魔法少女まどか☆マギカ[異編]禁断の物語   作:榊原啓悠

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【第六話 強さの証を立てるもの】
魔法少女VSアーマードライダー


「ハアァアァアァッ!!!」

 

 雄叫びとともに、《バロン》となったウォレスが槍―――バナスピアを構えて突進する。彼が最初に標的にしたのは、卑劣にもマミを後ろから刺したこまちだった。

 

「防御――――え?」

 

 アーマードライダーの馬力は、魔法少女のそれを遥かに凌ぐ。その馬力から繰り出される音速にすら近い速度の突進が、薙刀の防御程度で相殺できるはずもない。こまちの虚しい努力は、へし折られた薙刀とともに叩き潰された。

 

 全身の骨がバラバラになるほどの衝撃が、槍の直撃をギリギリそらしたはずのこまちに襲いかかる。結果、こまちの身体は芝生と土を巻き上げて地面を抉るように茂みの中へと吹き飛ばされた。

 

 だが、魔法少女たちも先手を取られてばかりではない。四人の中で最も格闘戦に長けていたこまちがあっさりと敗北した時点で陣形を組み直し、魔弾による一斉砲撃を準備していたのだ。

 

「ロード・バロン……ここで排除します」

 

 エリーゼの機械的な宣言と共に、三人の魔法少女が力を合わせた強力な魔弾が《バロン》に殺到する。

 

「江蓮! 杏子とゆまを守れ!!」

 

『BANANA SQUASH!』

 

「まさか……迎撃する気?!」

 

 江蓮の驚愕をよそに迎撃の構えをとりつつ、《カッティングプレート》を素早く操作して《バナスピア》にエネルギーを充填。そして魔弾到達の0.5秒前、そのどこかバナナにも似た形状のエネルギーが地響きと共に凝縮され、ついにそれが解き放たれた。

 

「あぁあぁッ?!」

 

 ほとばしるスパークと熱風が、江蓮に立つことを許さない。舞い上がる奮迅と吹き荒れる暴風から、横たわる杏子とゆまの上から覆いかぶさって守るのが精一杯だった。

 

 

 ※※※※

 

 

「………ぁ……?」

 

 少し離れたところで横たわっていたマミが、轟く轟音に目を覚ます。鮮血に染まったコートの上から胸を抑えながら首を動かして周囲を見わたすと、吹き荒れる暴風の中心がいったい何なのかすぐに判明した。

 

「赤い、《アーマードライダー》……?」

 

 不意を疲れて背中から刺されたことは覚えているが、それがどうしてこのような状況に発展しているのか皆目見当もつかない。とはいえ、今ここでただ横たわっていればいいというわけでもないのも、また確かである。

 

「……づっ……」

 

 痛みをこらえながら、《ソウルジェム》を当てて患部に治癒魔法をかける。“命を繋ぐ”願い事で《魔法少女》になったマミにとって、治癒魔法の類は苦手分野ではない。数秒を待たずして傷口を塞ぎ終えると、マミは瞬時に変身してその場から跳躍した。

 

『BANANA OLE!』

 

 そしてマミが跳躍するのに呼応するがごとく、戦場に変化が訪れる。拮抗していたはずのエネルギー同士のぶつかり合いが、《アーマードライダー》側がベルトを操作してさらにエネルギーを充填したことで、ついに押し切ったのである。

 

「「「――――――ッ?!?!?!?!」」」

 

 合体攻撃を押し切られた魔法少女たちが、荒れ狂うバナナの嵐に飲み込まれ、衣装を焼き焦がしながら吹き飛ばされていく。

 そしてそのまま三人は自身らの身をもって放物線を描きながら、その人形のような表情のままに地面に全身を叩きつけた。

 

「どうした、他愛もない。お得意のチームワークはどこへ行った?! それとも、糸が切れては動けんか?! 人形!!」

 

 高圧的な態度で罵りながら、しかし槍を構えてゆっくりと歩み寄っていく。この赤い《アーマードライダー》には、一切の情け容赦が存在しないのだ。彼の槍が下ろされる時とは、完璧な勝利を収めた時なのだろう。それは、すなわち――――

 

「――――駄目!!」

 

 気がつくと、マミは脇目も振らずに戦場へと飛び出していた。

 

「………なんだと?」

 

「勝負は既につきました! これ以上の戦いに何の意味が、……ッ?!」

 

 木陰から見ていた時には気が付かなかった光景が、マミの瞳へと飛び込んでくる。

 

 それは、血染めの佐倉杏子と幼い《魔法少女》が、ボロボロの女性に庇われたまま横たわっているという衝撃的な惨状であった。

 

「…………あなたが、やったんですか?」

 

 震える声を押し殺して、眼前の赤い騎士を見据える。月明かりと街頭に照らされているにも関わらず、しかしマミの表情は陰っていてよく見えなかった。

 

「……どうしてそう思う?」

 

「状況からしてあなたしか考えられないからです!!」

 

 巴マミは、自身を刺した真犯人が、今は茂みの中にいるこまちであることを知らない。現状見えている証拠から推理して、“赤い《アーマードライダー》が自分を刺し、杏子をはじめとした他大勢の《魔法少女》に襲いかかった”と考えるのは、仕方の無いことであったのだ。

 

「いいだろう。貴様が望むというのなら、力を以て示すまでのこと!」

 

 マミの誤解に論理的注釈をなすことが、この場におけるベストアンサーなのは言うまでも無い。だが、この赤い騎士にそれを期待するというのは、賢明な読者諸君ならば野暮以外のなにものでもないということをすぐに理解できるだろう。

 

「すぐに治療しないと佐倉さんたちが危ない……一気に決めさせてもらうわよ!」

 

「大きく出たな……。ならば来い! 存分に相手をしてやる!!」

 

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