華「そういえば、アナスタシアさんがアニメのED曲を歌うことになったようですよ」
エ「そうなの? ふふふ、アーニァちゃん、歌上手だから楽しみだわ」
~アニメ視聴中~
エ「……中々ぶっ飛んだアニメね。流石クールジャパン。っと、EDだわ」
ア『S○XS○XS○X』
エ「スタッフ出せやゴラァ!!!」
因みに。
エ「……これはこれで」
にしようか迷いました。
この日のエレーナの仕事は、楓達とは別の場所での仕事であった。そして、華耶は楓達の方に出向いており、この日のエレーナの担当プロデューサーはというと。
「でもまさか、あなたが今日の担当だとは思わなかったわ。武内P」
シンデレラプロジェクトの武内Pであった。
「今日はシンデレラプロジェクトの皆さんはお休みでしたから。柳さんには及ばないかも知れませんが」
「あら、そんなことないじゃない。そうだ、折角だから、みんなのお話を聞かせてくれないかしら?」
エレーナとしても、妹が参加しているプロジェクトには興味があった。
「皆さんとても頑張っています。今度、神崎蘭子さんのCDデビューも決定した所ですし、これから本格始動となります」
「蘭子ちゃんか。もしかして、やみのまっ、とか歌詞に入ってるの?」
ビシッと蘭子のポーズを真似しながら尋ねるエレーナに、武内Pは困ったような顔をしていた。
「流石に歌詞には入っていません。《Rosenburg Engel》という名前でデビューしてもらうことになりました」
「薔薇、ね。それに天使っていうのも蘭子ちゃんにピッタリね。へにゃってなっちゃう蘭子ちゃん、とっても可愛いし、いつもの蘭子ちゃんの声は凜々しいから、色々な曲が出来るわね」
「はい。ですので今回は堕天使をモチーフにした曲にしました。来週PVの撮影もあります」
「あら、もしかして、見に行ってもいいのかしら?」
来週はエレーナも連休がある。ライブやインタビューと仕事詰めだったため、まとまった休みが用意されているのである。
「はい。エレーナさんがよければ是非見に来て下さい。皆さん、エレーナさんにお見せしたいと言っていましたから」
「是非見に行かせてもらうわ。その時までに、蘭子ちゃん語、えっと、熊本弁勉強しておくわ。挨拶は、闇に飲まれよ、よね」
「それは……、いえ、何でもありません」
「ふふっ、あ、ここよね?」
今日訪れているのは京都の桂離宮。この日の仕事は、この最高傑作と言われる庭園でのインタビューであった。
着替えを済ませ、用意された間に案内される。部屋の中にはもう一人、小早川紗枝がいた。
「遅くなってごめんなさいね、紗枝ちゃん」
「そんなことありまへん。それより、お着物、もの凄くお似合いですなぁ、エレーナはん」
紗枝の言うとおり、今のエレーナの格好は着物であった。黒の着物はエレーナの銀髪に映えており、非常に良く似合っていた。
「エレーナはんのお着物、まるでお伽噺の中の妖精さんみたいやなぁ」
「それをいうなら紗枝ちゃんだって、お姫様みたいよ。紗枝はん、っていう感じね」
「あらあら、それは嬉しいですわぁ。それに、こんな素敵な場所を用意していただいて。ウチもこのお部屋に入るのは初めてやわぁ」
庭園を一望できるこの間は、普段は非公開の部屋であるが、今回特別にしようが許可されたのである。
そして、紗枝が選ばれたのは、京都出身のアイドルであり、何度かエレーナとも仕事をしたことがあるからであった。
「そう言えば、今日は華耶はんとは一緒じゃないんですなぁ」
「えぇ。今日は武内Pと一緒。華耶さんは楓ちゃんと文香ちゃんと一緒よ」
「文香はんといえば、ふみふみ、どすな。年上の方やけど、ほんと、可愛い方でいらしました」
「でしょう? ふみっとするとふみって言うの。もし許されるなら、一日中ふみふみしていたいわ」
「その時はウチもご一緒させて下さいね」
いつもは華耶が止めるのだが、この場にはいない。さらに、紗枝も乗ってしまうため、話を止めるものはいなかった。
「エレーナさん、小早川さん。そろそろ時間ですので」
「あら、もうそんな時間? それじゃあ、今日はよろしくね」
「はい。よろしく頼み申します」
この日のインタビューは、日本文化についてであった。エレーナはロシア人とのハーフであるが、日本の文化に精通しているため、このような主旨の企画によく呼ばれているのである。
「そういえば、以前お聞きしたことがあるのですが、エレーナさんは日本舞踊もお上手なのですよね?」
「えぇ。ロシアにいた頃から母に教わっていましたし、日本に来てからは、先生にも教えてもらいましたから。346プロに入ったときは、専門の先生もいたので、そちらでも教えてもらっています」
「エレーナはんの日舞は、本当に綺麗なんですよ。まるで、お月さんが待っているかのようで、夢の中にいるかのようでなぁ」
「あら、それは言い過ぎよ。紗枝ちゃんだって、踊っているときはとても綺麗よ」
「あらあら~、エレーナはんにそんなこと言われたら、顔が熱くなってしまいますわぁ」
そう言いながら、本気で照れている紗枝の顔は真っ赤になっていた。
「ははは。では、どうして日舞を始めたのですか?」
「ふふふ、そんなに大したことではないの。一度、日本の時代劇を見たときに、綺麗な着物を着た女性が出てきて、それで自分も着てみたいって思ったから始めたの。初めて母から教わったときは、厳しくてビックリしたわ」
その頃のことを思い出したのか、エレーナはクスクス笑ってしまった。
「ウチもお稽古を始めたばかりのころは泣いておりましたなぁ。エレーナさんも一緒だったなんて、何だか安心しましたわ」
「あら、私だって小さな女の子だったころはあるのよ? アーニァちゃんが生まれてからかしらね、お姉ちゃんでいようって思うようになったのは。って、当然といえば当然ね」
姉たるもの、最も優れた存在でなければならない、というのが、エレーナのモットーである。
インタビューも終わり、庭園での撮影に移る。着物姿の二人は、日本庭園の背景にとても映えていた。
撮影も終わり、職員の好意で着物のままお茶を飲んでいた。
「お疲れ様、紗枝ちゃん。それにしても、美味しいお茶とお菓子ね」
「ほんに。エレーナはんみたいな美人さんと一緒に飲むお茶ほど美味しいものはあらしまへん。ほんま、今日のお仕事は楽しゅうございました」
お茶を飲み、ほうと息をつく紗枝の姿は非常に艶やかであった。
エレーナにジッと見つめられていることに気が付いた紗枝は、顔を赤くさせる。
「そ、そんなに見つめられると照れてしまいます」
「ふふふ、ごめんね。でも、今の紗枝ちゃん、本当に素敵だったから」
「うぅぅ……エレーナはんのそんな声で言われたら、惚れてしまいますわ」
「それじゃあこれからデートしましょうか。武内P、電車の時間にはまだ余裕あるわよね?」
部屋の隅に控えていた武内Pに声を掛けると、武内Pはすぐにスケジュールをチェックした。
「はい。まだ時間はあります。駅付近でしたら、ゆっくりできると思います」
「ありがとう。じゃあ、紗枝はん? もう一席ご一緒してくだはりますか?」
「ふふふ。是非ともご一緒させていただきやす」
お互いにクスクスと笑いながら、離宮を後にする、武内Pの運転する車で駅前に着くと、武内Pは一人離れようとしたが、それをエレーナはとめ、一緒にお茶をのむことにした。
「でも、プロデューサーはんと一緒にお茶する、てのも、なかなか新鮮ですなぁ」
「私は華耶さんと結構お茶をするけど、346プロのプロデューサーって、忙しいものね。武内Pは、シンデレラプロジェクトの皆とお茶したりはしないの?」
「私はしませんね。こうしてアイドルの方とお茶をするのは初めてです。千川さんとは打ち合わせがてら食事に行くことはあるのですが」
その話を聞いた瞬間、エレーナと紗枝の目が光った、ような気がした。
「へぇ、ちひろさんと。どんな所で食べるの?」
「そうですね、時間が遅くなることも多いので、居酒屋になることも多いです。仕事の話をするので、個室を取ることも多いですね」
「そら、中々興味深いですなぁ。ちひろはん言うたら、難攻不落の魔王城と言われるほどのお方やないか。そんなお方と一緒にでぇとだなんて、武内はんも、なかなかのお手前で。人は見かけによりませんなぁ」
紗枝もこういう類いの話は大歓迎ならしく、ぐいぐいと身を乗り出してきた。ここで己の失言に気が付いた武内Pだったが、時既に遅しであった。
「そっかぁ、武内Pはちひろさんと一番仲がいいのね。これは凛ちゃんがご機嫌ナナメになっちゃうわね」
「あらあらぁ~、武内はんは罪作りなお方ですなぁ」
「で、ですからそのような意味では……」
「ほらほら、吐いちゃいなさい。色恋云々は置いておくとしても、どんな女の子がお好み? 凛ちゃん? それとも美波ちゃん? あ、もしかして蘭子ちゃんとか? でも、アーニャちゃんは駄目よ?」
「いえいえ、川島はんやまゆはん辺りかもしれまへん。小梅はんは……色々と危険なかほりがしますなぁ」
「で、ですから……」
もうタジタジである。一頻り聞いて満足したのか、二人は一息入れた。
「それにしても、この二年でうちの事務所も沢山のアイドルが出てきたわね」
「ウチはまだまだ入ったばかりやから、アイドル部門が出来る前のことは知りまへんけど、どんな感じやったんですか?」
「そのころから346プロは大手だったから、沢山のモデルや女優さんがいたわ。楓ちゃんやまゆちゃん、それに美嘉ちゃん達ね。346カフェの安部ななちゃんなんかはアイドル部門に直接きた子よ」
「私はスカウトされたクチやったから、そこら辺のことはよく知りまへんでした。エレーナはんはいつ頃入社したんどす?」
「私は二十歳の頃だから、五年前ね。ロシアから日本に来た時に、空港でお茶を飲んでたら華耶さんにスカウトされたの。実は、私は殆ど北海道にはいなかったのよ」
エレーナが346プロに入ったのは、日本に来てすぐであった。エレーナに一目惚れした華耶が、名刺を渡していたのである。一度北海道に行ったが、すぐに東京に出てきたのである。当時、エレーナは飛び級で学士号を取得していたため、就職先を探そうとしていたので、半月後にすぐに東京に出てきていたのである。華耶と生活をしていたのはその頃である。
「因みに、武内Pにはその頃からお世話になっているわ。私は部門が出来る前に試験的にアイドルになったから、華耶さんも色々忙しくて、よくフォローに来てくれてたの。ね?」
「はい。アイドル部門の設置はその頃から決まっていましたから、私もマネージャーのお手伝いをさせて頂いていました。柳さんは私の先輩ですから」
華耶は、年齢こそ若いが、プロデューサー歴は長い。加えて、多くのアイドルやモデルや女優のプロデュースをしていたため、346プロ内での影響力は大きい。
「シンデレラプロジェクトは今の346プロの大切なプロジェクトだからね。みんなとっても仲がいいから、これからが楽しみだわ。皆のCDデビューも決まっているのでしょう?」
「はい。順次発表していく予定です」
「ふふっ、それじゃあ、華耶さんにお願いして共演させてもらおうかしら。ふふふ、姉妹共演なんて楽しみだわ」
「エレーナはんとアナスタシアはんとのステージやったら、是非とも見させて貰いたいですわ。お二人とも綺麗な御髪やから、神秘的なステージになるんでしょうなぁ」
アナスタシアが持つ神秘的なイメージは、ラブライカのファンにかなり人気がある。エレーナも普段はとても明るいが、過去のステージにおいて、神秘的なドレスの衣装を来て登場したとき、一万人以上の観客を黙らせたという伝説を持っている。その幻想的な姿をみた女性ファン達は、男達に興味を持てなくなったという伝説も作った。
「で、実際の所どうなのかしら? 共演とか出来そう?」
「……いずれはお願いしたいと考えています。ですが今は彼女たちの足場を固める時期なので、もう少し先になるかと」
「ふふふ、じゃあ皆をしっかりと導いてあげて下さいね、プロデューサーさん?」
エレーナの微笑みに、変装をしているのにも拘わらず、周囲の皆が顔を赤らめていた。それを直接言われた武内Pは、誤魔化すように手を首にやっていた。
「あらあら、エレーナさんはもっと罪作りなお方でしたなぁ。エレーナはん、帰りの新幹線は一緒に座ってもいいですか?」
「もちろんよ。個室を取って貰ったから、ゆっくり出来るわ。武内Pは別の席みたいだけど。一緒でもよかったのに」
「……からかわないで下さい」
流石にこれには武内Pも白旗をあげるしかなかった。