魔法少女まどか☆マギカ[異編]禁断の物語   作:榊原啓悠

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 新たな脅威に対抗して結集した見滝原市の魔法少女たち。

 だが、その脅威をもたらした異世界よりの使者もまた、自分たちの世界を救うためにやって来ただけに過ぎなかった。

 両陣営の睨み合いが続く見滝原市であったが、しかしその隣町である風見野市でもまた、不穏な空気が立ち込めつつあった。



【第五話 幻影と騎士と魔法少女】
消えた魔法少女たち


 立て付けの悪くなった戸を思い切り蹴破る。大きな音を立てて扉が開くと、もうもうと埃が舞い上がり、杏子は思わず顔をしかめた。

 

 埃だらけの部屋に人の気配は無く、しかし生活の痕跡が残されている。無人の廃ビルを無断借用して住み着いていた何者かの存在を匂わせるが、しかしこの埃の具合からして恐らく一月ほど前からここに人は出入りしていないと見て間違いはないだろう。

 

 推理を張り巡らせながら、ここにいたはずの“誰か”の遺留品を物色する杏子。

 

 探偵業なんていうのも悪くないかもしれないな……。

 

 ふと益体のない妄想が頭をよぎり、杏子は自嘲気味に鼻で笑った。

 

「………何考えてんだか。あたしは魔法少女だぜ……それ以外になんて、なれるもんか……お」

 

 手にとったレシートに記載された客の名前に目がとまる。ざっと目を通して、杏子はここにいた“誰か”の正体を確信した。

 

「エリーゼ、こまち、ひより、クレア……」

 

 呟きながらレシートを机の上に戻す。すると、杏子は机の上に散乱しているゴミ山の中からカラフルな広告を発見した。

 

「見滝原市……」

 

 手書き調のフォントで可愛らしく書かれた、市の公報パンフレット。状況から推察するに、どうやらここにいた少女たちは見滝原市に向かってそのまま消息を絶ったものと見て間違いないと杏子は結論づけた。

 

「キョーコ、ここ、新しいおうちにできそう?」

 

「ん、ああ……。先客もいなくなって久しいようだし、あたしらで使ってやろうぜ」

 

 ひょっこりと現れた小さな相棒――――千歳ゆまにほほ笑みかけながら、杏子はいつもの調子で応えた。

 

 

 ※※※※

 

 

「『見滝原に来てはいけない』、か……」

 

 廃ビルの屋上で、数日前に巴マミから告げられたメッセージを口にする。彼女とはとある事情で少々気まずい仲ではあるものの、内容が内容なだけに無視もできない。

 彼女の言葉の意味を自分なりに調べようとここ数日調査を行っていたのだが、どうやらマミの言葉は真実らしかった。

 

 佐倉杏子はいわゆる“一般的な魔法少女”だ。自己中心的な思考で行動し、己のためだけに《魔獣》を狩り、そして自分の縄張りを侵す他の《魔法少女》を決して許さない。

 そんな彼女のいるこの風見野市を、四人がかりで侵略しようと目論んだ《魔法少女》たちがいた。それが、エリーゼ、こまち、ひより、クレアである。

 

 最初の頃こそ、数に物を言わせて杏子を押していたのだが、一月にも及ぶ長期戦の末、勝手知ったる杏子のゲリラ戦法に結局根を上げたのは彼女達の方だった。

 

 それからの彼女らは一切の音沙汰が無く、杏子自身も大して関心を持っていなかったのだが、マミからの忠告からもしやと思って彼女らのねぐらを突き止めた結果がこれである。

 

「風見野の侵略に失敗し、次に見滝原に行ったあいつらは、けれどねぐらに帰ることもなくそのまま消息を絶った……。あっちでいったい何が起きてるんだ?」

 

 夜の街を睨む杏子。その視線の先には、彼女の古巣でもある件の見滝原市の街並みが広がっていた。

 

「キョーコ、どうしたの?」

 

 不穏な空気を感じたのか、傍らにいたゆまが心配そうな表情で見上げてくる。基本的に自己中心的な杏子が、唯一心を開くのがこの少女であった。

 

「……どうもしねえよ。あっちがどうなってようが、あたしには関係ないしね。大丈夫だって。あんたを置いていったりしねえよ」

 

 くしゃくしゃとゆまの頭を撫でる杏子に手つきは、不器用ながらも優しさに満ちていた。本心では古巣の見滝原に起きているであろう何事かを確かめたい気持ちがあるのだが、しかし今の杏子にはゆまがいる。

 危険と知りながら彼女を連れて行くことなど、杏子にはできるはずもなかった。

 

 

 

「……………ていうかさぁ、勝手に人ン家に入って来といて挙句に監視とか、マジチョーウゼェんだけど」

 

 

 

《ソウルジェム》から巨大な槍を召喚し、臨戦態勢に入る。

 

 杏子の突然の行動に驚くゆまだが、彼女に杏子が状況を説明することはなかった。

 

「そこにいんのは分かってんだよ! 出てこい!!」

 

 ゆまを庇うように位置をずらしながら、鋭い殺気を物陰からこちらを伺う“何者か”にぶつける。この廃ビルに入った時から感じていたこの気配の正体を確かめるべく、杏子は屋上まで上がってきたのだ。

 

「超常現象を操る十代の少女……。貴女、《魔法少女》だったのね」

 

 噂に聞いていた情報と少女を比較しながら、気配を発していた“何者か”がついに姿を現した。

 

「気配をよまれてしまうなんて……迂闊」

 

 物静かな声で呟きながら現れたのは、十代とも二十代ともとれぬ、不思議な雰囲気の女性であった。幻影のようなその存在感の薄さは、およそ常人が発していいモノではない。未知の恐怖を覚えながらも、杏子は自分を、そしてゆまを守るために、殺気を尖らせて眼前の女を睨みつけた。

 

「何者だよてめぇ!!」

 

「私は―――――私は、江蓮(エレン)

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 




エリーゼ、こまち、ひより、クレアは、モバゲー版魔法少女まどか☆マギカよりの登場です。
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