「クフフフフ……フハハハハハハハ!!」
「オオォォォォォ!!」
二人は激しく刀を交差させ、互いに切り捨てようとしていた。特に、剣士郎の攻めの勢いは凄まじいもので、心の一方で自己強化した鵜堂も中々反撃出来ない程だった。
だが、やはり激情に駈られてるからか、時々大振りの一撃がある。その僅かな隙を突いて、鵜堂の攻撃が剣士郎に繰り出される。
「鬱陶しい!!」
その一撃を、剣士郎は鞘や刀で容易く弾く。
(流石は、かの飛天御剣流の継承者! 激情に駈られて、最初より動きに隙が混じっているのに、凄まじい読みで対処される!)
鵜堂は驚愕しながらも、剣士郎の一撃を弾く。
しかし、気付けば剣士郎の姿が無い。
「上か!?」
「龍墜……翔閃!!」
怒涛の二連撃。上から落下速度と体重を乗せた一撃が来て、その一撃は何とか受け流したが、続いての足のバネと腕の振り上げを使った放たれた一撃に、鵜堂は強引な回避しかなく、体勢を崩した。
「くっ!?」
「龍巻閃! 旋! 凩! 嵐!」
そこに、間髪入れずに怒涛の四連攻撃。
強引な回避で体勢を崩していた鵜堂は、何とか防御しようとしたが、最初の一撃で刀を弾かれ、後の三撃をまともに喰らい、壁に叩き付けられた。
剣士郎はゆっくり立ち上がり
「立てよ、黒傘……お望み通りに、斬り殺してやる……!」
と殺意を滲ませながら刀を鞘に納め、腰を低く構えた。
(あの構えは、抜刀術か……!)
抜刀術
刀を使った技の中では、一撃必殺。
一撃に掛けた技で、回避は困難。だがそれ故に、回避されたら絶対的な隙を晒す事にもなる。
鵜堂はどう対処するか考えていると
(いや、回避出来る! 確か、奴の刀は居合刀ではない!)
居合刀とは、その名前の通りに抜刀術に適した刀であり、刀の反りから重さまで、全てが抜刀術に最適化された設計になっている。
ミカヤが使っていた刀がそれで、その一撃はまさに強力無比。実際にミカヤは、居合刀を使った抜刀術で幾人もの対戦相手を下してきた。
だが剣士郎の刀は、太刀の分類される刀になる。
太刀は攻防両方で使えるように考案され、打ち合いに適しており、重さの配分も居合刀とは大きく異なる。
(最初の一撃避ければ、絶大な隙が生まれる! 最初の一撃が勝負だ!)
そう判断した鵜堂は、刀を構え
「勝負だ、後継者!!」
と突撃した。そして、剣士郎の反応は一瞬だった。
剣士郎の間合いに入る僅かに前に、剣士郎は刀を抜いた。
(予想より、奴の抜刀速度が速い!!)
鵜堂は剣士郎の抜刀術の速度に驚き、避けられるか分からなかった。必死に制動を掛け、剣士郎の一撃を避けようとしていた。
そして剣士郎の一撃は、鵜堂の眼前を掠めて、通り過ぎた。
「終わりだ!」
賭けに勝ったと思った鵜堂は、刀を持った右手を高々と振り上げた。その瞬間、右肘に強烈な一撃が入って、鵜堂の右肘はあり得ない角度に曲がっていた。
その一撃の正体は、鞘だった。
「バカな……!? さ、鞘を使った……に、二段攻撃……!?」
「黒傘……お前の考えなど、手に取るように読める……確かに太刀は居合刀とは違って抜刀術には適していない……しかし、抜刀斉の名の由来は、抜刀術を極めた者に与えられた名前だ……飛天御剣流の技は、全てが隙の無い二段構え……飛天御剣流、双龍閃……最初の一撃を防がれたり避けられたりしても、二撃目が相手を襲う……」
剣士郎はそう言いながら、刀を大上段に構えた。どうやら、トドメの一撃をしようとしているようだ。
その目には、怒気と殺意しか感じられない。今のままでは、確実に鵜堂を斬り殺すだろう。
その時
『ダメえぇぇぇぇ!!』
と三人の声が聞こえて、剣士郎は驚いて振り向いた。
なんと、ヴィヴィオ、アインハルト、ユミナの三人は、鵜堂が施した心の一方を自力で解除したのである。
「ダメ、です……緋村先輩……!」
「人斬りには……ならないで……ください……!」
「何時もの……優しい緋村くんに……戻って……!」
直前まで呼吸すら難しい状態だった三人は、大声を出した事で荒く呼吸しながら倒れ、剣士郎は慌てて三人に駆け寄り、一人ずつ助け起こした。
その時、天井が砕かれ、冬也とフェイト、ユーノの三人が突入してきた。
「ヴィヴィオ! 皆、大丈夫!?」
「治療を!」
フェイトとユーノは三人に駆け寄り、急いで治療を開始。そして冬也は、油断なく鵜堂に歩み寄り
「黒傘……いや、鵜堂兵衛……連続殺人に殺人未遂。並びに未成年誘拐容疑により、貴様を逮捕する。抵抗するな」
と鵜堂に罪状を告げながら、刀を突き付けた。
鵜堂は利き手を折られ、その痛みからか、中々起き上がれないでいる。冬也は鵜堂を捕縛魔法で捕まえようとした。次の瞬間、鵜堂は左手に小太刀を握っていて、その小太刀を自身の胸に突き刺した。
「なっ!?」
「見ちゃダメ!!」
ユーノは驚き、剣士郎とフェイトは三人の視線を遮った。
「貴様!?」
「フフフ……この感触……良いな……」
冬也は慌てて鵜堂に駆け寄ったが、鵜堂はその言葉を最後に、死んだ。
連続殺人事件、通称黒傘事件は、こうして幕を下ろした。