試合終了後、剣士郎は急いで医務室に向かっていた。その理由は、ミウラと試合していたヴィヴィオが、ミウラの最後の技の直撃を受けてから、意識を失っているのだと言う。
「それで、ヴィヴィオちゃんの容態は?」
『命に別状は無いし、何の後遺症と無いから、大丈夫……ついさっき、クリスも再起動したわ』
剣士郎の問いかけに、シャマルが通信越しに返答した。それを聞いた剣士郎は、安堵した様子で
「それは良かった……これで、今日残された試合は、リオちゃんだけですか」
『そうなるわね……その試合も、もう始まってるわ』
リオの対戦相手は、トップランカーの一人。ハリー・トライベッカだ。砲撃型の選手の中では、頂点の一人だ。
勝つには、リオの力強さを活かすしか無いだろう。
そして、剣士郎が医務室前の廊下に到着すると
「あわわ」
「ああ、大丈夫ですか? ヴィヴィオさん」
倒れそうになったらしいヴィヴィオを、ミウラが支えていた。それを見た剣士郎は、安堵のタメ息を吐いてから
「起きたんだな、ヴィヴィオちゃん」
「あ、緋村先輩! はい、大丈夫です!」
「あ、えっと……」
「初めましてかな? 俺は、緋村剣士郎。ヴィヴィオちゃんと同じチームの一人だ」
「あ、初めまして! ミウラ・リナルディです! 八神道場の出身で、先ほどヴィヴィオさんと試合した者です!」
剣士郎が名乗ると、ミウラは少し緊張した様子で自己紹介してきた。実は剣士郎は、ミウラと面と向かって話すのは、今回が初めてである。ミウラの初戦の際に送ったメッセージの時は、剣士郎は試合の真っ最中だった為に写っていなかった。
「君のことは、聞いている。かなり強力な一撃を放つ選手だとね」
「あ、そのせいで、ヴィヴィオさんが意識を……」
「あ、いや。君を責めるつもりはない。君は全力でヴィヴィオちゃんと試合した。ただそれだけだ。それに、ヴィヴィオちゃんは、こうして無事だしね」
剣士郎が視線を向けると、ヴィヴィオは頷きながら
「そうですよ、ミウラさん。気にしないでください。それに、ミウラさんっていう強い人と戦えたので、満足です!」
と伝えた。それを聞いたミウラは、嬉しそうな笑みを浮かべ
「はい!」
そう頷いた。すると、ユミナが壁の時計を見て
「ヴィヴィオちゃん! リオちゃんの試合が始まっちゃってるよ!」
と少し慌てた様子で教えた。それを聞いたヴィヴィオも、慌てた様子で
「あわわっ! それは急がないと! ミウラさんも一緒に行きましょう!」
と言いながら、ミウラの手を引いて走り出した。
「ああ! ヴィヴィオちゃん、走らないで! 意識戻ったばっかりなんだから!!」
そんな二人を、ユミナは追い掛けていき、剣士郎は医務室に居た冬也やなのは、フェイトに頭を下げてから、ヴィヴィオ達の後を追い掛けた。
そして、剣士郎が試合会場に到着した時、轟音と共に会場が大きく揺れた。
その轟音と揺れの原因は、リオがリングを拳で砕いて持ち上げた音だった。
予想外だったのか、ミウラが固まっていると、ヴィヴィオが朗らかに
「リオ、チームナカジマの中では一番の力持ちなんですよ♪」
「いやいや!? それにしたって、凄すぎませんか!?」
ヴィヴィオの説明を聞いて、ミウラは思わず突っ込みを入れていた。ミウラも力型の選手だが、リオは更にその上を行っていた。
剣士郎も、僅かに驚いていた。
(あの合宿で、リオちゃんが岩を投げているのを見たが……それより更に大きいな……)
そしてリオは、魔法で拘束していたハリーに向けて、その塊を投げ付けた。
ハリーだが、トップランカーの中ではかなり素直な性格らしく、捕縛魔法にやたらとよく掛かる。
更に言えば、火傷や麻痺といったダメージも負いやすい。だが、簡単には倒れないタフネスさ。そして、敗北した際の原因を徹底的に研究し、対策を講じるその努力。
それが、ハリーをトップランカーにまで上らせた大きな要因である。そうして、年々ハリーはしぶとくなっていく。相手からしたら、ヤりづらいことこの上無いだろう。事実、実はリオも電撃で痺れさせようと、電撃を付与させた拳を繰り出していた。だがハリーは、それに合わせて頭突きを繰り出して迎撃。電撃を耐えたのだ。
しかもリオは、その頭突きにより、拳を痛めた。
それが、トップランカーという存在である。
妥協せず、上を目指し続ける者達。
今リオは、トップランカーという分厚い壁に挑む。