女帝が引っかき回すお話   作:天神神楽

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アーニャたんのお姉さんを生み出したくなりました。
アーニァは天使。異論は認めない。
チア姿最高でした。昇天した。
セーラー服もっと着て欲しいお。


第一章
アイドルの頂点


346プロダクション。芸能界に大きな影響力をもつこのプロダクションが、アイドル部門を設立したのが2年前。シンデレラプロジェクト等様々な企画を成功させ、その存在感を確かなものとしていた。

そんな346プロダクションのシンデレラプロジェクトに抜擢された新人三人が、レッスンのためにレッスンルームに向かっていた。

「凛ちゃん、美央ちゃん頑張りましょうね!」

「うん。今まで以上に大変そうだけど……」

「弱気になっちゃ駄目だよ! むしろ私は楽しみだよ!」

期待に胸膨らませ、レッスンルームの前に到着する三人。しかし、中からは音楽が聞こえていた。

「あれ? 誰か使ってるのかな?」

「でも、ここで良いはずだけど」

首を傾げつつ覗いてみると、一人の女性が音楽に合わせてダンスを踊っていた。

そのダンスは激しく、それでいて正確なステップと振りと、それと共に揺れ動く綺麗な銀の長髪は、見ていた三人を魅了した。

「ふぅ……あら? あなたたちは?」

音楽がとまり中の女性が三人に気付く。三人は慌てて中に入り、その女性の正体に気が付く。

「エレーナ・パタノヴァ!? トップアイドルの!?」

美央がその女性がエレーナだと気が付く。

「ふふふ、ごめんなさいね。空いてたから少し貸してもらってたのだけど、いつの間にか時間になってたみたいね。すぐに退くわ」

エレーナが片付けを始めようとすると、そこにトレーナーが入ってくる。

「よし、始めるぞ、っと、エレーナ。お前も踊るか?」

「それも魅力的だけどね。あぁ、あなたたちが美嘉ちゃんのバックダンサーの子達ね。なら、せっかくだから見せてもらおうかしら」

まさかのトップアイドルの見学という事態に三人が慌てる中、そこに城ヶ崎美嘉が入ってくる。

「すみませーん! 前の撮影が押しちゃってーって、エレーナさん!」

エレーナに気が付くと、そのままエレーナに抱きつく。

「あら、後輩が見てるのに甘えんぼさんね。ほら、レッスンをしなくちゃ」

「エレーナさんが見てるんじゃ、頑張らなくちゃですね! さ、後輩ちゃん達! 頑張るわよ!」

やる気満々になった美嘉とともにレッスンを始める三人。今までのレッスンとは異なり、激しい振り付けは、まだまだ新人の三人には苦しいもので、息絶え絶えとなっていた。

「ふふふ、お疲れ様。はい、スポーツドリンクだけど、いいかしら? 美嘉ちゃんもどうぞ」

「ありがとうございまーす!」

美嘉は元気に受け取るが、三人は絶え絶えにしか返事が出来なかった。

「エレーナさん、久しぶりに歌聞かせて下さいよ!」

「さっき踊ってたんだけどね。そうね、三人と出会えた記念に、一曲歌おうかしら」

コホンと軽く息を整え、四人の前に立つエレーナ。ただそれだけなのに、卯月たちはエレーナに見惚れていた。そんな間に、エレーナは歌を歌い始める。アイドルを目指しており、色々なアイドルのステージを見てきた卯月。もちろん、トップアイドルでであるエレーナの曲は全てチェックしていた。しかし、今歌っている歌は初めて聞くものだった。

どこまでも響き渡るような透き通るような歌声。エレーナの非現実とも言えるような美貌と相まって、味気のないレッスンルームが、どこかのお城の舞踏会にいるかのような幻想的な雰囲気に包まれたような気がした。

一番だけを歌い、小さく息を吐く。歌い終えたエレーナに、美嘉が駆け寄った。

「やっぱり凄いですエレーナさん! もしかして、新曲ですか!?」

「えぇ。今度発売する歌よ。《ホシゾラ》っていう曲なんだけど。こっちはカップリングだから本邦初公開かしらね。どうだった?」

「さいっこーです! 絶対にCD買いますから!」

美嘉は興奮気味にエレーナの手を握る。エレーナも嬉しそうに美嘉の頭を撫でる。

「エレーナさん、私もう新人じゃないんですよ?」

「ふふ、美嘉ちゃんは、ずっと私の後輩さんだもの。じゃあ、私はこれで。新人さん達も、頑張ってね」

「「「はい!」」」

憧れの人物にエールを送られ、卯月達は大きな声で返事をした。その返事に満足そうな笑みを浮べるとエレーナはレッスンルームを出ようとした。が、入り口の所でふと立ち止まる。

「そうだ。明日ちょっとご飯に行くつもりだったんだけど、四人とも良ければ一緒にどうかしら?」

「もちろんお供しますよ! 久しぶりだなー!」

美嘉は突然の誘いに、飛び上がらんばかりに喜んでいた。対照的に、卯月達はいいのかどうか困惑していた。

「会社の人達というわけじゃないから、遠慮しなくていいわよ? それに、可愛い新人さん達のお話も聞きたいしね」

「じゃ、じゃあ……」

「その、私達も行かせてもらいます」

「エレーナさんとのご飯……」

卯月の目配せに、凜と未央も遠慮気味に頷いた。

「ふふっ、決まりね。場所と時間とかは後で美嘉ちゃんに連絡するからね。もしかしたら先に始めちゃってるかもしれないけど」

ふふふと微笑みながら、今度こそレッスンルームを出て行くエレーナ。

エレーナが出て行った扉を見つめながら、美嘉がぽつりと口を開く。

「流石《ツァリーツァ》は健在、か」

「《ツァリーツァ》?」

「ロシア語で《女帝》っていう言葉。エレーナさんのあだ名みたいなものよ。全国ツアー、武道館、アリーナ、それに世界ツアー。日本が誇る、名実ともにトップアイドルね。お父さんの出身国であるロシアだと、首相と大統領もエレーナさんのファンみたいね。まさに女帝ね」

エレーナの凄すぎる経歴に、三人は口を開いてしまう。

「私の憧れで、目標よ。あの人に憧れて、モデルの世界に飛び込んで、ここに来たの。良かったわね、三人とも。エレーナさんとご飯だなんて、滅多に出来ないわよ」

美嘉の真剣な言葉に、三人は表情を引き締める。

「さっ、エレーナさんに笑われないように、私達も頑張るわよ!」

「「「はいっ!」」」

前までよりも気合いの入った返事で、残りのレッスンも今まで以上に気合いの入ったものとなっていた。

 

 

 

美嘉達との約束の日、仕事を終えた後、エレーナは社内のカフェで人を待っていた。

346プロだけでなく、日本が誇るトップアイドルの姿に、道行く人々が皆エレーナのことを見ていた。エレーナも、顔見知りのアイドル達には、小さく手を振ったりしていた。

そんなエレーナに近付く人物が一人。

「お待たせしました」

「お疲れ様楓ちゃん。どうする? ちょっと休んでいく?」

「いえ、どうせ向こうで飲むのですから、行きましょう」

エレーナは代金を払うと、楓と一緒に会社を出た。二人とも人気アイドルである。簡単な変装はしているが、存在感からか、道行く人々の視線を集めていた。

エレーナと楓は、行きつけのバー《ステラ》に入る。マスターは二人に気が付くと笑顔を浮べて二人を出迎えた。

「二人で来るのは久しぶりだね。二人ともいつものでいいかい?」

「はい。お願いします」

エレーナは奥のテーブルに座る。マスターはすぐに白ビールとチーズを持ってきた。

「はい、どうぞ。つまむものも簡単に持ってきたよ」

「ありがとうございます、マスター」

「それにしても、いつもの席じゃないの?」

「えぇ。可愛い後輩ちゃんと新人さんがくるから。後でいくつか料理も頼みますから、美味しいの頼みますね」

「えぇ。腕によりをかけて用意させてもらいますよ」

マスターが下がると、二人はグラスを打ち合わせて乾杯をする。一口目で半分以上をなくしたのは、二人とも酒豪であるためである。

「ふぅ……、そう言えば、新曲いい曲ね。CD買ったわよ」

「ありがとうございます。エレーナさんも今度新曲を出すそうで。新曲のしんきょく(進捗)状況はいかがですか?」

相変わらずな楓なのだが、エレーナはクスクスと笑いながら突っ込むことはしない。

「いい感じよ。お披露目ミニライブも決まったし。練習の毎日ね。それに、今度は楓ちゃんとお仕事も一緒にすることだし、頑張らなくっちゃね」

その後も、どんどんと杯を空けていくと、お店の中に入ってきた。

「あら、来たわね。こっちよ、みんな」

エレーナに気が付くと、美嘉達は奥に移動する。楓もいることに気が付くと、新人三人組は驚いた。

「た、高垣楓!? さん」

「あら、この子達が新人さん?」

「えぇ。今日はみんなの話が聞くのが楽しみで楽しみで。マスター、オーダー追加で」

エレーナは、いくつか料理と飲み物を頼む。飲み物を受け取ると、改めて全員で乾杯をする。

「ふぅ。いきなり呼んじゃったけど、大丈夫だったかしら?」

「は、はい! ママっ、お母さんにもきちんと伝えましたから」

「そっか。じゃあ、いっぱい食べてね。今日は私が奢っちゃうから」

「いいんですか! じゃあ、いっぱい食べるぞー!」

笑顔満点でメニューを見る美嘉に対して、やはり卯月達は緊張しているのか、背筋を伸ばしていた。

そんな三人に楓が声をかける。

「そんなに緊張しないで下さい。遠慮なさらずに。ここの料理はとても美味しいですよ」

「じゃ、じゃあ……」

未央が恐る恐る料理に手を伸ばす。そのまま口にした瞬間、顔をとろけさせる。

「お、美味しぃー!」

「ふふ。気に入ってくれて良かったわ。さぁ、二人も食べて下さい」

楓に促されて、卯月と凛も料理を口にし始めた。

「さてと、そろそろ聞かせて頂戴? 貴女たちのこと」

エレーナに見つめられ、思わず顔を赤くしてしまう三人。つっかえつっかえながらも、自分達のことを話した。

「へぇー、凛ちゃんはお花屋さんなの。今度、お邪魔しようかしら。私、お花大好きなの。いえ、絶対にお邪魔させてもらうわね」

「ぜ、是非」

凛は、エレーナが来たときの両親の狼狽振りを想像しつつ頷いた。

「じゃあ、これ、私の連絡先。何かあったら連絡してね。卯月ちゃんと未央ちゃんも」

ニコニコしながら連絡先を交換するエレーナ。それを美嘉が羨ましそうに見つめていた。

「あー、いいなー。エレーナさん、三人には優しいんですね」

「うふふ、私は美嘉ちゃんも大好きよ。それに、新人さんを導くのは私達先輩の役目だもの。それに、お花も見たいしね」

エレーナは、346プロの中でも後輩の面倒見が良いことでも有名である。本人としては、初々しい様子を見るのがほほえましいと思っているだけなのだが、後輩からの人気はすさまじい。

やがて夜も遅くなり、卯月達は先に帰宅した。改めて二人きりとなったエレーナと楓。席をいつものカウンター席に移動し、改めて乾杯をする。今度はビールではなく、日本酒で。

「こくっ、こくっ、ふぅ……やはりマスターの選ぶお酒は美味しいですね」

「あら、色っぽい。マスター、これは?」

「兵庫のお酒で、《夜鷹》というお酒です。旧友に頂いたので、お二人に是非と思いまして」

つまみとしてネギの造りを二人に出すマスター。そんなマスターに、エレーナは徳利をマスターに傾ける。

「どうぞ。マスターもご一緒に」

「おや、こんな美女にお酌されるなんて、長く生きるものです。ちょっと待っていて下さい。今日はお二人の貸し切りにしてしまいましょう」

そういうと、マスターは扉に付いている札を〈CLOSE〉にすると、改めてお猪口を一つ取り出す。それにエレーナは酒を注ぐ。それをマスターは美味しそうに飲む。

「あぁ、やはりエレーナさんに淹れていただいたお酒は絶品ですね」

「あら、マスター。杯が乾いていますよ。今度は私から」

今度は楓が面白そうに笑いながら、酒を注ぐ。マスターも断ることなく楓からの酌を受けていた。

「それにしても、エレーナさんは相変わらずですね」

「え? 何のこと?」

「新人さん達のことです。確かに可愛い子達でしたけどね」

楓も卯月達のことは気に入ったようだった。エレーナの後輩好きのことは誰よりも知っていたので、今回はどこが気に入ったのか気になったのである。

「楓ちゃんはシンデレラプロジェクトって知ってるかしら?」

「えぇ。一端停止していたものですね。たしか武内Pが担当しているとか」

「そ。その中の一員のようなの」

シンデレラプロジェクトの単語を聞き、あ、と何かに気付く楓。

「確かそのプロジェクトって、アーニァちゃんも」

「えぇ。プロデューサーがあしげく通ってスカウトした子達、気になっちゃって。とってもいい子達だったけど」

エレーナはコロコロと笑いながら、杯を空ける。

「これからアーニァがお世話になるし、私もお世話したいしね。今度、武内プロデューサーに話通しておかないとね」

その後のマスターの旅行の土産話を聞いたりしている内に、いつの間にか日を跨いでいた。

「あら、もうこんな時間。ごめんなさいねマスター。長く居着いちゃって」

「いえ、私もお話できてとても楽しかったです」

そろそろお開きにしようと立ち上がるが、楓の足下は少し心許ない。困った妹を見るような目で微笑みつつ、支払いをしようと財布を取るが、それをマスターは止めた。

「今までのエレーナさんのお釣りが溜まりすぎていますので。そこからお支払いしておきますよ」

エレーナは代金のお釣りを受け取っていなかった。エレーナとしては美味しい料理とお酒を出してくれるマスターへのお礼のつもりだったのだが、マスターはしっかりとキープしていたようだった。

「ではお言葉に甘えて。また来ますね。美味しいお酒、楽しみにしてます。楓ちゃん、行きますよ」

「はい。じゃあ、マスター、またますたー」

「キレがまだまだよ」

足下のおぼつかない楓をフォローしつつ、店を出た。終電も終わっており、エレーナは楓を自分のマンションに招くことにした。346プロから30分ほどの所にある高級マンションがエレーナの家である。酔いが醒めてきたのか、先程までよりも足下がはっきりとしていた。

「ごめんなさい、エレーナさん」

「いいの。ウチのベッドが大きいのは知ってるでしょう? 美味しいハーブティーもあるから。リラックスしなくっちゃね」

エレーナはお風呂にお湯を入れると、その間にハーブティーも淹れる。

「ありがとうございます。……あぁ、ほっとしますね」

「ふふ、よかった。軽く温まったら、早く寝ましょう。パジャマ、用意しておくわね」

楓がお風呂に入っている間、クローゼットから二つパジャマを取り出す。結構な頻度で楓を泊らせているので、他のサイズの服をいくつか用意しているのである。

「上がりました」

「あら、早いのね。ごめんね、はい、パジャマ」

タオルを巻いて出てきた楓に、パジャマを渡す。入れ替わりにエレーナも風呂に入り、出てくると楓はソファでウトウトしていた。

「あら、楓ちゃん。こんな所で寝たら風邪ひいちゃいますよ」

「んぅ……、あ、ごめんなさい……」

どうやら楓は限界のようだった。少しふらふらしながら、ベッドに入る。エレーナも一緒にベッドに入るが、クイーンサイズはあるベッドである。二人入ってもまだ余裕がある。しかし、夜はまだ少し冷える時期。早々に眠りについた楓は、エレーナの腕を抱きしめていた。

「あらあら、ふふふ。可愛い二十五歳児さんだこと」

それを払うわけでなく、エレーナは最初の後輩を優しく撫でると自分も眠りについたのであった。

 

 

 

エレーナはレッスンを終え、自販機の前で休憩をしていると、同じくレッスンを終えたアイドルがエレーナの所にやってきた。エレーナはそのアイドルに気が付くと目を輝かせた。

「アーニァ!」

呼ばれたアイドル――アナスタシアは、エレーナに気が付くと、パッと笑みを浮べて駆け寄ってきた。

「スィストラ!」

「アーニァ、今日はレッスン?」

「うん!」

アナスタシアの頭を撫でていると、アナスタシアを追いかけてきたもう一人の女の子がやってきた。

「アーニァちゃん? どうしたの、ってエレーナさん!?」

「あら? あなたは、あぁ、もしかしてシンデレラプロジェクトの?」

アナスタシアがエレーナに抱きついていることに驚いていた。

「あ、私は新田美波です! アーニャちゃん、アナスタシアさん達と一緒にシンデレラプロジェクトでアイドルを目指しています!」

「そんなに畏まらないで。そっか、アーニァちゃんと一緒なのね。それに、声もステキね。アーニァちゃんと仲良くしてあげてね」

「はい!」

美波もエレーナに笑みを浮べられ、嬉しそうに返事をした。エレーナはジュースを買うと、二人に渡した。

「お近づきの印。このジュース、美味しいのよ。疲れた身体には美味しいものよね」

「ありがとです、お姉ちゃん!」

「ありがとうございます。あ、美味しい」

二人の反応にエレーナは満足する。

「お姉ちゃんは、なにしてたですか?」

「私もレッスンよ。新曲のときにちょっとしたライブをすることになって。ちょっとスケジュールがギリギリだから」

「お姉ちゃんの新曲、どんなですか!?」

大好きな姉の新曲ということで、興味津々なアーニァ。美波も憧れの存在であるエレーナも新曲ということでウズウズしている。

「うーん、今回は賑やかな曲よ。カップリング曲は反対にしっとりとした曲よ」

「わぁ……、聞いてみたいです」

エレーナの新曲を想像してウットリとしているアーニァ。そんなアーニァを見てエレーナも嬉しそうだ。

「それなら、今日ラジオの収録があるんだけど、見に行くかしら? ワンフレーズくらいだけど、口ずさむつもりだから」

「そ、その、嬉しいのですけど、大丈夫なんですか?」

「大丈夫だと思うわ。もちろん聞いてみるけどね。二人くらいなら大丈夫よ」

「じゃ、じゃあ……」

「行っていいですか?」

「もちろん。アーニァちゃんに連絡するわ。貴女たちのプロデューサーさんには私から話しておくわ」

一足先に休憩を終えた二人を見送り、早速と言わんばかりに、とある部屋に向かう。ノックをすると、中から低い声が返ってくる。

「失礼します。突然すみません、武内プロデューサー」

エレーナがやってきたのは、シンデレラプロジェクトの執務室。プロジェクトメンバーの待機部屋でもあるのだが、今はアイドル達はいなかった。

「エレーナ、さん? 何か御用でしょうか?」

突然のエレーナの訪問に、武内Pも少し驚いていた。

「いきなりごめんなさい。ちょっと、アーニァ、アナスタシアさんと新田美波さんのことでお話があって」

来訪に驚いていた武内Pだったが、取り敢えずエレーナをソファーにすすめるが、すぐに終わるとして、そのまま話し始めた。

「私、この後ラジオ収録があるのですが、二人の名前を出してもいいでしょうか?」

「アナスタシアさんと新田さんですか? それは構わないのですが」

突然のことに許可は出したが、疑問はあるようである。

「ふふ、後輩さんたちとの繫がりは大切ですので。よければ、私のライブにも呼んでみたいわ。まぁ、そのことはまた今度でしょうけど、確かに了解いただきましたからね」

了解をもらい、部屋を出るエレーナ。そのままレッスンルームに戻るエレーナ。そこではトレーナーが腕を組んで待っていた。

「あら、時間ギリギリだったわね。エレーナにしては珍しい」

「ふふっ、可愛い後輩ちゃんと約束して来ちゃったので。じゃ、再開しましょう」

戻ってきてすぐレッスンを再開する。歌いながらのダンスのレッスン。タイトなスケジュールながらも、殆どをものにしている。しかし、それでもなお高みを目指すために、エレーナはレッスンをおろそかにしたりはしない。

時間いっぱいにレッスンを行い、クールダウンをしていると、トレーナーがドリンクを差し入れてくれた。

「お疲れ様。さすがはエレーナね。もう殆ど完成じゃない」

「ありがとうございます。でも、もっと詰めなくっちゃですよ」

ハードなレッスンの後なのに、疲れた表情を見せずに笑顔であった。

「この後、ラジオの収録なんでしょう? ちょっと休んだ方がいいんじゃないの?」

「まだまだ大丈夫ですよ。美穂ちゃんともお話ししたいですし、軽く汗を拭いたら行きます」

その言葉通り、汗を拭くとすぐに着替え、収録スタジオに向かった。

スタジオと行っても、収録のため、346プロの中にあるスタジオである。すぐに到着すると、すでに来ていた構成作家や音響のスタッフ達に挨拶をする。

「あ、エレーナさん。おはようございます!」

構成作家と軽い打ち合わせをしていた小日向美穂は、エレーナに駆け寄った。その様子に、スタッフ達も苦笑い。

「おはよう、美穂ちゃん。美穂ちゃんとお話ししたかったから、早く来ちゃった。作家さんもお疲れ様です」

エレーナが早く来てくれたことに喜び、打ち合わせをすぐに終わらせてしまう美穂。大体の打ち合わせを終えると、収録までの間、二人でお茶を飲んでいた。

「でも、エレーナさんの新曲、本当に楽しみです。今回はポップの曲ですよね?」

「えぇ。こういう曲は何気に久しぶりだったけど、やっぱり楽しいわね。美穂ちゃんだって、今度のライブ、どんな感じかしら」

「ばっちりです! エレーナさんにも出てもらいたかったですけど」

「それも楽しそうだけどね。ユニットとしては別だから、難しいわね。美穂ちゃんと一緒に歌うのも楽しそうだけど」

エレーナとのユニットを組むということに、目を輝かせる美穂。正直なところ、企画自体持ち上がっていないため、組むと言うことはないだろう。

色々話していると、スタジオの扉がノックされる。

「失礼します。新田美波と申します」

「アナスタシアです」

「二人ともレッスンお疲れ様。さ、まだ少し時間があるからこっちに座って。お茶でいいかしら?」

待っていましたと言わんばかりに、二人を出迎えるエレーナ。出演するわけではないが、初めてのラジオの現場ということで、少し緊張しているようだった。

「彼女がエレーナさんの妹さんですか? 初めまして、私は小日向美穂です。よろしくね?」

「よ、よろしくお願いします、です。お姉ちゃんの妹です」

「そっかー。流石エレーナさんの妹さん。綺麗ですね!」

「ふふん、アーニァちゃんは可愛いのよ。もちろん美波ちゃんも。今日は私の新曲、少し口ずさむでしょ? それを聞いてもらいたくて。それに、ラジオの雰囲気も味わって欲しいしね」

もう少し話そうとすると、監督から始まるとの声。エレーナとしてはもう少し話していたかったのだが、仕事なので仕方がない。美穂と一緒にブースの中に入る。

「さあ、始まりました。小日向美穂の日向ぼっこラジオー。いつもならふつおたなんだけど、今日はステキな、ほんっとーにステキなゲストさんが来ています。先週の告知で知っているとは思いますが、あの世界トップアイドル、エレーナさんがいらっしゃってます! 今日の私はもう、お客さんです。なので、お聞き苦しい所もあるとは思いますが、それは皆さんも分かってくれるはず! これからの約一時間、皆さんも一緒に日向ぼっこしましょうね」

妙に興奮した美穂の挨拶。ジングルが終わると、早速エレーナを紹介する。

「さぁ、早速紹介しましょう! 346プロが誇る最強の《ツァリーツァ》、エレーナさんです!」

「皆さんこんにちは。このラジオでは一年ぶりかしら。エレーナです」

「はい、今仰っていたように、エレーナさんは一年ぶりの出演です。今日は……何と! 新曲のお知らせに来てくれました! しかも、ほんの少しだけ歌ってくれるんです!」

「アカペラだから、申し訳ないですけどね。また後で詳しく紹介しますけど、とても良い曲ですので、楽しみにしててくださいね」

「私も楽しみです! 早速ですが、皆さんのお便りを読んでいきましょう。今回はすさまじい数のお便りが来ています。エレーナさんもお願いしますね」

どん、と置かれたメールの山。その中から渡されたメールを読んでいく。どれもエレーナに対する熱烈なメッセージであった。

「あ、これが最後のメールですね。えーっと、お昼寝ネーム《なめこ》さんです。『小日向さん、そしてエレーナさん、こんにちは』はい、こんにちは」

「こんにちは」

「えっと、『ついに、ついにエレーナさんがひなラジに来てくれました! これでまた一年戦えます!』私も戦えます! でも、今度はもっと早くきてもらいたいですね」

一年ぶりの出演なので、美穂としてはもっと来てもらいたいらしい。

「ふふ、それは監督さん次第ですね。私としてはもっと美穂ちゃんとお仕事したいですけど。そこのことどうなんでしょう?」

「そうですよ、監督。もっと頑張って下さいね。さ、続きです。『そんなエレーナさんに後生一生のお願いがあるのです。どうか、どうか! 告白の言葉を囁いて下さい! そうしてもらえば、このなめこ、一生戦えます!』 ……監督、これ、監督の趣味で選んだでしょ? こんな、こんな、うらやまけしからんお願い、私がお願いしたいくらいですよ!」

少しズレたところで怒っている美穂。監督もわざとらしく視線を逸らしていたが、エレーナとしてはそんな様子も楽しいようだ。

「ふふふ、困ったリスナーさんね。えっと、なめこさんでしたね。では……コホン。『愛していますわ。あなたが困難な道を進むのならば、それを私が、一生をかけて支えます。だから、あなたも私と一緒に歩んで下さい。私は、なめこさんが、大好きです』 ……こんな感じかしら?」

エレーナのまさかの告白セリフに、美穂だけではなく、スタッフ達も固まってしまった。

「美穂ちゃん?」

「……はっ!? す、すみません。……明日はなめこ狩りですね。私でも言ってもらったことないのに、こんな本気の告白してもらえるなんて。エレーナさんも、あんなに本気の告白する必要ないですよ! 私だって言って欲しいですよ!」

ばんばんと机を叩きながら、本気で悔しそうな美穂。そんな美穂に、エレーナは意味ありげに微笑む。それに気付いた美穂は思わずたじろぐ。

「な、何ですか?」

「『そんなに慌てないで。私が好きなのはあなた、よ?』」

囁くように、目を見つめられて言われた美穂は、ボヒュンと顔を沸騰させた。

「ちょ、ちょっと、タンマです……。だめ、本気でドキドキしてます……」

「あらあら、じゃあ私が進めましょうか。そう言えば、先日高垣楓ちゃんと一緒にちょっと飲みに行ったんですけど、思わず飲んじゃって。マスターが貸し切りにしてくれたので、たくさん飲んじゃいました。その時、兵庫の美味しいお酒を出してくれまして、それが凄く美味しかったんです」

「えー!? いいなー、私も連れて行って下さいよー」

復活した美穂だったが、今度は楓が羨ましいようだ。

「ふふ、美穂ちゃんはまだお酒駄目でしょ? それで、楓ちゃんが随分酔っ払っちゃって。終電も過ぎてたし、私の家でお泊まりしたんです。可愛かったですよ、酔っ払ってる楓ちゃん」

「へぇー、いつもの楓さんからは想像出来ないですね。でも、エレーナさんと楓さんって、凄く仲が良いですよね」

「えぇ。楓ちゃんとはモデルの頃からのお友達ですから。同い年だし、346プロでは同期ですからね。仕事を一緒にすることも多いから、この二年間は楓ちゃんと一杯いましたからね。温泉ロケの後だと、スタッフ全員酔いつぶしたりとか。ふふ、美味しいからつい、一晩中飲んじゃいました」

楓とエレーナはその容姿からは想像が出来ないくらいの酒豪である。酒豪だと意識していた男性スタッフ達でも太刀打ち出来ないくらいに。

「は、はは……噂には聞いていましたが、事実だったとは。そのお話も気になるところですが、時間も一杯です。次のコーナーに行ってみましょう!」

未成年の美穂では広げにくい話題だったのか、美穂は次のコーナーに移動させた。

その後も色々なコーナーを終え、新曲の紹介に入る。

「さあ、皆さんお待たせしました! エレーナさんの新曲発表のお時間です! あーもう、楽しみです♡」

「では早速。今回出させていただくのは、《NEWWORLD》という曲です。とても明るい曲で、皆さんにも楽しんでいただけると思っています。それと、カップリング曲の《ホシゾラ》もオススメです。《NEWWORLD》とは反対に静かなバラードなんですけど、こっちもよく出来たと思っています。再来週にCD発売なので、みなさん、買って下さいね?」

「絶対買います、五枚は買います! それでそれで、まだ取って置きのお知らせがあるんですよね?」

「はい。実は発売日にミニライブを開くことになりました。発売日の○月×日、新宿のアニメイツのライブブースで行います。実は事前に募集していたライブチケット、このミニライブのものだったんです。もちろん、当選しなかった方も安心して下さいね。当日、同じく新宿アニメイツでサイン会を行います。こちらは枚数分だけなので、皆さんお早めに」

「私も行っちゃおうかなー。え? 仕事がある? ……マネージャーさんNGが出ました」

しょんぼりーと落ち込む美穂。そんな美穂を尻目に、エレーナは鞄の中から何かを取り出す。それを見て美穂がわなわなとおののく。

「そ、それは……」

「はい。今度のCDです。もちろんサイン入りです。それと、今回だけのオリジナル、キスマーク付きです。ちょっと恥ずかしかったですけど、音響監督さんにやってみろと言われまして。はい、どうぞ」

エレーナに差し出されたCDをふるふると震えながら受け取る美穂。

「あ、ありがとうございます。家宝にします!」

喜びに震える美穂をよそに、番組はエンディング。未だに幸せに浸っている美穂だが、何とか進行をする。

「はぁ~、このまま幸せな時間が続いて欲しいですが、残念ながらエンディングです。今まで言っていなかったですけど、実はステキなゲストさんがいるんですよね」

「はい。実は外に私の妹ちゃんと、そのお友達が来てるんです。あ、でも無関係じゃないんですよ? 実は彼女たち、アイドルの卵さんなんです。とっても可愛い子たちなので、皆さん、応援してあげて下さいね。アーニァちゃんも美波ちゃんも、とっても可愛くてステキな子達ですから」

「私も頑張って欲しいです! さぁ、今日のひなラジ、いかがでしたか? ステキなゲストエレーナさんの新曲披露と、ステキな回でしたね。私もステキなプレゼントを頂きましたし、一足先に楽しませてもらいます。あ、写真もアップするから、ぜひホームページもチェックして下さい。では今日はこの辺で。本日のお相手は、小日向美穂と」

「エレーナでした」

「「お休みなさーい」」

『……はいオッケーです。お疲れ様でした』

監督からのオーケーもでて、一息つくエレーナと美穂。チェックの間、アナスタシアたちと話す二人。

「ふふ~ステキなCDです。アーニャちゃんは、先に聞かせてもらったりするの?」

「ハイ。おきゃくさんの反応を知りたいから、っていっぱい聞かせてもらいました。ワタシ、お姉ちゃんのファン一号ですから!」

「えぇ。いつも初披露するのはアーニャちゃんなの。私の大切なファン第一号。まだちっちゃな時は独占ライブもしてあげたわ」

「ワタシがアイドルになったの、お姉ちゃんに憧れたからです」

「なんて羨ましい。私もエレーナさんの単独ライブ独占したいです」

「ふふ、今度お弁当作ってあげるから。それで勘弁してね」

エレーナの趣味兼特技は料理である。エレーナが気まぐれで作ってきてくれるスタッフへの差し入れ弁当は、アイドル、スタッフ、垂涎の的である。

「はい! お願いします!」

あっさり美穂は陥落した。そんな美穂を微笑ましそうに見つめるエレーナ。監督からもOKが出たので、美穂と別れることにする。

「ぶー、私もエレーナさんのお家にお邪魔したかったです」

「美穂ちゃんはお仕事でしょう? また今度招待するわね。その時は美穂ちゃんが好きなもの作ってあげるわね」

「じゃあじゃあ、オムライス作って下さい。フワトロの!」

「分かったわ。美味しいオムライス作ってあげる。じゃあ、また連絡するわね」

そうして、アナスタシア達とスタジオを出て、346プロを出る。

「じゃあ、今日は美波ちゃんの好きな料理を作ってあげる。何が良いかしら?」

「い、良いんですか?」

突然トップアイドルの自宅に招待され、さらに料理を作ってくれるというのである。妹であるアナスタシアはウキウキしているが、新人アイドルである美波は緊張していた。

「もちろんよ。何でもいいのよ」

「じゃ、じゃあパスタが食べたいです」

このまま断るのも失礼と思い、ふと思いついたパスタをリクエストする。

「パスタか……、じゃあ今日は美波ちゃんと知り合えた特別な日だから、パスタアルフォルノにしましょう。アーニァちゃんも良いかしら?」

「はい! 美波、お姉ちゃんのパスタ、とってもおいしいです!」

「アーニァも手伝ってね」

「はい!」

途中の商店街で材料を購入することにしたのだが、美波は変装しているとは言え、エレーナが来て大丈夫なのかと心配していた。しかし。

「あら、エレーナちゃん! 美味しいトマト仕入れてるよ! 買っててよ」

「まぁ、美味しそうなトマト。じゃあ、少し多めに買っちゃおうかしら。お母さんオススメのはどれかしら?」

「エレーナちゃんには取って置きの渡しちゃうよ! はい、トマトとあと、ジャガイモもオマケしちゃうよ!」

袋一杯にトマトとジャガイモを入れてエレーナに渡す八百屋の女将さん。エレーナが店を去るときも手を振っていた。

その後に訪れたお店でも、色々なオマケをもらい、三人の両手にはパンパンの袋が握られていた。

「ごめんね。招待するのに、荷物持ってもらっちゃって」

「い、いえ。でも、エレーナさん、凄くお店の人に人気なんですね」

「北海道からこっちに来たときからずっとここのお店を使ってるからかしら。それに、ここの皆さんはとっても優しいから。毎回オマケをくれるから、たまにお料理のお裾分けもしないといけないのだけれど」

それも楽しいんだけどね、とクスクス笑いながらいうエレーナ。

商店街から五分もかからずに、エレーナのマンションに到着する。部屋に着くとすぐに料理の準備に取りかかる。

「今日は一杯オマケしてもらったから、豪華にしなくちゃね。二人はゆっくりしてて。すぐにお茶を出すから」

「あ、私も手伝います」

美波も手伝おうとしたが、エレーナは首を横に振る。

「今日は美波ちゃんはお客さんなんだから。アーニァちゃん、お部屋に案内してあげて。あ、何だったら、シアタールームで映画でも見ててちょうだい。映画のDVDならたくさんあるから」

そう言うと、エレーナはキッチンに入ってしまう。その後、すぐにお茶のセットを受け取り、アナスタシアと美波は、言われた通りにシアタールームに入る。

「わぁ……すごい大きい」

美波はシアタールームの大きさに圧倒される。

「美波、なに見るですか?」

アナスタシアは早速映画を探していた。美波もアナスタシアの元に行こうとすると、ふとあるものに目がとまる。

「あら、これって」

「どうしましたか?」

アナスタシアも美波の所に戻ると、そのDVDを見ると首を傾げる。そのDVDはパッケージに入ったものではなく、白いディスクのものであった。ラベルには《ニューイヤーライブ》と書かれていた。

「もしかして、お姉ちゃんのライブのかも」

「今年のライブ? でも、まだDVDの発売はしてないはずだけど……」

そのディスクを二人はジッと見つめ、無言でうなずき合うと、そのディスクをプレーヤーの中に入れる。

映像はすぐに始まり、アリーナに設置されたステージが映っていた。そして、会場が暗くなると、エレーナのデビュー曲《Queen’s Garden》のイントロが流れ始め、観客の声援が大きくなる。

すると、突然ステージから花火があがり、同時にエレーナがステージ下から飛び上がって、それと同時に歌とダンスが始まった。

速いテンポで激しいダンスにもかかわらず、エレーナの声がぶれることはなく、高いソプラノの歌声が、アリーナ全体に響き渡る。

最初の曲が終わり、音楽が止まると、盛大な歓声が沸き上がった。

『みなさーん! あけましておめでとーございまーす! 大切な日に、私のライブに来てくれてありがとー!』

エレーナの呼びかけに、観客も手を振り上げて答えている。

『今日のライブは皆さんへのお年玉! たくさん歌うから、最後まで着いてきて下さいね! じゃあ、二曲目は、皆さんからのリクエスト! 《AnotherSky》、行きますよ!』

エレーナが世界のトップアイドルとして君臨したきっかけとなった曲《AnotherSky》。英語で美しい歌い上げるこの曲は、父親の母国ロシアでは、未だにCD売り上げはランキング上位であり、カーネギーホールのステージでは、スタンディングオベーションを受けた曲でもある。世界中で《至高の天鐘》と讃えられた曲である。

最初の曲とは違い、落ち着いた音楽が流れ始める。先程までの歓声はピタリと静まりかえる。

そして、エレーナが口を開いた瞬間、美波は天使の鐘が鳴り響いたと感じた。

どこまでも透き通る歌声。エレーナの持ち味であるソプラノの音色。歌うエレーナの物憂げな眼差し。全てが見事に組み合わさり、暗く照明が落とされた会場を、柔らかな光で包むような錯覚を覚える。スクリーン越しでも、その光は感じられ、それを聞く美波は、シアタールームから飛び出し、満天の星空の下に放り出されたような感覚に陥っていた。

「スゴイです……」

「えぇ……、凄い綺麗……」

アナスタシアと美波は、エレーナの歌声に魅了されていた。笑顔で観客の声援に応えるエレーナは、まさしくアイドル。自分達が目指す先の頂点が、スクリーンには映されていた。

「本当にスゴイです。キラキラで、ポカポカで、ズヴィズダ……」

「えぇ。お星様ね。それに、冷たいんじゃなくて、包みこんでくれるような……、星空みたいな」

二人は、エレーナのライブの映像を食い入るように見つめる。いつか、自分達もその舞台に立つことを夢見るように。気が付けば、休憩の時間となっていた。一時間以上が過ぎていたのである。

二人は、無意識に大きな息を吐き出す。見ている間、息を潜めていたからだった。

そんなところに、エレーナが入ってきた。

「二人とも、料理出来たわよーって、あら?」

エレーナは、二人が見ているものに気が付くと、アラアラと顔を赤くする。

「ごめんなさい、この間のライブのDVDを置きっ放しにしてたみたい」

「い、いえっ! 凄く素晴らしい歌で! 感動して!」

美波は自分の感動を伝えようとしたが、しどろもどろになってしまった。そんな美波の頭を優しく撫でる。

「ありがと、美波ちゃん」

「エレーナさん……」

「さ、ここでお話も素敵だけど、料理が冷めちゃうわ。ご飯にしましょ」

シアタールームから出ると、トマトのソースの良い香りがリビングに立ちこめていた。

 

 

 

夕食を食べ終え、際ほどのライブの残りを見終わると、十時近くになっていた。

「遅くなっちゃったわね。アーニァちゃんはここに泊まっていきなさいね。美波ちゃんは私が送っていくわね」

「うん。お風呂の準備しておくね」

「だ、大丈夫ですよ。歩いて帰れますから」

美波は恐縮していたのだが、エレーナは首を横に振る。

「駄目駄目。美波ちゃんは可愛いんだから、暗いところを一人でだなんて、危ないわ。じゃあ、一緒に来て」

「は、はい。じゃあ、またねアーニァちゃん」

「はい。また明日です、美波」

エレーナは車のキーを取ると、上着を羽織って玄関に向かう。美波も慌ててエレーナの後を追いかける。

地下の駐車場には、高級な車がたくさん並んでいる。その中の青みがかった黒の車。エレーナは鍵を開けて美波を助手席に座らせる。内装も革張りで、高級車であることがよく分かる。

「す、凄い車ですね」

エンジンを暖めている間、美波は車を見た感想を言う。

「そうねー、これ、大統領がプレゼントしてくれた車だから」

「え゛?」

日常の会話からはまず出ないであろう「大統領」という言葉。絶句する美波を余所に、エレーナは話を続ける。

「ロシアでライブをやったときに、大統領がプレゼントしてくれたの。大統領のリムジンを乗用車サイズにデザインしてくれたの。流石装甲車級のリムジンのエンジンね。すっごく安定しているわね」

それに、ポケットマネーで出してくれたみたいだから、予算に関しても安心ね、と笑顔で言うエレーナ。しかし、それを聞いた美波はますます緊張してしまう。

「よし、そろそろ温まったかしら。じゃあ、出発するわね」

そう言ってアクセルをふむエレーナ。エレーナが言った通り、静かに走り出す。

「うん、いい走り出し。美波ちゃん、ナビ、よろしくね」

「は、はい。あ、ここを左折です」

慌てて道を教える美波。信号で止まると、エレーナは美波に話しかけた。

「今日はごめんね。いきなり招待しちゃって」

「いえ。とても楽しかったです。それに、興味深いお話も聞けましたし」

信号が青に変わり、車が走り出す。

「それなら良かったわ。ねぇ、シンデレラプロジェクトはどう? 楽しいかしら?」

今度はシンデレラプロジェクトの話だった。

「はい。とっても楽しいです。まだ、本格的な仕事はまだですけど……大変ではありますけど、それでも楽しいです」

「そっか。それなら、大丈夫ね。アーニァちゃんも毎日楽しそうにメールしてくれるし、美波ちゃんの話もよくしてくれるの。きっと、すぐにデビューできるわ。美波ちゃん、歌上手って聞いたわよ」

「そ、そんなっ、まだまだです」

「ふふっ、それはレッスンを重ねて自信を持つしかないわね」

「自信ですか?」

「そっ。歌が上手くなる云々については、大切なのは自信。自信を持って歌えないなら、どんなに歌が上手い人でも、お客さんは感動してくれないわ。反対に、少しくらいヘタっぴでも、自信を持って歌えた方が、お客さんの心に届く歌を歌えるものよ」

エレーナがレッスンを行うのは、自信を持つためである。アイドルに関する才能を殆ど持ち合わせていると言われるエレーナ。初見の歌でもダンスでも、殆ど完成型に歌い上げる。それでもなお、他のアイドル達よりも多くのレッスンをこなしている。それは、一重に誰かの心に届けるためと言っているのである。

「自信、ですか……」

「そう、自信。それに、初ステージなんて、誰でも緊張しっぱなしで、がちがちになっちゃうんだから、それなら、空元気でも何でも、自分が一番自信満々にならなくちゃ。それだけで、喉が開いてくれるわ」

話している内に、美波のマンションに到着する。エレーナは車を入り口につける。

「ありがとうございました」

「いいえ。これからも、アーニァちゃんと仲良くしてあげてね」

そうしてエレーナは手を振って美波がマンションに入るのを見送る。

「さてと、早く帰って、アーニァちゃんと一緒にお風呂に入りましょ」

エレーナは高級車を先程よりも速く走らせて、自分のマンションに戻るのだった。

 

 

 

「エレーナさん、今日はありがとうございました」

インタビューを終え、雑誌の記者達が、カフェから去って行く。エレーナは追加でコーヒーを頼むと、マネージャーに連絡をする。

「……あ、華耶さん? 今日はこれでお仕事終わりよね? うん、うん。じゃあ、美嘉ちゃんたちのライブに行くから、もしかしたら電話出られないかも知れないから、メールして下さい」

電話を切ると同時に、コーヒーが届く。やはり、絵になる姿に、周りの視線を集めていた。そんな彼女の元に、スーツ姿の女性が歩いてくる。その女性もまた美人だったが、アイドルではなく、出来る女性という出で立ちであった。

「エレーナ」

「あら、華耶さん。どうしたの? 何かお仕事でも入っちゃたかしら?」

柳華耶。エレーナをここまで押し上げた人物。エレーナをアイドルとしてスカウトして、僅か一年で世界レベルのアイドルまで成長させた名プロデューサーであり、エレーナのマネージャーでもある。

「いえ、部長が私も着いていくように、と。城ヶ崎さんたちにもご挨拶しておきたいですし、それに、あの子達、島村さんたちも出られるのですから、あなたのお目付役です」

「もう、最後のが本音でしょ?大丈夫。今日は《彼女たち》には、口出しはしないわ」

エレーナの言葉を、華耶は無表情で聞いていた。だが、すぐにため息をつくと、アイスコーヒーを頼む。

「これを飲んだらいきましょう。車、用意していますから」

「流石、敏腕プロデューサー。じゃあ、私の大切な人との時間を楽しみましょうか」

「……変なことを言わないで下さい」

無表情に言う華耶だったが、濃密な時間を過ごしたエレーナは、僅かに頬を赤くしているのを見逃さなかった。

その後、美嘉達のライブ会場に向かうエレーナと美嘉。事前に連絡をしていたため、関係者入り口から入る。すれ違うスタッフ達から、驚きの表情でお辞儀をされつつ、出演者控え室に向かう。

「こんにちは! 差し入れ持ってきましたよー!」

途中で買ってきた、絶品アイスを中で控え室で待機していた美嘉達出演者に見せる。

「あー!? エレーナさん、来てくれたんですか!」

美嘉が、嬉しそうにエレーナに飛びついた。美嘉を抱きしめながら、他の出演者たちに頭を下げる。

「お疲れ様。どうかしら、調子は?」

そんなエレーナに、川島瑞樹が頭を下げる。

「上々ですよ。でも、エレーナさんが来てくれるなんて嬉しいです」

「はい、アイス。美味しい、私のお気に入りよ。これならライブ前でも大丈夫だと思うから、食べて食べて。特に、茜ちゃんは少しクールダウンしないと」

エレーナは、何故かウズウズしている日野茜に、自分のお気に入りであるバニラアイスを茜に渡す。

「ありがとーございまっす! ……んー!! おいしー!!」

茜が大袈裟に喜んでいるのを見て、控え室の緊張が少し緩む。他の皆も、それぞれ差し入れのアイスの美味しさに舌鼓を打っていた。

「美嘉ちゃん、今日は出来そう?」

「はい! バッチリです!」

そういう美嘉の表情は、笑顔そのもの。そんあ表情を見たエレーナは、安心したように微笑んだ。

「なら、全力で見せてあげなさいな。美嘉ちゃんの自信たっぷりの歌をね」

「はい! 私の本気、見せちゃいます! だから、エレーナさんも私に惚れちゃって下さいね!」

美嘉の笑顔は自信に溢れるものだった。何の心配もいらないと感じたエレーナは、そのまま優しく美嘉のことを抱きしめる。

「え、エレーナさん!?」

「ふふっ、私はもう美嘉ちゃんにメロメロよ。そうね、また惚れ直させてくれたなら、何でも好きなこと叶えてあげる」

そういうエレーナは、何よりも嬉しそうで、抱きしめられて慌てながらも嬉しそうにしている美嘉よりもずっと嬉しそうだった。

「あーっ! 美嘉ちゃんズルいです!」

そんな美嘉に、美穂は羨ましそうに二人に近寄る。そんな微笑ましい様子に、他の皆もクスクスと微笑んでいた。

「エレーナ、そろそろ」

「そうね。じゃあ、私はこれで。皆さん、頑張って下さいね」

「「「はいっ!!」」」

エレーナの声援に、五人のアイドル達は力一杯に頷いた。

控え室から客席に移動していると、華耶がエレーナに声をかける。

「……安心、しましたか?」

華耶の言葉に、エレーナは少し考える。

「……そうね。私の後輩ちゃん達が、あんなに真っ直ぐに育ってくれている。それだけで、良かったと思ったわ」

その言葉は、少し暗い。しかし、そこに絶望の色はなく、寂しさが込められていた。

「それに、美嘉ちゃんが私を惚れ直してくれるって言っていたんだもの。しっかり聞かないとね」

今までの感情を払い、笑顔で言うエレーナに、華耶も同様に笑みを浮べて頷いた。

「そうね、そうしないと失礼だわ」

「あっ、華耶さん笑ったわね。ふふっ、やっぱり美人さん」

「そ、そんなことはどうでも良いでしょう!」

慌てる華耶をからかいつつ、エレーナは観客席に向かうのだった。

 

 

 

二階の端の前に飛び出している席。用意されていた席に座る。薄々とエレーナの存在に気付いていた観客達も、彼女を邪魔するようなことはしない。

「後十分くらいね。一曲目は、《お願いシンデレラ》ね。あの曲、私も歌ってみたいわ」

「……あなたは姫というか、女帝でしょう。お客さんも戸惑います」

「あら、失礼ね。っと、噂をすれば、シンデレラの卵達の登場ね」

後ろを振り向くと、たくさんの女の子たちがエレーナ達の席に向かってきていた。その中にいたアナスタシアが、エレーナがいることに気が付いた。

「お姉ちゃん! お姉ちゃんも卯月たちのステージ、見に来たですか?」

駆け寄ってきたアナスタシアを抱きしめながら、奥にいる皆にも顔を向ける。

「みんなのステージをね。それより、アーニァちゃん。あなたのお友達を紹介して欲しいわ」

エレーナに視線を向けられ、美波達は皆背筋を伸ばす。そんな様子に、エレーナはクスクスと微笑む。

「あ、はい! えっと、シンデレラプロジェクトの仲間です!」

アナスタシアは、エレーナから離れると、他の皆の所に戻る。

それぞれ名前を言ったりと自己紹介をすると、エレーナの近くに座る。

「それで、卯月ちゃんたちはどんな感じかしら? 初めてのステージだから、緊張してなければ良いけど」

「エレーナさんは、三人に合わなかったんですか?」

「えぇ。だって、初ステージ前に、先輩が来たらますます緊張しちゃうでしょ?」

美波達は、自分の初ステージにエレーナが来たときの状況を思い浮かべる。そして、その時、緊張でガチガチになると確信した。

「あ、でもみんなの初ステージには絶対に行くからね。だから、緊張に負けないように、精一杯レッスンすること」

エレーナの笑顔に、一同は笑みを固まらせてしまった。

すると、会場の照明が暗くなる。

「あ、始まるわ」

お城の時計がスクリーンに映し出され、針が十二時の位置で止まると、ステージに美嘉達五人が出てきた。

そのまま、《お願いシンデレラ》を歌い上げ、盛大な拍手を送られる。

そのまま美穂が引き継ぎ、そして四曲目。美嘉の《TOKIMEKIエスカレート》である。

イントロが始まり、美嘉が飛び出してくると、盛大な歓声が起こる。そして、美嘉がダンスを始める瞬間、ステージ下から、卯月達三人が飛び出して。

「よし!」

見事に着地し、そのままダンスを始めた。エレーナは三人が飛び出してきたときの笑顔に、ステージの成功を確信した。そして、その笑顔を維持したまま、四人のダンスは続く。

そんな四人を見て、エレーナは噛み締めるように頷く。

「エレーナ……」

そんなエレーナのことを少し心配するような、それでいてホッとしたような表情で見つめていた。

そして、美嘉の曲が終わり、盛大な拍手に包まれる中、美嘉が卯月にマイクを向ける。戸惑いつつも、卯月は両隣にいる凜と未央を見て、三人で最高! と、手をあげながら笑顔で叫んだ。

「そっか、最高、か。ふふ、みんな、惚れ直しちゃったわ」

「そうですね。これは素晴らしいステージでした」

拍手をしながら、小さく呟いたエレーナに答える華耶。そんな華耶も少し興奮しているようだった。

「ふふふ、そうね。最高のステージだったわ。まだまだ私もウカウカしていられないわ。華耶さん、敏腕っぷりを一杯見せて下さいね?」

そんなエレーナの笑みに、華耶は自信たっぷりの笑顔で答える。

「任せて下さい。本気、ださせていただきます」

そういう華耶の表情は、抜群に格好良いものであった。

 

 

 

大成功と言っていいステージが終わり、控え室に向かうと、卯月達が武内Pに自分達の想いを告げていた。

そんな四人を見つめる美嘉達に、エレーナが声をかける。

「お疲れ様、みんな。最高のステージだったわ」

「エレーナさん! ふふっ、エレーナさんにそう言って貰えて、すっごく嬉しいです!」

興奮した美穂が、エレーナの手を取りながらそう言った。となりにいた美嘉も、エレーナの身体に抱きつく。

「それで、どうでしたか? 惚れ直してくれましたか!?」

「もちろんよ。私は、美嘉ちゃんにメロメロなんだから」

優しく囁くような言い方に、美嘉は顔を真っ赤にさせた。

「え、エレーナさん! そんなに艶めかしい声で話しかけないで下さい! 嬉しいけど、嬉しすぎます!」

「あら、ごめんなさい。でも、約束通り、惚れ直させてくれたんだから、何でも言うこと聞いてあげる」

エレーナの言葉に、美嘉や美穂だけでなく、その場にいたスタッフ全員がピタリと止まる。その様子に気が付いたエレーナは、何故かアラアラと嬉しそうに笑い、華耶が呆れたようにため息をつく。そんな二人の様子に、黙っていた全員が盛大に笑ってしまった。

「アラアラ、少し恥ずかしいわ。で、何がいい? 今日はサービスとして、簡単なことなら聞いてあげるわ。別枠でね」

その言葉に、美嘉はその意味に気が付くと、再び顔を沸騰させ、アワアワと慌て出す。その様子を、エレーナは楽しそうに見つめている。

隣で美穂が羨ましそうに見つめており、他の三人の出演者は、クスクス笑いながら見つめており、卯月達は興味津々に見つめている。他のスタッフ達も同様であった。

まさに四面楚歌。美嘉は嬉しい悲鳴が脳内に鳴り響いていた。

「だ」

「だ?」

聞き返すエレーナは、もうはち切れんばかりの笑顔。楽しくて楽しくて仕方がない様子であった。

そんなエレーナに至近距離で見つめられて、口から出た言葉は。

「抱きしめて下さい……」

美嘉の言葉に、美嘉本人を含めた全員が固まる。そんな中、動けたのは、その言葉を投げかけられたエレーナ。

「喜んで!」

エレーナは、満面の笑みで、美嘉の身体を包みこむ。頭を胸に抱え込み。優しく、キュッと抱きしめた。

「お疲れ様、美嘉ちゃん。本当に、本当に、ステキなステージだったわ。美嘉ちゃんの気持ち、しっかりと心に届いたわ」

「エレーナさん……」

モゾモゾと、胸の中からエレーナを見上げる美嘉。

「ステキな後輩でいてくれてありがとう。私に抱きしめさせてくれて、本当にありがとう」

慈愛に満ちた言葉と笑み、そして抱擁に、美嘉は堪えていた涙をあふれ出した。

「エレーナさぁん……」

「アラアラ、泣き虫さんね」

そう言いながら、美嘉の頭を撫でるエレーナ。その様子に、他の皆も微笑ましそうに優しく見つめていた。

抱きしめること数分。見つめられていることに気が付いた美嘉は、急に恥ずかしくなり、モゾモゾと動き出す。

「え、エレーナさん。そろそろ」

「だーめ。こんなに可愛い美嘉ちゃん、滅多に見れないもの」

「あー! お姉ちゃん、ズルーい!」

そんな二人の所に、美嘉の妹である莉嘉が飛び込んでくる。それに、エレーナは目を輝かせた。

「あらあらあらあら! 莉嘉ちゃんも一緒ね!」

「きゃぁ!」

エレーナは顔をとろけさせて、莉嘉も一緒に二人を抱きしめる。美嘉は照れの限界で目をぐるぐるさせて、莉嘉は楽しそうに抱きしめられていた。

その後、華耶が、いつまでも二人を離さないエレーナに見かねて、頭に渾身のチョップをたたき込むまで続くのだった。

 




アーニァたんは大天使。
アーニァたんは女神。ゴッデス。
アーニァたんは世界そのもの。
くそぅ、スタドリが足りない……。
クールよデレよ。
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