魔法少女まどか☆マギカ[異編]禁断の物語   作:榊原啓悠

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 同時刻、あすなろ中学校屋上にて。


この気持ちの名前は……

「………つまり、きみは力尽きた《魔法少女》の魂を導く役割を持った女神で、その役割を果たせない謎の異空間が現れるようになったから、それの調査をするために現界したものの、その異空間で敵の攻撃を受けて助っ人もろとも吹き飛ばされてしまった、と」

 

 硬い頭を極限まで軟化させて、まどかの事情をおおまかにまとめてみる。《魔法少女》だの《円環の理》だの《オーバーロード》だのと謎の固有名詞のオンパレードではあったものの、目の前に“自分以外には知覚できない少女”という超常現象的な存在がいるならそういった不思議な世界もきっとあるかもしれない程度に貴虎もなんとか納得した。

 

〈はい、だいたいそんな感じです〉

 

 傍らに腰掛けて嬉しそうに見上げてくる発光少女。職場である学校にまでついてきた時には思わず頭を抱えたが、しかし自分以外に触れられる人間もいない彼女を独りぼっちにしておくのも可哀想な気がしたので、結局はこうして共に屋上で昼食をとっている。

 

「それで、まどかはこれからどうしたいんだ」

 

〈当面の目標は、はぐれてしまった紘汰さんの捜索です。一応、私なりに探してはいたんですけど……。力をかなり失ってしまっているので、足頼みでの捜査しかできないんですけど」

 

「力というのは……その葛葉とかいう男と《オーバーロード》の戦いに巻き込まれて消失したあれか」

 

〈そうなんですけど……今では実体化もできないありさまで……〉

 

 言いながらしょんぼりと項垂れるまどか。纏った光の粒子も、どこか控えめだ。

 

「……それは、なんとかして回復できないものなのか? きみは《円環の理》の運営に支障をきたした場合に現れる意思を持った自然現象だと言うが、それならその本体である《円環の理》からのバックアップがあっても良さそうだろう?」

 

〈それが力を失いすぎたせいか、どうにもうまく《円環の理》とパスが繋がっていないみたいで………。このままじゃ私、使命を果たすことができない………〉

 

 フォローのつもりでかけた言葉なのだが、ますますまどかを落ち込ませる結果となってしまったようだ。貴虎は困ったようにうーむと唸ると、腕組みをして思索にふけった。

 

「………葛葉紘汰という男を探し出すことが目的なんだな」

 

〈は、はいっ〉

 

 確認するように言葉をかけてくる貴虎に、取り敢えず肯定の意を示すまどか。彼女のテンションの推移を示すように、光の粒子もびっくりしたかのように飛び跳ねた。

 

「ならば私も、葛葉紘汰の捜索に付き合おう。……《魔法少女》のような不思議な世界の存在にはとことん無知だが、困っている少女を見捨てるほど私も非常識ではない。それにその《森》とやらが我々の世界を蝕む存在であるというのならば、なんとしてもそれを防がなければならないしな」

 

 正義感と責任感に溢れた誠実な瞳で、まどかを見つめる。この自分以外に頼れる者のいない少女のため、そしてまだ見ぬ脅威からこの世界を救うため、貴虎は決意を固めた。

 

〈貴虎さん………〉

 

 光の粒子が、くるくると“の”の字を描きながら二人を包むように旋回する。まどかは紅潮した頬を両手でおさえながら、貴虎の申し出をこくこくと頷きながら何度も心の中で反芻した。

 

〈で、でもでもっ、もしかしたらすっごく危ないことになるかもしれないんですよ……?〉

 

「問題ないさ。……なに、ピンチに駆けつけてくれる正義の魔法少女も、この世界にはいるのだろう?」

 

 ぎこちなく、しかし温かみのある微笑みを浮かべて、貴虎はまどかの頭をぽんぽんと優しく叩いた。

 

〈………ぁぅ〉

 

 しゅうしゅうと湯気を立てながらまどかが潤んだ瞳で貴虎を見上げると、貴虎はハッとした様子で手を引っ込めた。

 

「あっ………、すまない。つい、光実にしていたようにしてしまった。謝罪する」

 

〈え、光実くんって、弟さんの?〉

 

「ああ。きみと同じくらいの年なんだが……。昔と違って少し気難しくなってな。こうしてスキンシップもとれないんだ」

 

〈は、はぁ…………って、私は光実くんの代わりってことですかっ!?〉

 

「? 何を言っているんだまどか。………うむ、弟か……そうだな。妹がいたら、こんなかんじかもしれん」

 

 顎に手を当てて、ふむふむと自身の心境を冷静に分析しつつ、目の前の少女に対して抱く感情を端的にまとめる。そしてその結果導き出された“妹”という表現に納得がいったのか、貴虎は合点がいった表情でまどかに微笑みかけた。

 

「うむ。私にとってきみは妹的存在ということだな。ああ、やっと納得がいった。いや、実を言うと、きみのことを放っておけないとか守ってやらねばという風に思っていたんだ。しかしどうやら、それは危惧していたような犯罪的な思考ではなかったようだな。うむ、安心した。私に少女趣味は無かった。いや、分かりきっていたことではあるのだが」

 

「…………謝罪してください」

 

「うん?」

 

「ナンデモナイデス」

 

 先程までの殊勝な表情はどこに消えてしまったのか、まどかは頬を膨らませてツンと向こうの方を向いてしまった。

 

「…………?」

 

 

 ※※※※

 

 

「………呉島先生、誰と喋ってんのかな」

 

「カオル、呉島先生と仲いいのね」

 

「まーねー。サッカー部でお世話になってるし。そういう海香はどうなのさ」

 

「そうね……。彼のような完璧超人はそうそういるものではないから、今後の執筆活動のためにも是非取材をしてみたいとは思っているわ」

 

「お待たせ~っ! いやぁ、先生に捕まっちゃってさ~」

 

「おや、やっと来たねぇ」

 

「もうっ……先にお弁当食べちゃってるわよ、ミチル」

 

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