自己満足で描いた女オリ主の話~自書女主話~   作:最下

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人(仮)攻略作戦 No2

 

二日飛ばして今日は土曜日。今日の用事はなんと八幡さんとのデートだよ。まあどうせ八幡さんは荷物持ちぐらいにしか思ってないだろうけどね。服は……気負うより楽な感じでいいかな。全く、着たい服があっても身長的に問題が多いのは面倒だよ。ジーパン履いた時は背伸びした子供みたいとか言われたしね。なので今日は上は紺のパーカーに黒のダウンコートを羽織り下はデニムの短パンにハイソックス。さて準備も済んだし王子様の向かいにでも行こうかな。

 

 

「八千代ー、お客さんよー」

「どなたで……八幡さん?」

「おはようさん」

 

 

……まさか君が迎いに来てくれるとはね、こういう細かなとこに気が回るのは八千代的にポイント高いよ。もう、中々嬉しいサプライズだね。

 

 

「おはよう、一応聞いとくけど行きたいところあるかな?」

「あー、昨日シャーペンが大破したから買うぐらいだな。」

「大破って……、まあとにかく駅の方行くよ。」

「りょーかい」

 

 

後ろではお母さんが「ややややややや八千代に彼氏がぁ!?」って大げさに驚いてるけど一先ず無視しよう。……帰ってきてから騒がしくなりそうだね、この調子じゃきっとお父さんの耳にも入るだろうね。

 

 

「で、どこ行く?帰る?」

「おや、女の子を家に誘うとは大胆だね。」

「ちげぇ解散という意味だ。つーかよく家に来てるだろうが」

「まあサヨナラはしないよ。今日はボーリングしに行こうと思ってね」

「ああ、リア充御用達の遊びか。」

 

 

随分と偏見に塗れてるね。確かに友人と行くケースが目立つけど割と一人で遊ぶ人もいるんだよ?ただひたすら試行錯誤しながら投げるのも楽しいしね。あと八幡さん自分から行くより誘われたいものだよ、女の子としてはね。

 

 

「八幡さんはボーリング体験あるかな?」

「まあな」

「スコアは覚えてる?」

「零だ。」

「え」

「そう、あれは小学四年生の時だった。」

 

 

唐突に語りだす八幡さん。小町さんが言ってた黒歴史暴露というやつかな。

 

 

「俺はクラスメイトに誘われてボーリングに行ったんだ。もちろんクラス全員参加のやつな?それで俺も皆と遊ぼうと思っていたんだがな……」

「もちろんって……」

「それは気にすんな。まあ行ったんだ。そこで俺がしたことはボールをひたすら磨いて機械を操作して飲み物を買いに走って結果的に一回もボールを投げずに終わったんだ。」

 

 

わぁ、衝撃的なものを聞いてしまったよ、というかそれ完璧にパシリだよ。やっぱりその眼は悪意で作られたものなんだね。最近は君ばかり見てたから眼の方に気が回らなかったよ。

 

 

「……八幡さん」

「なんだ?同情はいらんぞ?」

「それはボーリング経験無いということでいいのかな?」

「アッハイ」

「わかったよ」

 

 

ボーリング経験は結局ないのか。なら最初は合うボール探しからだね。八幡さんは別段筋肉質でも高身長でもないから真ん中あたりから試してみようかな。

 

 

「お前ってマイペースだよな。B型なの?」

「正解だよ。血液型診断も馬鹿にできないね。」

「どうせ誰にも当てはまるような事を言えばいいだろうけどな」

「バーナム効果だったかな。」

「それだな」

 

 

どうせ他の血液型診断やっても半分以上当てはまるだろうしね。占いとはよくいったものだよ。でもさっき言ったように割と馬鹿にできないものだよ?

 

 

「君はA型かな?」

「小町か?」

「いいや、私の観察眼だよ。君に渡したお弁当はちゃんと縛り直してくれるしレジャーシートを畳むの手伝ってもらったこともあったね。綺麗に畳まれてたよ。それに君は他人に気を遣うしね。」

「わぁ、ストーカー?」

「む、そうだと言ったら?」

「追放する。」

「わ、わ、まって冗談だよ」

 

 

通報も困るけど追放だともう会えなくて少し……寂しいかな。君も冗談だろうけどね。とにかくA型みたいだね。だから何だというわけじゃないけどさ。

 

 

~~~

 

 

ガコォンカコォンと大きな音と友人同士で喜びを分かちあう人達や真剣に投げ続ける人が混ざり合うボーリング場。ダウンを脱いで少しでも動きやすい格好になる。八幡さんはキョロキョロと周りを探る様にあたりを見渡してる。

 

 

「どうしたのかな?」

「ん、いや元同級生とかいたら気まずいだろ」

「その時は私が君を守るよ。」

「なにそれかっけぇ」

 

 

そのためなら長らく使ってこなかった武道の技を使う覚悟もあるよ。ま、その時が来ないのが一番いいけどね。

 

 

「じゃあ早速遊ぼうか、最初のゲームはとにかく感覚を覚えるぐらいの気持ちでね」

「へーい」

 

 

~~~

 

 

「げ、分れちまった。」

「こういう時は上手く出来れば両方倒すか安全策で片方倒すかだね。いける?」

「ま、安全策で行ってみるわ」

 

 

すっとボールを投げる八幡さん。ボールはレーンを滑って行き……真ん中を通り抜けた。ありゃこれは残念だね。それにしても運動神経というかセンスがあるというかすぐ上手くなるね。偶に遊びにこなきゃ簡単に負けちゃったよ。私も勝ちにこだわるわけじゃないけどストレート負けだけは嫌だね。

 

 

「Oh、やっちまった。」

「ふふ、失敗を繰り返して遊ぶのも中々楽しいよ」

「それは分からなくもないがな。」

「じゃ私の番だね。」

 

 

じっと狙いをつける、私は偶に遊びに来る程度の素人だからテクニックの様なものは特にない。それでもしっかり狙いを付けて投げれば

 

 

「右半分が綺麗に残ったな」

「狙い通りだよ。」

 

 

二回目もしっかりと狙いを付けて

 

 

「よし、スペアってね」

「へぇ、上手いもんだな。」

「今度から君も誘おうかな?」

「あー、都合が合えばな。」

 

 

そこまで乗り気じゃないみたいだね。でも一応行くときは声を掛けておくかな。月一で行くかどうかだから本当に稀にだけどね。

 

 

「そろそろいい時間だな。混む前に飯食いに移動しようぜ。」

「いいね。じゃあボールお願いしていいかな?他のはやっとくから入口で待ち合わせ」

「あいよ」

 

 

~~~

 

 

「ヒキタニさーん!お席御案内しまーす」

「態々俺の名字で受付したのかよ」

「不快だったかな?」

「いや、そんな小さくねぇから」

 

 

場所クルリと変わってサイゼリアへ、八幡さんの希望だよ。君は何でそんなにサイゼリアが好きなのかな、洋風の料理が好きなのかな?なら今度作って見るから食べてもらうよ

 

 

「うし何食うか、ドリアとピザとパスタだな。」

「そ、即決だね。」

「まあな、総武高校で一番サイゼリアの事を知り尽くしてる男と自負してる。」

「訳分からない項目でギネス登録される人みたいだね。私はこのパスタにしようかな」

 

 

水を運んできた店員さんに注文する。やっぱ男の子なんだなぁ私とは食べる量が全然違うよ。もう少しお弁当の量を増やしてみようかな、でも午後に体育あったら辛いだろうし……、今聞こうかな。

 

 

「八幡さん」

「なに?」

「今度お弁当作ろうと思うけど量が少ないとか多いとかあったかな?」

「丁度いい。あと腹の隙位なんて一々気にしてたらまた倒れるぞ。」

「ん、そっか。また倒れるようなことはしないよ。」

「ならいい。」

 

 

心配かけさせてるみたいだね。心配してくれるのは嬉しいけど小町さんの延長線上という感じだよ。私も妹みたいなものなのかな。彼が妹思いなのは知ってるけどそれは血の繋がりがある小町さんにだけだろうね。

 

 

「あの八千代さん?そんなにジロジロ見られると居づらいんですが」

「あ、ああごめん。ちょっと考え事しててね。……君の髪はセットしてるのかなって」

「気付いたら立ってんだよな。押さえつけても濡らしても、ワックスはいけたけど」

「ふぅん。小町さんの勉強見てた時詰まるとクルクル、分かるとピンッとしたけど、」

「気のせいだろ」

「え」

「気のせいだろ」

「う、うん」

 

 

今まで一番冷たい何かを感じたよ。

 

 

「お待たせしました。こちらドリア、ピザ、パスタ二点にです。以上でよろしいですか?」

「はいどうも。さて食おうぜ。」

「う、うん。いただきます」

 

 

何か納得いかない、全部激流で流されていくような

 

 

~~~

 

 

「おい大丈夫か?ボンヤリしてるぞ。」

「……いや大丈夫。何の話してたっけ?」

「買うシャーペン決めたから会計してくる」

「うん、いってらっしゃい」

 

 

頭が少しボンヤリする。ちゃんと体調整えてきたのにおかしいな。ここは文房具屋みたいだね。確か昼食を食べにサイゼリアに行って?行ってからの記憶もほとんどない。なんだろう。少し怖くなってきたよ。

 

 

「うっし、またせたな。これからどうする?帰る?」

「そうだね。少しブラブラと歩いてから帰ろうよ。」

「おおう、帰るが受け入れられるとは思わなんだ。」

「私も少し疲れちゃったからね」

 

 

お店が並んでる通りをブラブラ。ペットショップの前を通るとあらゆる動物がゲージの隅に移動して傷ついたり、八幡さんが駄菓子屋から出てきた子供にゾンビと言われて傷ついて、短いお散歩もそろそろお終い。奥に駅が見える。ん?八幡さんの体が一瞬硬直した?

 

 

「あれーヒキタニじゃん。ちょー久しぶりじゃん」

「…………」

「おーい無視とか酷いじゃん?つーかその子誰?紹介してよ」

 

 

多分、八幡さんの元同級生。成程八幡さんの事を完璧に下に見てるね。元同級生の友人らしき人も寄ってくる。計三人。

 

 

「うわ、まじでヒキタニじゃん」

「こんな可愛い子と何してんだよ。」

「こいつ確か折本にフラれてんだろ。しかもナル谷だし」

「そーそー、後のオタ谷だしな」

「こんなのと一緒にいないで俺たちと遊ぼうぜ。こんな奴と一緒にいるより楽しいぜ?」

 

 

好き勝手ほざいてくれるね。八幡さんもどこ吹く風だし勝手に増長を続ける愚か者達が、腹立つよ。君達も……八幡さんも

 

 

「三秒以内に消えてくれないかな?私は八幡さん程優しくないよ?」

「は?」

「待て八千代」

「黙ってくれないかな?八幡さん」

「お前さぁ、ちょっと煽ててやったからって調子のってんじゃねぇよ。」

 

 

今更なんで止めようと思うのさ、八幡さん。私は好きな人を馬鹿にされて怒らないような下種じゃないよ。例えこの行為が正しくないとしても私は約束を守る。それにデートを邪魔した罪は重いよ。

 

 

「こんないい天気の休日に男三人で騒いでるお猿さんに煽てられても寒気しかしないよ」

「てめっ……!」

 

 

近づいてきた一人の懐に潜り込み相手の腕と腰を掴み、一気に投げる。体格の差があっても投げやすい柔道の技、背負い投げ。護身用に覚えたけど使いたくはなかったよ

 

 

「がっ!」

「黙っててね」

 

 

反射的に受け身をとって後頭部ぶつけずに済んだようだけど衝撃まで消すことはできないよね、そんな中途半端な受け身でコンクリートの上だから伝わる衝撃は馬鹿に出来ない。でも私は優しくない。倒れた元同級生の顎を次はもっと強く蹴る、の意を込めて軽く蹴る。

 

 

「う……ぐ……」

「さてもう一度だけいうよ。三秒以内に消えてくれないかな?」

「は、はいぃ!!」

 

 

スタコラサッサーと消えるお猿さんたち。ゴミぐらいは片付けて貰いたいものだよ。どこまでもお粗末な連中だね。

 

 

「八幡さん、怪我は無いかな?イタッ」

「怪我は無いかな、じゃないだろうが!お前が怪我したらどうすんだよ!?」

「でも私は八幡さんを馬鹿にされるのが……」

「でもじゃない。お前の気持ちは嬉しいが大事にそれも喧嘩にするな。いいな」

「…………」

「今日は帰るぞ。あとデコピンしてすまんかった」

「うん……」

 

 

~~~

 

 

その後、八幡さんの家に連行された。何でこんな時に限ってこんなに強引なのさ。でも今は話したくないよ。八幡さんは気持ちを察してくれたのか体育座で拒絶の態勢の私に毛布を被せて他の部屋に移動したみたいだね。……私は八幡さんが馬鹿にされるのが嫌だっただけなのに。八幡さんを守りたかったのに。八幡さんに叱られちゃったな。嫌われちゃうかな……

 

 

 

別室

 

 

 

「それでごみいちゃん何があったの?部屋に軟禁なんて小町的にポイント低いよ?」

「叱っただけだ。家に連れてきたのは下手に親が関わるより小町の方がいいと思ったから」

「とりあえず詳しく何があって何を叱ったの?」

 

「かくかくしかじか」

「まるまるうまうま」

 

「それはお兄ちゃんが正しいけど悪いね。」

「だろうなぁ」

「こうなったら『アレ』しかないよお兄ちゃん!」

「『アレ』は小町だからやったんだろうが」

「今は小町を口説かない!いいからGO!」

 

 

~~~

 

 

「……ん」

 

 

うつらうつらしてたら体育座を解かされて暖かいものに包まれた。何だろう、すっぽり体を包み込めるものでトクン、トクンと心音に似た音が背中から伝わってくる。落ち着く……

 

 

「八千代、そのまま聞け」

「……うん」

 

 

八幡さんの声が聞こえる。いや伝わるかな?声の振動が体に伝わってくる。少しくすぐったいよ。でも心地良い……

 

 

「まずあの時に大声で叱ったのを謝る。すまん」

「……うん」

 

 

まどろみの中にいるような心地良さに声を出すのも煩わしい。でも私も謝らなくちゃ、あの時私が平和的解決をしなかったのは悪いことだからね……

 

 

「ただやり方が少し良くなかっただけだ。お前は正しいことをした。」

「……うん」

 

 

やり方が良くなかっただけ……。私は正しいことをした……。よかった……君を守りたいという気持ちにまちがいはなかったんだね。後はやり方を変えることさえ出来ればいい

 

 

「お前の気持ちは嬉しい。ありがとな」

「……うん……うん」

 

 

やり方が良くなかっただけ。大丈夫、もう同じ過ちは絶対にしないよ……。だから、だから

 

 

「八幡さんは……」

「うん?」

「私のことを嫌いになってないかな?」

「大丈夫だ。嫌いじゃないからな。」

「そっか……」

 

 

よかった……君にはきらわれたくなかったからね……

 

 

「さあ、一休みしたら今日は帰りな?」

「……いや……まだはちまんさんといっしょに……くぅ……」

 

 

 

………

………………

………………………

………………………………

 

 

「はぁ、いつか俺に襲われちまうぞ……」

 

 

 

 

八千代の日記

 

 

気が付いたら自分の部屋で寝ていた。あれは現実だったのかな?夢だったのかな?

 


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