「湯加減、どう?」
ヴィヴィオ達から離れたルーテシアは、スバル達の方に近付いて、問い掛けた。
「もおサイコー」
「まったくだ」
スバルに続くように、ノーヴェが同意した。
そしてノーヴェは、軽く周囲を見回して
「しかし、アレだな……前に来た時より、またパワーアップしてんな」
とルーテシアに言った。
特に、温泉関連が桁外れに拡充されている。
「建築デザインとか設備設計って楽しいんだよね。ま、この温泉もロッジも、お遊びレベルだけど」
ルーテシアはそう言いながら、ロッジと温泉の設計図を表示させた。
『いやいやいや!』
ルーテシアの言葉に、スバルとノーヴェは思わず手を振ってしまった。
お遊びのレベルを越えている。
「まあ、みんなに評判いいのは嬉しいな。みんなが泊まりに来てくれて、笑顔になってくれたら、すごく嬉しい」
「んなもん、めちゃめちゃ笑顔だっつーの」
「ほんとほんと♪」
ルーテシアの言葉に、ノーヴェとスバルは笑顔で答えた。
その時だった。
「ふえっ!?」
とキャロが、驚いた表情で立ち上がった。
「キャロ、どうしたの?」
近くに居たティアナは、キョロキョロと周囲を見回していたキャロに問い掛けた。
「何かこう、柔らかいものがもにょっと……」
キャロがそう言った直後、ティアナももにょっと触られ
「ひゃっ!?」
と悲鳴を上げながら、思わず立ち上がった。
「居る! 何か居るッッ!!」
「なんだかぬるっと!!」
温泉から出ると二人は、体にタオルを巻いてから、たまたま近くに来たルーテシアに
「ルーちゃんルーちゃん!」
「湯船の中で、何か飼ってたりしてないッッ!?」
と問い掛けた。
「えー? 飼ってないよ? 温泉に住むような珍しいペット飼ってるなら、真っ先に紹介してるし」
(確かにそうだ!!)
ルーテシアのその言葉に、二人は思わず納得してしまった。
そんな騒ぎが聞こえたらしく、コロナが
「なんだか、騒がしいね?」
「? 動物でも出たのかな?」
コロナに続きヴィヴィオが言った直後
「はわわっ!?」
「きゃあっ!?」
ヴィヴィオとコロナが、ほぼ同時に何かに触られた。
そして、アインハルトも胸を何かに触られた感触がして
「つっ~!!」
思わず目を閉じた状態で、水切りを放った。
もしアインハルトが目を開けていたら、水切りの射線上から人影が出ていたことに気づいていただろう。
「……あ、水切り出来ました……」
(あー、びっくりした……アレが、噂に聞いてた覇王っ子か……しかし、セインさんの敵じゃーなかったね)
そう、今起きている事態の犯人はセインだった。
セインの固有能力の、ディープダイバー。その能力は、岩石や金属といった無機物の中を、まるで水中のように移動することが出来る能力だ。
そんな移動方法のために、水中を移動することが得意なのだ。
(ふっふっふ……みんな驚いてるねぇ)
そしてセインは、指先の小型カメラで慌てている触った一同を見て、笑みを浮かべていた。
そうして
「あっ!?」
「ふえっ!?」
「うわっ!?」
ルーテシア、スバル、ノーヴェの三人を一気に触った。
(わはははは! 残るは、あとひとーり!! ヴィヴィオの友達の元気っ子!)
そして最後にターゲットしたのは、今になって騒ぎに気付いたリオだった。
「がおーっっ!!」
と声を上げながら、セインはリオの胸を背後から鷲掴みにした。その時、更衣室。
《緊急事態発生》
籠に置いてあったリオのデバイスが、遠隔起動した。
《強化システム、セットアップ》
「ええっ!?」
セインとリオの回りの温泉が魔力で吹き飛ばされて、セインは驚きで固まった。
そんなセインの腕を、バリアジャケットを纏ったリオが掴んだ。
しかも、目元には涙を滲ませている。
リオはそのまま、セインをグッと持ち上げ
「いいっ!?」
「やーーッ!!」
自己防衛本能の顕れなのか、リオはセインの腹部に絶招炎雷炮という、魔力付与蹴りを放ち、セインを天高く蹴り飛ばした。
「なんだ、セインか」
「だろうと思った」
天高く蹴り上げられたセインはそのまま、水柱を高く上げながら温泉に落下した。
「リオー!」
「リオ、大丈夫っ!?」
そんなリオに、ヴィヴィオとコロナが駆け寄り
『ティアナ、凄い音がしたが、何があった?』
「イタズラシスターがやらかしただけよ」
『ああ、なるほど』
ティアナのその答えに、音声通信で裕也の納得した声で答えた。
それほどに、セインのイタズラに慣れているのだ。
そしてセインは、湯面に浮かび
「……誰か……あたしの心配も……」
「自業自得です、セイン姉さん……」
そんなセインを、遅れてやってきて体を洗っていて難を逃れたセッテが回収したのだった。