訓練後、剣士郎はディエチと一緒に建設現場を見に来ていた。
まだ二カ月も経っていないのに、基礎と一階部分が形になっている。手紙では、来客も考えて二階建てにする予定だそうだ。
「二階建てにする必要は無いと思うんですけどねぇ……こんな僻地ですし」
「けど、新しい家の方が良いのは確かだよ」
お客は来ない。という意味で呟いた剣士郎だが、ディエチは穏やかな声で呟いた。
確かに。前の家は中々に古く、災害に弱かったから雷により火災に繋がった。
そう考えれば、新しい家の方が対策もされてる分、多少は強いだろう。
「けど、四乃森さん。どういう伝なんだろうね? こんなに腕利きの職人さん達」
「……よく分かりませんねぇ……自分も知りたいくらいです」
ディエチのなんの気なしの言葉に、剣士郎は同意しながら首を傾げた。
その後、現場から離れて帰宅の途に付いた。
とはいえ、ディエチが運転する車で近くまで向かう。
そんな中、ディエチが
「ねえ、緋村くん……緋村くんはさ……将来はどうするの?」
と剣士郎に問い掛けた。
「将来?」
「うん……ヴィヴィオも考えてたんだ……
ヴィヴィオの能力は、本来は後方か中距離での戦闘か支援に向いており、格闘選手には向いていない。
それはヴィヴィオ本人も自覚しており、将来も格闘技を続けるか悩んでいた。
そんなヴィヴィオは、様々な人達に相談し、色々な将来がある事に気付いた。
アインハルトは格闘技選手として、大成するのは間違いない。
リオは実家の道場を継いでいく事になり、いずれは新しい道場を開くかもしれない。
コロナだが、選手ではなくマネージャー業に興味を持ち、少しずつ勉強したり、ディエチ達から教わっているらしい。
ミウラは恐らく、実家が営んでいる料理屋を受け継ぐか、アインハルトと同じように格闘技選手になるかもしれない。
「将来か……」
剣士郎は、剣士としての実力は非常に高い。実を言えば、聖王教会から時々模擬戦相手として、最近は呼ばれるようになっていた。
更に聞いた話では、シスター・シャッハがシスター・カリムに、剣士郎に騎士の称号を与えるように進言しているらしい。
聖王教会では所属を問わず、手練れのベルカ系の使い手かつ性格を考慮して与えている。
そういう意味ならば、聖王教会に籍を置いて何らかの職を得るのも選択肢の一つだろう。
「……今はまだ、分かりません……もしかしたら、祖先と同じように旅に出るかもしれませんし……工房を開いて、陶芸をやるかもしれません……それか、剣の道場か……まだ、分かりません……」
「どれでも応援するよ……後悔だけは、しないようにね」
「ありがとうございます」
ディエチの言葉に、剣士郎は頭を下げた。
まだまだ、ヴィヴィオ達もだが剣士郎は学生だから、将来の道は複数あり、広い。
後悔だけはしないように、決めてほしいディエチであった。
そして、ディエチが運転する車でアンクレイブ家に戻った剣士郎だった。