翌朝、剣士郎は朝早く起きて何時ものように、刀を振っていた。刀を使い始めてから身に付いた習慣で、病気や怪我で動けない時以外は毎日している。
だがその時、痛みで刀を落としてしまった。
「くっ……」
右腕に走る痛みに、剣士郎は顔をしかめていた。
天翔龍閃の反動が、剣士郎の身体を蝕んでいるのだ。
「先祖の記憶でも、同じように反動で苦しんでいたな……」
剣士郎が見た記憶の中でも、時々だが先祖が痛みに苦しむ様子が見えていた。その事から、天翔龍閃の反動の強さが分かる。
「なるほど……身体全体にダメージがあるのかな?」
ふと気付けば、カミトが近くに居た。
剣士郎は、刀を拾ってから
「ええ……自分が使う流派の技は、全て速さを旨にしています……それらは、身体への反動があるのですが……奥義は最も反動が強いんです」
と答えてから、刀を鞘に納めた。
すると、カミトが
「……それを、ユミナが施術してるのか……なるほど、前に言ってたのは、君の事だったんだね」
と何やら納得していた。
「いや。仲間の一人に、身体全体に凄くダメージが蓄積してる子が居るって言っててね……かなり長期間の施術するって気合い入れてたんだ」
剣士郎が視線を向けた意図を察したのか、カミトはそう告げた。どうやら、ユミナは剣士郎の身体への施術を根気強く続けるつもりらしい。
「……彼女のおかげで、前よりかは身体が楽にはなりました……対価を中々受け取ってくれないので、少々やきもきしていますが」
剣士郎がそう言うと、カミトは
「君はユミナと同じチームの仲間なんだから、その仲間から対価を貰うつもりは無いんだろうね。ユミナは」
と笑いながら告げた。恐らく、カミトの言った通りなんだろう。するとカミトは
「来なさい……私も一度君を診よう」
と言って、剣士郎に手招きした。
その後、剣士郎はカミトの後に続いて施術室に入り診察台にうつ伏せになった。そして、カミトが施術を始めたのだが
「……なるほどね……これは確かにかなりのダメージだ……さっき言った奥義、あまり使わないようにね。恐らくだが、後三回が今の限度だ……それ以上使ったら、間違いなく君の剣士としての生命は終わる……」
と告げた。
「特に甚大なのは、足腰と腕だね……やはり速さを重視にしているからかな……」
今言われた三点は、確かに飛天御剣流の要的な場所になる。カミトの腕は確かだ。
「……とりあえず、今出来る事はした……出来るなら、時々でもいいから来てほしいな……そうすれば、出来る事はするよ」
「ありがとうございます」
剣士郎は感謝すると、施術室から出ていった。
そしてキッチンに立つと、朝食を作り始めた。その時になり、ユミナとアイナが起きてきて居間に現れた。
「おはよう」
「あら、朝早いのにありがとうね」
「泊めてもらっているので」
ユミナとアイナは洗面所に向かい、剣士郎は手際よく朝食を作っていく。
今朝は冷蔵庫にあった豆腐を使った味噌汁、だし巻き卵と白米となった。
「朝から豪勢だね」
「うわぁ。卵が綺麗な黄色だ……」
「あらあら、朝から美味しそうだわ」
カミト達は剣士郎が作った料理に、見とれているようだ。そして、朝食が終わると
「私はお店を開くけど、ユミナはどうする? 確か、特訓はお休みなんだろ?」
と聞いた。
そう、今日チームナカジマの特訓はお休みなのだ。
ミウラの事に関して大事な話が有るため、ノーヴェがはやての家に向かい、ディエチはノーヴェに同行。
ウェンディは当麻の店でバイト、オットーとディードは教会での仕事がある。
ヴィヴィオが例外的にノーヴェ達と一緒に、はやての家に向かう事になっている。
リオは何やら用事があり、コロナは家族で出かけるらしい。
「私は一回、アインハルトさんの家に行ってくる! アインハルトさんも、身体に結構負担掛かってたからね」
どうやらユミナは、一度アインハルトの家に行くらしい。
「すいません、自分も一度葵屋に向かいます」
「お、仕事なのかい?」
「まあ、料理ではないですが……実は、陶芸の作品を葵屋に持っていくんです」
剣士郎はそう言って、机の上に一つの木箱を置いた。
「陶芸もやってるの?」
「ええ……実は、比古清十郎の名前で活動してまして……葵屋以外にも、時々卸してます」
「それが、君の生活費なのか……まだ学生なのに、偉いね」
カミトの言葉に、剣士郎は苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
そして、カミトは店の開店の準備に向かい、剣士郎とユミナは近くのバス停まで一緒に歩いた。