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幕間1
四月某日。
春先とはいえ、まだまだ朝は冷え込みが厳しく、なかなか布団から出られない人も多いであろう時期。
「お兄ちゃん、起きろー!」
スッ・・・
「つめてぇーー!?」
とある民家の一室で叫び声が響いた。
「まーたやってんのかよ・・・。」
もはや恒例になったその声を聴きながら、俺『峰岸要』は身支度を整えて『兄』の部屋に向かった。
「朝からうるさいよ、兄さん。」
「文句なら
「お兄ちゃんを起こすのに一番効果的だからに決まってるでしょ?あ、遅くなったけど、要。おはよう。」
「おはよう、姐さん。兄さんはそもそも、自分で起きればそれでいいと思うけどな。」
「それが出来れば苦労しねぇよ・・・。」
「苦労なんて要らないと思うけどなぁ・・・、目覚ましセットしてアラームで起きる、それだけだろ。」
「それが出来ねぇから困ってんだよ。」
「はいはい、それまで。お兄ちゃんも要も早くしないと遅刻しちゃうよ?朝ごはん出来てるからね。行こ、要。」
「うん。じゃ、後でね兄さん。」
「あぁ。」
幾度となく繰り返したやり取りを終え、リビングに向かう。
しかし、未だに信じられない。
まさか、『ソウルハッカーズ』の主人公が俺の兄になるとは。
あれから半年近くの時間が経った。
あの後、気を失った俺はミノタウロスを倒した二人組、『
何でも知り合いの情報によって、少し前から冬木市一帯で魔力に関係する事象が起こっている事が分かり、『海魔騒動』をきっかけに、調査に乗り出したそうだ。
すると、調査開始から数日後に突如冬木市の一部で膨大な魔力を察知し、その近辺に向かった所、あの大火災が発生し、さらにその膨大な魔力の影響で市内の一部が異界化、僅かながら悪魔が出現してしまったので、その処理に追われている最中に俺を発見したそうだ。
恐らく聖杯の泥によって異界化が引き起こされてしまったんだろう。
ミノタウロスだけでなく、他にも数十体の悪魔が発生し、それによる被害も出たそうだ。
これも俺という存在が居る事で生じたズレなのだろうか。
そのせいで犠牲になった人達がいると聞くとかなりクルものがある。
その後、呆然としていた俺だが、二人から事情を聴かれ、一旦考えるのをやめ、自分の知っている限りの事を彼らに説明した。
流石に転生云々は説明していないが。
それを聞いた啓自さんから、
「て事は行く当てが無いんだよな?それなら、家にこないか?」
と提案された。
正直、これからどうしようか迷っていた俺はその提案をありがたく受ける事にした。
事情説明の途中で俺が悪魔召喚器を所持していて、それが俺にしか使えない状態である(という事になっている。)事が分かった啓自さんが俺を手元に置いておいた方が良いと思ったのかもしれないが。
また、士郎の行方についても聞いてみたが、二人とも知らないとの事だった。
恐らく、原作通り『衛宮切嗣』に助けられていると思われるが、確認のしようがないので、生きている事を願うしかない。
二人の知り合いにも調べてくれるように頼んでみると言ってくれたが、恐らく、この二人の知り合いでそういった事を調べられる人物というと、あの『天災兎』の事だと思われる。
はっきり言ってあの天災兎が自分の大事な身内以外の、しかも何の興味もない赤の他人の事柄に協力してくれるとは到底思えない。
期待はしない方がいいだろう。
幸い、啓自さんの家族も、俺の身の上を聞いて、俺を引き取る事を快諾してくれた。
本当に感謝してもしきれない。
しかし、改めて考えるとすごい世界だ。
Fate、IS、女神転生/異聞録。
転生を果たして僅か二日でここまで濃密な非日常が繰り広げられるとは思わなかった。
まぁ、第四次聖杯戦争も終わったし、啓自さんがデビルサマナーとして活動しているって事はソウルハッカーズの騒動は終わってるだろう。
ISもまだ世に出ていないし、しばらくはまともな日常生活を送れるだろう、そう思ってた時期が俺にもありました。
「ところで、お二人の家ってどこにあるんですか?」
「あぁ、冬木市から少し離れているが、同じ県内だからさほど時間は掛からんぞ。」
「そうだな。一時間もあれば着くだろ。中々良い所だからお前も気に入ると思うぞ――――――――
『海鳴市』って所なんだけどな?」
どうやら俺の二度目人生は平穏とは程遠いものになりそうだ。
いや、確かにこういう人生の方が面白いとは言ったが。
とまぁ、そんなこんなで、この峰岸家にお世話になる事になって半年近い時間が過ぎ、俺もある程度、新しい家族と打ち解けてきた今日この頃。
「おはよう、父さん、母さん。」
「あぁ、おはよう。」
「おはよう、要。早くごはん食べちゃいなさい。今日始業式だから早いんでしょ?」「うん、もう少しゆっくりさせてほしいけどね。どうせ午前中で終わるんだし。」
「お前は本当に子供らしくない事を言うな・・・。」
父さんと母さんへの挨拶もそこそこにテーブルに着き、朝食に手を付ける。
迎えというのは、俺が引き取られてから出来た友人である。
同級生で同じクラスという事もあり、直ぐ、とは行かないが、かなり早い段階で仲良くなれた。
学校までの道のりで俺の家が途中にあり、一番学校に近い為、俺の家の前まで迎えに来て、そのまま一緒に登校するというような流れになった。
「ごちそうさまでした。」
「はい、お粗末様。そろそろ時間じゃない?また、迎えに来るんでしょ?」
「うん、行ってきます。」
「気をつけてな。」
「いってらっしゃい。」
「はーい。」
ランドセルを持って玄関へ向かう。
そしてその途中で、ランドセルに向けて声を掛ける。
「おはよう、今日もよろしくな。」
〈えぇ、おはよう。任せて要様。〉
あの日から俺は可能な限りバロウズを手放さないように心掛けている。
あの時も手放していなかったが、何分非常事態で頭が回らなかった。
二度と同じ過ちを犯さない為に、いつ、何時も不測の事態に対応できるよう、バロウズを常に携帯するようにし、直ぐに使用できるように訓練した。
兄さんと千冬さんには本当に感謝だな。
「要ーー!!」
「おっと、考え事してる場合じゃなかったか。」
少し物思いに耽っていたら、どうやら迎えが来てしまったようだ。
急いで行かなければ。
「おはよう、二人とも。」
玄関を出て二人に挨拶する。
「おっす!」
「おそいぞ!要!」
「いや、二人が早いんだよ。もっと遅くて良いっていっただろ。」
「ごめんごめん、クラス発表楽しみでさ。な?」
「べ、別に私はクラスなんて・・・。」
「あーうん、また一緒のクラスだといいな。」
「だな。」
「ふ、ふん!お前がそういうならそういう事にしてやる!」
「はは、ありがと。」
一通り会話を終え、
「じゃあ、行こうか――――――――
――――
二人の友人――――幼馴染達に走り出しながらそう言った。
「おう!」
「な、待て!私を置いて行くな!!」
――――――――――――全く、本当に退屈とは縁遠い人生になりそうだ。
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