その日、ヴィヴィオとミウラの二人は砂浜を走っていた。砂浜を走るのは、足腰を鍛えるのにかなり良い。
砂が足から地面に伝わる力を分散してしまうし、砂が流れるのでバランス感覚も鍛えられるからだ。
二人は走りながら、近い内に合流する事に付いて話し合っていた。
その時ヴィヴィオは、ミウラの着ている上着から財布が落ちそうになっている事に気付き、ミウラに注意を促そうとした。
しかしそれより先に財布が落ちたが、ヴィヴィオが素早く財布をキャッチし
「どうぞ、ミウラさん」
「ありがとうございます、ヴィヴィオさん」
とミウラに返したが、ミウラはヴィヴィオが財布をキャッチした際の手の軌道が不思議だった事に気付いていて
「ヴィヴィオさん、今の手の軌道は……」
「まだ秘密です! ミウラさんはライバルですから!」
ミウラからの問い掛けに、ヴィヴィオは朗らかに答えた。
その頃、アインハルトは剣士郎とスパーリングをしていた。とはいえ、アインハルトは素手に剣士郎は木刀で、間合いも違う。
しかしそこは、互いに古代武術を使う者同士。
互いに一歩も引かず、至近距離で打ち合っていた。
剣士郎が木刀を振り下ろせば、アインハルトは体を捻って回避すると同時に蹴りを放ち、剣士郎はその蹴りを屈んで回避し、木刀を振り上げた。
アインハルトはその一撃を顔を捻って回避し、剣士郎の胴体を狙って拳を繰り出した。
その瞬間
「そこまで! 休憩!」
とディエチが、二人を止めた。
「……相打ち……ですか」
アインハルトはそう言って、当たる直前だった拳を引き
「そうだな……」
剣士郎も同意し、脇腹に当たる直前だった木刀を引いた。そして、ディエチとウェンディの二人に歩み寄り、それぞれタオルと飲み物を受け取った。
「いやぁ、二人とも凄いッスね! この目でも、ギリギリ見える位ッスよ!」
「本当にね。ほら、クッキーも食べて」
ウェンディは興奮していて、ディエチは飲み物を飲む二人の前に、クッキーが入った容器を置いた。
「ん、このクッキー。美味しいですね」
「確かに」
「フフ。このクッキーはね、当麻さんが作ってくれたんだよ」
アインハルトと剣士郎の言葉に、ディエチは微笑みながら教えた。
旧姓上条、現在八神当麻。機動6課解散後は一度地球に行き、なのはの母。桃子の下で修行し、ミッドチルダでお店を開いた。
評判は上々で、近所だけでなく、少し離れた場所からわざわざ来てデザートを買う客も居る。
そんな当麻が、配達ついでに差し入れをもってきていたようだ。
「店長のお菓子は評判良いんッスよ! 本当に美味しいッス!」
「ウェンディ、少しは遠慮しなさい」
バクバクとクッキーを食べるウェンディに、ディエチは軽く叱った。そんな光景を、剣士郎とアインハルトは見ながら
「やはり、同じチームですと、手の内が分かってますから、先読みが重要になりますね……」
「そういう意味なら、飛天御剣流は先読みと神速を旨とするから、先を行く……だが、先読みし過ぎる事もあるからな……」
と語っていた。実際、剣士郎は時々読み過ぎて攻擊を受ける事もある。
「あ、そうだ。剣士郎くん。これ、葵さんから」
「え、葵さんから?」
ディエチが差し出した手紙を、剣士郎は予想外という風に受け取って読んだ。内容としては、新しく建ててる家の見取り図と内装。そして、作業小屋との通路だった。
「……いや、本当にどんな伝を持ってるんだろ……」
剣士郎は葵の謎の伝に首を傾げながら、手紙をバッグにしまった。