魔法少女まどか☆マギカ[異編]禁断の物語   作:榊原啓悠

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 水面下で刻一刻と戦況が変化していく見滝原。各々の陣営がそれぞれの思惑で動く中、しかしこれといった動きを見せずにジッとしている陣営があった。

《オーバーロード》サーヴァント率いる、新人類陣営である。

 しかし彼らも、ただ無為に時間を過ごしているわけではない。

 特に、偶然にも《アーマードライダー鎧武》の力を手に入れてしまったさやかは、ベローズとピニオンのサポートのもと、来るべき魔法少女との戦いに望むべく実戦形式の戦闘訓練を積んでいた。




【第八話 使命と情と】
浮かれ女とお悩み男


「ピニオン、次はもっと強い奴出して!!」

 

「しゃあねえなぁ、あらよっとぉ!」

 

《オレンジアームズ》を纏ったさやかが、二刀を肩に担いでトレーナーであるピニオンに声をかける。彼女の声掛けに応じる様に、ピニオンは手にした《ロックシード》から青龍の如き怪物《セイリュウインベス》を三体召喚した。

 

「出力はオリジナルの六割だ。とはいっても相当に硬いから気をつけろよ?」

 

「へっへーん。アーマードライダーさやかちゃんにまかしときなさぁ~いっ!」

 

 

 

 

 

 サーヴァントに『仲間にならなければ殺す』と脅されてからはや数週間。当初は顔も知らない《魔法少女》と戦うことに抵抗があったものの、今となってはすっかりその気になっていた。

 

 そもそもベローズのことは好きだったし、ピニオンとも気心の知れた親友になれた。サーヴァントは相変わらず何を考えているかわからないが、味覚がかなりお子様で可愛い所もいっぱいある。《魔法少女》に敵意は無いが、ベローズたちのために戦うというのならさやかも簡単に割り切ることができたのだ。

 

 そしてなにより、初陣でこちらをコテンパンにやっつけてくれたあの紫色のアーマードライダーにリベンジマッチを挑まないことには、寝覚めが悪くて仕方がない。

 

 ベローズたちに会うため、来たる再戦に備えるため、さやかは日々こうして見滝原旧市街のアジトに通っては訓練を続ける日々を送っていた………。

 

 

 

 

 

「ここらで一気に決めちゃいますかッ!」

 

『ORANGE SPARKING! イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン!』

 

「はあああああ!!!」

 

『ORANGE CHARGE!』

 

 薙刀モードの《無双セイバー》と《大橙丸》から放ったエネルギー波で《セイリュウインベス》三体をまとめてオレンジ型の力場に拘束。動けない《インベス》めがけて突撃すると、さやかは雄叫びとともに力場ごと三体をほぼ同時に両断した。

 

「すげえなサヤカ……」

 

「あんまりおだてんなよピニオン。サヤカは調子に乗りやすいんだから」

 

 ベローズたちのヒソヒソ声をかき消すように、強烈な爆発を起こしながら哀れにも四散する《インベス》たち。最初の頃こそそれなりに勝負になってはいたが、今のさやかが相手ではてんで勝負にならない。

 

「イエ~イ! さっすがさやかちゃん! よしよし、この技は《ナギナタ無双スライサー》と名付けよう!」

 

 はっちゃけたテンションで小躍りしつつピースを決めるさやかは、傍から見てもかなり上機嫌だった。

 

「「はぁ……」」

 

「あ、ちょっとー! ベローズさんはまだしも、ピニオンまでため息つくぅ!?」

 

 

 ※※※※

 

 

「なぁ、最近のサヤカってどう思う?」

 

 古びた無人マンションのベランダで、灰色の空を眺めながらベローズが呟く。彼女の問いかけは、傍らに座り込んで機械いじりをしているピニオンに向けられていた。

 

「どうって言われてもよ……。調子いいじゃねえか。すこぶるよ」

 

「その調子が良すぎってあたしは言ってんの。ここんとこアイツ、《インベス》相手の試合に慣れすぎて、《アーマードライダー》の力に浮かれてるようにしか見えないんだ」

 

「結構じゃねえか。そもそもアイツはあれくらいで丁度いいんだよ。俺たちの事情を押し付けて深刻になられるより、“困っているので助けてください”ってスタンスであいつに力を借りている現状が一番いいと思うがねえ」

 

「…………戦う相手の《魔法少女》がアイツの同級生だってことを、隠したままでか?」

 

 ドスの効いた冷ややかな声で、ベローズが憎々しげに呟く。

 

「…………それがあのオッサンの決めた方針なんだから、仕方ねえじゃんかよ」

 

「サーヴァント様、か……。そりゃ、あの人はロード・バロンの直属の部下だし、あの《結界の化け物》から《ガルガンティア船団》を救ってくれた恩人だよ。でもだからって………」

 

「俺だってそうさ。何百年も戦争が続いてるのに未だに決着がつかないのも、あのオッサンが《旧人類》と繋がってるからだってのはもう常識だしな」

 

「だっていうなら」

 

「だからさ」

 

 ベローズの言葉を遮り、リーゼントをかき乱して立ち上がるピニオン。その瞳には、兄の仇討ちを決意したあの日のような暗い光が揺らめいていた。

 

「ハッキリ言って、このままじゃ俺たちの目的は達成できない。オッサンの《夢幻召喚(インストール)》があれば確かにあの小娘どもをぶちのめすくらいはできるだろうけどよ、俺たちの目的はあくまでも《魔法少女》と《結界の化け物》の因果関係を調査することだ。問答無用で奴らを皆殺しにしちまえるならそりゃ容易いが、そんなの悲しいじゃねえか」

 

「ピニオン……」

 

「俺だって、殺された兄貴のことを思えば《魔法少女》が憎い。病院の時《演義タイプ》に言ったみたいに、あんな化け物どもは殲滅してやりたいとも思ってる。だがよぉ、話し合いで解決できるんなら、それに越したこたぁねえじゃねえか」

 

「………そうか、サヤカが架け橋になってくれさえすれば……!」

 

「オッサンの目論見っつーのは、要するにそういうこったろ。あいつらの友達であるサヤカがこちらにいれば、少なくとも俺たちには話し合いの余地があるということを向こうに伝えることができる。よほど決定的な事態になりさえしなけりゃあ、この一連の騒動はそれでケリだ」

 

 言い切ると、ピニオンはポケットに手を突っ込んであくびをしながら奥に戻っていった。

 

 …………確かに、冷静に考えればピニオンの言葉は正しいだろう。しかしベローズには、その背中にやりきれない想いが滲んでいるように見えた。

 

「あんたそれでいいのかい? 兄貴の仇討ちは、どうするんだよ!」

 

「………………」

 

 暮れなずむ街に、二人の影がどこまでも長く伸びていった。

 

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