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試合後、ある一室にて
「ああぁぁぁぁぁ……体が痛いぃ……重いぃ……」
ヴィヴィオが少々女の子らしくない声を漏らしながら、唸っていた。
「まあ、あれだけの激闘でしたからね。お疲れ様でした、ヴィヴィオ」
そんなヴィヴィオを、イクスがヴィヴィオの頭を撫でながら労っていた。
そこに、なのはとユーノが入ってきて
「ヴィヴィオ!」
「お疲れ様」
と声を掛けた。
「あ、なのはママ、ユーノパパ」
ヴィヴィオが顔を向けると、なのははヴィヴィオの頭を撫でて
「よくフェイトちゃんに勝てたね。フェイトちゃん、速さは管理局随一なのに」
とヴィヴィオを褒めた。
「なのはでも、時々捕捉が難しいよね。フェイトの速さは」
「うん。特に最近は、冬也さんの機動と剣技をマネしてるから、ちょっと予測が難しいんだよねぇ」
ユーノの言葉に、なのはは頷く。
するとヴィヴィオは
「次は、なのはママに勝つからね」
と宣言した。
それを聞いたなのはは、僅かにキョトンとした表情を浮かべたが、直ぐに笑みを浮かべて
「楽しみに待ってるよ、ヴィヴィオ」
とヴィヴィオの頭を撫でた。
同時刻、別の部屋では
「うー……悔しい……」
「まあ、子供の成長は早いからな……」
ソファーに座りながらクッションを抱き締めて悔しがっていたフェイトの頭を、冬也が撫でていた。
「もう少し大人として、親の一人として勝ちたかった……」
「気持ちは分かるがな……今は、ヴィヴィオの成長を喜ぶのも、親の務めだと思うぞ……?」
フェイトとしては、まだヴィヴィオには勝ちたかったが、フェイトの予想以上にヴィヴィオが強くなっていた。
「うー……」
「まあ、今はゆっくり休め……」
まだ唸るフェイトの頭を、冬也は優しく撫でた。
こうして、時空管理局の一大イベントは幕を降ろした。
そしてまたフェイトは育休に戻り、時空管理局も何時も通りに業務へ戻る。
勿論何時も通りに戻るのは、何も大人達だけではない。学生達も日常に戻っていく。
ヴィヴィオ達やアインハルト、ユミナ、剣士郎達もそれぞれの日常に戻っていく。
その中で一つ変化が有ったとすれば、剣士郎がアンクレイブ家から建て終わった家に引っ越しした事だろう。
剣士郎の言い分としては、何時までもお世話になるのは申し訳ない、というのと、陶芸の仕事でお客を持たせる訳にはいかない、というものだった。
根が真面目な剣士郎らしいだろう。
しかし、剣士郎は時々はアンクレイブ家に立ち寄ると約束した。
変化その2として、アルピーノ家に住人が増えた。
一人目は、ファビア・クロゼルグ。
無限書庫の事件の調査が終わった後、一時期海上隔離施設に収容されていたが、嘱託魔導士だったルーテシアが監視する、という名目でアルピーノ家に移住。
プチデビルズも一緒に住んでおり、どうやら故郷の森に雰囲気が近いらしく、今ではファビアと一緒にルーテシアが主導する改築の手伝いをしている。
そしてもう一人。
雪代悟。
彼もまた、無限書庫事件の後に海上隔離施設に収容されていたのだが、本局の独房で無限書庫で見つかった先祖の手記を読んでから、すっかり無気力になり、大人しくなった。
管理局側はどうすれば良いか迷ったが、こちらもルーテシアが監視するという事でアルピーノ家に引き取られた。
話し掛けても返事も無く、ルーテシアもどうしようか迷ったが、そこにメガーヌが一言。
『今の彼には、考える時間が必要なのよ。私達は、ゆっくり見守ってあげましょう』
とルーテシアに告げて、メガーヌが中心に甲斐甲斐しく世話を焼いている。
そして、時は進んで……
「4年生ももうすぐ終わりだねぇ……」
「あっと言う間の1年間だったね……」
「5年生はどうなるかな」
ヴィヴィオ達はもうすぐ5年生になる。
そうなれば、勿論アインハルト、ユミナ、剣士郎の3人は中等部二年になる。
その年に、ある
そして、剣士郎だが
「……ご先祖様……ようやく、頬の十字傷痕が薄くなってきたよ……」
一人、墓参りをしていた。
その墓はある池の中州にひっそりと有り、そこに有ると知らなければ来ない場所だった。
剣士郎はご先祖の記憶から、その場所を知っていた。
今回墓参りに来たのは、今まで記憶を引き継いだ者に終生現れる頬の十字傷痕が、少し薄くなった事に気付いたからだ。
怨み辛みが込められた傷痕は、中々消えないと聞いていたのだが、その傷痕が薄くなったから、その報告に来ていた。
今まで剣士郎は、少なくとも一年の間に2回は過去の因縁から襲撃を受けてきた。
その度に、葵屋の一同と協力して撃破してきた。
しかし、悟の襲撃の後からパタリと止んでいた。
葵屋からも、不審者の情報は無い。
「……ようやく、俺達のような存在が必要無くなる時が来たのかもしれないな……」
剣士郎はそう言って、刀を抜いた。
そのまま剣士郎は、ゆっくりと刀を自分に向け
「あ! 本当に居た!」
「ようやく見つけましたよ」
という声に、剣士郎は振り向いた。
その先には、ボートから降りて向かってくるユミナとアインハルトの姿があった。
よく見れば、ボートにはディエチの姿も有る。
「……なんでここに?」
「葵屋の四乃森さんから、多分ここじゃないかな、って聞いて来たんだ」
「……本当に、頬の傷痕が薄くなってきていますね」
剣士郎が呆然としながら問い掛けると、ユミナが答え、アインハルトは剣士郎の傷痕が薄くなっている事に気付いた。
「このお墓が、緋村君のご先祖様のお墓?」
「ああ……記憶の通りなら、ここに人斬り抜刀斎と呼ばれたご先祖様と雪代綾様の墓だそうだ……恐らく、その後にご先祖様と結婚した人も入っている」
ユミナからの問い掛けに、剣士郎は推測混じりに答えた。すると、ボートを固定したディエチが歩み寄り
「さ、帰ろうか」
と剣士郎に手を差し伸べた。
しかし、剣士郎が躊躇っていると
「さあ、帰りましょう」
「明日から、新学期が始まるんだから!」
とアインハルトとユミナが、剣士郎の背中を押した。
剣士郎は、少し悩んでから
「……最後まで、生きてみようか……」
と呟いて、ボートに乗った。
こうして、全員は日常に戻ったのだった。