

『グ、グアアアアアアアアアアアア!?』

 

 全身から放電して瞳から光が消えた瞬間、崩れるように地面へ地響きを立てて倒れた。

 

「え、どうしたの……モモちゃん……返事をしてよ……」

 

 突然のことに動揺しつつもアカネはモモタロウに近づき、その巨大な顔に触れて語りかける。

 しかし、モモタロウは何も答えない。

 それでもアカネは何度も呼びかける。

 

「モモちゃん、お願い……目を、目を開けてよ…………モモちゃん!!」

 

 夕焼けが街を照らす中、アカネの叫びが辺り一帯に響き渡る。

 傍らに降りたシルフィードたちと、それに合流しようと歩み寄ってきたテンペスト、ギガンテック、カイザーは、その光景をただ見ていることしかできなかった。




お知らせ

 いつも『スパロボH』を読んでいただきありがとうございます。


 突然ですが、今回を区切りに本作の連載を一時停止させていただきます。

 また諸事情により参戦作品の1つ『地球連邦、異世界への道』(作 自称ダメリア軍人)を、『機動戦記ガンダム・ナガレボシ』(作 アルファるふぁ)に変更させていただきます。

 詳細については活動報告「スH 今後についての諸連絡」を御覧ください。
 本作を楽しみにしていただいているみなさまにはご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。
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