女帝が引っかき回すお話   作:天神神楽

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意外に難航しました。
仕事も残業続きなので、休みの日にしか書けないのでますます遅筆になってしまいますが、失踪はしないつもりなので、見捨てないでいただけると幸いです。

とりあえず、マスター業では酒呑・キアラ・リップ、P業では少し前ですがドレス奏ゲットしています。最近はプレイできていないのでMVばかり見ています。


クールな可愛い女の子 その一

 ありすとの食事会の翌日、休憩中のエレーナは誰かに電話をしていた。

 「はい、えぇ、貴女には是非客席から見て貰いたいんです。……ふふふ、楽しみにしてますね。え? 大丈夫ですよ。最近は規則正しく……え゛、華耶さんが? ……はい、お酒はなるべく控えます」

 電話を終えたエレーナは、何故か肩を落としていたので、気になった文香が恐る恐る声をかける。

 「え、エレーナさん? 何があったのですか?」

 「え? あー……大したことじゃないの。ただ、健康に気を付けなくちゃいけなくなって……」

 「「???」」

 よく分からない説明に、文香と楓は揃って首を傾げた。

 「あー、もう! 残りのレッスンはガンガンいくわよー!!」

 自棄になったエレーナに、楓と文香は頬をひきつらせた。

 その後、スッキリしたエレーナが去ったレッスンルームには、ピクリとも動かない楓と文香が残されていたのだった。

 

 一方、二人の尊い犠牲を出したレッスンの当事者は、疲れなど見せずに、ビルの中をウロウロしていた。

 と、机も置かれている休憩室に、一人の少女がいた。そんな彼女の元に、可愛い子大好きなエレーナが声をかけないわけがなかった。

 「こんにちは、お勉強かしら?」

 「え? え、エレーナ・パタノヴァさん!?」

 いきなりトップアイドルに声をかけられれば驚くのは当然であった。

 「ふふふ、ごめんなさい。あまり見かけないから、声をかけちゃった。最近入ったのかしら?」

 「は、はい。速水奏です。よろしくお願いします」

 奏は慌てて立ち上がり頭を下げた。

 「こちらこそ。あぁ、座って座って? 勉強中だったのでしょう?」

 テキストを覗くと、数学の課題をしているようだった。

 「夏休みの課題が少し溜まっちゃって。レッスンも忙しいので」

 学業とアイドル活動の両立とは、学生アイドルの大変なところである。

 エレーナは、ノートをチラリと見ると、間違いに気が付いた。

 「あら、この部分、数列の式が違うわ。それに、仮定の仕方もミスしてるわね」

 「え? …………あ、本当だわ。ありがとうございます」

 「いえいえ。ここの部分は習い始めの頃は間違いやすいところよ。そうね、折角知り合えたのだし、少し教えてあげましょうか?」

 「え、でもそんな悪いですし……」

 「そんなこと気にしないの。それに、私勉強は好きなのよ?」

 世界でも有数の大学を卒業しているエレーナが言うと説得力があった。奏は恐縮そうにしつつも、エレーナの言葉に甘えることにした。

 「それにしても、日本の高校生は中々難しい問題をしているわね」

 「そうなんですか?」

 難しいといいつつ、問題を眺めただけで解き方をしっかりと把握しているエレーナ。そんな化け物のような人物に言われても、少々納得がいかない奏であった。

 「そうよー。どこが一番良いということを論じるのはナンセンスだけど、日本の教育水準が高いというのは本当よ。それを悪く言う人もいるし、問題がないというつもりもないけれど、素晴らしいことであることには違いないわ」

 「エレーナさんって、教育のことも学んでいたんですか?」

 まるで教師のようなことを言うエレーナに、奏は思わず聞いてしまった。

 「教育学は聴講以上のことはしていないわ。それでも、言語学の研究の一環として各国の学校を回ったりもしていたの。先進国各国も勿論だけど、途上国やついこの間まで内戦をしていた国にも行ったことがあるの」

 「な、内戦? だ、大丈夫だったんですか?」

 「まぁ、それは学問の為、というよりもボランティアの為だったんだけどね。私は色々な言葉を使えたから、通訳みたいな仕事をさせてもらったの。その時にお世話になった人達の中に、教育に携わるひとがいらっしゃってね。その人と学校に行かせてもらったの」

 勉強を教えてもらおうとしていたのに、いつの間にかエレーナの話に聞き入ってしまった奏。エレーナはそのことに気が付くと、慌てて話を元に戻そうとした。

 「おっとっと。ごめんなさいね。つい昔話をしてしまったわね。さ、まずは数学よ」

 「えっ!? 話してくれないんですか?」

 「お話自体はしてあげてもいいのだけれど、それで奏ちゃんに宿題をサボらせちゃったら、私華耶さんにとっちめられちゃうから。だから、お話は勉強の後よ。あ、そこケアレスミスしているわ」

 「え? ……あ」

 「ふふふ……それじゃあ、一緒に解いてみましょうか。間違えやすいところを重点的に教えてあげる」

 間違いに気が付き頬を紅くする奏に、エレーナは優しく微笑みかけ、一日家庭教師をするのだった。

 

 「あら、エレーナ。まだ帰っていなかったの? それに速水さんまで」

 黙々と勉強をしていると、定時で仕事を終えた華耶が二人の所にやってきた。

 「華耶さんこそ、今日は早いのね」

 「仕事がないわけではないのだけど、部下に休んでくださいと言われちゃったのよ。そこまで言われて流石に残業は出来ないわ」

 《TITANIA》のライブがあるにも拘わらず、しっかりと定時に仕事を終わらせてしまうこと自体異常なのだが、普段からも多くの仕事を抱えつつも、早々に仕事を片付けてしまう華耶は、多くの社員の憧れであった。

 「あ、そうだわ。ねぇ、奏ちゃんってお家はどこなのかしら?」

 「私は寮に入っていますけど……」

 「寮なら大丈夫かしら……」

 いきなり考え出したエレーナに、奏は困ったように華耶を見つめる。華耶はため息を吐きつつエレーナに声をかけた。

 「エレーナ、何をするつもりなの?」

 「え? あぁ、せっかく奏ちゃんと知り合えたのだから、何かしたいなーって」

 「……今日は仁禛さんの所はお休みよ。それに、仁禛さんはいま仕入れに行っているから、日本にはいないわよ」

 「あら、そうだったかしら。じゃあ、別の所に行くのもいいけど……もう時間も遅いしね。あ、せっかくだから、お買い物にいきましょうか。一緒にお夕飯をごちそうしてあげる。今日は車に乗ってきてるから、寮まで送ってあげられるからね」

 「え? で、でも」

 「遠慮しないの。華耶さんも来る?」

 「……そうね、橘さんの時のように暴走されても困るし。速水さんもいいかしら?」

 意外にも華耶までついてくることになり、奏としては頷く他なかった。

 早速とばかりに車に乗る三人。奏を助手席に座らせ、エレーナは奏の話を聞いていた。

 「じゃあ、奏ちゃんはスカウトされたのね。プロデューサーさんは有能ね」

 「久留米Pが速水さんをスカウト出来たときはとても喜んでいましたよ。あの子、いつもは静かなのに、あの時はとても饒舌になっていましたからよく覚えています」

 「プ、プロデューサーったら」

 いつもは静かで小動物のような自分のプロデューサーが、自分のことで喜んでくれていたことに、照れてしまう奏。そんな奏をまるで保護者のように微笑まし気に見つめるエレーナと華耶。

 「それで、今日はどこに行くつもりなの?」

 「折角だし、お洋服を見に行こうと思うの。この間、唯依ちゃんに可愛い服があって聞いたから」

 エレーナと大槻唯依は意外にも仲が良い。カラオケ好きな唯依に誘われ、一緒にカラオケに行く仲なのだが、カラオケ以外にも唯依コーディネートのギャルスタイルエレーナの写真は、全世界に衝撃と歓喜を呼び起こし、それを達成した唯依は、陰で大英雄と言われているとかなんとか。

 「あぁ……あの写真の件ね。まぁ、速水さんなら似合うと思いますけど」

 「今回はプライベートだからSNSには上げないけどね。さ、着いたわ」

 到着したのは唯依の紹介にしては少々意外というような高級な店であった。

 「あら、意外といえば意外ね」

 「この場所自体は私が紹介したのだけど、唯依ちゃんや美嘉ちゃんが愛用しているブランドとコラボしたみたいなの。意外なコラボだったから驚いたけど、唯依ちゃん曰く、上品だけど可愛らしいみたい」

 そのコラボの理由が先のギャルファッションエレーナなのだが、実は知らされていなかった。

 「さ、入りましょ」

 エレーナ達が入店すると、店員がざわつく。大好評のコラボの影の立役者の登場に、慌てて店長を呼びに行っていた。

 「コラボコーナーはここね。唯依ちゃんのいう通り、とっても可愛いわ」

 「それに、上品さもあるから、大人の女性も着やすいわね。逆に若い子も着やすいから、絶妙なデザインだわ」

 エレーナと華耶はそれぞれの観点で洋服を見ていた。

 エレーナは青色のドレスをモチーフにしたアウターを奏に合わせる。

 「うん、とっても似合うわね。華耶さん、一緒に奏ちゃんをコーディネートしましょ」

 「――いいでしょう」

 眼鏡をキラリと輝かせる華耶。何か琴線に触れたらしい。

 「え? えっ?」

 「さ、奏ちゃん。脱ぎ脱ぎしましょうか。大丈夫、痛くないわ」

 手をワキワキさせて奏ににじり寄るエレーナ。華耶は店員に似合いそうな服を次々と出させていた。

 「え、エレーナさん?」

 「大丈夫。世界で一番可愛くてクールで元気なシンデレラにしてあげるわ」

 盛りすぎな気がした奏であったが、華耶が持ってきた大量の服を見て、目の前のいい大人の二人が本気であることを悟ったのであった。

 

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