選考会から、数日後。聖ヒルデ魔法学院。
「ええー!? ハリー選手に会ったの!?」
「そう!」
「サインまで貰っちゃった♪」
体操着に着替えながら、ヴィヴィオはリオとコロナから聞いた話に思わず声を上げた。それはつい先日、その日のヴィヴィオは早く帰る必要があったので真っ直ぐに帰宅したのだが、リオとコロナは買い物があったので、あるデパートに向かっていた。その時に会ったのが、ハリー達だったのだ。
去年までは憧れの人物の一人だったが、今年は同じ競技選手。それも、リオは戦う可能性が非常に高いのもあって、二人は興奮し、サインをお願い。ハリーは快諾し、サインを貰ったのだが、意外だったのはハリーが一緒に描いてくれた絵が非常に可愛かったことである。
ハリー・トライベッカ、性格や口調が男勝りな所があるので番長と呼ばれるが、実は無類の可愛い物好きで、部屋にはいくつものぬいぐるみがあるらしい。
ヴィヴィオ達は会話しながらも体操着に着替え、グラウンドに出た。聖ヒルデ魔法学院のグラウンドは広く、2クラス分の人数が居てもまだ余裕がある。
ヴィヴィオ達がグラウンドに到着すると、既に先客が居た。着ている体操着の縁の色から、中等部の一年生と分かった。
「中等部一年生も、体育なんだ」
「あ……ねえ、あれって緋村さんとアインハルトさんじゃないかな?」
「え……あ、本当だ」
先に剣士郎とアインハルトを見つけたのは、ヴィヴィオだった。よく見てみれば、確かに特徴的な赤髪と碧銀の髪の二人が居た。どうやら、二人で柔軟体操をしているらしい。背中合わせになった状態で両腕を絡ませ、互いを背中で持ち上げている。
そこに、新たに一人の少女が駆け寄り声を掛けている。少し長い灰色の髪が特徴的だ。
剣士郎とアインハルトは柔軟体操を終えると、その少女と話し始めたのだが、剣士郎が視線を感じたのか、ヴィヴィオ達に気付いて手招きしてきた。授業が始まるまで多少の余裕が有ったので、三人は近寄り
「こんにちは、緋村先輩、アインハルト先輩」
『こんにちは!』
と挨拶した。
「朝や放課後以外で会うのは、珍しいな」
「そうですね。まさか、グラウンドで会うなんて思いませんでしたー」
剣士郎の言葉に、ヴィヴィオは同意した。聖ヒルデ魔法学院は、グラウンドだけでなく敷地も広大であり、ヴィヴィオ達の初等科と剣士郎達の中等部で校舎が別けられている。
グラウンド、体育館、図書館、食堂といった場所は共用だが、ヴィヴィオ達は基本的にお弁当なので食堂は使わず、図書館もそんな頻繁に使うという訳でもない。
だから会うとしたら、登下校時の校門しかなかった。
剣士郎達とヴィヴィオ達が会話していると、灰色の髪の少女が
「もしかして、今年DSAA初出場のヴィヴィオ選手に、リオ選手、コロナ選手?」
と問い掛けてきた。
「えっと……」
「ああ、彼女はユミナ・アンクレイブ。俺とアインハルトのクラスの委員長をしている」
少女、ユミナのことを知らなかったコロナが首を傾げていると、剣士郎がそう教えた。
「初めまして、ユミナ・アンクレイブです! よろしくね!」
ユミナは人懐っこい笑みを浮かべながら、ヴィヴィオ達に挨拶した。
「初めまして、高町・S・ヴィヴィオです」
「コロナ・ティミルです」
「リオ・ウェズリーです!」
「よろしくね」
ひとまず握手すると、ユミナはヴィヴィオ達と剣士郎達を見回して
「そういえば、緋村君とストラトスさんも一緒にDSAAに出場してたよね? チームナカジマで」
「そうですが、よく知ってますね」
アインハルトからしたら、ユミナがDSAAにDSAAに興味があり、尚且つ初出場の自分達を知っていることが意外だった。
「えへへ、実は無類の格闘技ファンだったりします……だから、DSAAに出場する選手はよく調べてるの」
アインハルトの言葉に、ユミナは少し恥ずかしそうに頬を掻いた。そして、五人を見回して
「まず、ヴィヴィオ選手のカウンター戦法。あれって、目が良くないと、出来ないよね? 目が良いんだ」
「あ、はい。ノーヴェ師匠からもよく言われるんです」
「なるほど……で、リオ選手は独特な格闘技使うよね? 御実家で教わったの?」
「はい、そうです! 春光拳っていいます!」
「あ、あれも春光拳なんだ……なるほど……で、コロナ選手が使ってたのは、創成と傀儡かな?」
「はい、そうです。前から得意だったんです」
ユミナは気になっていた点を、次々とヴィヴィオ達に問い掛けた。
その時、予鈴が鳴り響いた。
「あ、そうだ。緋村先輩、ママ達とパパ達が改めて会いたいそうです。アインハルト先輩も」
「分かった。今日伺っても?」
「多分大丈夫です」
剣士郎とヴィヴィオ達がそう約束すると、ユミナが
「ヴィヴィオ選手の、ママ達とパパ達……?」
と首を傾げた。するとヴィヴィオが
「あ、アンクレイブ先輩もどうですか?」
「え、いいの?」
「はい、どうぞ!」
「じゃ、じゃあ……」
「はい、剣士郎先輩とアインハルト先輩と一緒に行きましょう!」
こうして、高町家への訪問が決まる。