黒傘事件が本人の自決により終わり、検査入院の翌日。剣士郎はユミナと一緒にアンクレイブ家に帰っていた。
しかし剣士郎は、カミト達の前で姿勢を正し
「今回の件……自分の過去の因縁に巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした……」
と剣士郎は、カミト達に深々と頭を下げた。
「そんな、緋村くん……」
「黒傘は、自分を呼び出す為に、彼女を拉致した……それは事実です……」
剣士郎の言葉に、ユミナが何か言おうとしたが、それを剣士郎に目線で制止した。
そして
「判断はお二人にお任せします……如何なる判断も受け入れます」
と告げて、目を閉じた。どうやら、カミト達の判断を待つようだ。
カミトはアイナと目を合わせて
「緋村くん……私達からは、何もない」
「それどころか、危険を犯してユミナを助けに行ってくれて、ありがとう」
と剣士郎に頭を下げた。剣士郎が驚いていると
「テスタロッサ執務官が言っていたように、凶悪犯の思考なんて誰にも分からない……」
「それに、最悪緋村くんも殺される可能性も高かった……本当なら、管理局が動くべきなのにな……」
カミトとアイナの二人も、元管理局員だったので、凶悪事件の事も熟知している。特に今回の事件は、刀の闇の面に魅入られて、血と強者を求めていた。
こうなると、犯人の行動の予想は難しい。
「だから、感謝こそすれ、君を非難する気なんてないさ」
カミトはそう言って、驚いていた剣士郎の頭を撫でた。
「良いかい? 君一人で気負う必要は無い……大人達も頼りなさい」
「私達は戦闘力は無いけど、伝は広くあるから……頼ってくださいね」
カミトとアイナはそう言って、居間から姿を消した。
すると、ユミナが
「緋村くん……改めて、助けてくれてありがとうね」
と告げた。
「アンクレイブ……」
「確かに、誘拐された時は怖かったけど、緋村くんが助けにきてくれた時は凄い安心したの……それに、黒傘を倒してくれた……だから、ありがとう」
ユミナはそう言って、剣士郎の両手を優しく両手で掴んで
「だから……勝手に居なくならないでね……?」
と呟いた。
それから数日後
「ミウラさんが、こちらに合流するんですか」
「ああ」
チームナカジマに、ミウラが合流するという話が、ノーヴェから伝えられた。
ノーヴェの説明では、本来八神道場は近場の子供達に身体を動かす楽しみを知ってもらいたいから開いており、その中でミウラが一人技量が突出し、DSAAの選手になっている。
そうなると、八神道場では練習環境が中々整わないのだ。
その大きな理由が、八神道場が一人を除いて現役の管理局員だから、練習日がマチマチな事。
そうなると、ミウラの技量向上の大きな障害になってしまう。
それを解決する為に、ミウラをチームナカジマに合流する事にしたという。
「まあ、その前にミウラもヴィヴィオも再戦を望んでいてな。近々管理局でイベントがあるから、その時に再戦して、ウチに合流する流れになった」
ノーヴェが言うイベントとは、戦技披露会であり、時空管理局が定期的に開いている管理局員だけでなく、一般参加も可能な大会という位置づけで、指名して相手が許諾すれば管理局員とも戦う事が出来る。
その戦技披露会を卒業式と位置づけて、ヴィヴィオとミウラが再戦し、どんな結末だろうが八神道場からチームナカジマに合流する形らしい。
「なるほど……」
「まあ、良い一大イベントにはなるな」
ノーヴェはそう言って、指導を開始した。
更にアインハルトもUー15の大会に出始めて、その頭角を表し始めていた。
ある大会には、優勝確実と謳われた選手が居た。
その名前は、エーデルガルト・バルガス
あるチームの代表が直々にスカウトしに行ったのだが、小柄な体格で体長3mに迫る大牛を素手で倒していたというパワーファイターだ。
アインハルトは初戦でそのエーデルガルトと戦う筈だった選手の代わりとして出場し、なんと勝利した。
まさに、期待の新人になったのだ。