エレミアクランツ
それは、古代ベルカの時代に於いて、まだ魔法格闘戦技という概念が無かった時代に、エレミアの一族が代々受け継ぎ、築き上げた魔法格闘戦技だ。
そして、古代ベルカに於いてはある事実があった。
それは、《黒のエレミアの前に、あらゆる命は価値を持たない》。という事実。
これは、エレミアクランツを納めたエレミア一族と敵対した相手は、例外なく命を落としたからだ。
「そして、エレミア一族はある魔法に特化している……」
「ある魔法……?」
「……イレイザーだ」
「イレイザー!? それって、最高難易度の!?」
剣士郎の説明を聞いて、ユミナは驚いた。
消去魔法、イレイザー
その名前の通り、あらゆる物質を消すことが出来る魔法だが、魔法の発動もだが維持も非常に難しく、魔法の中でも最高難度の魔法とされている。
余談だが、ハリーも発動に時間が掛かるものの、イレイザーを使える。
そして剣士郎が説明を終えた時、剣士郎、ヴィヴィオはゾワリと背筋に悪寒を感じた。
リングに視線を向けると、ジークから凄まじい圧が放たれ、目付きが変わっていた。そして、その両手には黒い魔力が纏っていた。
「イレイザーだ!」
「アインハルトさん!」
ジークが技を繰り出すと、リングが抉れ、更に壁に大きなクレーターが出来た。
その痕跡が、ジークの魔法の威力を物語っている。気付けば、ノーヴェが何時でもタオルを投げられるようにしている。
アインハルトの防御力は高くないので、下手したら命に関わるかもしれない。
実は昨年の大会で、ミカヤがジークのイレイザーの一撃を受けて、右手を手首から骨折してしまっていた。
エミュレートを超えて、実際にダメージを負ったのだ。
実はこの試合が始まる前に、ミカヤがノーヴェにもしジークがイレイザーを使い始めたら、通称で《エレミアの神髄》になったら、何時でもタオルを投げられるようにしているようにと助言していたのだ。
その頃、リング付近
「なーんか、リングの方が騒がしいな……」
と言いながら、ツンツン頭の男がリングへの通路を歩いていた。すると、一人のスタッフが
「待ちなさい、この先は選手やセコンド。スタッフ以外の立ち入りは……」
とその男を止めようとした。しかし、その男。八神当麻は軽く手を振りながら
「一応、ジークのセコンド。まあ、今日初めて来たけど」
と言って、試合会場に入った。そして、エレミアの神髄状態のジークを見て
「あー……ジークの奴……」
と少し面倒そうに、頭を掻いた。その直後、ジークは素早くアインハルトの四肢を攻撃し、動きを封じた後に一気に腕を振り上げた。
「あぁ……あれは不味い……」
当麻はそう呟いて、ジークのセコンド役として立っていたエルスの前に割り込み
「君、ちょっと動くなよ?」
「え、ちょっ、誰ですか!?」
驚くエルスを尻目に、当麻はジークが放ったイレイザーの一撃を右手で受け止めると
「こら、ジーク! それ、使いたくないって言ってただろうが!」
と怒った。その直後、ジークの雰囲気が元に戻り、イレイザーが消えた。それを見た当麻は、深々と嘆息した。
この後、ジークがアインハルトに勝利し試合は終了。
それから、約一時間後
試合会場の一角の廊下を、エルス、ヴィクター、ハリーの三人が歩いていた。すると、ある一室。アインハルトの病室からはやてと冬也が出てきて、それを見たヴィクターが
「まさか、このお二人がここに居るなんて……」
と驚いた。すると、エルスが
「ヴィクターさんは、あのお二人を知ってるんですか?」
「お名前と役職位は」
エルスの問い掛けに、ヴィクターがそう答えた。すると、はやてと冬也が気づいたらしく
「お疲れ様や、タスミン選手にダールグリュン選手。時空管理局海上警備隊所属の八神はやて二等陸佐や」
「初めまして、になるかな? 時空管理局強襲制圧部隊隊長の神代冬也二等空佐だ」
と自己紹介しながら、時空管理局の身分証明書を提示した。すると、ヴィクターが一歩前に出て
「初めまして。ヴィクトーリア・ダールグリュンです。お二方の噂は、常々聞いてます」
と挨拶した。ハリーもはやてと冬也の名前は知っているようで驚いているが、エルスは内心でハイテンションになっていた。
(八神はやて二等陸佐って、あのJS&R事件を解決に導いた奇跡の部隊。機動六課の隊長を勤めた!? それに、神代冬也二等空佐は、時空管理局初の攻勢部隊の隊長!? 時空管理局でも、随一の犯人制圧を誇る精鋭部隊!!)
実はエルス、かなりミーハーな面があったりする。
そこに、チームナカジマの初等部三人娘と剣士郎、ユミナを連れたミカヤが現れた。
「あ、ありがとうな、ミカヤん♪」
(ミカヤん!?)
はやてが呼んだアダ名を聞いて、エルスが驚いた。そして、ジークと当麻が来たのを確認したはやてが
「さて……今回のことは、古代ベルカが関係しとる……今回のことも含めて、ちょっとばかり場所を変えて話をしようか……でないと、少しばかりしこりが残りそうやからね」
と告げ、その場の一同は頷いた。その後、はやてと冬也の引率で、一同は管理局地上本部近くのあるホテルの一室を借りて、そこで夕食を食べながら話すことにした。
ここから、古代ベルカ。その中でも謎に包まれた緒王戦乱期に端を発する話を振り返る。