鵜堂が自決した後、冬也は近くの陸士隊に連絡し、鑑識班と救護班を要請。到着した両班は直ぐに行動を開始し、まず鑑識班はデバイスジャマーを解除し、ヴィヴィオ達のデバイスを三人に返却し、更にデバイスジャマーの入手経路の捜査を開始。
救護班はヴィヴィオ達の治療を始めた。
ヴィヴィオ達は多少弱ってはいたが、健康に害は無かった。それに対して剣士郎は、鵜堂との戦闘により身体に大きな負担が掛かっていた。
それらにより、四人は近くの病院に搬送され、念の為に入院する事になった。
深夜、剣士郎は一人で屋上に居て夜空を見上げていた。
今回の事件、剣士郎は三人が巻き込まれたのは自分が原因と考えていた。
自分の先祖の因縁が、知り合いを巻き込んでしまった。
「……時期を見て、姿を消すか……」
そう呟いた時
「それは駄目だよ、緋村くん」
とフェイトが、剣士郎の肩に優しく手を置いた。
「黒傘は思考が常人のソレとは、大きく掛け離れてた……それを予想するなんて、どんな人にも無理だよ……だから、それに責任を感じる必要なんてないよ?」
フェイトの言葉に、剣士郎は目を伏せて
「しかし、奴の狙いは俺一人で……ヴィヴィオちゃん達は巻き込まれて……」
「だから、黒傘みたいな凶悪犯の思考は、誰にも予想は出来ないの……勿論、私にもね? それに、緋村くんが居なくなったら、ヴィヴィオ達が悲しむよ?」
剣士郎の言葉を遮ってフェイトが言うと、剣士郎は黙った。剣士郎とて、ヴィヴィオ達が悲しむような事はしたくない。
しかし、また巻き込んでしまう可能性を考えたら、離れた方が良いと思ってしまう。
「大丈夫。君達みたいな子供を守るのが、私達大人の役目。次は、手出しさせない」
そんな剣士郎の思考を読んだのか、フェイトは力強く宣言した。それを聞いた剣士郎は、少しの間迷い
「……分かりました……」
と頷いた。その言葉に満足した様子で、フェイトは剣士郎の頭を優しく撫でて
「それじゃあ、早く病室に戻ろうか。看護師さんが、探してたから」
と剣士郎に戻るように促した。それを聞いた剣士郎が、フェイトと一緒に振り返ると、屋上の入り口付近に冬也の姿もあった。
恐らく、気配察知能力が高い冬也が剣士郎の位置を特定し、フェイトに会話を頼んだのだろう。
そうして、剣士郎は二人と一緒に病室に戻った。
そして、心配していた看護師に謝罪して、剣士郎は就寝した。
そして剣士郎は、夢を見た。
剣士郎は基本的に眠りは浅く、気配等で簡単に目が覚める。だから、滅多な事では夢を見ない。
だが今回は、身体に高い負荷が掛かった。恐らく、本能で身体が休息を求めていたのだろう。
見たのは、一人で旅をしている先祖だった。
草木一本すら生えない荒野を歩き、獣や盗賊に襲われていた人々を助けていた。
その姿はまるで、贖罪のようで、自分自身を断罪しているようだった。
そこで一度光景は変わり、気付けば先祖は、ある家の縁側に腰掛けてお茶を飲んでいた。
最初より表情は穏やかなものになっており、平穏に過ごせているようだ。
そこに、一人の女性が赤毛の赤ちゃんを抱いて現れた。その髪色から、先祖の子供なのは確かだ。
そこまで見た時、剣士郎は目覚めた。
薄っすらとだが、目元に涙がある事に気付いた。
「……居場所……か……」
剣士郎は身体を起こしながら、目元を拭った。
その時、ドアがノックされて看護師が入ってきた。
その看護師が言うには、朝食を食べた後に簡易検査をして、状態が良かったら退院らしい。
恐らく、ヴィヴィオ達も同様だろう。
「お願いします」
剣士郎は一言言うと、後から入ってきた看護師が運んできた朝食を食べたのだった。