放課後、剣士郎は一人歩いていた。作業小屋に向かい、作品の様子を確認する為だ。
水分をゆっくりと抜いていくのだが、粘土の厚さが違ったりすると、ひび割れてしまう事があるのだ。
そうなると、焼いたら割れてしまう。小さいひび割れならば、そこを新しい粘土で補修すれば直せる。
「さて、どうかな……」
作業小屋に到着し、中に入った剣士郎は乾燥棚から器を取り、確認を始めた。どの作品も、上手く出来ていたようで、剣士郎が見る限りひび割れは確認出来ない。
「良かった。これなら、次の土曜日辺りには窯に入れられそうだな」
確認を終えた剣士郎は、器をまた乾燥棚に戻した。そして、作業小屋から出た時
「……何者だ」
剣士郎は、自身に向けられた殺気に気づいた。
(小屋から出るまで、全く気付かなかった……猛者か……)
剣士郎がそう考えていた時、漆黒の和服と黒い網傘を被った人物が姿を見せた。その手には、刀が握られている。
「……何用だ」
剣士郎はそう言いながら、刀を構えた
すると、相手はその異様な赤い眼で剣士郎を睨み
「抜刀斎……その首、貰い受ける!」
と宣言し、剣士郎に斬りかかった。
場所は変わり、時空管理局。
「黒傘?」
「ええ……最近になって現れた辻斬り。一流の格闘家や剣士をもう20人は殺してる凶悪犯よ」
そう会話しているのは、裕也とティアナだった。
ティアナは裕也に語りながら、モニターに黒傘に関する情報を表示した。
「おかしいのは、全員致命傷は心臓への一撃……つまり突きなのよ。普通なら、避けられる筈でしょ?」
「確かに……縛った様子は?」
「バインドも縄を使った様子は無し……どうやったのか、皆目検討もつかないわ」
裕也からの問い掛けに、ティアナは肩を竦めた。
因みに、ティアナに回ってきた理由は、最初はある陸士隊が担当していたが、その陸士隊では太刀打ち出来ないと判断されて、凶悪犯罪担当のティアナに回ってきたのだ。
「そうなると、何らかの拘束系の
「やっぱり、そう考えるのが妥当よね……」
裕也の考えに、ティアナも同意を示した。
希少技能は千差万別で、よくあるのが変換技能だ。
フェイトやエリオの電気、シグナムの炎熱変換がその例に挙げられるだろう。
中には、動物の意思が分かる技能もあるという話だから、相手を拘束する希少技能があってもおかしくはないだろう。
そう考えていた時、通信ウインドウが開き
『ティアナ、今大丈夫かな?』
「フェイトさん。どうしました?」
『少し前、ユミナちゃんから通信が来たの。剣士郎君と通信が繋がらないって』
フェイトの話を聞き、ティアナは立ち上がった。
『ユミナちゃんの話だと、一度作った作品を確認してから、お世話になってるユミナちゃんの家に帰る予定だったらしいんだけど……全然帰ってこないし、通信も繋がらないんだって』
「分かりました! 直ぐに動きます!」
「ティアナ!」
フェイトの話を聞きながら、ティアナはスタンドからデバイスを掴み、裕也はティアナに車の鍵と執務官の上着を投げ渡した。
そして、部屋から出ると
「フェイトさん。実は最近、黒傘という凶悪犯が居まして……つい先ほど私の担当になりました」
『黒傘……あの噂の辻斬り犯?』
どうやら、黒傘の話はフェイトも知っていたらしい。
「はい。腕利きの剣士や格闘家を20人も殺害しており、拘束する希少技能を有している可能性が高いようです」
『それは厄介だね……』
ティアナの話を聞いて、フェイトも真剣な表情だ。
それだけ、希少技能というのは見破るのが難しい。
「とにかくこれから、彼の作業小屋に向かいます」
『うん、お願い。今冬也さんやディエチも動いてくれてる』
そしてティアナは、車を急発進させた。