女帝が引っかき回すお話   作:天神神楽

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今回、オリジナル展開になります。
賛否両論あるかと思いますが、ご了承下さい。


大切な人の代わりは、大切な人

 

  

 会場に響き渡る、時計の針の音。そして、オルゴールの音色が徐々に響き渡る。

 徐々に会場のボルテージが上がるなか、大きな鐘の音が響くと、天上の鐘の音が更に鳴り響く。

 

 ──お願い、シンデレラ。

 

 最初のフレーズは、ソロの歌声。この歌声の持ち主は、参加者に名を連ねてはいなかった。それ以前に、この曲を歌ったこともなかった。

 だが、それでも。この歌声を聞き間違えるような者は、数万人の中には一人もいなかった。

 天上の鐘と謳われ、世界中のファンを感動に震わせ、その歌声で数万人を黙らせる、まさに女帝《ツァリーツァ》。

 ソロが終わり、楓と並んで登場したエレーナの姿を見た会場のファン達は、一曲目にも拘わらず、力の限りの歓声を上げたのだった。

 「真夏の夜の前に、私達の《ツァリーツァ》からのプレゼントでーす!」

 「皆さーん、準備はいいかしらー!」

 楓と瑞樹の問いかけに、ボルテージを一気に最高潮まで押し上げられた会場は、手を挙げて応える。

 それを受け取ったエレーナは、高らかに宣言する。

 「346プロサマーアイドルフェス、スタート!!」

 エレーナの宣言に、会場は大声援を以て応えたのであった。

 

 

 『346プロサマーアイドルフェス、スタート!!』

 会場の大声援を控え室で聞いていたCPの面々は、エレーナが世界トップアイドルと呼ばれる所以を実感していた。

 「凄いです……」

 「うん。エレーナさん、一瞬で会場を虜にしてる」

 そう呟いた卯月と凜だけでなく、他のメンバーも会場のボルテージを一気に最高潮まで盛り上げたエレーナの実力に驚愕していたのである。

 「あわ……緊張してきました」

 「智絵里ちゃん、少し声だしする?」

 緊張を口にした智絵里に、美波はそう提案した。智絵里も頷いていたが、そんな中、アナスタシアは心配そうな表情で美波を見つめる。

 「美波、大丈夫ですか?」

 「うん。私もエレーナさんの歌を聞いたら緊張してきちゃって」

 そう言うと、美波と智絵里は控え室を出て空いている部屋に向かう。

 その途中、二人はとある人物とすれ違った。

 「あら? 新田さんと緒方さん?」

 

 

 その頃、歌を歌い終えたエレーナは、盛大な拍手に送られステージを降りた。

 「お疲れ様です、エレーナさん」

 一番に声を掛けたのは、隣で歌っていた楓であった。二人は更衣室に向かいながら話をする。

 「楓ちゃんこそお疲れ様。初めて歌ったけど、やっぱり楽しい曲ね」

 「今回はちょっとお姫様というより女王寄りでしたけど。アダルトなシンデレラでドキドキしましたよ?」

 フェスは時間との勝負である。会話をしつつも、急いで次の衣装に着替える。特に、エレーナと楓の衣装はドレス衣装なため、スタッフの助けもいるのである。

 「あ、エレーナさん、お疲れ様です!」

 先に着替えを始めていた美嘉が、エレーナに気が付く。

 「お疲れ様。美嘉ちゃんの《TOKIMEKIエスカレート》楽しみなの。だから、後ろからコールしていくから宜しくね♪」

 「あはっ、じゃあ、いつもより声張り上げていきますね!」

 お互いの曲について話していると、ふと扉の方が騒がしくなっているのに気が付く。

 「あら? どうしたのかしら?」

 「私、着替え終わったから見てきますね?」

 先に着替え終わった美嘉が、外に行き様子を伺いにいった。

 「ごめんなさい、ちょっと見てきても大丈夫かしら?」

 服自体は着替え終わっていたエレーナは、スタッフに断りを入れて美嘉の後を追う。

 外に出てみると、医務室の前にCPのメンバーが集まっていた。だが、そこには美波やアナスタシアの姿はない。

 と、そこに文香が走ってきた。

 「文香ちゃん、何かトラブルがおきたの?」

 「あ、エレーナさんっ。それが、新田さんが……」

 文香の説明を聞いたエレーナは、何かを考え、あることを文香に尋ねる。 

 「文香ちゃん、私とやったレッスン、今でも出来るかしら?」

 

 

 「新田さんの出演を認めるわけには、いけません。……申し訳ありません」

 武内Pの通告に、美波は声にならない慟哭をあげる。

 室内が悲痛な雰囲気に包まれる中、ちひろが遠慮がちに口を開く。

 「……ラブライカが出られないとなると、プログラムの変更が必要ですね」

 その言葉に美波はバッと顔をあげる。

 「待ってください!! 私は、私の管理不足だから仕方ありません。だけど、だけどっ、アーニャちゃんだけは何とか出してあげて下さい!!」

 あまりの剣幕に、アナスタシアが美波の肩を抑える。

 「だって、あんなに頑張ってきたのに……」

 「美波……」

 美波の嗚咽だけが響く中、ガチャリと扉が開く。部屋に入ってきたのは、エレーナと文香であった。

 「エレーナさん……」

 エレーナにあわせる顔がないと思った美波は、思わず顔を反らしてしまう。だが、エレーナはベットの脇に屈むと、そのまま美波のことを抱き締めた。

 「そんなに大きな声を出したら、疲れちゃうわ。だから、落ち着きましょう?」

 「エレーナさぁん……」

 エレーナの慈愛に溢れた声に、美波はエレーナの胸に顔を埋めて涙を流す。

 「一杯一杯頑張ったのよね? だから、今だけは休んで? 美波ちゃんの心配なら、私達も協力出来るかもしれないから」

 「エレーナ、さん?」

 エレーナの協力という言葉に、美波は顔をあげて尋ね返す。

 それに笑顔だけで応えると、エレーナは武内Pの方を向いた。

 「武内P。私からこのようなことを言うのは無礼なことだと承知して提案をさせていただきます」

 「はい……」

 真剣なエレーナの言葉に、武内Pも神妙に返事をする。

 「ラブライカの《Memories》、文香ちゃんならば、アーニャちゃんに合わせることが出来ます」

 「……そうですか」

 武内Pは、エレーナの提案に首元に手をおき考える。

 「練習のとき、ですか?」

 「えぇ。文香ちゃんのダンスレッスンのとき、《Memorise》も練習していたんです。《TITANIA》のライブの為の練習の時にですけど」

 「しかし、歌の方は……」

 「あら、歌の先生は私ですよ? 美波ちゃんと比べるとちょっとアルトかも知れませんけど、アーニャちゃんとなら丁度いいと思います」

 武内Pは、再び考え込むと顔をあげた。

 「私としては、それもいいかと思います。ですが……」

 「それは私も承知しています。ですから、アーニャちゃん、美波ちゃん」

 エレーナは振り返ると、アナスタシアと美波に問いかける。

 「ラブライカの美波ちゃんの代わりに、《TITANIA》の文香ちゃんが入ることに賛成かしら?」

 その提案に、美波は少し考えると小さく頷く。

 「私は……私の不注意でこんなことになってしまいました。だけど、私達と一緒に練習をしてくれた鷺沢さんなら、アーニャちゃんを輝かせてくれると信じています」

 「美波……」

 「そっか。じゃあ、アーニャちゃんは?」

 続いてエレーナはアナスタシアに問いかける。

 「……私も、美波と出られないの、悲しいです。でも、文香となら、美波に安心してもらえると思います」

 美波もアナスタシアも、代役を立てるということを理解し、納得した。

 それを聞き届けたエレーナは、笑顔を浮かべると、二人を抱き締めた。

 「ありがとう、二人とも。……そうと決まれば、CPのみんなにも説明しなくっちゃね」

 そう言うと、美波のことをちひろに任せ、エレーナは武内P、アナスタシア、そして文香と共にCPの控え室に向かった。

 その途中、武内Pは文香に話しかけた。

 「その、先程はお願いをしてしまいましたが、鷺沢さんは宜しかったのですか?」

 「は、はい。お手伝いが出来るのならば、是非とも、と思っています。プロジェクトのメンバーではないのにやらせていただくのは恐縮ではありますが……」

 「それは……いえ、受けてくださったこと、本当に感謝します」

 二人の会話を聞きつつ、エレーナはアナスタシアに話しかける。

 「こんなことになってしまったけど、アーニャちゃん、大丈夫かしら?」

 「確かに、残念です。でも、文香ともたくさん練習しました。だから、不安、ありません」

 「そっか。なら、美波ちゃんを安心させるために精一杯楽しんで。それが、一番よ」

 「はい!」

 アナスタシアからもわだかまりがなくなった頃、エレーナ達は控え室に着いた。中では、メンバー達が心配そうな表情をしていた。

 その中から、未央が一番に武内Pに声を掛ける。

 「プロデューサー、みなみんの体調は!?」

 その質問に、武内Pは高熱な為、出演は出来ないことを皆に伝える。皆、絶句したが、理由に納得をしてしまった為、何も言うことが出来なかった。

 そんななか、武内Pが文香が美波の代わりに《Memoris》のステージに乗ることを告げた。

 「これは、エレーナさんの提案であり、柳プロデューサーの許可も降り、そして、アナスタシアさんと新田さんの願い、でもあります。ですが……」

 そこまで言うと、武内Pは一度口を閉じる。エレーナがそれを引き継ごうとしたが、武内Pが首を横に振ったため、エレーナは引き下がった。

 「ですが、皆さんの心に影をさしてしまうのであれば、他の案を考えてもよいと、私は考えています」

 「他の、案?」

 凜の呟きに、今度はエレーナが答える。

 「今回は文香ちゃんを推薦したわ。だけど、他のユニットから代役を立てるということに不安があるのも事実だと思うの。だから、もし、CPから代役を立てるのなら、蘭子ちゃん」

 「は、はいっ!?」

 突然名指しされた蘭子は、驚きで飛び上がる。

 「合宿でアーニャちゃんと美波ちゃんと一緒に練習したわよね? もし、蘭子ちゃんが出たいというなら、私が責任をもって、本番までに形にしてみせるわ。私と楓ちゃんの出番はラストだから支障はないからね」

 エレーナの言葉に、蘭子は真剣な表情で考える。

 「ツァリーツァの……いえ、エレーナさん」

 蘭子は普段の言葉遣いでなく、真剣な言葉でエレーナに問いかけた。

 「私、合宿でエレーナさんにスペシャルレッスンしてもらって、誰かと一緒に歌うことの楽しさを知りました。だから、もし、出られるのならアーニャちゃんと一緒に出てみたい」

 「…………」

 蘭子の一生懸命な言葉に、エレーナは真剣な表情で聞き入る。

 「だけど、エレーナさんが、アーニャちゃんのことを誰よりも大切に想っているエレーナさんが、文香さんのことを推薦したのなら、私は文香さんとアーニャちゃんの《Memorise》を見てみたいです」

 蘭子の言葉を聞いたエレーナは、小さく頷く。他のメンバーも蘭子の心からの言葉を聞き、今回の件について納得していた。

 武内Pは、皆の決意を確認すると、改めて結論を口にする。

 「それでは、ラブライカの《Memorise》は、新田さんの代わりとして鷺沢文香さんに出演していただきます。鷺沢さん、急な話となり申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」

 武内Pに頭を下げられ、文香はアワアワと慌ててしまう。

 「あ、頭をあげて下さい。……まだまだ若輩者ではありますが、アナスタシアさんを託してくださった新田さんの為にも、そして皆さんの為にも、心からお受けします」

 文香の言葉を聞いたCPのメンバーは、改めて文香を加えて円陣を組む。美波の代わりに中心となったのは未央。

 「不肖、本田未央。みなみんの代わりに音頭を取らせていただきます!」

 「未央……ふざけないの」

 凜の嗜めに、みなクスクス笑ってしまう。

 「あはは。では……こんなときだからこそ、いつも以上に頑張ろう! シンデレラプロジェクト、アーンド、《TITANIA》、ファイトー」

 「「「オー!!!」」」

 小さなシンデレラの卵達の輝く姿を、ドレス姿の女帝はとても嬉しそうに微笑みながら見守るのであった。

 




因みに、私はラブランコは愛しています。
アナスタシア×ふみふみ……ふみあーにゃ(てじ○ーにゃの発音で)とでも呼ぶべきか。
次回は、ふみあーにゃの《Memorise》とエレーナと楓のステージの予定です。
エレーナと楓は、最難関の曲の予定。……歌詞考えるかもしれないので時間がかかるかも。もし挫折したら早めに挙げます。
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