「速すぎる……!」
「私でも、目で追うのがやっと……!」
そう呟いたのは、捕まってるアインハルトとヴィヴィオだった。剣士郎と鵜堂の戦いが、余りに速すぎて格闘家の二人。特にヴィヴィオでもギリギリ見えるレベルだった。
そして一般人のユミナからしたら、二人の動きが速すぎて分身しているように見えるレベルだった。
どちらかが先に刀を振るうと、空中で火花が散り、激しい金属音が鳴り響く。
「フハハハハハハ!」
「おおおおぉぉぉ!!」
鵜堂は笑い、剣士郎は気合いの声を上げながら刀を振るう。
そして、つばぜり合いになった時
「かっ!」
「今さら……心の一方が効くか!!」
鵜堂は剣士郎に心の一方を発動したが、それは剣士郎に弾かれて、効果を為さなかった。
しかし、鵜堂は動じない。距離を取った。
「クフフフフ……流石は人斬り抜刀斉の後継者……見事な剣気だ……」
「御託は良い……」
そう呟いた瞬間、剣士郎の姿が消えて、気付けば鵜堂の顔面に剣士郎の刀の峯がめり込んだ。
「が……!?」
鵜堂は大きく吹き飛ばされ、鼻を抑えた。よく見れば、鼻血が流れている。
「なんという身のこなし……! 起こりが一切分からなかった……!」
起こりというのは、ようするに予備動作の事である。始まる前の動き、例えば前に飛び出すのなら、足が動く。
刀を振るうのならば、肩か手首が僅かに動く。
といった具合に、予備動作がある。これを見て相手がどう行動するのかを予測するのが、先読みという技術になる。
しかし、剣士郎の動きが余りに微細かつ速すぎたので、鵜堂には捉えきれずに、行動を読み切れなかった。
「どうせまだ、隠し札があるんだろ……その位は待ってやる……さっさと使ったらどうだ……」
「クフフフフ……その余裕、何時まで続くかな……!?」
鵜堂はそう言って、一度剣士郎から距離を取った。
そして、刀の刀身の横を自分に向けて
「カアァァァァァ! 我、不敗也! 我、無敵也! 我、最強也!! 影技・憑鬼の術……!!」
鵜堂が一回言う度に、肉体が大きく変化した。
筋肉が盛り上がり、その身から言い様の無いオーラを感じた。
そして鵜堂は、転がっていた鉄筋コンクリートに歩み寄ると乱雑に刀を振るったのだが、一撃目はコンクリートを割り、二撃目は鉄筋を断ち、三撃目で鉄筋コンクリートを完全に断ち斬った。
それを見たヴィヴィオ達は、驚愕していた。
なんの魔法の付与もなく、実態剣でそのような事が出来るとは、思っていなかったのだ。
「クフフフフ……久しぶりに使ったが、この高揚感……いいねぇ……」
「大道芸はそれで終わりか……?」
剣士郎の声は冷えきっており、興味が無いという感じだった。すると鵜堂は、不気味に笑い
「これはどうかな……かあっ!」
振り返ると同時に、三人に対して心の一方を使った。
「貴様!?」
「クフフフフハハハハハ!! あの三人を助けたければ、私を殺すしかないぞ!? 今あの三人には、強めに心の一方を掛けた! 恐らく、呼吸すら難しいだろう!」
鵜堂は狂ったように笑い、剣士郎に己を殺すように告げる。そして三人は、混乱した様子で首もとを抑えている。恐らくは思ったように呼吸が出来ないから混乱しているのだろう。
「さあ、殺し合いだ! 抜刀斉ィィィィ!!」
「鵜堂! 貴様ァァァァァ!!」
剣士郎は怒りの雄叫びを挙げながら、鵜堂に斬りかかった。早く三人を助ける為に。