魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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忠告

アインハルトがデバイスを貰った、翌日の早朝。

 

「つーわけで、アインハルトとデバイス。アスティオンの相性は抜群らしい。まるで、長年連れ添った相棒みたいにな」

 

「へー。それは凄いねぇ」

 

ノーヴェとヴィヴィオは、ある場所に向かいながら会話していた。その会話内容は、アインハルトが貰ったデバイスに関してだ。そして二人は、その目的地たるベルカ自治区の聖王教会に到着し

 

「それじゃあ、アタシはセイン探して話してくるな」

 

「うん、わかったー」

 

と入り口付近で別れた。ノーヴェは中庭の方に向かい、ヴィヴィオは通路に沿って本館に向かった。その時

 

「お、陛下ー。イクスのお見舞いかい?」

 

と一人のシスターが呼び掛けてきた。

 

「あ、シャンテ! そうだよ!」

 

そのシスターの名前は、シャンテ・アピニオン。まだ若いが、正式なシスター兼騎士だ。

 

「そかそか、イクスも喜ぶよ」

 

ヴィヴィオの言葉に、シャンテは朗らかに笑った。すると、ヴィヴィオが

 

「そういえば、ノーヴェに聞いたんだけど。シャンテもDSAAに出るんだって?」

 

と問い掛けた。

 

「そうだよー? ただまあ、シスター・シャッハに無断で出場したから、めっちゃ怒られたけどね……」

 

実はシャンテは、シスター・シャッハからまだ出場させる訳にはいかないと言われていたが、我慢が出来ず参加申請書をセインに頼んで出させたのだ。そのことに関して、シャンテだけでなくセインも、シスター・シャッハに一緒に怒られている。

 

「無断だからだよー」

 

「いや、ごもっとも」

 

ヴィヴィオの苦言に、シャンテは苦笑いを浮かべるしかできなかった。その時二人は、少し広い庭に出た。すると、ヴィヴィオが

 

「そういえば、シャンテはどんな技を使うの?」

 

「いやいや。ライバルに簡単に見せる訳が……ってああ、この技なら大丈夫か」

 

一回断ろうとしたシャンテだったが、何かを思い出したようにポケットの中からデバイスの待機形態を取り出した。シャンテのデバイスは、シスター・シャッハと同じ双剣型のアームドデバイスである。

 

「あ、シャンテ。私もデバイスを展開するー!」

 

「ああ、ごめん。どうぞどうぞ」

 

シャンテが構えると、ヴィヴィオが思い出したように言って、それを聞いたシャンテは一旦構えを解いた。

 

「クリス、コンパクトモード! よし、大丈夫だよ!」

 

「え、本当に大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫! 見えないけど、変わってるから」

 

先ほどと変わっていなかったためにシャンテが思わず問い掛けると、ヴィヴィオは軽く答えながら構えた。

 

「そう? じゃあ、行くよっ!」

 

構えたシャンテは、一気に駆け出した。最初は真っ直ぐだったが、すぐに体を左右に不規則に動かして姿を消した。そして、ヴィヴィオの後ろに姿を現したのだが

 

「アクセル」

 

ヴィヴィオはなんと、即座に反応してシャンテが振り下ろした双剣の刃に拳を叩き込んだ。

 

「あ、危なっ!? 姿が見えなかった!?」

 

(なんて子だ! 見えなかったのに反応した上に、刃に拳を叩き込んできたよ!?)

 

ヴィヴィオとシャンテは、二人して驚きながらも更に拳と双剣を繰り出していく。二人の攻撃がぶつかる度に、激しい音が周囲に響き渡る。

 

(なるほど……陛下のデバイス……あのうさ吉が頑張ってるんだ……魔力のリソース配分が上手いんだね)

 

攻撃していく中で、シャンテはクリスの特性を見抜いた。そして、何度目か分からない激突後、二人は互いに距離を取った。すると、シャンテが

 

「陛下……今から技を繰り出すから、防御だけで」

 

「? いいけど……」

 

シャンテの提案に、ヴィヴィオは頷いた。するとシャンテは、双剣を交差させるように構えて

 

「双輪剣舞……」

 

と呟いた。その直後、ヴィヴィオは自分が切り裂かれる幻想を見て、一気に後ろに跳んだ。

 

「流石陛下……幻視(みえ)たんだ……」

 

「うん……防御毎斬られた……」

 

シャンテの言葉にヴィヴィオは、両手を軽く上げながら答えた。それを見てシャンテは、構えを解いて

 

「それじゃあ、ここらで終わりにしよう。下手に続けて、怪我したら大変だし」

 

「そうだね」

 

と二人が構えを解いて、デバイスを待機形態に戻した直後だった。シャンテの体を、バインドが拘束した。それも、亀甲縛りで。

 

「はいー!?」

 

「し、シャンテ!?」

 

「シャンテ……」

 

「私達護衛役に話を通さずに模擬戦とは……いい度胸です」

 

二人が驚いているところに現れたのは、オットーとディードの双子だった。

 

「二人とも、私が誘ったの!」

 

「それは何となく察していますが、問題点はそこではないんです」

 

「陛下はイクス樣のお見舞いに来られたのでしょう? それなのに、陛下自身がお怪我をされたらイクス樣が心配されますよ?」

 

「う、はい……」

 

オットーの正論に、ヴィヴィオは反論する余地なく頷くしかなかった。確かに、お見舞いに来たのに怪我をしていたのでは、心配させてしまうだろう。

 

「それに、模擬戦するのは構いませんが、私達のどちらかを控えさせてからやってほしいですね」

 

「ディード! 言ってることとやってることのギャップ!」

 

言ってること=模擬戦の肯定。やってること=シャンテの吊し上げ。確かに、ギャップが凄い。

 

「陛下、そろそろ行かないと、面会の時間が過ぎてしまいますよ」

 

「あ、それはダメだ……じゃあね、シャンテ」

 

「はーい、イクス樣によろしくねー」

 

吊るされたままヴィヴィオを見送るシャンテ、中々に図太いようだ。すると、木にロープを縛ったディードが

 

「シャンテ、どういうつもりですか?」

 

とシャンテに、鋭い視線を向けた。

 

「どうもこうも、忠告だよ。今のままじゃ、直ぐに負けるって……大会常連や上位に当たったら、直ぐに負けて……最悪、挫折しちゃう……陛下のそんな姿、私は見たくないよ」

 

シャンテは、既に遠くなっているヴィヴィオの背中を見ながら話し始めた。

 

「そもそも、陛下の魔力資質は前衛格闘型じゃない……せめて、中距離から遠距離の後方型……あのうさ吉も頑張ってるみたいだけど、まだロスがある……下手したら、相性が悪い可能性がある……」

 

とそこまで語った時、ディードがシャンテの額を小突き

 

「そんなこと、ノーヴェ姉さまを含めて、周囲の方々のほぼ全員が察しています。それでも、陛下の意志に委ねているんです……陛下のやりたいように挫けそうになったら、私達が支えてあげたり、背中を押してあげればいいんです」

 

と語った。それを聞いたシャンテは、少し間を置いてから

 

「あのさ……私は何時まで、吊るされてなきゃいけないのかな?」

 

「今こちらに、シスター・シャッハが向かってきています」

 

「そんなっ!?」

 

シャンテの明日はどっちだ。

 


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