魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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今回は、説明が中心です(夜勤帰り)


エレミアの手記 2

クラウスとオリヴィエの物語は、終始穏やかだった。共に武術と勉学に励み、一緒に食事して、時には諸国を巡って挨拶したりした。

そんな中で出会ったのが、ファビアの先祖。クロゼルグの森に住む魔女の一族だった。魔女の一族からは魔法を教えてもらっていたが、一番小さな少女は悪戯好きで、しょっちゅう悪戯をしては、クラウスやリッド、剣次に捕まっていた。

そんな平穏が、何時までも続けばいいと誰もが思っていた。しかし、平穏は長くは続かなかった。全員が青年と呼べる年齢になった頃、反聖王家連合が結成され、聖王家とそれに与する王家に対して宣戦布告したのだ。

聖王家はその圧倒的武力で、今まで他の王家に対して優位に立っていた。だが反聖王家連合は、その戦力の多さで聖王家と一進一退の戦いを繰り広げ、戦争は長期化した。

疲弊する兵士と民達、戦災で故郷を追われて首都の方に避難してくる民達。

そんなある時、どちらが先か分からないが、禁忌兵器が投入された。投入された禁忌兵器により、土は腐り、水は毒に変わった。

それにより、加速度的に増える死者。そして、その波はクラウス達の居るシュトゥラにも来た。魔女の一族の住む森に敵軍の兵士が侵攻し、魔女の一族を次々と斬殺。その後、火を放った。

魔女の一族で生き残ったのは極少数で、森はほぼ全焼した。敵軍に関しては、クラウスと剣次が二人で殲滅。

そしてこの件が理由で、オリヴィエはあることを決意した。聖王家の最終兵器、ゆりかごの担い手に立候補することを。

ゆりかご、それは聖王家の最終兵器で圧倒的威力を誇っており、二つの月の間に到達すれば、何人たりとも侵攻することも出来ない要塞と化す。

聖王家は長期化してきた戦争を終わらせる為にゆりかごの投入を決めていたが、中々投入されてこなかった。

その理由が、聖王核とゆりかごの適合率にあった。

聖王核、聖王家の女子がゆりかご内で産まれた時に植え付けられる代物で、これが聖王家の高い魔力の基になっている。

その聖王核は、各人により出力とゆりかごとの適合率差がある。恐らく、高い適合率は他の候補にも居ただろう。だが、恐らくは家族がゆりかごの王になるのを止めている。ゆりかごの王は、伝承で伝わるような栄光の存在ではない。実際は死ぬまでゆりかごの管制と防衛機構として使われる。

なったが最後、生きては帰れないのだ。

それを知ったクラウスは、オリヴィエを拳を以て止めようとした。だが、止めるこの能わず、悲しい別れとなってしまった。

なお、聖王家の重鎮達の中には、クラウスのその行動を造反と取って処罰か処刑を、と声高に唱える者も居た。

だがそれは、オリヴィエの必死の嘆願により止められ、更には最後にヴィルフリッドに会うことも許された。

そして、少し前に剣次はオリヴィエの護衛から外され、前線配置となっていた。

ヴィルフリッドはオリヴィエと会話する中で、オリヴィエに逃げようと提案したが、オリヴィエはそれをやんわりと拒否。優しい彼女は、怖かったのに自身の命で戦争が終わるならと自ら出た。

そして、オリヴィエが乗ったゆりかごは空高く飛んでいき、その後オリヴィエの命が尽きるまで降りてくることはなかった。

 

「そして……緒王戦乱期は終わったんですね……」

 

「クラウスは、戦乱末期に敵の攻撃で倒れた……」

 

「うん、その事も書いてある……」

 

ヴィヴィオ、アインハルト、ジークは本を見ていたが、他のメンバーは涙を流していた。戦争に振り回されて、悲劇的な別れをしたことを悲しんでいるのだろう。

 

「……どうやら、オリヴィエ様が選ばれてからはご先祖は半ば軟禁状態やったようやね……」

 

「軟禁って、なんでだ……?」

 

「恐らくですが、要らぬ茶々を入れさせない為かと……オリヴィエ様に心変わりをさせないように」

 

ジークの話を聞いたハリーの問い掛けに、自分の考え混じりだがヴィクターが答えた。多分、その考えは概ね当たっているだろう。

 

「あ、まだ続きが……」

 

「え?」

 

「……まだ、心配な奴が居る……それは緋村だ……彼がヴィヴィ様の護衛から外されてから少しして、人斬り抜刀斉の名前と噂が聞こえてきた……恐らく、緋村の事だろう……緋村の飛天御剣流は、神速の抜刀術……それを活かせば、目撃者を残すことなく相手を斬殺出来るだろう……どうか、不器用で優しい緋村が変わることがないことを祈る」

 

どうやらヴィルフリッドは、剣次のことを心配していたらしい。だが、ヴィルフリッドの手記はそこで終わった。

そしてジークが手記を閉じると、全員が剣士郎の持っている本を見た。全員の視線を受けて、剣士郎は先祖たる剣次の日記をゆっくりと開いた。


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