魔法少女まどか☆マギカ[異編]禁断の物語   作:榊原啓悠

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危険な快感

「うぉああああああっ!!!」

 

 脳に流れ込んでくる紘汰の戦いを再現するように、咆哮と共にさやかは突撃した。

 

 銃を持った相手に対し、こちらも銃を使うという発想が無かったわけではない。しかし、《アーマードライダー》同士の戦いにおいて《無双セイバー》の銃撃程度では決定打には至らないという事実が、紘汰の記憶からも読み取れる。

 未だおぼろげにしか見えないながらも、さやかは紘汰の記憶から正しく知識を読み取っていたのだ。

 

 だが、対する呉島光実にも知識はある。《森》で遭遇した鎧武者の腹部にあったモノとこのベルトが同一の存在であることを所見で見抜いていた彼は、マミやほむらにも内緒で密かにベルトの機能について実験を繰り返していたのだ。

 

 実験による検証で、光実は既にこの力の全容を完璧に把握している。ゆえに、銃の有効射程の内側に入り込まれた際の対策も用意があった。

 

「うわあぁっと?!」

 

 鋭い蹴りが、さやかの鼻先を掠める。慌てて後ずさるさやかだが、光実は容赦することなく無防備なさやかの腹部に弾丸を三発ほど撃ち込んだ。

 

「がっ……ぐぅう」

 

 走る鈍痛に尻餅をつくも、光実の銃から逃れるようにさやかはすぐさま中腰の態勢をとって横にローリングした。

 

 荒い息遣いとともに再び二刀を構えて立ち上がるさやかだが、今度は腰を深く落としている。戦えば戦うほどに、さやかの体には葛葉紘汰の記憶が宿ってきているのだ。

 

「………チッ……」

 

 舌打ちと共に、紫色の鎧武者が引き金を引く。

 

「こっちだよ~!」

 

 挑発のセリフと共に、さやかは銃撃を逃れるべく敵の周囲をぐるぐると走り出した。

 

 橙色の鎧武者は走り方こそでたらめではあるものの、驚異的な走力で弾丸の追従を振り切っていく。

 

「なら……!」

 

 主兵装であるこの銃で、動き回る敵を捉えられるほど自身の射撃は成熟していない。自己判断をくだすとともに、光実は突貫した。

 

「?!」

 

 今度不意を突かれたのはさやかの方だ。銃撃による中距離戦闘を行う敵を相手にどう攻めるか考えていた矢先に格闘戦を挑まれたのだから、その驚愕は当然であるといえる。

 

「………そっちがその気なら!」

 

 だが驚きこそあれど、さやかの動きは澱まない。すぐさま足を止め、二刀を構えて腰を落とした。

 迫る眼前の敵に呼吸を合わせて、《無双セイバー》と《大橙丸》を振りかぶる。すると、敵は拳銃を突然逆手に持ち替えた。

 トンファーのそれを彷彿とさせる戦法に、さやかは驚きの中で同時に勝利を確信した。刀の二刀流と、銃を兼ねたトンファー……リーチも威力も、圧倒的にこちらの方が勝っている。

 

 さやかにとって一番恐ろしかったのは、あのまま中距離戦に持ち込まれることだった。アドバンテージを捨ててこちらの土俵に乗ってくるその度胸はなかなかであるが、しかしさやかはこの敵を“戦い慣れていない”と評価することにした。

 さやか自身、特に慣れているわけではない。だが、《戦極ドライバー》から流れ込んでくる葛葉紘汰の戦いの経験が、さやかの戦闘論理の根拠となっていたのだ。

 

 振りかぶられたトンファーより先に二刀を振り下ろして、そして――――――

 

「もらっ――――――ガッ?!?!?!?!」

 

 

 

 

 景色が突然暗転し、腹部に鈍痛が走る。気がつくと、仮面の内側には自身の吐き出した吐瀉物が満ちていた。

 

「うっ…………!!」

 

 すぐさま吐瀉物は仮面の内側に取り付けられていた装置で吸引されたが、顔にべっとりと汚物が張り付いた悪寒がそれで拭えるわけではない。さやかは肉体と精神の双方にくらったダメージのあまり、そのままがっくりと膝をついた。

 

「武器を逆手に持ったくらいで釣られるなんて、喧嘩慣れ……いや、戦い慣れしてない良い証拠だね」

 

 蓋を開ければそう大したトリックでもない。フェイントで身を乗り出させ、無防備になった腹を一気に蹴り上げたのだ。

 

「話はあとでゆっくり聞かせてもらうよ。お前が誰なのか……その仮面を剥いでやる」

 

 害意に濁った声色で呟くと、光実は既に戦闘不能の敵の顎を思い切り蹴り上げた。

 

「あぅっ………」

 

 少女の声で苦痛の声を漏らす敵に一瞬の躊躇を見せたものの、光実はすぐさま気を取り直してベルトに手をかけた。

 

「………チッ。女の子だったとしても、容赦なんかしないぞ」

 

『BUDOU OLE!』

 

 システムボイスと共に、錠前から銃へとエネルギーが充填されていく。それはまさに、目の前で横たわる鎧武者の命を奪うだけの威力を秘めていることを光実に感じさせた。

 

 敵の生殺与奪を、引き金にかけられたこの指で思うがままにできる。

 

 その圧倒的な優越感に、光実は射精にも似た快感を感じた。

 

「死ね……!!」

 

 殺意の快感に酔いしれながら、光実が呪詛を吐く。

 

 人差し指に、容赦なく力が込められた。

 




 本作において、必殺技の際に流れるスカッシュ、オーレ、スパーキングの音声はチャージレベルの差異を明確にするためのものとします。

 そのため、繰り出される技そのものに、ベルトの音声は対応していないと解釈してください。

 スカッシュだろうとスパーキングだろうと、繰り出される技は変わりません。技に込められるエネルギーが変わるだけです。
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