その日、ノーヴェは朝から色々な物件を見て周っていた。とは言え、既に決まっている段階で、最後の確認のようなものだ。
「では、ここでお願いします」
「はい、承りました」
ノーヴェの言葉に、不動産屋の社員が書類を鞄から取り出し、ノーヴェの前に差し出した。
今回ノーヴェが開こうとしているナカジマジムだが、ヴィヴィオ達所属選手の訓練だけでなく、一般人のフィットネス目的の利用も視野に入れている為に、かなりの広さが必要とされる。
普通中々そんな物件は見つからないが、そういう意味ではノーヴェは運が良かった。
なんと、条件に合致する物件が1軒見つかったのだ。
広さは申し分なく、更に立地も良かった。
だからノーヴェは、そこが誰かに取られる前に契約する事にした。
しかし、これはまだ第一歩に過ぎない。
ここから器具を集めたり、スポンサーを見つけたり、そして何よりも顧客を集め、経営を軌道に乗せないといけない。
しかしノーヴェは、特別顧問としてミカヤに声を掛けた。
ミカヤは天瞳流の師範代として、一つの道場を運営している。
その手腕を買い、ノーヴェはミカヤに協力を頼み、ミカヤも受諾した。
正式にオープンしたら、ミカヤがノーヴェに指導する事になるだろう。
しかしノーヴェは、サインを書き終えたら
「よし……やるか」
と自信と不安が入り交じった表情で呟いた。
同時刻、ある体育館でヴィヴィオ達はディエチやオットーの同伴の下、スパーリングをしていた。
「へぇ! じゃあ、ノーヴェはジムの場所を見つけたんだ!」
「という事は、もうすぐでジムで練習出来るのかな?」
合間の休憩時に、ディエチから聞いた話に、ヴィヴィオとリオは嬉しそうに語っていた。
「まだ先だと思うよ? 訓練器具とかも探さないといけないからね」
「それに、協会に登録や安全確認等もする必要がありますから」
ディエチとオットーの説明に、ヴィヴィオ達は納得し
「まあ、安全に関してはノーヴェだから大丈夫そうだね。局員だから」
「まあ、嘱託ですがね」
ナカジマ家に住むチンク、ディエチ、ノーヴェ、ウェンディの四人はN2Rというチームで嘱託局員として登録・活動している。
個々で動く事もあるが、火災や事故の際にチームで活動する事も多く、その為に安全基準に関しては熟知している。
よほどの事が無ければ、その辺りをノーヴェが見逃す事は無いだろう。
「でも、そのジム楽しみだねぇ」
「本当」
リオの言葉に、コロナが同意した。
そこに、走ってきたアインハルトと剣士郎。そして、自転車に乗っていたユミナが到着した。
アインハルトと剣士郎の二人は、ランニングしていたのだ。
そして戻ってきた二人は、ディエチから飲み物を貰って休憩に入り、ディエチやヴィヴィオ達からノーヴェがジムの物件の話を聞いて
「そうですか、いよいよですか……」
「楽しみですね」
「チームって感じが強まったね♪」
と楽しみにしていた。
ナカジマジムが始まるまで、残り僅かになった。