試合が一通り終わって、約一時間後。子供部屋では、ヴィヴィオ、コロナ、リオ、アインハルトの四人がアーウーと唸っていた。
「か、体が重い……」
「う、動きません……」
「もう、自分の限界を無視するからだよ?」
そんな四人に、ルーテシアがクリスを撫でながら苦言を呈していた。すると、僅かに上半身を起こしたコロナが
「る、ルーちゃんは、なんで普通なの?」
「そこはそれ、
コロナの問い掛けに、ルーテシアは余裕綽々と言った表情でそう答えた。そのタイミングで、ドアが開き
「はーい、疲労抜きのジュース持ってきたわよー」
とメガーヌとなのはの二人が入ってきた。その手には、ジュースが入ったコップが乗ったおぼんがある。
「あ、なのはママ!」
「はーい、皆のぶんもあるからねぇ」
最初にヴィヴィオに手渡すと、なのはは順番にリオ、コロナ、ルーテシア、アインハルトに渡していった。
その時、メガーヌはルーテシアが見ていた画像に気づいて
「あら、DSAA?」
とルーテシアに問い掛けた。
「そう。ヴィヴィオ達も、参加条件はクリアしてるし」
DSAAというのは、次元世界全体で行われる魔法戦競技大会で、規模だけでなく歴史もかなりある大会である。参加条件は、10歳以上で魔法技能を有していること。そして何より
「クラス3以上のデバイスを有していること……ああ、ヴィヴィオちゃん達は持ってるわね」
『はい!』
メガーヌが視線を向けると、ヴィヴィオはクリスを、コロナはブランゼル。リオはソルフェージュを見せた。
だが、アインハルトは
「私は……持っていません……古式ベルカ用のデバイスとなると、中々……」
と言葉を濁した。だがそこに
「ふっふっふ……そこは、私の交友関係を舐めてもらっては困りますなあ……私の親友の家族は、一人を除いてベルカな大家族!」
と自信満々に告げた。その頃、ミッド南西部の海岸付近の八神家にて
「はっくしょん!」
とはやてが、くしゃみをした。
「うー……誰か噂しとるな?」
「どうした、はやて?」
「だーうー?」
当麻と二人の子供の優が問い掛けると、はやては微笑みながら
「大丈夫やで、当麻、優」
と答えた。
場所を戻り、テラスにて剣士郎は椅子に座って満月を眺めていた。
「……平和だな……」
と呟いていると、隣にディエチが近寄ってきて
「隣、いい?」
と問い掛けた。
「大丈夫ですが……」
「ありがとう」
ディエチの問い掛けに剣士郎が答えると、ディエチは剣士郎の隣に座った。そして、少し間を置くと
「裕也さんから聞いたけど、剣士郎君ってかなりの剣の腕前なんだよね?」
「えぇ、まあ……先祖の技術と記憶を受け継いでますので……」
「その傷痕も、それに関係してるの……?」
ディエチが指差したのは、左頬の十字傷。剣士郎はそれを撫でながら
「ええ……緒王戦乱期に先祖が負った傷です……恨みが籠った攻撃で負った傷は、消えにくいらしいです……人斬り抜刀斎は、恨まれた存在でしたから」
と答えた。
「人斬り抜刀斎……データでは、百人以上の要人や兵士を斬殺したって……」
「詳細な人数は知らない……けど……屍山血河を作った……戦争だったからかもしれないけど……何人も斬った……血の河を作った……屍の山を作った……自分の体から、血の匂いしか感じなくなる位に斬っていた……」
そう語る剣士郎は、年不相応に感じられて、気付いたらディエチは抱き締めていた。
「……大丈夫……今は、平和な時代だから……自分を、追い込まないで……」
「ありがとうございます……」
ディエチの優しい言葉に、剣士郎の目付きが鋭いものから落ち着いたものに変わった。その光景を、少し離れた位置から冬也が見ていたのだった。