魔法少女まどか☆マギカ[異編]禁断の物語   作:榊原啓悠

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究極の一射

《森の魔獣》との間に幾度かの交戦経験を持つ見滝原の魔法少女たちにとって、このカミキリのような個体はさほど強敵という訳では無い。だが、それを三体同時に相手取るのはこれが初めての体験であった。

 

 単純計算にして、一人が一体を倒すことになる。

 だが、丸っこい形状の下級種と思われる《森の魔獣》たちとは違い、上級種らしき強力な個体の持つ戦闘力は並の魔法少女のそれを遥かに凌駕している。それでも相性さえハマれば勝てないというわけではないのだが、なかなかそういった状況に持ち込むことは難しい。

 美国邸の広いバラ園が今回のフィールドであり、環境という一点では広い場所を得意とする魔法少女の性質を考慮すると、一見すると有利に見えるが、それは向こうも同じである。ムチのようにしなる触覚での攻撃を行うカミキリの《森の魔獣》にとっても、このように広い場所というのは戦いやすい場所であった。

 

 

 

 自宅を突き止められ、そこに大挙して刺客が迫ってくる……考えうる限り最悪の事態だ。だがしかし、織莉子はこの襲撃を“敵が意図して行った襲撃ではない”と捉えていた。

 

 状況から推察するに、あの三つ編みの少女と片目が前髪に隠れた少年が、《禁断の森》からなんらかの手段で脱出し、その空間の裂け目が偶然我が家の庭先に出現。図らずして、彼らは《森の魔獣》をこの庭に呼び込んでしまったのだろう。

 

 その仮定から導き出される結論はただ一つ。この襲撃は自分とキリカの所在が露見したことから発生したものでは無い。しかし逆に言えば、ここで《森の魔獣》を撮り逃せば、ここに自分とキリカがいることが判明してしまうということだ。

 敵がこちらを狙う以上、所在を漏らすわけにはいかない。

 勝ち目があるかどうかは置いておくにしても、ここでなんとしても敵を全滅させなくてはならないのだ。

 

「敵が上位種である以上、こちらも全力でいく必要があるわ。キリカさん、速度低下をかけて頂戴!」

「恩人に言われるまでもなくかけているよ!」

 

 呉キリカの固有魔法“速度低下”が、彼女の前方に発動。キリカ自身の高い機動力も相まって、彼我のスピード差はちょっとやそっとでは埋められないモノになる。

 

「そらそらそらそらッ!! あはははははッ!」

 

 壊れた笑い声を上げながら、キリカの爪が目にも止まらぬ速度で飛来し、《森の魔獣》たちを切り刻む。

 だが、上位種の甲殻は、丸っこい個体とは比べ物にならない硬度を持つ。幾度となく繰り返されたキリカの攻撃は、結局敵に致命傷を与えるまでには至らなかった。

 

「ちっちちちち畜生ッ!! いつもいつもいつもいつもいつも硬いんだよコラァ!!」

 

 狂気と破壊衝動を全開にして再度のアタックをキリカが試みるが、結果はやはり同じだ。速度では上回るものの、こちらの攻撃力が敵の甲殻を突破できないという現実は容易には覆らなかった。

 

「キリカさん、交代よ!」

 

 巴マミが名乗りをあげ、キリカは渋々といった面持ちで速度低下を切って後方に退却した。彼女の速度低下は敵味方を問わず発動するので、ソロの時にしか使えないという欠点があるのだ。

 

「悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」

 

 狂喜乱舞という形容がしっくりくるキリカのそれとは対照的に、マミの戦いは優雅で華麗であった。踊るようにして地面から伸びるリボンが敵に巻きついて拘束し、触角のムチ攻撃を一時的に封じる。

《森の魔獣》のパワーは既に承知しているので、リボンの拘束が成功したとしても足止めできるのはわずか数秒であることをマミは熟知している。その数秒の時間を使って、マミはバラ園の四分の一はあろうかという巨大な大砲を召喚した。

 照準を合わせるまでもなく、大砲の巨大な砲身は《森の魔獣》たちを捉えていた。射角は彼らをなぎ払い、そのまま空へ飛んでいくように魔法で設定されている。必殺の気合を込めて、マミが引き金を引いた。

 

「ティロ・フィナーレ!!!」

 

 掛け声と共に、大砲が巨大なエネルギーを爆発させる。その奔流に、《森の魔獣》はおろか、彼らの現れた空間の裂け目もろとも一気に蒸発した。

 

 

 

 

 マミの攻撃(ティロ・フィナーレ)で抉れた芝生が、西日を受けて赤く揺れている。危機が去ったことを察して、織莉子はほうとため息をついた。

 

「マミさん。芝生って、結構高くつきますのよ?」

「え“」

 

 優雅に佇んでいたマミに、超ド級の攻撃を食らわせる。涙目で振り返ったマミに、織莉子はぞっとするほど美しい微笑みをむけた。

 

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