翌朝、剣士郎は早く起きると朝食と昼食を作り始めた。
今日は平日で、剣士郎とユミナは学校がある。
剣士郎が調理していると
「ごめん! 遅くなった!」
とユミナが起きてきた。
「問題ない、大丈夫だ」
剣士郎はそう言うが、ユミナは剣士郎が作った料理を机に持っていく。すると
「あれ、朝食だけの割には多いような……」
「俺達の弁当とご両親の昼食の分もある」
ユミナが首を傾げると、剣士郎が答えた。
「朝食だけでもありがたいのに、私達のお弁当に両親のお昼も!?」
「泊めてもらっているからな……これくらいは」
剣士郎は喋りながら、手際よく料理を作っていく。
そして、途中から作った料理を2つのお弁当箱に詰めていき、更にタッパーに詰めていった。
その時、カミト達が起きてきた。
「朝食、ありがとうね」
「いえ、泊めてもらっていますから。一応、お昼の分も用意して、冷蔵庫にありますので、温めてください」
剣士郎の言葉に、カミトは
「お昼まで……本当に助かる、ありがとう」
と剣士郎に感謝した。
その後、朝食を食べた後に剣士郎とユミナは登校。カミトは整体店を開店させた。
そして、昼休み一つ手前の休み時間。ユミナは前々から気になった事を剣士郎に聞く事にした。
「そういえば、緋村君って何時も昼休みは何処に居るの? 気付いたら居なくって」
「ん? 図書室の中庭だ」
隠す事ではないからか、剣士郎は即座に答えた。
そして昼休み。剣士郎はユミナと一緒に、図書室の中庭に居た。
「人が少ないから、静かなんだ……」
「本当だね……」
図書室の中庭だが、基本的に入れるのは図書委員のみである。今回ユミナは、剣士郎が招いたという形で中庭に居る。
「なんか、新鮮かも……」
「まあ、ユミナはクラスの中心だからな……何時も賑やかだ」
ユミナはクラス委員という立場故にか、何時も周りには誰かしら居て、賑やかである。
しかし、今居るのは静かな図書室の中庭。ユミナからしたら、新鮮だった。
そして、食べているのは剣士郎作のお弁当。中は唐揚げと卵焼き、ほうれん草とコーンのバター炒め、ごはんという無難な構成になっている。
ユミナはまず、唐揚げを一口食べた。
冷めているのに柔らかく、味付けも見事。
「材料は一般的なのだったのに……やっぱり、仕込みって大事なんだね……」
実は唐揚げは、昨晩からジップ○ックで仕込んでいたのを、今朝揚げたのだ。
「ああ……唐揚げは、マヨネーズと磨ったリンゴを使ったんだ……味付けは一般的な醤油をベースにしている」
「マヨネーズ? 磨ったリンゴは聞いたことあるけど」
「マヨネーズを塗ることで、鶏肉に保湿効果を与えられて、パサつかなくなるんだ」
「初めて知った」
その後も、剣士郎はユミナに味付け等を教えながらのんびりとお弁当を食べ、片付けると
「ご馳走さまでした……凄く美味しかったです」
「お粗末さまでした」
剣士郎はユミナが食べ終わったお弁当を受け取ると、鞄に仕舞った。すると窓が開いて
「緋村君! 申し訳ないんだけど、作業手伝ってくれるかしら」
と司書という腕章をしたシスターが、剣士郎に頼んできた。
「分かりました! 今から行きます!」
剣士郎はそう返した。そして、ユミナの方に向いて
「昼休み中はここに居て、大丈夫だと思う。もしまた来たくなったら、俺に言ってくれ」
と言ってから、中庭から図書室に戻った。
剣士郎を見送ったユミナは、一人
「……緋村君の料理に慣れたら、どうなっちゃうんだろ……私達……」
と呟いた。
高級老舗旅館兼料理店の葵屋の板前もする剣士郎の料理の腕は、この数日で分かった。
基本的には、ユミナが料理を作っていたが、剣士郎と比べたら劣るのは確かだ。
「……習おうかな……」
ユミナが料理を習おうと考えるのは、必然的だろう。