第一軌道上拘置刑務所
それは、第一管理世界たるミッドチルダの宇宙の、静止衛星軌道上に四つある刑務所の一つ目である
その軌道上刑務所には、地上の刑務所には収容出来ない重犯罪者が収容されている
その内の一人が、大規模都市型テロを引き起こした、ジェイル・スカリエッティである
ギンガはチンクの分の許可も得ると、その軌道上刑務所と直結の転移ポートで、第一軌道上刑務所に入った
そして、管理者の一人帯同のもと、スカリエッティと面会した
「ドクター……ジェイル・スカリエッティ……」
「やあ、タイプ・ゼロ・ファースト」
ギンガが名前を呼ぶと、スカリエッティはギンガをそう呼んだ
スカリエッティにとってギンガは、製作者不明の試作機の一機に過ぎないらしい
その直後、通信画面が次々と開き
『今さら、私達に何のようかしら?』
『話すことなど、何もないと言ったのだがな……』
『地上がどうなろうと、知ったことではないしねぇ』
と声が聞こえた
それは、他の三つの軌道上刑務所に収容されているナンバーズ三名
ウーノ、トーレ、クァットロの三名だった
すると、ギンガの後ろからチンクが前に出て
「久しいな、ドクター、ウーノ、トーレ、クァットロ……変わりないようで、何よりだ」
と挨拶した
すると、スカリエッティは
「チンク、懐かしいね」
と嬉しそうにした
そして、両手を広げて
「変わりないさ。このガラス張りの牢獄は、意外と快適でね。むしろ、不摂生だった食生活が改善された位さ。その影響で、クァットロが少し太ったがね」
と語った
するとクァットロが
『あぁん、酷い! もう戻しましたぁ!』
と抗議した
するとチンクは、改めて通信画面の三名を見て
「セッテは……ああ、あいつは最終ロットだから、知らないか……」
と一人納得していた
そのセッテだが、今は軌道上刑務所ではなく、地上の刑務所に収容されているらしい
最終ロット故に、荷担した行動が少ない
というのが、理由のようだ
更に言えば、ある部隊に監視を含めて所属することになるという
それ自体は、スカリエッティは気にしていない
スカリエッティは逮捕されて裁判が行われる前に、ナンバーズ全員に
『自分達の道は、好きに決めなさい。私は気にしない』
と言ったのだ
それを聞いて、チンクを含めた七人が、ナカジマ家の義理の娘になったり、シスターになったりした
そしてセッテだが、最終ロットと言うだけあって、戦闘機人としての完成度は非常に高い
しかしその反面、その精神年齢は幼かった
更に言えば、セッテはスカリエッティの計画を殆ど知らなかったのだ
だからセッテは、最初は軌道上刑務所に収容されたが、少しすると地上の刑務所に移動となった
そこに、ある部隊の指揮官が面会に訪れて、スカウトしたのだ
セッテの戦闘技能は、非常に高い
それをただ腐らせるのは、惜しいと
最初は戸惑ったものの、やはり必要とされたのは嬉しかったらしい
とりあえず、一度その部隊で研修を受けることとなった
今は、その手続きの最中だとか
閑話休題
『けど、今さら何のようだ。司法取引には、応じないと何度も言ったはずだが』
「今日は違うようだよ、トーレ……どうやら、地上で事件が起きているようだ」
トーレの言葉にスカリエッティがそう言うと、ウーノが
『今地上で起きている事件に、私達が関与している訳が……』
と言いかけた
するとチンクが
「その事件だが、下の妹達も関わることになりそうだ……」
と言った
すると、スカリエッティが
「ふむ、まあいいだろう。今日は気分もいい……私が答えられることなら、答えよう」
と鷹容に頷いた
それを聞いて、チンクは
「今地上では、マリアージュがイクスヴェリアを探している。重要人物は、トレディア・グラーゼだ」
と言った
それを聞いて、トーレが
『トレディア・グラーゼ? あいつか』
と言った
すると、ウーノが
『ああ、あの賛同者……』
と思い出すように言った
そして、クァットロが
『マリアージュって、アレでしょ? あの昆虫並みの知性しか無い出来損ないのポンコツ兵器』
と酷評した
すると、ギンガが
「その人物の詳細情報を」
と促した
すると、スカリエッティが
「ウーノ……彼の情報を、簡潔に」
と言った
するとウーノは
『はい……トレディア・グラーゼ、活動家。ヴァイゼンのオルセア自治区にて、反管理局運動を指揮。今から約五年前に、ある遺跡にてイクスヴェリア並びに最初のマリアージュを発見……』
と語りだした
そこまで聞くと、チンクが
「そこまでは、私も覚えている……」
と腕組みした
すると、ギンガが
「そこまでは、こちらも把握しています……問題は、トレディア・グラーゼとイクスヴェリアの今の居場所……」
と言った
その時
『ストップよ、タイプ・ゼロ・ファースト……ここから先は、交渉材料……』
とウーノが言った
管理者が身構えたが、それをギンガは視線で静止
そして、スカリエッティを見て
「差し支えなければ、その内容を」
と問い掛けた
するとスカリエッティは、指を一本立てて
「出所の確かな、ベルカの赤ワインを一本……それだけさ」
と言った
それを聞いたギンガは、困惑した表情を浮かべた
すると、トーレが
『ドゥーエの死を悼む位、バチは当たるまい』
と言った
それに便乗するように、スカリエッティが
「私が作った最高傑作……その一人、ドゥーエの命日が近いだろ? そのためさ」
と言った
そのレベルならば、ギンガにも即決出来るレベル
だからだろう、ギンガは少し考えて
「分かりました……後で、私名義で届けさせます」
と言った
それを聞いたスカリエッティは、嫌らしい笑みを浮かべて
「ありがとう、タイプ・ゼロ・ファースト」
と言った
その直後
「ギンガです、ギンガ・ナカジマ」
と我慢出来ない様子で、そう言った
その時、チンクの携帯端末が鳴って
「すまない」
とチンクは、通信画面を開いた
すると、ディエチの姿が写り
『チンク姉、今どこ!?』
と彼女としては珍しく、慌てていた
「軌道上刑務所に来ている。ギンガも一緒だ」
「どうしたの!?」
ギンガが問い掛けると、ディエチは
『海上施設で、大規模火災! お父さんから私達にも出動要請が出た! ニュース、見られる!?』
と言ってきた
それを聞いたギンガは、ニュースが見られるウィンドウを開いた
そこに見えたのは、まるで海が燃えているような光景だった
「海が、燃えてる!?」
それを見たギンガは、思わず声を上げた
『急いで戻れる!?』
「少し待て!」
ディエチの言葉に、チンクはそう返答した
それを聞いたスカリエッティは、ニヤリと笑ってから
「どうやら、急ぎのようだね。ウーノ」
とウーノの名前を呼んだ
すると、ウーノは
『トレディア・グラーゼがイクスヴェリアとマリアージュを発見したのは、先程映っていた場所……海上施設、アクアリウム内部……』
と言った
正に、現場が真相に迫る場所だったのだ
そして、スカリエッティが
「そして、トレディア・グラーゼだが……ふ……四年前に死んだよ……マリアージュに食われてね」
と言って、ギンガは驚いた
ならば、今マリアージュに指示を出しているトレディア・グラーゼは何者なのかと