女帝が引っかき回すお話   作:天神神楽

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そろそろ一期部分を終わらせなければ……
本日2話目です。


その一歩は階段を昇る

 雨に続いて、雷も鳴り始めたため、ライブは一時中止となった。

 「幸い一時的な通り雨みたいだから、このまま中止になることはなさそうね」

 エレーナ達も控室に戻っており、ニュースを見て安心していた。

 「それにしても、アーニャちゃんと文香ちゃんのステージ、凄かったわね。これもエレーナさんが仕込んだの?」

 同じ控室にいた瑞樹が、先ほどのステージのことを称賛していた。楓たちと共にいた文香が恥ずかし気に頭を下げていた。

 「えぇ。とはいっても文香ちゃんには色んな曲を練習させていたから、何とかなったようなものね。最近体力がついてきたのだけど、文香ちゃん、ダンスがとっても上手いのよ」

 「そ、そんなことはありません。エレーナさん達に比べたら……」

 「あら文香ちゃん。エレーナさんと比べちゃったらダメよ。この子、プロダンサーの人たちにレッスンを頼まれるくらいなんだから」

 そう笑いながら言われたエレーナは、頬を膨らませる。

 「酷いわ瑞樹さん。あ、それなら瑞樹さんも一緒に、《目指せMadonna》のスペシャルダンスレッスンを……」

 「やめて!! それ、プロダンサーが死屍累々になったやつじゃない!」

 「でも、評価は上々よ?」

 「だから、それは専門の人用でしょう! 私がやったら死んじゃうわよ」

 冗談ではなく、本気で必死な瑞樹の反応に、同じ部屋にいた美嘉たちアイドルは苦笑するしかなかった。

 「もう、冗談なのに」

 「貴女の冗談は命に関わりかねないのよ」

 ぐったりする瑞樹に、エレーナは微笑みつつ席を立つ。

 「あら、どうしたの?」

 「そろそろ止んだ頃かなと思って。ちょっとステージに行ってくるわ」

 「あ、じゃあ私も一緒に行きます」

 「私も行きます。《TITANIA》全員で行きましょう」

 エレーナに続き、楓と文香も立ち上がった。

 廊下に出ると、スタッフたちが忙しそうに駆け回っていた。

 「佳境ねぇ」

 「のんきに言ってますけど、大丈夫でしょうか?」

 楓は心配そうにしていたが、エレーナはあまり心配そうにはしていなかった。

 「それは大丈夫そうよ。それより、お客さんが少なくなっちゃってるかが心配ね。卯月ちゃんたちの為にも頑張らなくちゃね」

 そういうエレーナは華耶を探していた。

 「……何か悪寒が」

 再開に向けて支持を出していた華耶は不意に悪寒を感じていた。

 「あ、いたわ。華耶さーん」

 楓と文香を伴って現れたエレーナに、華耶は今の悪寒の原因を察知した。

 「元凶か……」

 「へ? どうしたの?」

 流石に首を傾げたエレーナだったが、華耶は気にせず眼鏡の位置を直すだけだった。

 「なんでもないわ。で、何を企んでいるの?」

 「企んでいるだなんて。それで、再開は出来そうなんでしょう?」

 「えぇ。雨自体はもう止んでいるし、空も晴れてきているわ」

 「じゃあ、あとはお客さんを呼び戻すだけね」

 エレーナの言葉と笑みに、華耶はすべてを察しため息をついた。

 「……ちょっと待っていなさい。各所に確認を取るから、それまで待っていて」

 「ふふふ、大好きよ華耶さん」

 エレーナは華耶の頬にキスをすると、楓たちと共に相談を始めていた。

 「全く……こちら柳です。ステージ再開の前に、一つ提案があります」

 この華耶の提案は、すぐさま可決されたのであった。

 

 

 

 一方、ステージ再開を武内Pから告げられた卯月達は、ステージの袖に来ていた。

 「やっぱりお客さんまだ少ないですね」

 武内Pから、まだ観客が戻ってきていていないことを告げられていたが、三人ともそれに悲観することはなかった。

 「でも、エレーナさん達、何をやるんだろう?」

 凛の言葉に、卯月と未央も首を傾げていた。武内Pからは《プレゼントがある》としか聞かされていないため、エレーナ達が何をするかは知らなかった。

 そんな中、エレーナ達《TITANIA》がステージ上に現れた。その衣装に、卯月が歓声を上げた。

 「わぁー! 皆さん、とっても綺麗です!!」

 卯月の言葉の通り、エレーナ達は豪奢なドレスをまとっていた。

 エレーナは真っ赤なドレスを、楓は漆黒のドレス、文香は輝く薄い羽が付いた薄緑のドレスを。その姿は女王と妖精達を彷彿とさせていた。

 「みなさーん!! ちょっと雨が降っちゃったけど、まだまだ熱は冷めてないですよねー!」

 「ちょっと早いですが、私たち妖精からのサプライズですよー」

 「ま、まだまだライブは続きます。続いては《New Generations》の皆さんが歌います!」

 少々やけくそ気味な文香に、エレーナは苦笑気味。

 「私の可愛い可愛い後輩ちゃんのステージを、皆さんは見なくていいのかしら? 女王様の命令よ? 皆さん、直ちにステージ前に集合よー!!」

 「あ、落ち着いて、ゆっくり来てくださいね? オチはつけないでくださいねー」

 楓の言葉が聞いたのか、観客たちは落ち着いてステージ前に戻ってきた。

 「ふふふ、それでこそ皆さんね。じゃあ、私たちは失礼するけど、皆さんはおっきな声援で迎えて下さいねー」

 エレーナは袖に戻る直前、卯月達に向けてウインクを飛ばした。

 先輩の激励を受け取った卯月達はお互いに頷きあう。そして、歓声が待つステージに一歩踏み出した。

 「初めまして! 《New Generations》です!!」

 その声を、エレーナを笑顔で聞いていたのであった。

 「……さ、私はもう一人連れてこないとね」

 「エレーナさん?」

 ステージから離れようとするエレーナに、文香は声をかけた。

 「文香ちゃん。今日は振り回しちゃってごめんなさいね。大変だったでしょう?」

 「い、いえっ。大変ではありましたけど、とても楽しかったです」

 そう笑顔で言う文香のことをエレーナは思わず抱きしめてしまう。

 「ふ、ふぁ!?」

 「ありがとう文香ちゃん。私、こんなにも健気な子とユニットを組めて幸せよ」

 「あら、私は違うのですか?」

 抱き合う二人に、楓も乗っかってきた。

 「もちろん楓ちゃんもよ!」

 「きゃっ」

 文香と一緒に抱きしめられた楓は、嬉しそうに悲鳴を上げた。

 「ともかく、CPのもう一人のメンバーを連れてこなくっちゃ」

 「でも、美波さんは熱が……」

 文香は美波の体調を心配していたが、エレーナは何かを確信していた。

 「美波ちゃんは大丈夫よ。だけど、寝ていたから、髪の毛を整えてあげなくちゃ。文香ちゃんも一緒に来る?」

 「は、はい!」

 「私も行きたいところですが、《Madonna》の練習をしなくちゃいけませんから、残っていますね」

 「えぇ。一度くらいしか最終確認できないけど、大丈夫?」

 エレーナの言葉に、楓は自信をもって頷いた。

 「私は《ツァリーツァ》の相棒候補ですよ? それくらい出来なければその資格はありませんよ」

 その言葉に、エレーナは安心したように頷き返した。

 「じゃあ文香ちゃん、行きましょうか」

 「は、はい! 楓さんも頑張ってください!」

 楓と別れ、エレーナと文香は医務室に向かった。ノックをするとちひろの声が返ってきたため、エレーナは静かにドアを開く。

 「失礼します……って、あら。ふふふ、美波ちゃん、準備中だったのね」

 そこには、エレーナの予想通り、着替えをしている美波がいた。

 「え、エレーナさん!? そ、それに鷺沢さんも!?」

 「ふふふ、美波ちゃんのお色直しに来たのよ。ほら、寝ぐせが出来ちゃってるわ。さ、座って。文香ちゃんは、ドライヤーを取ってきてくれるかしら?」

 「は、はい」

 エレーナは美波を椅子に座らせると、手で髪を整える。

 「文香ちゃんもだけど、美波ちゃんも髪がとても綺麗よ。文香ちゃんの髪が漆黒の宝石なら、美波ちゃんの髪は亜麻色の飴細工のようね。とっても綺麗で美味しそう。ふふ、蘭子ちゃんが喜んじゃうかしら」

 「え、エレーナさん。流石に恥ずかしいですよ」

 エレーナの称賛に頬を紅く染めつつも、美波はエレーナに身を委ねていた。

 「美波ちゃん。熱は下がったの?」

 「はい。緊張からきた熱だったので、それ自体はすぐに下がりました」

 「それはよかったわ。折角のライブで、一度もステージに登れないのは残念だものね。そのためにも、飛び切りにおめかししましょうね」

 妙に張り切るエレーナに、美波やドライヤーを持ってきた文香は困った笑みを浮かべることしか出来なかった。

 「美波ちゃん。貴女は責任を感じていると思うわ」

 突然の言葉に美波は振り向こうとしたが、それをエレーナに止められてしまう。

 「でもね、美波ちゃん。その責任は重しにしてはいけないわ。もし悔いていることがあるなら、それを全部バネにして、満面の笑みに変えるの」

 「責任をバネに、笑顔にですか?」

 美波の呟きを聞いたエレーナは、櫛を置いて美波の肩に手を置いた。

 「ほら、笑って美波ちゃん。貴女の笑顔はみんなを幸せにする笑顔なんだから、まずは自分を幸せにしてあげなくっちゃ」

 美波の口元を指で持ち上げ、強引に笑顔にさせるち自分も満面の笑みを浮かべた。

 「エレーナひゃん……」

 「うふふ、これじゃあダメね。さ、笑ってみて?」

 エレーナに促され、美波は笑みを浮かべる。その笑みを見たエレーナはうんと頷いた。

 「それでこそ、お城のシンデレラね。それじゃあ、お化粧をしましょうか」

 そういってエレーナは、ちょうどよいタイミングで入ってきた華耶が持ってきた化粧品を手に取り、キラリと目を輝かせたのであった。

 

 

 すべてのユニット曲が終わり、CPのステージも残すは全体曲のみとなっていた。

 「みんな!」

 そこに着替えを終えた美波がやってきた。その後ろには同じく着替えを済ませたエレーナと楓、それに付き従う文香もやってきていた。

 「ちょーっとぎりぎりになっちゃったけど、キラキラな美波ちゃんをお届けよ」

 「お姉ちゃん!?」

 エレーナの言葉に、アナスタシアが叫ぶ。それは他のメンバーも同様であり、美波が復活してきてくれたことは嬉しいものの、彼女の体調も心配なのであった。

 「お姉ちゃん、美波、大丈夫ですか?」

 「えぇ。熱はもう下がっているし、気力も十分よ。それに、お色直しは私がやったから、見栄えも完璧346%よ」

 エレーナの言葉にみな安心する。その輪に入れるため、エレーナは美波の背を押した。

 「さ、美波ちゃん。掛け声よろしくね」

 「えっ!? だ、ダメです! 本番に熱を出してしまったのに、リーダー失か」

 「みんな待ってたよ。みなみん!!」

 失格と言い切る前に、未央が待っていたと声をかける。他のメンバーも笑顔で以て頷き、美波を受け入れた。

 「みんな……」

 その光景に美波は涙が込み上げてきそうになった。しかし、エレーナに言われたことを思い出し、涙をこらえて円陣に入る。

 「みんな……ちょっと遅くなっちゃったけど……今はこれだけ。私のことを待っていてくれてありがとう」

 美波はそれだけいうと、一歩踏み出した。それを見て他のメンバーも同じく一歩踏み出した。

 「シンデレラプロジェクト、ファイトー……」

 「「「オー!!!」」」

 その円陣を組むシンデレラたちはみな笑顔だった。そしてその中で、美波の笑顔が最も輝いていたのであった。

 




あと一話で一期部分の終了かも。
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