「よっと、うん完成だね」
「ありがとうございます八千代さん」
「なに、未来の妹に対するおせっかいだと思えばいいよ」
「それでも小町は大助かりですから」
そろそろ晩御飯の時間。私は晩御飯の準備をして小町さんは勉強、八幡さんは先生をしている。ずっと居座ってるから少しは働きたいのと料理の練習にもなるからやらせてもらった。
「さて、晩御飯にするから片付けてくれるかな」
「あいあいさー」
「へーい」
コップとスプーン、飲み物に台拭き。あとケチャップだね。そうだ何か書いてみようかな。定番でいくと「LOVE」とかハートマークだね。あえて別のもので好意が伝わる様なものあるかな?
「……はい、お待たせしました、こちらオムライス三品です。」
「お!ケチャップで何か書いてありますね!えっと……「女」?」
「俺のは「子」だな。」
「くっつけて?」
「女子だな」
…………自分でも伝わりにくいものを書いたと思うよ。「女」と「子」をくっつけると「好」になります、後私のオムライスには「き」と書いたよ。と自分でネタばらしをするのは違うからこの話は流すとするかな。
「さていただきます。」
「流すな、答えは?」
「小町もいただきます」
「ブルータスお前もか!」
小町さんは気付いたかな?……とりあえず私に合わせただけっぽいね。じゃあこれは誰にもばれずに流してくれるわけだ。一発で気付かないなら忘れてくれた方が私としても助かるよ。
「ん~、八千代さん先週より上手になりましたね!玉子がふわとろです!」
「ふふ、ありがとう。小町さんに褒めてもらえると自信が付くよ」
小町さんの料理はとても美味しい。と言っても今日のお昼とこの前の粥ぐらいしか食べてないけどね。それでも美味しいことに変わりないし、私の目標とさせていただいてるよ。
「今日はこれを食べてお皿を洗ったら帰るよ」
「えー、もう少しのんびりしましょうよ」
「……皿洗いなら俺がやるからその分小町といてやれ」
「わかったよ、それじゃあ遅くなり過ぎない程度でね」
まあ今日は親もいないし学校の準備もしてあるからもっと居てもいいけど、流石に一日中いるのはどうかと思うね。……ずっといると八幡さんに妹その二と思われそうだしね。もう思われてそうだよ。
「それじゃあこの後は小町とガールズトークをしましょう!テーマは恋!」
「待て!お兄ちゃん、恋愛は許さんぞ!」
「大丈夫だよ、小町が好きなのはお兄ちゃんと八千代さんだけ!今の小町的にポイントが」
「そ、そうか。……八千代も入ってんの?」
「それこそあたりきしゃりきのこんこんちきだよ!」
「古っ!平塚先生ですら使わんぞ」
とてもポイント高いよ小町さん。そして私も八幡さんと小町さんが大好きだからね。それと平塚先生は確か二十代後半だからギリギリその言葉は使わないと思うよ。さて私を置いてじゃれあうのは一旦終わりにしてもらおうかな
「八幡さん」
「お、おう。なに?」
「はい、あーん」
「へ?」
「おお!」
八幡さんは一瞬硬直し小町さんは眼を輝かせる。君はこういう行動を取るたびに悩み考え逃げようとするから面白い、たまに面倒でもあるけどね。ふふ、どうするかな?
「……あれだ、俺今すげー腹痛いから。無理」
「ごみいちゃん……」
くく、楽しいね八幡さん。気分はまるでチェスをやっている様だよ。ゆっくりじっくり相手を詰まらせる為に駒を動かす。そんな私の次の手はこれだよ
「そっかそれは残念だよ。」
「わかってくれたか」
「八千代さん!?」
そう慌てないでよ小町さん。私のゲームはいい感じに動いてるから心配しないでね。八幡さんを攻める時は押してダメなら引いてみろでも諦めろでもなく、角度を変えて押すのが正しいみたいだよ。
「じゃあ、あーん」
「なんで口開けてんの?ナッパ?」
「君が食べれないなら私にしてもらおうと思ってね。」
「……一回だけだからな」
かかったね。実際にあーんしてもらえるとは思ってはないけど今回は君を追い詰めてギリギリのところであえて逃がす。そして私を異性として意識させるつもりだよ。これが次の一手
「ほれ、スプーン貸せ」
「君のでいいよ?」
「いや、それは……。とにかくスプーンを」
「君のでいいよ。」
「だからそれは間接……」
「間接?」
小町さんはニヨニヨ、私は心底楽しそうにしてるだろうね。君がその後の言葉を言いたがらないのは分かっているよ。出来れば察して取り止めて欲しいのだろうね。でも私はここで止めるほど優しくは無いよ。
「だから間接……」
「間接?」
「……間接Kissになるだろうが、分かって言ってんだろ」
当たり前だよ。君の耳を真っ赤にして照れるところが見たかったからね、ちょっとしたイジワルをさせて貰ったよ。ふふ、面白いものを見せてくれたお礼にこれは取り止めてあげようかな
「ふふ、間接キスになっちゃうか、なら止めるよ。恥ずかしいからね」
「どの口が言うか……!」
「えー!八千代さんやめちゃうんですか!?」
「うん、楽しませてもらったしね」
これは楽しかったよ、どうせ一回きりしか使えないだろうし距離が近いと効果が薄いだろうしでどうしようかと思っていたけど、いいタイミングだったようだね。
「はぁ、お前な無防備過ぎるからもっと男に警戒心持て」
「っ」
スプーンが手から滑り落ちカターンと大きな音を出す。き、君はこの期に及んでそんな言をいうのかな……。私が君の前で行ったことがそれだけで片付けるつもりなのかな……?私が君に多少恥ずかしくても甘えたあの好意をそれだけの言葉で……?
「ふ、ふふ」
「八千代さん?」
「ふざけないでよ、八幡さん!」
平手でテーブルを叩きつけながら立ち上がる。大きな音で小町さんが驚いた顔をしているけどもう止まらない。止まれない
「何が警戒心を持て、かな!? 私が誰の前でも無防備でいると思っているのかな!?」
「そんな訳無いに決まっているよ!! 私だって体に自信がなくても女の子だよ!?」
「君の前だから私は無防備でいたよ!君は襲わないではなく襲われても構わないの気でね!」
「大体聡い君が気付いて無い訳ないよね!? いや聡くなくても気付くよね!?」
「私がどんな感情で八幡さん、君に接しているか!」
「っ!やめろっ」
「お断りだね! 言わせてもらうよ!!」
「私、若葉八千代は比企谷八幡! 君の事が好きだよ!」
「君の腐った瞳!君の顔!君の可愛らしい照れ方!君の声!君のその立った髪!君の捻くれた考え方!君の面倒な逃げ方!君のパーソナルスペースの広さ!君の甘党のところ!君の食事の挨拶を欠かさないところ!君の妹に対する愛情!そして君のさり気無い優しさ!君の在り方!君との時間!君との会話!君の暖かさ!私は、私はその全てが好きだ!!」
ゼーゼーと荒れた息を整えるのと同時に頭に上った血が降りてきて周りの様子を見る余裕が戻る。空気、ポカーンとした顔の八幡さんと小町さん、それを見て自分が行ったことを把握し
「っ!!! 御馳走様!お邪魔しました!」
全力で逃げた