大会2日目、参加グループもすでに4分の1にまで減って居る。
3人は総理の手配した豪邸で一夜を過ごした。
早朝になり4人は行動を開始する。
「で、これからどうするんだ?」
ドモンは身支度を整えると司令塔の大和にこれからの作戦を聞いた。
「作戦は考えてあります。準備が出来次第ここを移動しましょう」
「わかった」
それから数分後、館を後にし大和の指示に従い丘のある方角へ歩を進める。
朝早い事もあり敵の姿は見当たらなかったのが幸いし体力を減らさずに大和の言う丘にたどり着く事が出来た。。
「ここの丘で敵が来るのを待ち伏せます。ここは高所だから狙撃もしやすいし西側からでしか来る事はできない」
「さすが大和さんですね」
「後は俺に任せな。狙い撃つぜぇ~」
総理は持参したスナイパーライフルを構えてスコープを覗き込んだ。
彼の狙撃の腕は一流、逃さず敵を撃ち落してくれる。
「ころあいになればまた移動します。今日を過ぎれば参加グループもぐっと減るでしょう」
「なら俺達はここで待機だな」
「そうですね、これからに備えましょう」
3人は敵に見つからないように移動した。
万が一総理の狙撃を掻い潜られた場合はドモンとまゆっちで応戦するがそれまでは時間が経過するのを待つしかない。
「あの……」
そんな中でまゆっちは以前から気にはなっていたドモンに声を掛けた。
普通に見たら日本刀を抱え引きつった笑みを浮かべた怖い少女にドモンは何事も無く応えた。
「どうした、何かあったのか?」
「いえ、そうではなくて……」
「ん? 用が無いなら戻るぞ」
「あ、ああぁぁぁっ、あの!! ドモンさんは何処で武術を習ったのですか?」
勇気を振り絞りまゆっちはドモンに聞いた。
百代を倒したあの力、同じ武闘家として聞いてみたいと感じるのは彼女も同じ。
「俺の武術は師匠から受け継いだものだ。だがもちろん、修行の過程で自分で編み出した技もある」
「その……ドモンさんのお師匠様はどのような方ですか?」
「師匠にはいろんな事を教わった。武闘家の拳は自分の魂を相手に伝えるもの、そう教えてくれたのはあの人だ」
ドモンが武の師匠を語っている顔は本当に誇らしそうで、それを見ただけでも立派な人なんだとまゆっちは悟った。
「師匠の名に恥じない為にも俺はもっと強くなる。そしていつか師匠を越える武闘家になってみせる。流派東方不敗の名を絶やさないためにも!!」
「流派東方不敗、それがドモンさんの流派なんですね」
「あぁ、キングオブハートの名に懸けて俺は最強の男になってみせる」
「立派なお師匠様なんですね」
『東方不敗って事は負けなしなんだろうな』
「そう言うお前は誰に剣術を習ったんだ? 並の腕じゃない事は昨日の夜でもう分かった」
あの夜、サイコクッキーとの戦いでまゆっちの腕前は充分に把握出来る。
まだ10代の少女があれほどの腕を持っている事にドモンは歓喜した。
「私は幼い頃から父上に教わりました。厳しい教えでしたが今の私があるのは父のお陰です」
まゆっちもドモンと同じ顔をしていた。
その眼差しは力強く、正真正銘の武闘家の瞳。
時を同じくして総理のスナイパーライフルの銃声が周囲に轟いた。
ドモンは響き渡る銃声に一瞬だけ視線を向け、もう1度まゆっちと向かう会う。
「当分はアイツに任せておけば安心だな。どうだ、手合わせでもするか?」
「え、でもドモンさんとは……」
まゆっちは両手でガッチリ握ったまま地面へ視線を落とす。
「武器があるからハンデになると思っているのか? それなら心配ない」
まゆっちは親しい人と試合などしたくはないのだが勘違いしたドモンはハンデが嫌なのだと思ってしまって居る。
すると赤いマントの中から古びた日本刀をドモンも取り出した。
鞘から刀を抜くと刀身は錆びてボロボロでとても斬れそうに見えない。
(あんなボロボロの刀で戦うなんて。私の日本刀を受ければ、多分一撃で壊れてしまう)
「俺に遠慮するな、全力で掛かって来い」
「でも、そんな……」
ドモンはその錆びた刀を構えてまゆっちを見据えた。
その目は真剣そのもの。
まゆっちはそれを見て自身も覚悟を決め秘めた闘志を呼び覚ます。
「では……行きます!!」
『どうなっても知らねぇからな、その刀をへし折ってやんよ』
いつも持ち歩いてる日本刀を鞘から引き抜き精神を集中し、まゆっちの刀の刀身は眩く輝いて居る。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
するどい一閃がドモンの体へ振られる。
常人には見ることも敵わない攻撃をわずかに体を反らすだけで避けてみせた。
だが攻撃の手を緩める事なくまゆっちは連撃を繰り出す。
鋭く光る刀はその刃で空気を切り裂く。
それでもドモンは一撃たりとも当たりはしなかった。
(すごい、全部紙一重で避けていく!?)
「今度は俺の番だ、行くぞ!!」
ドモンはボロボロの刀でまゆっちに斬り掛かった。
「ふん!!」
襲い来る攻撃に自分の刀の刃で受け止めた。
ドモンが使う錆びていてボロボロの刀ではすぐに折れてしまう。
「な!?」
だが折れるどころかまゆっちの刀を折ろうとせんばかりに力強く押し返して来る。
ドモンの刀はさっきとは違い光り眩しく輝いて居た。
(この輝きは一体!? さっきは錆びてボロボロだったのに)
「はああああっ、とりゃあぁぁぁぁ!!」
「しまっ!?」
そのまま力負けしてしまい後方へと押し返されてしまう。
体の姿勢を維持しようと足に力を入れるがずるずると滑り流されてしまった。
靴から砂煙が舞い上がる。
それでも日ごろの鍛錬から膝を付くようなことはしない。
「どうした、もっと本気を出して見せろ!!」
(これは私の油断、それではドモンさんに失礼です。同じ武闘家同士、本気を出します!!)
攻撃を受けてやっと本気を出すまゆっち。
幼い頃から培われてきた剣術は彼女の集中力を鋭く研ぎ澄まさせた。
そしてその集中力は気迫として相手に伝わって居る。
(気が変わった、精神を集中させているな)
まゆっちの気迫はドモンにも感じられ、彼女は本気を出しているのだと悟った。
「ならばこちらも!!」
相手が全力を出したのならこちらも全力を出して戦う。
これがドモンなりの礼の仕方だった。
修行して会得した明鏡止水を解き放つ。
ゆえにまゆっちの気迫はドモンには通じない。
水のように静かで清らか、恐れるものなど何も無い。
信じるのは自身の力、ぶつけるのみ。
(何? この気迫は……さっきまでとは違う。これは百代先輩と戦った時と同じ……)
明鏡止水を発動させたドモンの気に勘付く、だがやることは変わらない。
自身の力を、必殺の一撃を繰り出すまで。
ゆっくりと息を口から吸うとまゆっちは一気に駆けた。
「双龍閃!!」
左手に握った鞘で素早い打撃を撃ち込む。
「ばぁくねつ!!」
でもこれはフェイント、鞘は顔面すれすれを通り過ぎ風が髪の毛をなびかせた。
「いかずち!!」
神速の一閃がドモンを襲う。
「ゴッド!! スラァァァシュッ!!」
互いの一撃が繰り出される。
静けさに包まれ両者は一歩も動かないで居た。
「相打ちか……」
「そうみたいですね」
両者共に怪我などはしていない。
互いの攻撃で打ち消しあったのだ。
「だがお前はまだ本気を出していない。そうだろ?」
「それはドモンさんも同じです。刀を使った戦いはあまり慣れていないはずです」
「でも、いい試合だった。礼を言う」
「私の方こそ、すごく勉強になりました」
試合の終わった2人は手を伸ばし握手を交わした。
でもこの戦いはこれから起こる戦いの序曲でしかない。
///
日も暮れ始めて来た。
総理の狙撃の成果もあり敵を減らしながらも全員体力は温存してある。
「そろそろここを移動しましょう。敵の数も減ったはずです」
「そうだな、ずらかるぜ!」
総理はスナイパーライフルを肩に抱えて、4人は丘から移動をした。
「敵に警戒しつつ宿に戻りましょう。戻ったらまた作戦を――」
もうすぐで橋に差し掛かると言う所で突然大きな爆発が響く。
見ると川原の方から煙が上がって居た。
「あの爆発は!?」
「行きましょう!!」
言うが早いか、まゆっちが走り出した。
それに続きみんなも川原へと走った。
だが向かった先で見たものは地面へと倒れる風間ファミリー達。
「そんな……酷い……」
「みんなやられたのか……」
大和とまゆっちはその惨劇に凍り付いてしまう
「ふふふ、会いたかったですよ総理!!」
その場でただ1人、笑っている男が居る。
「蘇我、てめぇがやったのか?」
「はい、これもアナタに総理の座から退いてもらうため。手段は厭いません」
蘇我の背後からサイコクッキー2が光るサーベルを握り大和達のチームへと寄って来る。
「行けサイコクッキー!! 残りはあのチームだけだ」
『了解した。さぁ、泣き叫べ!!』
脚部のモーターが唸りサイコクッキーが跳躍した。
サーベルを大きく振り上げ4人へと斬り掛かる。
「所詮は機械、動きが同じだ!!」
だがドモンはすでにサイコクッキーの動きは見切っている。
「黛、コイツラは任せる」
「はい!!」
ドモンに言われてまゆっちは日本刀を握る。
「俺はあの男をやる!!」
ドモンは1人で蘇我を守る釈迦堂を倒さんと前へ出る。
大和はその行動を止めはしなかった。
「この状況ではドモンさんに任せるのが適任だ。それに……」
横目で川原を見るとそこにはサイコクッキーと戦うワン子の姿があった。
(戦いが長引けばワン子を助けに行けない。いくらあいつでも攻撃を直撃したらただではすまない)
今は敵であっても仲間であるワン子を大和は助けたかった。
「若いってのは活気があっていいですなぁ」
「一気に終わらせる!」
「あまり俺を舐めないほうがいいですよ。こう見えて結構強いんですよ」
一方のドモンは余裕を見せる釈迦堂に詰め寄って居た。
跳躍すると強力な飛び蹴りを釈迦堂へ向ける。
「とぉりゃぁぁぁ!!」
「はっ!!」
釈迦堂は拳を握り締め渾身の力を込めて飛び蹴りへとぶつける。
直撃した瞬間互いに一瞬硬直するとドモンはバク宙し地面に足を付けた。
「その程度ですか? こんな物ではないでしょう」
「あぁ!! 言ったはずだ、すぐ終わらせると」
ドモンは百烈拳でさらに釈迦堂へ攻める。
だが釈迦堂も一歩も引いてない。
百烈拳に対して同じく百烈拳を繰り出し攻撃を相殺して行く。
2人が激戦を繰り広げる中にサイコクッキーの流れ弾が橋に当たり大きく揺れた。
揺れに姿勢を崩すまいと動きを止めるドモン、釈迦堂はその一瞬を見逃さなかった。
「しまっ!?」
「隙ありぃ!!」
襟元を掴み取ると一本背負いでドモンを投げ飛ばした。
「うわぁぁぁっ!!」
そしてそのまま橋の外へと投げ出され、大きな水しぶきを上げて川へと落ちて行く。
「ドモンさん!!」
大和は叫んだがどうする事も出来ず川へと落ちてしまった。
「あちゃ~、落ちちゃった。さむそぉ~」
(どうする、まゆっちでもサイコクッキーには苦戦している。ドモンさんは川の中、それにワン子がやられるのをみすみす見ているだけなんて……考えろ、考えるんだ!!)
「はぁぁぁっはっはっは!! どうします総理? 今ここで辞退すると宣言すれば攻撃はしません」
「何言ってやがる、それにまだ負けちゃいねぇよぉ」
「男は水の中、少女はサイコクッキーに苦戦、その少年では戦力にならない、あなたの得意な狙撃でも釈迦堂君には通用しない。これでもまだ負けていないと?」
「あぁ、それよりもいいのか?このままじゃ自慢のロボットが1機壊されるぞ」
「何を世迷い事を、あの少女ではサイコクッキーの装甲にキズ1つ付けられませんよ」
蘇我の言う通りでサイコクッキーの頑丈な装甲にワン子ではダメージを与えられない。
「いいや、俺が言ってるのは……」
「たああぁぁぁぁぁぁっ!!」
総理が言うと川の水面からドモンが刀で水を切り裂き飛び出て来た。
ドモンは水しぶきを上げながら川原に着地をすると刀を鞘へと納める。
「あいつら、もう許さん!!」
「アナタは!?」
戦いの途中で川から出てきたドモンに驚きを隠せないワン子。
それに彼は姉である百代をも倒す強者、ずっと気になって居た。
「離れてろ、あの機械は俺が倒す!!」
「でもどうやって、何回攻撃してもビクともしないのに!!」
「黙って見てろ!」
ドモンは気を集中させ拳に意識を集中させる。
「超級!! 覇王!!」
そして拳をサイコクッキーに突き出すと溜めていた気を一気に開放した。
「にちりんだあぁぁぁん!!」
「無駄だよ、そんなんじゃ僕のボディーはビクとも――」
放たれた一撃は高温と化しサイコクッキーに直撃する。
熱が装甲を溶かし、衝撃波がボディーを吹き飛ばし、サイコクッキーは煙に包まれた。
煙に包まれて数秒、サイコクッキーはガラクタと化す。
『くぁwせdrftgyふじこlp;@:』
意味不明な音声を出しながらその場から動かなくなったサイコクッキー。
「すごい……一撃で……」
「馬鹿な!? 何なんだ……あいつは……」
その光景を蘇我も橋の上から見ていた。
自慢のサイコクッキーがたったの一撃で破壊されたのに納得が行く筈もない。
そうしている間にもドモンへもう1度橋へと駆け上がって来た。
ドモンを阻むものは居らず蘇我のすぐ後ろへと来てしまう。
「さぁ、どうする? 挟み込んだぞ」
「ぐっ!?」
「絶対絶命とはこのことですな」
釈迦堂は危機的状況であるにも関わらず余裕の表情を崩さない。
「笑っている場合か!! こんな事があってたまるか!!」
蘇我が次にどうするか悩んでいる間にもドモンは跳躍した。
「はぁぁぁぁっ!!」
「あ……ああぁぁぁっ!?」
恐怖する蘇我に拳を叩き込もうとする、でもそれを防ごうとする釈迦堂。
2人の戦いがもう1度始まろうとした。
その時。
「そこまでぇぇぇぇ!!」
大地をも揺らすのではないかと思うくらいに大きな声が響いた。
その主は川神鉄心、彼の一声で戦いは止まってしまう。
「何? どういう事だ!!」
当然抗議するドモンだが鉄心はなだめるように口を開ける。
「これ以上の戦闘は近隣住民にも影響が出る。よって今夜は両者ともに立ち去れ」
「……」
鉄心の言う通りでサイコクッキーの戦闘による被害は広範囲に及んで居る。
それに強者であるこの2人が戦えばさらなる被害は防げない。
その事を今更ながら理解した両チームは誰も口を挟まなかった。
「決着は明日、勝ったチームが賞金を獲得出来る。相打ちの場合、両チームとも賞金はなしじゃ。よいな、決戦は明日!!」
それで2日目の戦いは終わってしまう。
最終決戦の3日目、この戦いで勝負が決まる。
ご意見、ご感想お待ちしております。
次回 3月7日。