「家が近所で一学年下のただの知り合い?そう」
「小町ちゃんも知ってて、両親は……そう」
少しやつれた私と八幡さん。そんなに細かく聞いてどうする気なのかな。私はもう疲れたよ、それに八幡さんもさらに腐った眼をしてる。……どこまで腐るのかな。いいなぁ。私の眼も一回ぐらい腐ってみないかな。
「それでは、次は複数の方の意見を聞いてみるのがいいでしょうね。」
「そうだね、趣味に通じるものもあるだろうしそれに賛成だよ。」
「そうだな。じゃあ誰か呼んでくれ、由比ヶ浜。」
「完全に人任せだ!?」
嬉しそうに、そして大げさに驚く由比ヶ浜先輩。君達は本当に仲がいいね。それにしても信頼関係……か。私が欲しがっているものはそういうものなのかな?
「じゃ、俺は材木座でも呼ぶからお前も誰か呼んでくれ。」
「うーん、わかった。誰がいいかなー」
「とりあえず材木座にメール送ってみるわ。」
~五分後~
「剣豪将軍、材木座義輝ここにさんじょぉぉぉおおう!!」
「うるせーよ。つーかはえーよホセ」
「……」
「どした?」
「なんでもないよ……」
ハッキリいって凄く怖い。ホラーも不良も雷も虫も怖くないけど、巨大で動くものは怖い。牛とか着ぐるみとか、近寄るとゾッとするよ。雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩が職員室に行ったのはこの人が理由じゃないかな。
「と、とにかくよろしくお願いします。材木座先輩。」
「は、八幡!我は初めて先輩呼びされたぞ!」
「はいはい。じゃあ手早く終わらせるぞー」
……大きいのは体だけなんだね、体を縮めてる様に見える。もし態度まで大きかったらきつかったよ。はあ、大きい生物が苦手なのは私の背が低いのが理由と言われた時を思い出す。苦手を克服できるなら身長を伸ばしたいよ。あと名前呼びするのはさいちゃんだけじゃなかったのかな?由比ヶ浜先輩。
「ところで八幡?我は一体何に」
「じゃあ、材木座。趣味特技を簡潔に」
「えっ!我、何に呼ばれたの!?」
「良かれと思ってお願いします材木座先輩。」
「合点東方仗助!」
げ、元気というか喧しいというか声が大きくて頭が痛い。うう、八幡さん。君の言う通り手早く終わらせよう。今日の帰りは甘いものでも買っていこうかな。
「ほむん、趣味は読書、ゲーム、アニメ、ネット。特技は剣術そして執・筆・精・神・統・一といった所だ八幡よ!」
「俺だけに言うなよ……。じゃあ次は高校生活で一番嬉しかったこと」
「何故、高校生活に限定したのかな?」
「なんとなくだ。」
なんとなく……ね。本当かな?ま、材木座先輩の過去に踏み込む気はないよ。さて特技は剣術と執筆。剣術は置いといて執筆は気になるところだね。
「ふぅむ。やはりお主と戸塚氏に出会えたことだな。お主たちと出会ってから高校生活がだいぶ楽しくなったからな。」
「やめろ、男のデレなんて俺は受け取らんぞ。」
「ふふ、君の周りは暖かいね。」
そう、本当に暖かい。まるでここだけ春のようだよ。そして君との出会いは変化を起きるみたいだね、その証拠に私も大きな変化が起きたとと思う。でも変化だけで無く私は成長したい。前に進んでみたい。ちょっと贅沢さんかな?
「何驚いた顔してるのかな?八幡さん?」
「いや、お前が笑うの初めて見たからついな」
「ずいぶん失礼だね。私だって人だよ?笑うし怒るし悲しむし楽しむよ?」
「へいへい、悪かったよ。」
「あのー、我の存在を消さないでくださーい」
おっと、あともう少しで完全に忘れるところだったよ。とにかく材木座先輩は八幡さん達と執筆、趣味に支えられてるみたいだね。なら、一つ聞かせてもらおうかな。
「はい、質問です。よろしいでしょうか?」
「おう。」
「それでは、将来の夢などはありますか?」
ここで彼にとっての執筆がどれ程のものなのか試させてもらうよ。ここで小説家と答えてくれれば材木座先輩にとっての執筆は大きなものだと分かる。それ以外なら趣味の一つだと分かる。
「ラノベ作家に俺はなる!」
背景に「ドンッ!」と付きそうな感じに答えてくれた。そっか、君の支えの一つみたいだね。君が荒波に揉まれてもそれが揺らがないことを祈るよ。
「ありがとうございます。」
「それじゃ材木座。お疲れ。帰っていいぞ。」
「八幡、ところでこれは一体なんだったのだ?」
「あー、依頼の一つだから伏せさせて貰うわ。」
「なんと!我に関わる依頼か!」
「あ、それは無い。」
肩を落として出ていく材木座先輩。割と有意義な話しだったね。いつか材木座先輩作のライトノベルがでたら一巻ぐらいは買わせてもらうよ。
「どうだ、参考になったか?」
「まあまあだね。作家になるという言葉に嘘は感じなかったし執筆は彼の『中心になるもの』だと思うよ。」
「そうか。とりあえず由比ヶ浜達に戻ってくるようメールするわ。」
……八幡さん。土曜日の一回だけで私を名前呼びしてないね。お前とかこいつじゃなくて名前呼びにしてもらうよ。私だけ名前呼びは不平等じゃないかな。
「よっと送信。」
「ところで八幡さん。今日一度も八千代って私を呼んでないよね?こいつとかお前とかで」
「そ、そんなことないぞ」
「そう。じゃあ私を読んでみてよ。」
「…………八千代?」
君はなんでそんなに人の名前を呼ぶのを嫌がるかな。間が長いし疑問形だしさ。やっぱり君は失礼さんだね。
「もう一回」
「えー。八千代?」
「なんで疑問形なのかな?もう一回」
「くっ八千代」
「はい、最後は声量上げて」
「やち
「ヒッキーなにしてんの!?」
ありゃ、少し楽しくなってきたのになんで水差すかな。まあ、名前呼びも慣れたろうし後でもう一回やってお終いかな。
「比企谷君。今度は何をしたのかしら。」
「俺がいつも何かしてるみたいに言うな」
「ごめんなさい。あなたが無意識にやってるなら、あなたを責めても何にもならないわね」
「なんでお前は常に切れ味ゲージMAXなんだよ。」
やっぱり君は雪ノ下先輩や由比ヶ浜先輩といた方が楽しそうだね。まったく少し妬けちゃうよ。……なんてね。私が興味を示したのは彼の眼だ。彼自身ではない。いや八幡さんの優しさや在り方も美しいけどね。……実は私は心底君のことを気に入ってるのかな?
「えっと由比ヶ浜先輩は誰を紹介してくれるのかな?」
「ふふーん、あたし達が呼んだのは……ちゃんちゃらちゃらじゃん!」
「ばばーん!誰が呼んだか「総武校のブリュンヒルデ」平塚静だ!」
「あ、それ俺だ。」
謎のテンションで登場したのは平塚先生。それにしてもブリュンヒルデって……神話の人物だったかな?確か結婚しそうで出来なかった女性だったと思う。少しあやふやだね。
「そ、そうか比企谷!私は美しいワルキューレか!」
「いえそれはいってませんけど。ほらISの教師ぽくないすか?あっちも独身だし」
「比企谷、歯を食いしばりたまえ」
「え、ちょ、先生?」
「抹殺のラストブリッドォォォォォオオオオオオオオ!」
「ゴハァッ!」
スムーズな流れで八幡さんの殴りつける平塚先生。あれだね。さっきの材木座先輩も騒がしかったけど平塚先生も騒がしそうだね。まぁそれだけ面白い在り方とも捉えられるかな?あと雪ノ下先輩も由比ヶ浜先輩も「またやってる……」という顔してるしこれも日常風景なんだろうね。濃い。
「さて、私になんのようだね?若葉。」
「雪ノ下先輩から聞いてませんか?人生相談です。」
「ほう、人生相談か。何でも聞いてくれたまえ。」
なら最初は材木座先輩と同じ質問するかな。面白い話が聞けるといいけど平塚先生は少し不安な面もあるからどうだろうね。結婚出来ないとかの話は聞かない様にするかな。
「では、まずは趣味と特技をお願いします。」
「趣味はドライブとツーリングだな。かっ飛ばすと気持ちいいしキャンプも楽しいから君達も機会があったらやって見るといい。」
「あー、先生、火点けるの超うまかったし。」
「なんとも色気がない趣味ね。」
「やめてやれ雪ノ下。本人も自覚してるだろ」
「き、君達は私に容赦ないな。」
奉仕部三人にボコボコにされる平塚先生。平塚先生は男性に生まれたらモテただろうね。今も女子のファンクラブがあるらしいし。男子からの評価は低くないけど、うん。恋愛面で見てる人は見たことないよ。
「平塚先生。特技の方も教えてください。」
「君に至ってはノーコメントか!?ふぅ、特技は格闘技だな。これでも強かったんだぞ。」
「先生、普通に強そうだし」
「そうね、そこらへんの男性よりは断然強いでしょうね」
「毎日のように殴られてれば誰でもわかりますよ」
「君達は私に恨みでもあるのかね?」
趣味はドライブ、ツーリング。特技は格闘技。平塚先生と結婚すれば男性の立つ瀬がなくなるね。これが平塚先生の結婚できない理由じゃないかな?主夫を目指してるいい人が見つかる事を祈るよ。……まだ、先生の『中心になるもの』は見えない。なんだろう。趣味はストレス発散系だし……まさか結婚かな?だとしたら切なすぎるよ。
「……平塚先生、幸せな新婚生活に向けてがんばってください。」
「ありがとう。そんなこといってくれるのはもう君だけだよ。」
「どういたしまして。次は結婚と教師の仕事、天秤に賭けるとどちらが重いですか?」
「切り替えが速いな。まあそうだな……結婚か仕事か……」
奉仕部の三人もじっと見守る。君達も流石に気になるよね。奉仕部の顧問で三人を見守ってきた人。いろんな感情があるだろうね。
「仕事だな。君達の様な問題児を放って仕事を辞めるなんてできんよ。」
「…………」
か、かっこいい。ファンクラブが設立するのも納得できるよ。そしてそれがそのまま結婚できない理由に繋がるのは悲しすぎるよ。とにかく平塚先生は生徒か仕事かな。正直参考にはならないと思うけど必要な話だったと思う。
「さて、鍵は私が預かるから君達はそろそろ帰りたまえ。」
「ありがとうございます。」
「ゆきのん、一緒に帰ろうよ!」
「ええ、わかったわ。だからそんなに引っ張らないで。」
「じゃあ私たちも帰ろうか八幡さん。」
「おう、じゃあな。」
…………まったく君は面倒な人だね。
「一緒に帰ろうと言ってるのがわからないかな?」
「いや、だって俺自転車だし。」
「この前みたいに押していけばいいよ。」
「えー、だって自転車で帰った方が速いじゃん。」
「早く帰ってどうする気かな?」
「そりゃ、ゲームしたりカマクラの相手したりだろ。」
「それは早く帰る理由にならないよ。なんなら可愛い八千代ちゃんの相手をお勧めするよ?」
「……誰に教わった?」
「もちろん、小町さんだよ。」
「何してんだあいつ。というかお前もなんでやるんだよ。」
「面白いと思ってね。」
「お前の笑いのセンスがわからねぇよ。」
「じゃあ、他にも八千代的にポイントたかーい、みたいなのも教えてもらったよ。」
「やめとけ、アホっぽく見えるぞ。」
「そっか、じゃあやめとこうかな。」
「そうしとけ」
「じゃあ次は
「だから
「あと
「そうじゃ
………
………………
………………………
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「結局家まで歩いちまった……」
「私のお誘いを受けてくれてうれしいよ。」
「お前が隙を与えない様に話しかけたせいだろ」
「さあね」
まあ八幡さんの言う通り、自転車に乗る暇を与えずに話しかけて家まで帰った。流石にお邪魔する気はないから今日はさよならだけどね。
「それじゃあまた明日ね。八幡さん。」
「じゃあな。八千代。」
結局、帰り道でも一回も言わなかったのにさらっと言ってサッと家に戻る。まったく言い逃げはズルイじゃないかな。もう。心臓に悪いよ、ふふ。
八千代の日記
今日は他の人の感情に触れた。それを持っている人は特に楽しそうだよ。