魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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振り返りと暗雲

『予選3組、第4試合。緋村剣士郎選手対アリーゼ・サガラ選手……ファイっ!!』

 

司会がゴングを鳴らした直後、先に動いたのは黒髪に上下白の胴着を着たアリーゼだった。

 

「だぁぁぁぁ!!」

 

なんとアリーゼは、拳をリングに叩き込みリングを砕き、舞い上がった破片を次々と飛ばした。だが、次の瞬間

 

「飛天御剣流……土龍閃!!」

 

なんと、剣士郎も刀をリングに叩き付け、リングの破片を飛ばして相殺した。その見た目はとてもハデで、観客席からは喚声が聞こえる。

 

『しょっぱなから、大技同士が炸裂ぅ!! これは凄い! 今年の新人は、レベルが高い!』

 

司会が興奮するが、選手達からしたら知ったことじゃなく、二人して前に跳ぶように進んでいた。土煙を突破し、二人は接近。そして、アリーゼが蹴りを繰り出すが、それを剣士郎は刀で弾いて独楽のように一回転し

 

「飛天御剣流……龍巻閃!」

 

アリーゼの脇腹を狙い、鋭く一閃した。しかしその一撃を、アリーゼは右腕で防御した。だが一撃が重かったためか、大きく後方に飛ばされた。

 

アリーゼ・サガラ

残LIFE 10000

 

『先手を取ったのは、緋村選手だぁぁ! 鋭く放った一閃は直撃こそしなかったが、アリーゼ選手のライフを大きく削りました!!』

 

興奮した司会の声が響くが、アリーゼ本人は腕を軽く振って

 

「ふぅん……中々の威力だね? 少し腕が痺れたよ」

 

「痺れた程度ですか……凄いタフですね」

 

「でしょ? よく仲間内でも言われるよ」

 

どうやら、アリーゼのタフさは仲間にもよくからかわれるらしい。しかし、剣士郎は納得した。今しがた打ち込んだ龍巻閃は、結構本気で打ち込んでおり、威力的にはクラッシュエミュレートで骨折判定されてもおかしくないのだ。

しかし、アリーゼからしたら、腕が痺れた程度。呆れる程のタフネスだった。

 

「じゃあ……こっちから行くよっ!!」

 

そう言った直後、アリーゼはリングに足跡が残る程の力で、一気に駆け出した。

 

(早い!?)

 

「ぜあっ!!」

 

短い気合いと共に、アリーゼは拳を繰り出した。

剣士郎は、その一撃を間一髪で回避し

 

「飛天御剣流……双龍閃!」

 

先に刀を振るい、それを後ろに跳んで回避したアリーゼに、鞘による一撃を叩き込んだ。しかしその一撃を、アリーゼは上手く後ろに跳んだことで威力の殆んどを殺した。

 

「やっぱりね……二段構えか」

 

「初見で回避されたのは、貴女で二人目ですよ……」

 

アリーゼ・サガラ

残LIFE9900

 

緋村剣士郎

残LIFE11000

 

状況的には、剣士郎が僅かに優勢ではある。しかし、アリーゼはトップファイターの一人。切り札の一つ二つは、有って然るべきである。

剣士郎がそう判断した瞬間

 

「ほっ」

 

「なっ……がっ!?」

 

一瞬にしてアリーゼの姿が目前に現れ、ボディーブローが叩き込まれた。

 

緋村剣士郎

残LIFE8000

クラッシュエミュレート 軽度ボディダメージ

 

「今、のは……縮地か……!?」

 

「お、流石は剣士だね」

 

縮地、それは剣士の歩法の極みと言われており、本当に極めた人物は魔法も使わず生身で時速30km以上を出せると言われている。

しかもアリーゼの場合は、魔法との合わせ技で、正に一瞬で10m程を詰めてきた。

 

「予定では、まだまだ先に取っておくつもりだったけど、キミが中々やるからね。切り札の一つを切らせてもらったよ」

 

そう言った直後、アリーゼの姿が消えた。その瞬間、剣士郎は己の直感に従って、横に跳んだ。それとほぼ同時に、先ほどまで剣士郎が射た場所に轟音と共に踵落としが打ち込まれて、リングに大きくヒビが入った。

振り返りながら着地した剣士郎は、即座に技を繰り出した。

 

「飛天御剣流……九頭龍閃!!」

 

防御不能、回避不能のその一撃を受けて、アリーゼは大きく吹き飛ばされた。

 

『怒濤の連撃だぁぁぁぁ! 高精度カメラが捉えた通りならば、一瞬にして九撃を叩き込んでいます! なんという技だぁぁ! アリーゼ選手、防御も回避も出来ずにリングアウト! カウントが進みますが……』

 

レフェリーが5までカウントした時、瓦礫の中からアリーゼが出てきて、上がってきた。

 

アリーゼ・サガラ

残LIFE3000

クラッシュエミュレート 軽度脳震盪 軽度打撲

 

「流石に、今のは効いた……咄嗟に後ろに跳んでなかったら、今ので終わってたかも……」

 

そう言いながらアリーゼは、軽く頭を振った。どうやら、回避も防御も出来ないと悟ったアリーゼは、後ろに跳んでダメージの軽減を図ったらしい。見事な判断だろう。

 

「試合の続行は?」

 

「大丈夫です」

 

レフェリーの問い掛けに、アリーゼは短く答えてから構えた。それを見て、レフェリーは離れてから

 

「ファイっ!!」

 

と試合を再開させた。その直後、先に動いたのは剣士郎だった。だが、僅か後にアリーゼも動いていた。そして刀と拳が激突し、甲高い音が鳴り響く。

 

「あの技は、出させないよ……どうやら、少しの距離が必要みたいだからね……このまま……」

 

そう言ってアリーゼは、密着するように戦う。九頭龍閃は、突進しながら放つために多少の距離が必要なのである。アリーゼはそれを見破ったのだ。

 

「なにも、それだけではないぞ……飛天御剣流……龍巣閃!!」

 

しかし、飛天御剣流はなにも、九頭龍閃や双龍閃だけではない。目にも止まらぬ早さで、次々と攻撃を放った。

 

「なっ……くっ!?」

 

『これは、凄まじい早さの連撃だぁぁぁぁ! もはや、何連撃しているのか分かりません!』

 

アリーゼは驚きながらも、即座に防御態勢を取った。しかし、それは無駄だった。剣士郎の技は、アリーゼの全身を滅多うちにしていく。いくら防御態勢を取ろうが、防げるのは一部のみであり、そこ以外は無防備。

アリーゼは懸命に防ぐが、剣士郎は巧みに攻撃していき

 

「う、あ……」

 

アリーゼ・サガラ

残LIFE0

 

『試合終了ー!! なんということだぁぁぁ! 都市本戦にもコマを進めた経験のあるアリーゼ・サガラ選手が、初戦でルーキーに破れたぁぁぁぁぁ! 試合時間、2分09秒! 勝者、緋村剣士郎選手ぅぅぅ!!』

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

『今年は、大物ルーキーが凄いです! 次々とKO勝利やTKO勝利を量産しています!』

 

振り返りで興奮が甦ったのか、司会は終始興奮しっぱなしだ。そして、ヴィヴィオ達の情報を見た他チームのトレーナー達が

 

「このチームナカジマって、聞いたことないぞ? 一体、誰が育てたんだ?」

 

「だよな……流派も戦闘スタイルもバラバラなのに、一体どうやって……」

 

と不思議そうにしていた。それを聞いた、ディエチとノーヴェ、ユミナが

 

「まさか、仲良しの子供たちを、知り合いのお姉さんが教えてるだけ。なんて、予想出来ないよねぇ」

 

「まあ、普通は出来ないッスよ」

 

「私も、全然予想してませんでした」

 

と会話していた。この時三人は、全員分の飲み物を買っていたから気付かなかったが、近くに一人の白髪の少年が居たのだが、剣士郎の顔写真を睨み付けて

 

「抜刀斎……!」

 

と憎しみの声を漏らしていた。


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