魔法少女まどか☆マギカ[異編]禁断の物語   作:榊原啓悠

83 / 113
 絶望の果てに狂気に堕ちた上條恭介。

 サーヴァントによる魔法少女徹底殲作戦滅が、彼の変身と共に始まってしまった。

 避けられない運命だったのか、それとも何者かの陰謀が招いた必然か……いずれにせよ、戦いは始まってしまった。



【第九話 輝く希望、塞ぐ絶望】
鋼の拳闘士


《拳士》の黒いライドウェアに《L.S.-02》の《クルミアームズ》を装備した上條恭介は、光実のそれとは大きく趣の異なる形態をとっていた。

 

 光実の中国武将風のそれとは異なる、さながら拳闘士とでも言うべきいでたち。なんといっても注目すべきは、両手に装備された巨大なナックル状の鉄塊だ。こんなもので殴られでもしたら、アーマードライダーでもない限り内臓破裂は避けられないだろう。

 

 だが、装甲に関しては軽装もいいところだ。《ブドウアームズ》のそれに比べれば、あの程度の守りは紙と同じである。あれならば、拳銃による銃撃でも十分な有効打になるだろう。

 

 一瞬で恭介の戦力分析を終えると、光実は早速銃を連射した。開幕早々の銃撃で意表を突くことに成功したのか、上條恭介は巨大な拳を盾に耐えることしかできない。

 

「グ―――ッ!!」

 

 拳がいかに巨大であるとはいっても、それで体表全てをカバーできるわけではない。要となる《戦極ドライバー》はなんとか死守したものの、恭介は代わりにその四肢を痛めつけれる結果となった。

 

「うあぁああぁああぁあッ!!!」

 

「!!」

 

 だが、状況がそのまま硬直することはなかった。銃撃が止んだ一瞬の隙を突き、狂気に濁った唸り声と共に逆襲の拳を振り上げて突進したのである。間合いが一瞬にして縮められ、拳銃のアドバンテージが消失する。

 

「ならばッ――――!」

 

 だが、それは分かりきっていたこと。落ち着いてトンファー状に構えた銃を恭介の拳の側面に押し当てて、拳打の軌道をずらす。結果として、繰り出した拳もろとも勢いづいた恭介の身体が、無防備な胸部を光実に晒す格好となる。

 

「―――!?」

 

 だが、光実は繰り出された拳の背後で振りかぶられていたもう一方の拳打を完全に見逃していた。ナックルが巨大すぎて、視界が遮られていたせいだ。

 

 ――――まずい、これは………!?

 

 一瞬の驚愕とともに、光実は恭介の拳に顔面を殴り飛ばされた。

 

 

 

 巨大な拳を用いて相手の視覚情報を遮断し、必殺の鉄拳を確実にお見舞いする《クルミアームズ》の基本戦術。上條恭介が無意識にそれを活用できたのは、己が身を投げ捨てるが如き捨て身の姿勢があればこそであった。

 上條恭介に死の恐れは無い。よしんばあったとしても、それは現在、封殺された感情だ。『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』という言葉の体現。がむしゃらな力押しを戦闘スタイルとする今の上條恭介と《クルミアームズ》の組み合わせは、まさに最狂の撲殺魔の誕生を意味していた。

 

「あぁぐっ、おぶっ……!」

 

 一方で光実は、戦闘開始早々に顔面にクリーンヒットをもらったことで出鼻を挫かれたカタチとなった。苦痛と目眩に喘ぎながら、こみ上げる吐き気をこらえてなんとか立ち上がる。

 

「舐めるなよ、クズめっ!!」

 

 どくどくと流れる鼻血の不快感を振り払うように、逆上した光実が殴りかかる。だが近接戦闘、それも格闘戦において、中距離戦闘用の《ブドウアームズ》が格闘専門の《クルミアームズ》に敵う道理はない。結局、振りかぶった拳を繰り出すより速く、光実は恭介の鉄拳に再び殴り倒された。

 

「ククク……どうしたんだよ呉島のおぼっちゃんン?」

 

 がっくりと膝をついた光実に、追撃の拳打が襲いかかる。腹を、胸を、顔を、恭介の鉄拳が次々と打ち据え、そのたびに光実のくぐもった悲鳴が漏れ出す。

 

「あ―――――」

 

 蓄積したダメージのあまりに光実が崩れ落ちるが、それでは恭介の攻撃は終わらない。倒れた光実に馬乗りになって、恭介はマウントポジションからの滅多打ちを開始した。

 

 もはや防御姿勢をとることすらかなわず、

 

 ―――まさに嬲り殺しである。

 

「ひゃあっはあああ!!」

 

 歓喜と愉悦に打ち震え、絶頂と共に止めの一撃を振り上げる。

 

 だが、光実はその大きいタメの瞬間を見逃さなかった。

 

「ギッ―――!!」

 

 歯を食いしばり、痛みをこらえながら全身のバネを使って上体を起こす。振り上げられた恭介の腕を、逆に攻撃するためだ。

 

「な!?」

 

 既に死に体だと思っていた相手の予想外の反撃。だが驚いていてばかりもいられない。振り上げた右腕に、光実の強烈な手刀が叩き込まれた。

 

「ギッ、ぎゃあああああ!?」

 

 肘を狙った一撃は見事にヒット。恭介は苦痛のあまりマウントポジションを捨て、横にローリング回避を行った。

 

 だが反撃は終わらない。光実の間合いから逃れた恭介に、まったく予想だにしていなかった方角から三本の光矢が殺到した。

 

「何ィ――――ガッ!?」

 

 生半可な装甲程度ならば問答無用でぶち抜く、高威力の魔力攻撃。

 

「ほむらちゃん―――か?」

 

「光実くん! 今です!」

 

《竜眼》のモニターに、弓矢を構えた暁美ほむらが表示される。光実は援護に感謝しつつ、第2ラウンドを開始すべく森で採集した新たなロックシードをひとつ取り出して開錠した。

 

『KIWI』

 

《L.S.-09》を外し、新たに取り出した《L.S.-13》を装着する。

 変身の時と同じように、《カッティングプレート》を倒してロックシードを両断。断面から武器ウィンドウが表示されると同時に、電子音の掛け声が鳴り響き、頭上から新たな《アームズ》が被さった。

 

『KIWI・ARMS! 擊・輪! SAY! YA! HA!!』

 

《L.S.-09》のそれとはまた異なる、接近戦を想定された重装甲のアームズ。黄緑色の塗装は紫色だった《09》と視覚的にも判別がつきやすく、遠く離れているほむらにも光実が新たな形態に変化したことをすぐに察知することができた。

 

 しかし最も見る者の気を引くのは、その両手に握られた巨大チャクラムだ。

 こうも巨大だと、チャクラム本来の投擲武器としてよりも、一種の刀剣のようでもある。

 この重装甲と巨大な格闘武装があれば、《クルミアームズ》の鉄拳にも対抗できる。光実は戦意を新たに、巨大チャクラムを構えて吠えた。

 

「さぁ……第2ラウンドだ!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。