魔法少女まどか☆マギカ[異編]禁断の物語   作:榊原啓悠

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偽りの再生

 真冬の木枯らしが吹き荒れる朝、美樹さやかと暁美ほむらは悲痛な面持ちで登校していた。

 

「ねえほむら、あんた今回どうだった?」

 

「いいわけないじゃないですか……一緒に地獄に堕ちましょう……」

 

 地獄兄弟ならぬ、地獄姉妹となったさやかとほむら。普段は明るい二人だが、先日の期末テスト以来ずっとこの調子なのだ。

 

 さやかは知らない。

 

 ほむらが魔法の特訓や《霧の海のピニオン》とその一味の捜索に時間を割いていたせいで十分なテスト勉強をすることができなかったことを。

 

 ほむらは知らない。

 

 さやかがピニオンと《インベス》を用いた戦闘訓練に明け暮れててテスト勉強をおろそかにしていたことを。

 

「「ハァ………笑えよ………」」

 

 暗く濁った瞳で、半歩後ろを歩く仁美をじろりと睨みつける。そつなく優等生をこなす彼女の存在は、今の二人にはまぶしすぎたのだ。

 

「わ、笑えってなんですのっ!? そんな怖い顔されては、笑いたくても笑えないですわっ!」

 

「あんたも、あたしらのこと馬鹿にしてんだろ……?」

 

「どうせ私なんか…………」

 

 奈落のような暗い目を伏せて、絶望に沈む地獄姉妹。なんとか二人をこちら側に引っ張りあげようと、仁美は全力のフォローにまわった。

 

「まだ赤点と決まったわけではありませんわ! それに、たかだか定期テストで人間の価値が決まるわけではありませんのよ!」

 

「仁美ィ、あんたはいいよねぇ……前向きになれて……」

 

「いいなぁ志筑さん。きっといい点とったんだろうなぁ……」

 

 仁美に羨望の眼差しを向けるほむら。痩せこけた野良犬のようなその痛ましい姿に仁美が思わず手を差し伸べるも、しかし間に割って入ったさやかにその手は遮られた。

 

「あたしたちは地獄の住人だ……。光を求めるな」

 

「姉貴ィ……私が間違ってましたァ……」

 

「「はぁ………」」

 

 仁美に背を向けたまま乱暴にほむらを抱き寄せ、彼女の耳元でネガティブな妄言を囁き続ける。そんな今のさやかに、以前の元気な姿はかけらも見当たらなかった。

 

 

 ※※※※

 

 

 時刻は午前七時五十分。登校中の暗黒微笑を浮かべたまま、さやかたちは教室に到着した。

 

「ん……?」

 

 何かあったのか、教室が妙にざわついている。

 

「おはよう美樹……って、どうしたんだ? っつーか暁美もかよ」

 

 挨拶直後、訝しげに視線を向けてきたのは、果たしてクラスメイトの中沢だった。

 

「今あたしたちを笑ったなァ……?」

 

 薄暗い炎を瞳の中に立ち上らせて、地獄の住人nと化したさやかがゆらりと中沢に近寄る。

 

「うおおおっ!?」

 

「ごめんなさい、中沢くん。さやかさん、テストで失敗したショックのあまりにキャラ崩壊してるんです」

 

 先日商店街で味わわされた恐怖の再現を恐れて及び腰になる中沢を庇うように仁美が立ちふさがる。

 メガネの奥からジト目で睨んでくるほむらの迫力も、なかなかではあるが。

 

「それにしても、この騒ぎはいったいどういうことなんですの?」

 

 がじがじと肩をさやかに齧られながら、志筑仁美はいたって普段通りといった様子で中沢に尋ねた。小首をかしげる仕草などが、いかにも楚々としていて実にお嬢様風味だ。それでいてわざとらしくなく、その動作が自然に身に付いていることが読み取れる。

 

「ああ。…………えっと、その前に、美樹。お前、ちゃんと女の子らしくしたほうがいいぞ」

 

「ああァ?」

 

 せっかくの忠告にも、低い声で唸りながら地獄フェイスでガンを飛ばしながら対応するさやかに、恐怖半分呆れ半分といった面持ちで、中沢はため息をつきながら道を譲った。

 

 

「―――――――え――――――――」

 

 

 生徒たちに囲まれる、純白の制服に身を包んだ美少年。

 

 松葉杖が痛々しいが、それでも、こちらを見据えてくる眼差しはもう病人のそれではない。

 

 

「――――――恭介」

 

「ああ。――――――――ただいま、さやか」

 

 

 その瞬間、世界の全てが硬直した。 

 

 もう二度と立ち直れないかもしれなかったあの少年が、怪我を乗り越え、喪失を乗り越え、ついに今、目の前で自分のためだけに微笑んでくれている。

 

 

「きょぅすけぇ………!」

 

 

 先程までの地獄フェイスもどこ吹く風か、涙をいっぱいにためた恋する少女の顔で、さやかは想い人の胸に飛び込んだ。

 

 

 

 ―――――先を越された。

 

 そんな黒い感情が、湧きそうになる。

 

 だが、これは最初から決めていたことだ。

 

 誰よりも彼に寄り添ってきた彼女にこそ、先に彼に触れる権利がある。

 

 思いの強さに優劣をつけたくはないが、それでも彼女は自分では想像もつかない長い年月、胸に想いを秘めてきたのだ。その想いを無碍にできるほど………自分は友達に強くあたれない。

 

 ――――――だからせめて、笑顔で。




ストーリー進行に矛盾点が生じましたので、大幅に改稿させて頂きました。

申し訳ありません。
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