「おい、いい加減起きろ!」
「・・・んー・・後十時間・・・。」
「寝すぎだろ!?っていうか二度寝しといてまだ寝るのか!?」
・・・どうやら士郎が起こしに来たらしい。
っていうか一日徹夜くらいでダウンなんて情けないな。
いや、子供の体なら仕方ないか。
「・・・あぁ、もう・・・起きるから・・あんまり叫ぶな・・・。」
「誰のせいだよ、ったく・・・。もう昼だぞ?」
「・・・え、マジで?」
時計に目を向けると短い針がもうじき1を指す所だった。
「あらら・・・確かにちょっと寝すぎたな。」
「ちょっとどころじゃないだろ。・・・もしかして具合悪いのか?」
「いや、体はどこもおかしくないよ。熱もないし。昨日の疲れが残ってるんじゃないかな?」
「なんか年寄り臭いぞ。」
「士郎ほどじゃないけどな。」
「俺のどこが年寄り臭いんだよ。」
「何処って・・・俺の口からは・・・ちょっと・・・。」
「どういう意味だ!?」
いつもの如く士郎いじりを楽しんでいて、ふと思い出した。
「そうだ、これ士郎にやるよ。」
と言って例の石を士郎に渡した。
「何だこれ?」
「綺麗だろ?昨日たまたま見つけてさ。士郎にやろうと思ってさ。お守りだとでも思ってくれ。」
「へぇ・・・、じゃあもらっておく。ありがとな。」
「いいって。」
よし、これで士郎は安全かな。
原作通りならこれは必要ないけど、この世界はあくまでよく似た平行世界。
原作通りに行く保障なんて何処にもない。
本当は、父さんと母さんにもあげたかったんだが――――
「そうだ。父さんと母さん、今何してる?」
「あぁ、父さんはなんか急に呼ばれて会社に行ったぞ。母さんは町内会のバス旅行だってさ。夜には帰って来るらしいけど。っていうか、母さんが旅行に行くっていうのは前から言ってただろ?」
「そうだっけ?・・・覚えてないな。」
「はぁ・・・まぁそういう事だからな。さっさと下におりて昼済ませちゃえよ。」
そう言って士郎はベッドから降りて部屋から出て行った。
まぁ、いないなら仕方ない。
よし、じゃあ一先ずベッドから降り――――
〈ちょっと。いつまでも放置なんてひどいんじゃない?〉
という声が聞こえた。
「あ、ゴメン。遅くなったけどおはよう、バロウズ。」
〈ええ、おはよう。要様。〉
毛布の中に隠していたガントレットを取り出しバロウズと挨拶を交わす。
流石にこんなごついものを家の中で着けていたら家族から問いただされるだろう。
なので、基本的に家では部屋に置いといて、外出する時は鞄に入れて持ち歩くようにしようと思っている。
何かあった時すぐそばにないとかなり困るからな。
「飯食ったら戻ってくるから、ちょっと待っててくれ。」
〈えぇ、ゆっくりしていらっしゃい。急がなくていいから。〉
バロウズに断りを入れ、着替えて部屋を出た。
時は過ぎ、午後十時過ぎ。
少し前に二人から電話があり、父親は発生した問題が思いのほか深刻で、帰りが遅くなるらしく、母親も現在バスがひどい渋滞に巻き込まれており、市内には居るがまだ掛かりそうなのだとか。
「晩飯どうする?」
「母さんはすぐ帰るって言ってたけど、この分だと分からないしな・・・。」
「出前でもとるか?」
「どうやって?出前やってる店の電話番号なんて知らないぞ。」
「母さんには悪いけど、もう風呂入って寝ちまうか?」
「いや、そういう訳にも・・・。」
そんな話をしていた時――――――――
――――――――――――その瞬間は訪れた。
「ッ!?」
「ん?どうした要?おーい?」
士郎の言葉に反応できず、固まってしまった。
今感じた嫌な予感は・・・恐らく俺の持っている『超直感』が何かを察知したからだろう。
「なんだ・・・何が・・・?」
「おーい、要ー?・・・ってお、おい?どこ行くんだよ!?」
今感じた物の正体を突き止める為、部屋に行き、カーテンを開けて周辺を見渡す。
周辺の民家に変わった様子はない。
ふと、視界の端、空に何かが映った。
それを見た瞬間――――頭が真っ白になった。
おかしい。
ありえない。
この状況で
「おい、どうしたんだよ要!?って、おい?・・・またかよ。今度は何が――――――――」
俺を追いかけて来た士郎が俺の視線の先にある物を見て同じように停止した。
「何だ・・・アレ・・・。」
遠目から見ても分かるほど膨大で禍々しい赤黒い魔力を纏った巨大な『孔』だった。
見ているだけで不快に感じるソレの中から――――大量のナニカが落ちて来た。
そのナニカは真下の建物に落ちると周囲を焼き、破壊しながら広がっていく。
「ッマズイ!!」
机の上に置いてあったガントレット入りの鞄をひったくるように掴むと士郎の腕を取って、直ぐに走りだす。
「逃げるぞ士郎!!」
「え?!」
士郎の手を引いて一気に階段を駆け下りる。
玄関に着き、靴を履く手間すら惜しい時に士郎が問うてきた。
「お、おい!?待てよ要!さっきのなんだよ!?」
「知るか!とにかくこのまま家にいたら危険だ!」
「けど、父さん達は!?」
「今はとにかく逃げるんだよ!!」
士郎と二人で家を飛び出し、辺りを見渡す。
幸いそこには、まだアレは来ていないようだった。
だが、さっき見た『孔』のあった方角を見ると『孔』こそ消えていたが、遠目からでも炎が徐々に迫って来ているのが映り、微かに叫び声や悲鳴のようなものが聞こえて来た。
「なんだよ・・・何なんだよ一体!?」
「考えてる暇があったら走れ!死にたいのか!!」
少し混乱気味の士郎を叱責しつつ、内心は自分もわからない事でいっぱいだった。
(なんでこのタイミングで
原作の大火災の規模を考えると、恐らく両親の生存は絶望的だろう。
(違うッ!今考えなきゃならないのは、士郎と二人で生き延びる事だ!悔やむ事も嘆く事も後でいくらでも出来るッ!!)
そう自分に言い聞かせ、今後の事を考え始めた時―――
――――――――突然、全身を激しい悪寒が襲った。
(・・・ッ!!?)
とっさに士郎を思い切り突き飛ばし、自分は反対側に飛び退く。
その一瞬後――――――――
ズドォォォォォォォォォン!!
――――――――空から巨大な何かが降って来た。
次で今度こそプロローグは終わりです。