女帝が引っかき回すお話   作:天神神楽

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おひさしぶりです。
最近はデレステやり過ぎて書くのが遅くなりました。
近況報告。
ふみふみSSレアゲットしました。
ふみふみSS+Lv90のエレーナPがいたら、それは私です。


ある夜のお話

 

ある夜、エレーナはパソコンでとある人物と会話をしていた。

「それにしても、こうしてお話するのは、ロスでのライブ以来でしたね」

『そういえばそうだったな。とは言っても、私はアイドル部門には携わっていないから、当然といえは当然だが』

その相手は美城常務。最近事務所の一部で噂になっている張本人である。

「ふふふ、こうして連絡先は教えあっているのですから、もっとお話させてくださいな。メールでもいいんですよ」

『善処しよう、とだけ言っておこう。それで、わざわざ連絡してきたのは噂の確認というわけではないのだろう?』

美城常務の鋭い視線にも、エレーナは全く怯むことなく切り返した。

「あら、それはそれで事実なのですけど。まぁ、常務の言うとおり、一つお話しておきたいことがありまして」

『それが、この送ってきた企画書、という訳か。簡単に目を通したが、どうしてここには君の名前しかないのかな?』

エレーナが美城常務に送ったのは、先日楓と話していた企画の企画書である。しかし、その企画書にはエレーナの名前しかなく、本来ならば無ければならない華耶の名前がなかった。

「どうしてもなにも、まだ華耶さんには話していないからです。このことを知っているのは、私と楓ちゃんと、美城常務、あ、バーのマスターもいるから計四人ですね」

『まだ私的な企画書だから構わないが……ともかく、どうして柳くんではなく、私に連絡をしてきたのだ?』

常務が聞いてきたのはまさしく本題。エレーナは笑みを少し強めると、自身の考えを常務に伝えた。

その提案を聞いた常務は、少し考え込むと顔を上げた。

『いいだろう。君がそのような企画を持っていること、考えておく。しかし、企画自体は君ではなく柳くんから出すように』

「分かっています。もちろん華耶さんがNGを出したらまた考えます。では今日のところは失礼いたします」

『あぁ。……何かあったらメールしなさい。そちらはもう夜だ。アイドルの顔に隈があってはいけないからな』

「あら、それは大変。ふふふ、では」

通信を切ると、エレーナはソファに腰かける。この日は文香との本談義もないため、エレーナ一人の時間である。エレーナはテーブルに残っていたウォッカを一気に空ける。

「ふふふ、何だかワクワクしてきたわ。美嘉ちゃん達と触れあうのも最高だけど、自分から動くのも久しぶり」

今でこそ、346プロにアイドル部門が正式に設立され、多くのプロデューサーのサポートによる運営が為されているが、エレーナが試験的にアイドルをしていた時には、エレーナ自身が企画を提出し、華耶とともにステージを作り上げてきた。今とは異なり、プロデューサー自体が少なかったため、エレーナは華耶の仕事を見て、プロデューサーの仕事を学んでいたのである。

世界のトップアイドルたるエレーナがプロデューサーになることは考えていなかったが、それでもその頃に築いたパイプはエレーナにとって重要な財産になっていた。

「さてと、常務には釘を刺されたけど、お手本くらいは作っておかなくちゃね」

そういうとエレーナはたちあがり、奥の防音室に入った。

 

「か~や~さんっ」

エレーナの猫なで声を聞いた華耶は、迫り来る苦労の予感を感じ取っていた。

そしてそれは勘違いなどではなく、とびきりの企画(厄介事)であった。

「……企画自体には文句はありません。面白いとも思いますし、チャレンジする意味もあると思います」

「華耶さんならそう言ってくれると思っていたわ」

分かっているくせにと思いつつ、何を言っても無駄であることを熟知している華耶は、喉まで出てきていた恨み言を飲み込んだ。それを見つめるエレーナの笑みが恨めしい。

「それとね、参考資料という感じで一曲歌ってみたの。流すわね」

そう言ってエレーナが持ってきたCDをパソコンに入れる。そして流れてきた曲は《Ma Donma》。エレーナの出した歌の中で、最も美しく、難しいと評価されている曲である。

当然ながら、この難曲をエレーナは美しく歌い上げることができる。その証拠に、この曲はエレーナが出した曲の中でも上位の人気を誇っている。

華耶もこの曲は気に入っていたため、繰り返しきいていたが、今流れている《Ma Donma》の出来には驚愕していた。

「エレーナ、この企画のコンセプトは、まさしく歌声なのね?」

「そうよ。アイドルに必要な要素の《Vi》、《Da》、そして《Vo》。その内の歌声を取り上げた企画。アイドルでも、歌手でもなく、《歌姫》の素質を持つお姫様を探す企画なの」

「《DIVA PROGETTO》、イタリア語なのは元義を残すためかしら?」

「えぇ。主役を飾れる歌声を持つ娘に歌ってもらうの。だから、誰が、ということ以上に、どこで、ということの方が難しいかもしれないわ」

エレーナとしても、楓のときのように指名はせずとも、何人かに目星はつけている。

しかし、その舞台をどうするかについてはまだ未定な箇所が多かった。

大舞台に関しては問題ない。場所の確保という課題はあるが、そこで何をやるのかという企画は立てやすい。

しかし、小さな舞台で考えると、どうやるか、というかとに関してはエレーナも決めかねていた。小さな舞台が駄目だということではなく、舞台に比べて浮いてしまいかねないのであった。

エレーナや楓が、個人でステージに立つのならば、まだ問題はないのだが、《DIVA PROGETTO》として立とうとすると、舞台が完全に負けてしまう可能性があるのである。

「一番簡単なのは、大きな舞台だけを用意することでしょう。エレーナと楓さんがいる、ということを考えれば、不思議ではありません。それに《歌姫》という存在の意味を考えても合ってはいます」

「お城の小さなバルコニーのお姫様を眺めて恋い焦がれるのも素敵なことだけどね。でもそれだと、これまでの346プロのカラーとずれてしまいかねないわ」

346プロのアイドルは個性豊かであり、各々がファンに近い位置で活動している。シンデレラプロジェクトのメンバーは勿論、楓やエレーナもその姿勢は大切にしている。

それを崩しかねないこの企画は、更なる飛躍をもたらすものであり、同時にこれまでのものを壊しかねないものでもあった。

「変革ということならそれでもいいけど、私はそれを理由としていないの。一つのことを極めようとすることの達成感を、その成果をお披露目したときの喜びを感じてもらいたい。そして、私自身も感じたいと思っているわ」

エレーナの偽りのない想いを華耶はしっかりと感じ取った。そこまでの想いを抱いているのならば、華耶はこの企画を落とすきにはなれなかった。

「分かったわ。それで、いつから本格的に始動しましょうか」

「それなら決めているわ。私たちのライブの後に動きだそうとおもってるわ」

華耶が美城常務の件を知らないはずもなく、華耶はエレーナのことをじっと見つめる。

「本気?」

「本気よ。私の夢の一つを叶えるためだもの。簡単な道じゃつまらないわ」

それを聞いた華耶は、深い溜め息を吐いた。

「じゃあ、取り敢えず私の方で細かい所を詰めておくわ。曲は書いてきてるの?」

「イメージ程度ならあるけど、今回はお願いしようと思っているの」

「お願い? どなたにですか?」

華耶としても、作詞作曲を依頼するならば早くしなければならない。しかし、その名前を聞いた瞬間、もう一度愕然とするはめとなる。

「作詞、佐久啓、作曲、大林美星。この二人にお願いしたいと思っているわ」

やられた、と思いつつ、これが成立したときのメリットが次々と浮かんできていた。

「連絡などは?」

「流石にしていないわ。華耶さんに相談していないのに、お願いなんて出来ないから」

「……分かりました。楓さんのプロデューサーには至急連絡しておきます。できる限り時間を作ってもらうように」

「私はちょっと早いけど、このままスタジオに行っているわ。華耶さんは予定が決まったら来て。スタッフには私から伝えておくわ」

エレーナは、華耶といくつか情報を確認すると部屋を出る。そしてそのまま346プロ内の録音スタジオに向かった。

その途中、渡り廊下を歩いていると、庭でみくと李衣菜が何やら言い合っていた。

何事かと首を傾げたが、流石に仕事があるので気になりつつもスタジオに向かおうとする。すると、休憩所のベンチに武内Pが座っていた。

「ふぅ……」

「お疲れさまです。休憩ですか?」

突然声をかけられ、武内Pは慌てて後ろを振り向いた。

「エレーナさん」

「ふふふ、最後のユニットはあの二人なのね。とってもいいユニットね」

エレーナがそう言うと、武内Pは驚いたように目を開く。

「あら? 変なことを言ったつもりはないのだけど」

「あ、いえ、すみませんでした」

武内Pはそのまま立ち去ろうとしたが、エレーナはそれを止めた。

「武内P。どうしてそのような反応をしたのか、教えてくれませんか?」

武内Pは首もとに手をやり、困ったように考えたが、観念してエレーナに李衣菜とみくのユニットについて説明した。

その話を聞いたエレーナは、思わずクスクスと笑ってしまった。

「エレーナさん?」

「ふふふ、ごめんなさい。ふふ、仲が悪いのではないかということですか。でも、武内Pはそんなことないと思っているのでしょう?」

「はい。あの二人ならば歌詞を書き上げてくれると信じています」

そう言いきる武内Pの目を見たエレーナは、満足そうに頷いた。

「なら、心配する必要はないですね。じゃあ、先輩からの差し入れとして、ジュースを二人に持っていってくれませんか?」

エレーナはスタドリを二本買うと、それを武内Pに手渡す。

「それは構わないのですが、エレーナさんが直接お渡しになってもいいのではないでしょうか?」

「そうしたいのはやまやまなんですが、流石に急がないといけないので」

気が付けばエレーナの仕事の時間が迫ってきていた。

「……それは、失礼しました。お仕事頑張って下さい」

「ありがとうございます。では」

エレーナは武内Pと別れ、スタジオに向かう。そこには既に華耶が来ていた。

「ごめんなさい、お待たせしちゃったわね」

「いえいえ、まだ時間には余裕がありますから。エレーナさん基準だと確かにギリギリですけどね」

今日の番組担当の女性プロデューサーが、苦笑しながらエレーナに挨拶をする。他の出演者にも挨拶をすると、華耶の元へ向かう。

「珍しくギリギリですね。何かあったのですか?」

「あったといえばあったけど、心配するようなことではないわ。ちょっと、後輩ちゃんに差し入れをね」

エレーナの言葉に華耶は首を傾げたが、いつものことかと納得した。

「ともかく、例の件に関しては、楓さんのプロデューサーには伝えておきました。後はあちらの返事待ちです」

「ありがとう華耶さん。それじゃ、今日もお仕事頑張らなくっちゃね」

エレーナは笑顔でそう言うと、打ち合わせのためにスタッフ達の元へ向かう。

そんなエレーナのことを見つめながら、華耶は小さく溜め息をついた。

「ああいう時のエレーナは、本当に魅力的なんですけどね……」

しかし華耶にとって、普段の自分を振り回してくるエレーナのことも嫌いではなかった。

「全く……私も重症ですね」

誰にも聞こえないように呟くと、華耶も打ち合わせのためにエレーナ達の元へ向かったのだった。

 

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