コードギアス 革命のリリア   作:alphard177

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皆様のお陰で今日も生きております。次話、投稿です。(活動報告も更新しました)


STAGE.3 偽り の ドラマ クイーン

その日、ルルーシュ・ランペルージが枢木スザクと旧交を温めている頃、エリア11の政庁前では新たな出会いを果たした男女が熱を深めていた。

 

否――、正しくは燃えていた。

忠儀の炎と、親愛の炎が熱くぶつかり合っていた。

 

 

「だいたい何なんですか、あなた!ぽっと出の分際で!私はリリア様にお仕えしてもう8年になるんです!は・ち・ね・ん!」

 

「期間の問題ではない!これは忠儀の問題だ!」

 

「忠義でも何でも私の方が上です!」

 

「主君に金をせびることが忠義だと言うのか!?」

 

「だから、あれはリリア様が奢ってくれるって仰ったんですよ!」

 

「だとしても言い方というものがもう少しあるだろう!」

 

「私とリリア様の仲なら問題ありません!」

 

「仲!?皇族に対し、何たる無礼か!多少長くお仕えしたからといって馴々しいにも程がある!このジェレミア・ゴットバルトが真の忠義というものをその身に刻んでくれる!」

 

「やれるものならやってみろってんですよ!リリア様の第一騎士にして、欧州の最前線を駆け抜けたベアトリーチェ・キルヒアイスが相手になります!逃げも隠れもしません、真向勝負です!」

 

 

二人の熱が最高潮に達し、あわや戦闘になりかけたその時――ぞっと、周囲を冷たい気配が覆った。"それ"に対し即座に反応した二人は、やはり戦闘のプロと言えるだろう。

戦場では"それ"を読み間違えた者から死んでいく。

喉元に刃を突きつけられているような感覚、加えて他者を圧倒する絶対的な力。

決して目に見えることはないが、肌にヒリヒリと痛いほど感じる"それ"は、あろうことか二人が敬愛する主より向けられていた。

 

 

「・・・そこまでだ」

 

「はっ、御身の前でこのような失態。いかような処罰でもお受けする所存であります」

 

「ッ!はい。私も申し訳、ありませんでした」

 

 

騎士に任命されたばかりだというのにいきなり失態を犯した自身の愚かさを悔いるジェレミアと、リリアに怒られ子犬のようにしゅんとうなだれるベアトリーチェ。

先ほどまで口論を繰り広げていたとは思えない変わり様に、リリアはため息を付きながらも、どこか似ている二人を憎くは思えないと感じていた。

それでも主として、今後共に仕える二人に言わねばならないとリリアが口を開いた。

 

 

「いいか、お前た「リリアー!」

 

 

リリアが放つ空気など関係ないと言わんばかりの明るい声を出しながら大きく手を振り向かってくる少女。桃色の髪に、柔らかく微笑む顔。汚れない瞳は優しさと、久しぶりに会えたことに対する喜びで満ちていた。お姫様という言葉が、これ程似合う者は皇族の中でも極僅かだろう。

 

 

「ユフィ!」

 

 

第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニア。

現在エリア11の副総督を務める彼女は、リリアにとって幼少期を共に過ごした姉妹同然の存在であり、そして――蹴落とすべき皇族()である。

 

欧州の最前線。泥沼と化した戦場で、天を憎み、運命を呪い、世界に毒を吐きながらもリリアは誓った。血と硝煙と肉片にまみれ、自らを守るために散っていった者達の屍を抱きながら。

 

必ず、必ず皇帝になると。

 

飢餓、病気、汚職、腐敗、差別。戦争とテロリズム。この地上に溢れるありとあらゆる悲劇を無くせるなどと、そんな傲慢なことをリリアは思っていない。

ただ、せめてルルーシュとナナリー(家族)だけは幸せに笑って暮らせる優しい世界を創る。

そのために犠牲が必要だというのなら、例え姉妹同然の存在であろうとも関係ない。

情など不要。思い出は過去の遺物で、笑顔を模した仮面は未来への布石。

 

しかし今は、道化として共に踊ろうじゃないかユフィ。

そう、心の中でほくそ笑むリリアの気を知らず再会の喜びを全身で示し、ついにはリリアに抱きつくユーフェミア。いや、抱きつくというよりは抱きしめるというべきだろう。なにせ、リリアとユーフェミアの身長差は15cmもあるのだから。

 

 

「ああ、リリア!リリアなのね!ずっと会いたかったわ!」

 

「うぷっ、こら。ユフィ、苦しいだろ!離れろ!」

 

「嫌です、離れません。だってずっと離れていたんですもの」

 

「これからは一緒だろう!私は補佐として来たんだ。だから、頼むから、離れて」

 

「その辺にしておけユフィ、リリアを窒息させるつもりか?」

 

 

身長差に加え、ユーフェミアの豊満な胸に押しつぶされることにより息をすることすらままならないリリアは混濁する意識の中、小さな劣等感と嫉妬に身を焦がしていた。

そしてついに限界を迎える頃、救世主が現れた。

無論、リリアを救った彼女もまた皇族()であることに変わりはない。

 

 

「久しぶりだな、リリア」

 

「ええ、コーネリア姉様もお元気そうで何よりです。ただ」

 

「なんだ?」

 

「止めるならもう少し早く止めて下さい」

 

「ふふ、喜んでいるユフィが可愛くてな。許せ」

 

「もう、お姉様ったら」

 

 

こうしてエリア11に、三人の皇女が揃った。

 

 

 

 

 

 

「リリア様ー、朝ですよー」

 

「ん・・・もう少し、寝る」

 

「ダメです!それに今日は人と会う約束があるんですよね、いいんですか?『あいつは変態だが優秀だ、実に優秀だ。優秀な変態だ。故に私を呼びつける程度(・・・・・・・)のことは許してやろう。ただし成果が伴わない場合は、ふふーふ』って昨日の夜言ってたじゃないですか」

 

「ベアトリーチェ」

 

「はい、なんです?」

 

「・・・少し似てるのが腹立つ」

 

「だったら早く起きて下さい!」

 

 

リリアは朝が弱い。勿論、戦場ではそんなことも言ってられないが今は平時。さらに言えば最も信頼を置くベアトリーチェの側である。自然と気が緩んでしまっても仕方がなかった。とはいえ約束があるのは確かだ。いつまでも惰眠をむさぼるわけにはいかない。最愛の従者に促されるまま朝の支度を早々に済ませ、約束の人物へ会うために軍の施設へと向かった。

 

 

「いない、とはどういうことだ」

 

「ええ、何と言いますか、あそこのパイロットはナンバーズでありまして、ですからコーネリア様の軍を置くここには適さないといいますか・・・」

 

「ナンバーズだから、なんだというのだ」

 

「いえ、あの・・・」

 

 

リリアが放つ覇気を前にしどろもどろになりながら受け答えする施設管理者を気の毒そうに眺めながら、ベアトリーチェは出されたお茶とお菓子をちゃっかり堪能していた。

 

 

「もういい。いないと分かればここに用はない。行くぞ、ベアトリーチェ」

 

「お、お待ちください!ここにいる技術者は本国と変わらない、精鋭ばかりです!必ずやリリア皇女殿下のご期待に添えるかと」

 

「くどい」

 

 

まさに一刀両断であった。そうしてリリアはそのまま部屋から出て行ってしまう。そんなリリアを追うようにベアトリーチェも立ち上がったが、呆然とリリアが出て行ったドアを眺める男があまりにも哀れだったので、ここはリリアの騎士として気の利いた言葉でもかけてやろうと思い立った。

 

 

「お菓子美味しかったです。ありがとうございました」

 

 

余計な一言ここに極まり。

 

 

 

 

 

 

約束の人物に会えず、むすっと頬を膨らますリリアのご機嫌をベアトリーチェが取っている頃、忠義の騎士ジェレミアが何をしているかといえば政庁内のある一室で正座をし、床に頭を付けていた。そう、土下座である。

 

 

「ジェ、ジェレミア卿!何を!?」

 

「良いのだヴィレッタ。私にはこうして頭を下げることしかできん」

 

 

この部屋に集まっているのはジェレミアがかつて指揮していた純血派の面々だ。

なぜこのような事態になったのか。それは昨晩、ジェレミアがリリアからある命を受けたことによるものだ。

 

『いいか、ジェレミア。現状、私は総督及び副総督補佐(・・)としてこの国にいる。故に私の部隊はまだ本国から動かせん。だがそれでは有事の際、動くことができない。そこでだ・・・』

 

 

「(私がもう一度、純血派をまとめ上げる!すべてはリリア様のために!なればこの程度の恥辱など・・・いや、私に恥じるべきことなど一切ない。これは忠義!忠義の土下座だ!)」

 

 

確かにジェレミアはオレンジ事件を皮切りに軍内部での求心力を失っていた。

しかし、軍での立場が下がろうとも彼はブリタニアにおいて辺境伯の地位に付く、歴とした貴族なのだ。そして今、そのジェレミアが。ジェレミア・ゴットバルトが床に頭を付けている。

話の内容は別としても、その事実に衝撃を受けない者はいない。

 

 

「あ、頭を下げたからといってそれで全てが帳消しになると思っているのか!オレンジというものが仮に無かったとしても、テロリストに加担したことは紛れもない事実!お陰で我々純血派は、軍内部でも鼻つまみ者扱い!」

 

 

室内にいる純血派の総意をジェレミアにぶつける男こそ、先日ジェレミアを粛清しようと謀るも、ユーフェミアとランスロットに阻まれ、結果失敗に終わったキューエル・ソレイシィである。

しかし、何もキューエルは野心からジェレミアを批判しているわけではない。彼はただ真面目に祖国を思う軍人なのだ。

 

 

「キューエル卿の言う通りだ。純血派は私のせいで失脚した」

 

「なら」

 

「しかし!いくら誹りを受けようと、私には引けない理由がある!」

 

 

キューエルの反論を遮り、ジェレミアは顔を上げた。

その目には決して揺るがない信念が、忠義の炎が燃えていた。

この部屋の中で未だ冷静さを残している女性、純血派においてジェレミアの補佐を務めていたヴィレッタ・ヌゥはある疑問を抱いた。なぜ、ジェレミアはここまでするのか。ジェレミアから溢れ出るこの自信は何なのか、と。

そしてヴィレッタはその疑問を口にした。

 

 

「ジェレミア卿、その理由とは」

 

「おお!よくぞ聞いてくれた、ヴィレッタよ!先のオレンジ事件は皆も知っているだろう。

 その後、私は独房の中で絶望していた。捕まったことに、ではない。

 皇族の方をお守りできなくなるかもしれないと思ったからだ。

 そんな時、さるお方が私の前に現れた。

 その方は私の無罪を主張し、私にかかった嫌疑を晴らして下さった。

 それだけではない。詳しくは名誉のため言えんが、私はその方に王の器を見た!

 真に忠義を捧げるべき方だと天啓を受けた!」

 

「オレンジ事件の裁決は、コーネリア総督自ら下されたはず・・・

 その決定を覆せる者など。いや、まさか」

 

「ご存知なのですか、キューエル卿」

 

「・・・10歳にも満たないうちから戦場を駆け数多の戦果を上げ、シュナイゼル宰相閣下より政略を学び独自の理論を構築し、欧州戦役の立役者の一人となった英雄!ブリタニアの『黒き雷』!総督及び副総督補佐官としてこの国にいらっしゃるとは聞いていたが!」

 

「そうだ、キューエル卿!私が剣を捧げたお方こそ――」

 

 

ここに皇族を守らんとする勇士は、今一度団結する。

魔神の策略により一度は瓦解しかけた純血派が、再び忠義の元に集った瞬間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




NEXT STAGE『その 名 は スレイプニル』
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