ヴィヴィオ対アインハルトの試合は、佳境を迎えていた。双方ともにフラフラになりながらも、まだ闘う意志を示していた。
(こりゃ、このラウンドで終わりそうだな……)
第2ラウンドも、あと一分という所である。
先に動いたのは、アインハルトだった。アインハルトはノーヴェ達との練習により、最初は振り下ろし位でしか使えなかった覇王斷空拳・改(仮)を放った。
その一撃をヴィヴィオは、ギリギリで避けて
「セイクリッドスマッシュ……!」
得意技の一つにして、代名詞とも言える技を放った。
最初の一撃は、アインハルトにギリギリて防がれた。だが、そこで終わらなかった。二撃目、ここまではダブルと一緒だ。二撃目は避けられたが、そこで終わらなかった。
なんと、三撃目と四撃目がアインハルトに放たれたのだ。これが、今ヴィヴィオが練習中の新技の一つ。
セイクリッドスマッシュ・クアドラプルだった。
完全に予想外の技に、アインハルトは反応しきれずに三撃目と四撃目はアインハルトの顎に直撃した。
ヴィヴィオは更に追撃しようとしたが、それはノーヴェに羽交い締めにされて止められて
「よく見ろ、ヴィヴィオ!」
促されて見てみれば、アインハルトの居る辺りにタオルが投げられていた。それは、セコンド役のディエチが投げたものだった。
セコンドがタオルを投げるのは、降参という意味があった。
実は、アインハルトはヴィヴィオの技で意識が無くなっていたのだ。その証拠に、アインハルトは力無く両膝を突いた。
これにより、三回目の試合はヴィヴィオに軍配が上がった。ヴィヴィオが力を抜いたのを確認したノーヴェは、ヴィヴィオを解放し
「ほれ、言いたい事があるんだろ? こっちも言いたい事あるが、後にしてやる。だから、その物騒なバリアジャケットを解除していってこい」
とヴィヴィオの背中を叩いた。それを聞いたヴィヴィオは、バリアジャケットを解除して、木の幹にもたれ掛かるように座らされたアインハルトに駆け寄り
「アインハルトさん!」
と泣きそうな表情で、声を掛けた。すると、意識を取り戻したアインハルトが
「……なんて顔をしてるのですか、ヴィヴィオさん……勝ったのだから、誇ってください……」
ヴィヴィオにそう言いながら、ヴィヴィオの頬を撫でた。そこに遅れて、リオとコロナも駆け寄ってきて、その二人も泣きそうな表情をしていることに気付き
「……私は、年長者失格ですね……自分の事ばかりに気を取られて、皆さんをちゃんと見ていなかった……ごめんなさい、皆さん……」
と頭を下げて、手招きした。何事かと思いながらも、三人はアインハルトの前で片膝を突いた。するとアインハルトは、三人を抱き寄せて
「……これからは、皆さんの目標となるように……頑張ります……そして、皆さんをちゃんと見ていきますね……」
と優しく語り掛けた。それが嬉しかった三人は、涙を流しながらアインハルトに抱き付いた。
こうして、チームナカジマはより一層仲を深める事が出来たのだった。
それから、十数分後
「セイン姉さま!」
「試合は!?」
シャッハの代わりに騎士カリムの護衛として管理局に向かっていたオットーとディードの二人が、セインの居る給湯室に勢いよく入ってきた。
「あ、お帰り、双子。騎士カリムの護衛は大丈夫だった?」
「そんなの、何時も通りだったよ!」
「それより、陛下の試合は!?」
セインが護衛の事を聞くが、どうやらオットーとディードの二人は、どうやらヴィヴィオとアインハルトの試合の方が気になるらしい。
「それなら、もうとっくに終わってるよ」
『そんな!?』
「まあ、試合は新技を投入したヴィヴィオの勝ち。今は医務室で、ノーヴェからお説教されてるね」
セインはそう説明しながら、ゴンドラに紅茶のポットとクッキーを乗せた皿を置いた。
場所は変わり、医務室
「あのな、ヴィヴィオ……アタシが何時、バリバリのハードストライカーに真正面からぶつかれって教えた! ええ!?」
「うぅ……はい……」
先ほどの試合のヴィヴィオの戦い方に、ノーヴェが説教していた。
確かに、アインハルトとの試合は、完全に何時もの試合とは異なっていたものだった。
防御は完全にセイクリッドディフェンダー頼り、攻撃と防御の際に魔力の全振り。それだけでなく、一撃が重いハードストライカー相手に正面から交戦。
その何れも、ノーヴェの教えから逸脱したものだった。
「あ、あのノーヴェ師匠……その辺で……」
「うっせー! お前らも聞いとけ!」
コロナが止めようとしたら、ノーヴェはリオとコロナにも視線を向けて
「アタシはな、お前らを預かってるんだ! だからアタシには、お前らの健康を気遣う義務がある! 今回みたいな無理をし続けてみろ! 早かったら、中等部位で体を壊して格闘が出来なくなるぞ!」
と告げた。それは、ヴィヴィオ達からしたら、恐怖の宣告だった。すると、それで思い出したのか
「そういう点では、お前もだ! 緋村!」
と剣士郎に視線を向けた。
「お前のあの奥義! あれは、体への負担が大き過ぎる! 成長するまで、使うんじゃないぞ!」
「分かってます」
ノーヴェの言葉に、剣士郎は素直に頷いた。実は、まだ天翔龍閃のダメージが残っているのだ。
「アタシは、お前らにあった戦闘スタイルを考えて、無理無いように育ててる! いいな!?」
『押忍!』
ノーヴェの言葉に、ヴィヴィオ達は口を揃えて斉唱した。こうして、ヴィヴィオ対アインハルトの戦いは幕を下ろした。