無限書庫の事件から、2日後。日曜日
アインハルトは何時も通りに起きると、一通りの日課をこなしてから帰宅し、シャワーを浴びていた。
その時、チャイムが鳴り
「あ、はい」
『あ、アインハルト。今大丈夫?』
とディエチの声が聞こえた。そして時計を見て、気付いた。迎えに来るという約束の時間になっていた。
「す、すいません! 今開けますので、中に入って待っていてください!」
アインハルトは一先ずドアの鍵を開けて、ディエチ達を中に入れた。少し時は進み、聖王教会の中庭。
そこでは、先に来ていたヴィヴィオが念入りに準備運動をしていた。
これから、アインハルトと試合をするのだが、ヴィヴィオには負けられない理由があった。
これまで三戦してきたが、今のところ二敗一引き分けであり、明確には勝っていない。
(勝って、私たちの想いを伝えないと!)
ヴィヴィオは意気込みながら、準備運動を続けた。それを、ヴィヴィオ達と一緒に来ていたスバルとティアナが
「……練習試合かと思ったら……」
「うん……今のヴィヴィオ、完全に試合モードだ」
ヴィヴィオから発せられている熱気を感じ、ティアナとスバルはヴィヴィオが練習の雰囲気ではないことを察した。それから数十分後
「遅くなりました……アインハルト・ストラトス。参りました」
ディエチ達に連れられて、アインハルトが聖王教会に到着した。
「アインハルトさん……今日はよろしくお願いします!」
ヴィヴィオが挨拶すると、ノーヴェが二人の前に立ち
「今日のことの説明をするぞ? 今回は試合形式で、3分毎にインターバルを設ける。決着は、どちらかが戦闘不能になるまで。もしくは、セコンドがタオルを投げたら終了。何か質問は?」
ノーヴェの問い掛けに、二人して首を振った。それを確認したノーヴェは、腕時計を見て
「……後二分したら、試合を始める。それまでにバリアジャケットを展開して、調子を確認しとけ」
と指示。それを聞いた二人は、バリアジャケットを展開したのだが、ヴィヴィオのバリアジャケットの色が何時もの白基調ではなく、黒基調になっていた。
それを見た殆どのメンバーはざわつくが、アインハルトと剣士郎は気付いていた。
(あの色は……)
(オリヴィエの……)
ヴィヴィオの素体となった人物、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトの戦闘時に纏っていた戦装束と一緒だったのだ。
そこに、遅れてやってきたジーク、クロエ、ヴィクターの三人がシャンテに案内されて中庭に現れた。
するとジークが、肩から掛けていた鞄から
「あ、ポップコーン食べる? 店長から貰ってきてるんよ」
とポップコーンの入った入れ物を取り出した。
「ジーク……またそんなジャンクフードを……」
ヴィクターは注意するが、クロエは好きらしい。
そして、試合が始まった。最初に仕掛けたのは、リーチに優れるヴィヴィオだ。
ヴィヴィオの繰り出した拳を、アインハルトは両腕で防御しながら強引に接近を図った。
これは、アインハルトの身体能力が高いから出来たことである。ヴィヴィオは的確に弱点を狙って攻撃を放っており、直撃を受ければ一撃で失神することもある。
そしてアインハルトは、懐に入ると
「覇王……断空……!」
初撃で決着を付けようと思ったのか、覇王断空拳を放とうとした。しかし
「アクセル」
小さく呟いたかと思えば、一瞬にしてヴィヴィオはアインハルトの側面に回り込み、素早くアインハルトの顎を狙って拳を突き出した。
的確に入った一撃で、アインハルトは一瞬意識が飛びそうになったが、ギリギリで耐えた。そして間髪入れずに、裏拳をヴィヴィオの顔側面に叩き込んだ。
「つっ!?」
だがアインハルトは、手応えから違和感を覚えて、気付いた。アインハルトの拳とヴィヴィオの顔の間に、魔力障壁が有った。
(セイクリッド・ディフェンダー!? 手以外に展開出来るようになっていた!?)
少し前、ミウラ戦の時には手の辺りにしか展開出来なかった防御魔法。セイクリッド・ディフェンダーが、短期間で手以外の場所に展開出来るようになっていて、アインハルトは驚いた。
驚きながらもアインハルトだが、直ぐ様距離を取ろうとバックステップした。だが、機動性ではヴィヴィオの方が優れている。
バックステップしたアインハルトの懐に、ヴィヴィオは潜り込み
「セイクリッド・スマッシュ……W」
一瞬にして、二撃をアインハルトの顎に叩き込んだ。
それは完全に新技で、初見だったアインハルトは反応が間に合わずに直撃を受けて膝から落ちた。
「アインハルト、ダウン!」
審判役をしていたノーヴェが、アインハルトがダウンしたことを告げる。するのだが、ヴィヴィオは両膝を突いたアインハルトを見て
「アインハルトさん……今回は、私が勝ちます……そして、私たちの想いを言わせてもらいます!」
と少しばかり、怒気を滲ませながら宣言した。