「戒斗……馬鹿な、どうして!」
どうして生きているのか。
湧き上がる感情に混乱しつつも、紘汰は現れた旧友、
「それはこっちのセリフだな。どうして貴様が今頃になって現れる? ………まぁいい」
高圧的な物言いと、言葉尻から醸し出される己の強さへの高い自身。葛葉紘汰の知る駆紋戒斗に、彼は瓜二つだ。
そればかりか駆紋戒斗は、言葉を切るほんの一瞬、含みのない笑顔を見せた。
フレアパターンの入った黒いロングコート、蒼白の顔面に赤い瞳と、彼の容貌はあまりにも毒々しい。しかしその毒々しさを打ち消してしまうほど、その一瞬の笑顔は穏やかであった。
だが次の瞬間には既に、戒斗はその目から赤い燐光を迸らせ、その身を赤い怪人へと変えた。
「蘇ってきたとでも言うならそれでもいい。再び俺が貴様を葬ってやる!!」
雄叫びと共に襲いかかる赤い怪人――――《ロード・バロン》。
「ま、待ってください。話ができるなら……」
「すまないまどか、アイツとは“コレ”の方が分かりやすい……!」
まどかの制止も振り切り、銀の鎧武者が迫り来る《ロード・バロン》に突進する。
「ハァアァアアアッ―――――!!!!!」
「うぅおおおおお―――――ッ!!!!!」
両雄が激突したその瞬間、小型爆弾のそれすらも遥かに凌ぐ猛烈な衝撃波が辺り一帯を吹き飛ばした。
※※※※
「…………はッ?!」
十秒だろうか、それとも一日中だろうか。
気絶状態から覚醒すると、未だ朦朧とする頭を振りながら、鹿目まどかは周囲を見やった。
どうやら、なぎ倒された木にひっかかったおかげで助かったらしい。取り敢えずほっとため息をついたまどかだが、すぐさま辺りに紘汰の姿が見えないことに気がついた。
「ッ…………!」
―――――戦いはどうなっていまったのか? ……その問の答えは、実に簡単に出た。
森を次々と壊し、もうもうと土煙を立てながらぶつかり合う二つの閃光が、遥か数キロ離れた場所の空中で激突しているからである。
「あれが、紘汰さんの本当の力……!」
彼らが剣を打ち鳴らすたびに衝撃波が発生し、周囲の木々を吹き飛ばすその様は、まさに戦神同士の壮大な戦いに相応しい荘厳さと苛烈さを演出している。神としての階梯では自身の方が上であるものの、ここまで壮大なぶつかり合いにはさしもの円環の女神も感嘆せずにはいられない。
だが次の瞬間、戦場に変化が現れた。
植物のツルと思しきそれらが、ぶつかり合っていた閃光のうちの一つを縛り上げたのである。
「あれは………紘汰さん! 縛られてるのは、紘汰さんだ!」
何とかしなければ。震える体を勇気付け、戦場へはせ参じようと上空へ飛び上がったその時、しかしまどかは悟った。
「…………!!!」
そこかしこにできた巨大なクレーター。
燃え盛る森の木々。
上空からこそ見えたその惨状はあまりにも凄まじく、まどかが気絶していた間に起こった戰いの凄まじさを無言のうちに語っていた。
「あ……あ…………」
―――――あまりにも、格が違いすぎる。
戦意を喪失し、恐怖のあまり涙を零したその少女を、いったい誰が責められようか。
だが、そんな少女の心の機微に関係なく、事態は深刻化していく。
森のツルに全身を縛り上げられ、胸を刺し貫かれた紘汰は、変身を解除し、口から何色とも取れぬ色の血泡を吹いた。
「グボッ………」
「その血の色。………やはり黄金の果実を持っていたか。蘇っただけではなく、俺に匹敵するだけの力を持って来るとは………凄まじい執念だ」
賞賛するかのような響きを持った言葉を述べつつも、駆紋戒斗は一切の容赦をしない。既に瀕死の状態である紘汰に止めを刺そうと、戒斗は大剣《グロンバリャム》を高々と振りかざした。
「……………相変わらず詰めが甘いな、戒斗。そんなことだから、お前は俺に負けたんだ」
だが、もはや頭を垂れ、断頭の時を待つばかりであるはずの銀の鎧武者は、単なる負け惜しみとも取れない不穏な一言をつぶやいて口端を釣り上げた。
「まさか貴様――――――――――――」
瞬間、閃光が迸り、葛葉紘汰と駆紋戒斗を中心に巨大な爆炎が上がった。