「私は君のその腐った眼が欲しい……」
「……………………………はい?」
三度、沈黙。
……君との沈黙は嫌いじゃないけど会話の途中で黙られるのは困るかな。うーん、悪いけど熟考するのは後にしてもらうよ。昼休みもそんなに長くないからね。
「……何かな、その反応は?」
「………むしろどんなリアクションとれば満足だよ。」
「そうだね。眼を外して私にプレゼントするみたいな感じかな?」
「俺の眼はアタッチメント式じゃねぇから無理だっつーの。」
「冗談だよ。」
まあ、そうだろうね。本当にプレゼントされたら私が困るよ。ビニール袋か何かに入れて持ち帰るわけにもいかないし、私は一番最適な保存用のケースも欲しいからね。
「それで?眼が欲しいってなんだよ。厨二病?」
「失礼だね。コレクターって呼んでくれるとうれしいよ。」
「いや、名称とかはどうでもいいから。欲しいに関しての詳細だよ。」
コレクターというほどコレクションしてるわけじゃないけどね。しかしただ集めるのがコレクターとは思わないで欲しいな。やっぱりじっくり眺めていたいから数は要らないね。
「まあ「欲しい」はあくまで夢で、目標は「眺める」だよ。要するに鑑賞だね。」
「へえ。つーか眺めるって……まさか」
「近くでじっくり眺めさせて貰うよ?」
「誠に申し訳ありませんが拒否させて貰います。」
拒否されるとは思ってたけど凄く丁寧で突き放された感じだね。まあ今回の目的は少しでも距離を縮めることだから別にいいよ。皆から見た「若葉八千代」じゃなくて「私」を見せれる様になったから順調、ということでいいのかな?
「まあ今すぐ見せてくれるとは思ってないよ。さて昼休みもそろそろ終わりだしレジャーシー ト畳むの手伝ってくれないかな?」
「あいよ。……そういえば雪ノ下が一つ謝りたい事があるってよ。」
「雪ノ下先輩が?何かあったかな?」
「さあな、それは本人に聞け。……ほらよ。」
「ありがとう。」
畳まれたレジャーシートを受け取る。……割と綺麗に畳まれてるね、几帳面なのかな?
それにしても雪ノ下先輩が謝りたい事。会ったのはこの前の奉仕部訪問だけだからその時だろうけど、……まったく心当たりが無いね。
「まあ、放課後に奉仕部に寄ってみるよ。」
「おう。それじゃ先に戻らせてもらうわ。御馳走さん。」
「はい、また後で。比企谷さん。」
ふふ、今日の放課後も楽しみだね。何をするか、何が起きるか想像するだけで胸が躍るよ。どうしようかな、取り敢えず奉仕部に行かないとね。小町さんを訪ねてみるのもいいかも知れないね。それなら手土産とか必要かな。ああ、楽しみだよ。